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2018年5月6日日曜日

11.精神的健康には、肯定的な自己像が必要である。もちろん、現実と全く異なるものは害悪であるが、仮にそれが、現実よりいくらか過度であっても、肯定的なことが必要である。逆に、事実でも否定的なら、低い自尊心や抑うつ傾向がみられやすい。(ウォルター・ミシェル(1930-))

肯定的な自己像の必要性

【精神的健康には、肯定的な自己像が必要である。もちろん、現実と全く異なるものは害悪であるが、仮にそれが、現実よりいくらか過度であっても、肯定的なことが必要である。逆に、事実でも否定的なら、低い自尊心や抑うつ傾向がみられやすい。(ウォルター・ミシェル(1930-))】
 伝統的に、心理学者は正確な自己知覚が、精神的健康にとって不可欠なものであると考えてきた。しかしながら、精神的に健康な人々の多くはいくらか非現実的に肯定的なゆがんだ自己像をもっており、一方で自身をより正確にとらえている人のほうが精神的に健康でないことを研究者たちはみいだした。
(a) 小集団状況で相互作用を行い、自分自身と相互作用相手の性格の特徴を評定するように求められた被験者のうち、他者からの評定よりも好ましい自己評定をするのが健常者で、抑うつ患者の自己評定は他者からの評定と一致していた。
(b) 例えば、現実に即した自己知覚を行っている人は低い自尊心や抑うつ傾向がみられやすく、一方で精神的に安定した人は、肯定的な性格特性が、よりうまく自分自身を記述する傾向がみられる。
(c) もちろん現実に対するひどい認知のゆがみが、健常者の特徴であるということを示していると読み違えてはならない。

 「伝統的に、心理学者は正確な自己知覚が精神的健康にとって不可欠なものであると考えてきた(Jahoda,1958)。

しかしながら、精神的に健康な人々の多くはいくらか非現実的に肯定的なゆがんだ自己像をもっており、一方で自身をより正確にとらえている人のほうが精神的に健康でないことを研究者たちはみいだした(Armor & Taylor,2002; Taylor & Brown,1988)。

例えば、現実に即した自己知覚を行っている人は低い自尊心や抑うつ傾向がみられやすく、一方で精神的に安定した人は、肯定的な性格特性がよりうまく自分自身を記述すると考える傾向がみられる(Alicke,1985; Brown,1986)。

 大半の人々がもっている過度に肯定的な自己知覚は、抑うつ患者と健常者とを比較した研究において明らかになった(Lewinsohn et al.,1980)。

小集団状況で相互作用を行った患者たちは、自分自身と相互作用相手の性格の特徴を評定するように求められた。健常者の自己評定は他者からの評定よりも好ましく自分をとらえていた。

抑うつ患者の自己評定は他者からの評定と一致していたことから、健常者は実際よりも肯定的な自己像をもっていて、バラ色の眼鏡を通して自分を眺めていることを示している。」(中略)

「これらの結果は明確に一貫しており、興味深いものであるが、もちろん現実に対するひどい認知のゆがみが、健常者の特徴であるということを示していると読み違えてはならない。」
(ウォルター・ミシェル(1930-),オズレム・アイダック,ショウダ・ユウイチ『パーソナリティ心理学』第Ⅵ部 社会認知的レベル、第15章 社会認知的プロセス、p.489、培風館 (2010)、黒沢香(監訳)・原島雅之(監訳))
(索引:自己像)

パーソナリティ心理学―全体としての人間の理解



(出典:COLUMBIA UNIVERSITY IN THE CITY OF NEW YORK
ウォルター・ミシェル(1930-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers) 「個人が所有する自由や成長へのわくわくするような可能性には限りがない。人は可能自己について建設的に再考し、再評価し、効力感をかなりの程度高めることができる。しかし、DNAはそのときの手段・道具に影響を与える。生物学に加えて、役割における文化や社会的な力も、人が統制できる事象および自らの可能性に関する認識の両方に影響を与え、制限を加える。これらの境界の内側で、人は、将来を具体化しながら、自らの人生についての実質的な統制を得る可能性をもっているし、その限界にまだ到達していない。
 数百年前のフランスの哲学者デカルトは、よく知られた名言「我思う、ゆえに我あり」を残し、現代心理学への道を開いた。パーソナリティについて知られるようになったことを用いて、私たちは彼の主張を次のよう に修正することができるだろう。「私は考える。それゆえ私を変えられる」と。なぜなら、考え方を変えることによって、何を感じるか何をなすか、そしてどんな人間になるかを変えることができるからである。」
(ウォルター・ミシェル(1930-),オズレム・アイダック,ショウダ・ユウイチ『パーソナリティ心理学』第Ⅶ部 各分析レベルの統合――全人としての人間、第18章 社会的文脈および文化とパーソナリティ、p.606、培風館 (2010)、黒沢香(監訳)・原島雅之(監訳))

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