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2019年4月10日水曜日

1.46億年の地球の歴史を経て、過剰な有害放射能が消え去り生命が育まれた。これが、93番以降の超ウラン元素が天然に存在しない理由だ。核技術は、この46億年の歴史に取り返しのつかない影響を及ぼす可能性がある。(高木仁三郎(1938-2000))

核技術の特殊性

【46億年の地球の歴史を経て、過剰な有害放射能が消え去り生命が育まれた。これが、93番以降の超ウラン元素が天然に存在しない理由だ。核技術は、この46億年の歴史に取り返しのつかない影響を及ぼす可能性がある。(高木仁三郎(1938-2000))】

地球の歴史
生命の誕生
人類の進化
物理学の歴史
アインシュタイン
核分裂の発見

 「さて、原子番号の大きい「重い」元素は、みな不安定で、放射性である。原子番号八四番の ポロニウム とそれより重い元素は、天然に存在するものもすべて放射性である。

そんななかで、九二番の ウラン までが天然に存在し、それより重い九三番以降のもの(「超ウラン元素」と呼ぶ)が天然に存在しないのは、どういうわけだろうか。

実は、地球ができた頃、あるいはそれよりももっと昔には、もっともっと多くの元素があったと考えられる。しかし、地球が生まれてからでもすでに四六億年もの年月がたっているので、それから現在までの間に、寿命の短い不安定な元素はみな死に絶えてしまったのである。

 ウランが残ったのは、その寿命が充分に長かったからだ。ウランの仲間のなかで最も長生きなのは、半減期が四五億年のウラン-二三八である。これだけ寿命が長かったからこそ、今も生き残り、私たちはその存在を天然に見出すわけだが、超ウラン元素はすべてもっと不安定で、天然には存在せず、人工的に作りだすよりほかにそれを手にする手段はない。

 したがって、原初の地球は放射能で満ち満ちていたといっても過言ではない。ウラン-二三八も現在量のちょうと二倍あったはずである。

私たちが今日あるのも、四六億年という地球の歴史の過程で、過剰な有害放射能が死に絶え、生命の条件が整ったということにも大いによっているという事実は、心に留めておくべきことである。」

(高木仁三郎(1938-2000)『高木仁三郎著作集 第四巻 プルートーンの火』プルトニウムの恐怖 第1章 パンドラの筐は開かれた、pp.127-128)
(索引:核技術の特殊性,地球の歴史,生命の誕生,人類の歴史)

プルートーンの火 (高木仁三郎著作集)

(出典:高木仁三郎の部屋
友へ―――高木仁三郎からの最後のメッセージ
 「「死が間近い」と覚悟したときに思ったことのひとつに、なるべく多くのメッセージを多様な形で多様な人々に残しておきたいということがありました。そんな一環として、私はこの間少なからぬ本を書き上げたり、また未完にして終わったりしました。
 未完にして終わってはならないもののひとつが、この今書いているメッセージ。仮に「偲ぶ会」を適当な時期にやってほしい、と遺言しました。そうである以上、それに向けた私からの最低限のメッセージも必要でしょう。
 まず皆さん、ほんとうに長いことありがとうございました。体制内のごく標準的な一科学者として一生を終わっても何の不思議もない人間を、多くの方たちが暖かい手を差しのべて鍛え直して呉れました。それによってとにかくも「反原発の市民科学者」としての一生を貫徹することができました。
 反原発に生きることは、苦しいこともありましたが、全国、全世界に真摯に生きる人々とともにあることと、歴史の大道に沿って歩んでいることの確信から来る喜びは、小さな困難などをはるかに超えるものとして、いつも私を前に向って進めてくれました。幸いにして私は、ライト・ライブリフッド賞を始め、いくつかの賞に恵まれることになりましたが、繰り返し言って来たように、多くの志を共にする人たちと分かち合うものとしての受賞でした。
 残念ながら、原子力最後の日は見ることができず、私の方が先に逝かねばならなくなりましたが、せめて「プルトニウム最後の日」くらいは、目にしたかったです。でもそれはもう時間の問題でしょう。すでにあらゆる事実が、私たちの主張が正しかったことを示しています。なお、楽観できないのは、この末期的症状の中で、巨大な事故や不正が原子力の世界を襲う危険でしょう。JCO事故からロシア原潜事故までのこの一年間を考えるとき、原子力時代の末期症状による大事故の危険と結局は放射性廃棄物が垂れ流しになっていくのではないかということに対する危惧の念は、今、先に逝ってしまう人間の心を最も悩ますものです。
 後に残る人々が、歴史を見通す透徹した知力と、大胆に現実に立ち向かう活発な行動力をもって、一刻も早く原子力の時代にピリオドをつけ、その賢明な終局に英知を結集されることを願ってやみません。私はどこかで、必ず、その皆さまの活動を見守っていることでしょう。
 私から一つだけ皆さんにお願いするとしたら、どうか今日を悲しい日にしないでください。
 泣き声や泣き顔は、私にはふさわしくありません。
 今日は、脱原発、反原発、そしてより平和で持続的な未来に向っての、心新たな誓いの日、スタートの楽しい日にして皆で楽しみましょう。高木仁三郎というバカな奴もいたなと、ちょっぴり思い出してくれながら、核のない社会に向けて、皆が楽しく夢を語る。そんな日にしましょう。
 いつまでも皆さんとともに
 高木 仁三郎
 世紀末にあたり、新しい世紀をのぞみつつ」
(高木仁三郎(1938-2000)『高木仁三郎著作集 第四巻 プルートーンの火』未公刊資料 友へ―――高木仁三郎からの最後のメッセージ、pp.672-674)

高木仁三郎(1938-2000、物理学、核化学)
原子力資料情報室(CNIC)
Citizens' Nuclear Information Center
認定NPO法人 高木仁三郎市民科学基金|THE TAKAGI FUND for CITIZEN SCIENCE
高木仁三郎の部屋
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高木仁三郎 略歴・業績Who's Whoarsvi.com立命館大学生存学研究センター
原子力市民委員会(2013-)
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