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2022年4月20日水曜日

短時間のうちには注意が翻訳することのできない思考材料を、ある目的や目標のために感情的な発話行為へと翻訳し、この思考材料を活性化させる。この発話行為が、エモーティヴである。エモーティヴは感情に関する活性化した思考材料に対して、説明を付与する効果と、自ら変化する効果を持つ。(ウィリアム・M・レディ(1947-))

エモーティヴ

短時間のうちには注意が翻訳することのできない思考材料を、ある目的や目標のために感情的な発話行為へと翻訳し、この思考材料を活性化させる。この発話行為が、エモーティヴである。エモーティヴは感情に関する活性化した思考材料に対して、説明を付与する効果と、自ら変化する効果を持つ。(ウィリアム・M・レディ(1947-))


















(a)思考材料
 短時間のうちには注意が翻訳することのできない思考材料が現れる。ここには、何らかの事実が起こっている。私たちが誰かを愛するのは「事実」である。
(b)概念化
 思考材料は、概念化されている。(心理学的構築論)
(c)目的や目標
 感情とは、ある目的や目標のために、思考材料を活性化させることである。(認知科学)
(d)エモーティヴ
「あなたを愛している」という発言は、思考材料が感情的な発話行為へと「翻訳され」活性化された結果である。私たちはそのように発言するとき、「あなたを愛している」と言うことでかろうじて表現される、様々な気持ちをそのもの全体として抱いている。
(e) エモーティヴの効果
 エモーティヴは感情的状態を描写し、エモーティヴは対象を変容させ、そしてエモーティヴはその発言 をした人に様々な気持ちを呼び起こすのである。 エモーティヴは「感情に関する活性化した思考材料に対して、説明を付与する効果と、自ら変化する効果を持つ」。
(f)エモーティヴの誠実、不誠実
 エモーティヴは、それと合致する目標 が一つだという点で誠実である。しかし、人は一つ以上の目標を持つ故に、同一のエモーティヴが競 合する目標と関連づけられる点において、 エモーティヴは不誠実である。



「レディは「感情」を次のように定義する。「短時間のうちには注意が翻訳することのできない思考 材料を、目標のために活性化させることである」。この定義の特徴の一部は、よく知られている。認 知科学者は目的や目標について論じており、レディの「思考材料」への言及は、感情の定義に関して レディが、認知科学者と同じ陣営に立ったことを意味した。 感情は脳によって生成された「概念化さ れたもの」の一つであると考える心理学的構築論者とも、同じ陣営である。 しかし、認知されたものを 「短時間のうちには注意が翻訳することはできない」という考え方は、情動理論の一側面に準拠し ており、これが「エモーティヴ」という仮説を導いた。「あなたを愛している」という発言を考えて みよう。 レディにとって、この発言は、思考材料が感情的な発話行為へと「翻訳され」活性化され た結果である。事実、私たちはそのように発言するとき、「あなたを愛している」と言うことでかろ うじて表現される、様々な気持ちをそのもの全体として抱いている。しかし、その気持ちすべてに注 意を向けることができないため(なぜならそれらの気持ちすべてを「注意は翻訳することができない」からで ある)、少なくとも、私たちが 「あなたを愛している」と発言する「短時間のうち」においては、私 たちは「愛」に注目する。そうすることで、私たちは、他の目標に関連した気持ちも活性化させるこ  とになる。 
 エモーティヴ、すなわち発話によって規定される感情は、それゆえ、他の発言とは異なる。エモーティヴは感情的状態を描写し(私たちが誰かを愛するのは「事実」である)、エモーティヴはそこに向けられた対象を変容させ(愛していると言われて動じない人はいないだろう)、そしてエモーティヴはその発言 をした人に様々な気持ちを呼び起こすのである。 レディ自身の言葉を用いれば、エモーティヴは「感 情に関する活性化した思考材料に対して、説明を付与する効果と、自ら変化する効果を持つ」。 「あな たを愛している」という発言は、 新たな思考を活性化させる。それは、「今まで考えていた以上にあ なたを愛している」 かもしれないし、「あれ、本当にこの人を愛しているのかしら」かもしれない。 レディにとって、エモーティヴは誠実でも、不誠実でもある。エモーティヴは、それと合致する目標 が一つだという点で誠実である。しかし、人は一つ以上の目標を持つ故に、同一のエモーティヴが競 合する目標と関連づけられる点において、 エモーティヴは不誠実である。それは、このような場合で ある。「あなたを愛している」けれども、一人でいたいとも思うの。 「あなたを愛している」 - でも、あの人のことが忘れられない。」
(バーバラ・H・ローゼンワイン(1945-),リッカルド・クリスティアーニ,『感情史とは何か』,2 アプローチ,エモーショノロジー,pp.56-57,伊東剛史(訳),森田直子(訳), 小田原琳(訳), 舘葉月(訳))

感情史とは何か [ バーバラ・H.ローゼンワイン ]



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