慣習的規則と道徳的規則の区別
【「今日は授業中に話したいとき手を挙げなくてもよい」「今日は、友達の顔をぶちたいなら、ぶってもよい」。幼児(3歳児)に様々な状況設定で膨大な実験をした結果、慣習的規則と、破ることが拒否される道徳的規則が区別されるという事実がある。(エリオット・テュリエル(1938-))】(出典:gse.berkeley.edu)

「我々がそれらに従うのを正当化しようとするとき、我々は正義や、その人の福利や、権利といったものに訴える傾向がある。さて、ここからが驚くべきことである。子どもたちに規則が示される際には区別がなされていないにもかかわらず、彼らは慣習的規則と道徳的規則の区別を把握するのだ。このことは次のようにしてわかる。
1980年代中頃、心理学者のエリオット・テュリエル(1983)と彼の同僚が、三歳児に対して規則の変更を含む仮想的な状況について考えるように求める実験を行った(これは様々な状況設定で膨大な回数にわたって再現されてきた)。たとえば、子どもたちは彼らの先生がこう言うのを想像するように言われる。「今日は、授業中に話したいとき手を挙げなくてもかまいません」。そして子どもたちは次のように尋ねられる。「もし今日授業中に手を挙げずに発言したら、それはしてもよいことですか?」ためらいなく、子どもたちは《そうだ》と言う。同様に、もし彼らの親が食べ物を投げてもよいと言えば食べ物を投げてもよいだろうと子どもたちは言う。
しかし、次に子どもたちは彼らの先生がこう言うのを想像するように求められる。「今日は、友達の顔をぶちたいなら、そうしてもかまいません」。この場合、子どもたちは、先生の許しがあるとしてもなお、友達をぶってもかまわないとは《ほぼ間違いなく言わない》。ほとんどの子どもたちは、親が「今日は兄弟に嘘をついてもかまいません」と言うのを想像するように求められたとしても、それでも兄弟に嘘をついてもかまわないということを《否定する》。」
(スコット・M・ジェイムズ(19xx-)『進化倫理学入門』第1部「利己的な遺伝子」から道徳的な存在へ、第5章 美徳と悪徳の科学、pp.139-140、名古屋大学出版会(2018)、児玉聡(訳))
(索引:慣習的規則,道徳的規則)
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(出典:UNC Wilmington )
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(1)道徳的生物は禁止というものを理解する。
(2)道徳的禁止は我々の欲求に依存しないように思われ、
(3)法律のような人間の取り決めに依存するようにも思われない。むしろ、それらは主観的ではなく客観的なもののように思われる。
(4)道徳判断は動機と密接に結びついている。ある行為は間違っていると心から判断することは、少なくともその行為をするのを《差し控えたい》という欲求を含意しているようである。
(5)道徳判断は功罪の観念を含意する。道徳的に禁止されていると知っていることをすることは、処罰が正当化されうるということを含意する。
(6)我々のような道徳的生物は、自身の悪事に対して、ある特有の《感情的》反応を示し、そしてこの反応はしばしば我々を、その悪事の償いをするよう駆り立てる。」
(スコット・M・ジェイムズ(19xx-)『進化倫理学入門』第1部「利己的な遺伝子」から道徳的な存在へ、第3章 穴居人の良心、p.81、名古屋大学出版会(2018)、児玉聡(訳))
(索引:)
スコット・M・ジェイムズ(19xx-)
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