2024年4月29日月曜日

20.市場支配力が行使されると市場はゆがみ、社会福祉は縮小する。そして不平等を生むだけでなく、市場のレント(超過利潤)は経済・政治システムに別のゆがんだ影響をおよぼす(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)

 市場支配力が行使されると市場はゆがみ、社会福祉は縮小する。そして不平等を生むだけでなく、市場のレント(超過利潤)は経済・政治システムに別のゆがんだ影響をおよぼす(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)

 「市場支配力のゆがんだ影響

 企業の市場支配力が増すと、市場支配力をもつ企業の所有者へ、顧客から富が移動する。顧客の富が減少したことは資本金会計には記録されないが、企業価値の増加は記録される。

〈フォーブズ〉誌の世界長者番付には、金融業、石油や石炭、ガス、鉱物などの資源開発にかかわる採取産業、不動産業、民営化された通信事業などにおける独占力のおかげで長者の地位を得た人々が散見される。

 市場支配力が行使されると市場はゆがみ、社会福祉は縮小する。そして不平等を生むだけでなく、市場のレント(超過利潤)は経済・政治システムに別のゆがんだ影響をおよぼす。

 第1にレントは、もし経済が最適に構築され、そのようなレントが存在しなかった場合に行なわれたはずの生産を減少させる。

 第2にレントは、過剰な営業支出やロビー活動などの非生産的なレントシーキング活動への資源配分にインセンティブをあたえる。レントが大きいほど、そのような活動に対するインセンティブも大きくなる。

たとえば、2010年、医療産業は医療費負担適正化法に反対するロビー活動に1億240万ドルを投入し、金融および不動産業は金融規制改革法であるドッド=フランク法の可決と施行に反対するロビー活動に数十億ドルを費やした。

 第3に、企業がレントを生み出したり維持したりするためにロビー活動や他の政治活動にかかわる度合に応じて、政治システムに影響をおよぼし、経済や他の社会分野に多くの有害な結果をもたらす。最初の反トラスト法は、経済システムだけでなく、政治システムのゆがみが動機となって定められた。」

(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『アメリカ経済のルールを書き換える』(日本語書籍名『これから始まる「新しい世界経済」の教科書』),第1部 世界を危機に陥れた経済学の間違い,第1章 “自由な市場”が何を引き起こしたか,pp.70-71,徳間書店(2016),桐谷知未(訳))

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(出典:wikipedia
ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)の命題集(Propositions of great philosophers)


 


市場支配力を抑制すれば、より公平で、より力強いアメリカ経済を維持できるはずだ(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)

 市場支配力を抑制すれば、より公平で、より力強いアメリカ経済を維持できるはずだ(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)

 「支配力が増すと、競争が減少する

 ■競争は、成功する経済には必須の特性であり、企業を効率的にし、価格を下げさせる。競争は市場関係者の力を制限し、彼らに都合のよい経済および政治成果を摘み取る。

 ■アメリカ経済のかなりの部分が、この競争の理想型からかけ離れた場所をさまよってきた。市場支配力が、人々の快適な暮らしや経済実績全体にとって重要な領域で大きな役割を演じている。

 ■テクノロジーとグローバル化における変化は、市場支配力の増大に一定の役割を担ってきた。しかし、政府が選択した明確な政策も同様だ。多くの場合、政府は市場支配力を抑制しない方向を選んできた。

 ■このような活動は経済効率を低下させ、人々の意欲を失わせうるので、市場支配力を抑制すれば、より公平で、より力強いアメリカ経済を維持できるはずだ。」

(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『アメリカ経済のルールを書き換える』(日本語書籍名『これから始まる「新しい世界経済」の教科書』),第1部 世界を危機に陥れた経済学の間違い,第1章 “自由な市場”が何を引き起こしたか,pp.60-61,徳間書店(2016),桐谷知未(訳))

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(出典:wikipedia
ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)の命題集(Propositions of great philosophers)


自由な市場”が何を引き起こしたか(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)

自由な市場”が何を引き起こしたか(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)

 「1970年代以降、ゲームのルールは変わり、第2次世界大戦後の30年間で達成された経済力のバランスを壊した。第1部では、国民にみじめな道を歩ませることになった転換点について分析し、ここに至るまでに学んだいくつかの教訓に照らして考察する。

 ◎経済ルールの根本的な変化は不平等を拡大し、結果として経済的利益を共有する人が減っただけでなく、経済全体と企業投資まで低迷させた。

 ◎民間セクターでは、融資が経済全体に役立つものから融資そのもののためへと変わった。

企業は利害関係者全員――労働者、株主、経営陣――への奉仕から、“株主の利益”を増やすことを口実に、トップ経営陣のみに奉仕する方向へ進んだ。主要セクターで数社の市場支配力が増したことで、競争の勢いは鈍った。結果として、近視眼的な行動や、雇用や将来への投資不足、成長の鈍化、価格の上昇、不平等の拡大が生じた。

 ◎アメリカの税制は労働より投機をうながし、経済をゆがめ、上位1パーセントの人々の利益に貢献している。

 ◎金融・税制政策で、財政赤字やインフレといった脅威に重点を置きすぎた一方で、不平等の拡大と投資不足という、経済の繁栄に対する現実の脅威を無視した。その結果、失業率が上昇して、社会はますます不安定になり、成長が鈍化した。

 ◎労働市場の制度、法律、規制や規範が変わったことで弱体化された労働者は、強大な企業と市場の力に対抗するのが難しくなった。その結果、生産性と賃金のへだたりが拡大した。これは恐らく、過去3分の1世紀のアメリカの経済生活における最も著しい局面だろう。

 ◎これらの問題は、不利な立場にある人たちのあいだでますます悪化している。市場は有利な立場を何世代にもわたって永続させ、差別は多くの人々が自らの人的資本を開発して富を蓄えるのを妨げてきた。


 ここには、アメリカ社会が方向を誤ったことがはっきり示されている。しかしそのすべては選択だった。つまり、選択によってものごとのやりかたは変えられるということだ。前へと進む道については、第2部で示す。」

(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『アメリカ経済のルールを書き換える』(日本語書籍名『これから始まる「新しい世界経済」の教科書』),第1部 世界を危機に陥れた経済学の間違い,第1章 “自由な市場”が何を引き起こしたか,pp.58-60,徳間書店(2016),桐谷知未(訳))


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(出典:wikipedia
ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)の命題集(Propositions of great philosophers)










20. 『人間の間柄の諸要素』(マルティン・ブーバー(1878-1965)

『人間の間柄の諸要素』(マルティン・ブーバー(1878-1965)



「この原稿が完結した後で、アレクサンダー・フォン・ヴィレルス(Alexander von Villers)の『ある無名氏の手紙』の中の二つの箇所が私の注目を引いた。

私にとり、それはここで引用するに足る注目すべきものと考えられる。  

《ヴィーゼンハウスにて、1877年12月27日。私は「人間間にひそむ人間」(der Zwischen-mensch)の迷信をもっています。私がそれではないし、君もそれではない。しかしわれわれの間には、私には《汝》といい、他者には《私》である、あるものが生じて来ます。

このようにして、各人は相互的な二重の名称を持った彼の「人間間にひそむ人間」を持っています。

そしてすべて百人の「人間間にひそむ人間」の――われわれの各々がそれに50パーセント関与しているわけですが――誰一人として他の「人間間にひそむ人間」とは等しくありません。

だが彼は考え、感じ、そして話します。これが「人間間にひそむ人間」です。彼には諸々の思想が属しています。これがわれわれを自由にするのです。》  

《ヴィーゼンハウスにて、1879年2月28日。かくてわれわれは今や真相に達します。それは話と答え、生ける対象、軋轢、そして多分生殖の内奥です。

なぜなら私はある事物についての表象を持ちますが、それは物自体ではなく、私における、また汝における、あるものについての表象であります。

それに名前、つまり握る柄をつけるために、私はそれを「人間間にひそむ人間」(der Zwischen-mensch)と名付けます。

「人間間にひそむ人間」とは、ただ二人の特定の人間にのみ特有で、彼らにのみ属する他者の表象です。AとCの両者の中間にあるBです。AのD、E、Fへの関係にあっては、この「人間間にひそむ人間」は、たとえA自身はいつも同じであっても、決して再び現れず、彼はAのCまでへの関係にしか属さないのです。》」
(マルティン・ブーバー(1878-1965)『人間の間柄の諸要素』付記(集録本『ブーバー著作集〈第2〉対話的原理2』)pp.116-117、みすず書房(1968)、佐藤吉昭・佐藤令子(訳))
(索引:)

ブーバー著作集〈第2〉対話的原理2 (1968年)









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