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2019年4月13日土曜日

第1次世界大戦までオスマン帝国内のクルディスタンにいたクルド人は、大戦後、トルコやイラン、イラク、シリアなどに分断され、各国の中では少数民族となった。彼らは、祖国を持たない世界最大の民族と呼ばれ、推定3000万人である。(池上彰(1950-))

クルド人

【第1次世界大戦までオスマン帝国内のクルディスタンにいたクルド人は、大戦後、トルコやイラン、イラク、シリアなどに分断され、各国の中では少数民族となった。彼らは、祖国を持たない世界最大の民族と呼ばれ、推定3000万人である。(池上彰(1950-))】

 「クルド人は、祖国を持たない世界最大の民族と呼ばれます。クルド語を話す民族で、推定で3000万人がいると見られています。
 第一次世界大戦までは、オスマン帝国内のクルディスタン(クルド人の土地)と呼ばれる地域にまとまって住んでいましたが、戦争でオスマン帝国が敗れると、トルコやイラン、イラク、シリアなどに分断されます。3000万人いても、それぞれの国の中では少数民族となり、差別されたり、抑圧されたりする状況が続き、各国で分離独立運動が活発になります。それがまた弾圧の引き金になるという悪循環でした。
 「クルドの友は山ばかり」という表現があります。独立を支援してくれる国はなく、山岳地帯で孤立感を深める民族を、こう呼んだのです。
 このうちイラクでは、フセイン政権時代、厳しい弾圧を受けていましたが、アメリカがイラクを攻撃する際には、米軍に協力。フセイン政権追い落としに力を発揮して、新政権の下では「クルド人自治区」を確立しました。現在では、イラクの中央政権の統治が及ばない、事実上の独立国の地位を確保しました。
 一方、トルコでは、人口の2割近くを占めますが、歴代のトルコ政府はクルド人の存在を認めず、クルド語の使用も禁止。「山岳トルコ人」と呼んできました。トルコ南東部の山岳地帯に住んでいるからです。
 こうした状況下で、クルド人は、武装闘争で独立を勝ち取ろうという過激派と、トルコ国内での平和的な活動で政治的地位を獲得しようという勢力に分裂しました。過激組織の「クルド労働者党」(PKK)は、1984年からトルコ政府に対して武装闘争を展開。2013年に和平交渉が始まるまでに4万人以上が犠牲になりました。
 トルコは長年、EU(欧州連合)への加盟を目指してきましたが、EU側は、トルコ政府がクルド人の存在を認めない方針を取っていることを批判。これを受けて、トルコ政府は、クルド語の使用を認めました。クルド人の存在が認められるようになり、クルド系の「人民民主党」(HDP)が、政界で一定の影響力を確保するようになっていました。
 それでも、トルコのクルド人たちの中には、現在のトルコの与党である「公正発展党」(AKP)を支持する人も多かったのです。」(後略)
(池上彰(1950-),『これが「世界を動かすパワー」だ!』POWER3 中東,トルコ内での対立が日本にまで,pp.121-125,文藝春秋(2016))
(索引:クルド人,クルディスタン)

池上彰のこれが「世界を動かすパワー」だ! (文春e-book)


(出典:wikipedia
池上彰(1950-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「あなたが同じ立場だったらどうするか?
 もし、あなた方があのときにそのチッソの水俣工場で働いている社員だったら、どうしますか、ということです。つまり熊本県でも有数の企業です。水俣にとってはいちばん大手の企業です。水俣で生まれ育って、学校を出て、チッソに就職するというのは地元の人にとってはいちばんのエリートコースですよね。それこそ、みなさんがもしチッソに就職が決まったと報告をすれば、家族はもちろん親戚もみんな、「いやあいいところに就職したね、よかったね」と祝福してくれるはずです。もちろん、プラスチックの可塑剤という、日本という国が豊かになるときに必要なものをつくっているわけですから、みんな誇りを持って働いていたはずです。ところがやがて、そこから出てくる廃水が原因で、地元の住民に健康被害が出る、という話が聞こえるようになってきた。さあ、みなさんは果たしてどんな行動をとりますか、ということです。当時のチッソの社員たち。たとえば病院の医師が、原因究明のために猫を使って実験をしていた。でも会社から、そんな実験はやめろ、と言われたからやめてしまった。あるいは多くの社員は気がついていたからこそ、排水口の場所を変えたわけです。それによってさらに被害を広めてしまった。労働組合が分裂をして、そこで初めて、企業の仕打ちに気がついた社員たちが声を上げるようになった。さあ、もしそういうことになったら、みなさんはどういう態度をとりますか。
 いまの日本は廃水の基準に厳しいですから、何かあればすぐわかるでしょう。でもいま、実は、まったく同じようなことが中国のあちこちで起きています。開発途上国で同じようなことが起きているのですね。みなさんが就職をしました。そこの会社が実は、東南アジアあるいはアフリカに、現地の工場を持っている。現地の工場に、要員として派遣されました。そこで働いていた。そうしたらその周辺で、健康被害が出ている住民たちがいることに気がついた。あなたはどういう態度をとるのか。まさにそれが問われている、ということなのですね。決して他人事ではないのだということがわかっていただけるのではないでしょうか。」
(池上彰(1950-),『「経済学」講義 歴史編』lecture5 高度経済成長の歪み,pp.228-229,KADOKAWA(2015))
(索引:)

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