2020年4月3日金曜日

意識作用には、意識を伴わない「精神機能」、ニューロン活動が先行する。感覚だけではなく、意識を伴う思考や感情、情動、自発的な行為を促す意図、創造的なアイデア、問題の解決なども、同様であろう。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

意識を伴わない精神機能

【意識作用には、意識を伴わない「精神機能」、ニューロン活動が先行する。感覚だけではなく、意識を伴う思考や感情、情動、自発的な行為を促す意図、創造的なアイデア、問題の解決なども、同様であろう。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))】

意識現象の発現の仕方
(a)体性感覚
 (i)意識を伴わない感覚信号の検出、ニューロン活動が先行する。
 (ii)適切なニューロン活動の持続時間が、ある程度増加することによって、感覚の意識が現れる。
 (iii) 意識を伴わない感覚信号の検出、精神機能、ニューロン活動が存在し、活動の持続時間が500ms以上になると意識的な機能となる。持続時間の延長には、「注意」による選択が関与しているらしい(仮説)。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))
(b)他の感覚モダリティ(視覚、聴覚、嗅覚、味覚)でも、同様である。
(c)意識を伴う思考や感情、情動、自発的な行為を促す意図でも、同様である。
(d)創造的なアイデア、問題の解決なども、同様であろう。


 「タイム-オン理論によれば、適切なニューロン活動の持続時間(タイム-オン)のある程度の増加によって、その増加分がなければ無意識だったはずの心理的機能にアウェアネスが加わる特性があることを思い出してください。この理論はこうして、以下のような見解を提案、または導き出します。
 (1) おそらく、いかなる種類のアウェアネスも現れないうちに、すべての意識を伴う精神事象が実際には《無意識に始まっている》のです。体性感覚のアウェアネスの場合でも、また、内面で生じる自発的な行為を促す意図のアウェアネスにおいても、こうした状況が発生するということについて、私たちにはすでに実験的な証拠があります(第4章参照)。すなわち、このようなアウェアネスをいくらかでも引き出すには、持続時間が十分に長い脳の活動が必要であるということです。つまり、無意識な、短い時間継続する脳の活動は、遅延する意識事象に先行するということを意味しています。二つの異なる種類の意識経験について私たちが発見したこのような根本的な必要条件は、他の種類のアウェアネス、言い換えると他の感覚モダリティ(視覚、聴覚、嗅覚、味覚)、意識を伴う思考や感情、情動などにもあてはまるようです。
 内面で生み出された思考と感情にこの原則を適用すると、非常に興味深い帰結を生みます。さまざまな思考、想像、態度、創造的なアイデア、問題の解決などは、初めは無意識に発達します。このような無意識の思考は、適切な脳の活動が十分な長さの時間継続したときだけ意識的なアウェアネスに到達するのです。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第3章 無意識的/意識的な精神機能,岩波書店(2005),pp.124-125,下條信輔(訳))
(索引:意識を伴わない精神機能)

マインド・タイム 脳と意識の時間


(出典:wikipedia
ベンジャミン・リベット(1916-2007)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「こうした結果によって、行為へと至る自発的プロセスにおける、意識を伴った意志と自由意志の役割について、従来とは異なった考え方が導き出されます。私たちが得た結果を他の自発的な行為に適用してよいなら、意識を伴った自由意志は、私たちの自由で自発的な行為を起動してはいないということになります。その代わり、意識を伴う自由意志は行為の成果や行為の実際のパフォーマンスを制御することができます。この意志によって行為を進行させたり、行為が起こらないように拒否することもできます。意志プロセスから実際に運動行為が生じるように発展させることもまた、意識を伴った意志の活発な働きである可能性があります。意識を伴った意志は、自発的なプロセスの進行を活性化し、行為を促します。このような場合においては、意識を伴った意志は受動的な観察者にはとどまらないのです。
 私たちは自発的な行為を、無意識の活動が脳によって「かきたてられて」始まるものであるとみなすことができます。すると意識を伴った意志は、これらの先行活動されたもののうち、どれが行為へとつながるものなのか、または、どれが拒否や中止をして運動行動が現れなくするべきものなのかを選びます。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第4章 行為を促す意図,岩波書店(2005),pp.162-163,下條信輔(訳))
(索引:)

ベンジャミン・リベット(1916-2007)
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言語が、記述機能と論証機能を獲得し、世界3が創造されたことによって、自然選択によらない非遺伝的成長が可能となり、理性や人間の自由が創発された。(カール・ポパー(1902-1994))

心身問題における言語の役割

【言語が、記述機能と論証機能を獲得し、世界3が創造されたことによって、自然選択によらない非遺伝的成長が可能となり、理性や人間の自由が創発された。(カール・ポパー(1902-1994))】

(4)追加記載

心身問題における言語の役割

言語は、世界1の基盤に支えられ、意識的、能動的な世界3の学習と探究を通じて、世界1との関係、他者との関係、自我の形成に強い作用を及ぼす。自我は、世界1、他者、世界3との能動的な相互作用の所産である。(カール・ポパー(1902-1994))

(1)言語の習得は、世界1の基盤によって支えられている。
 世界1:自然淘汰によって進化した遺伝的な基盤をもつ自然的過程
  言語を学習する強い必要性と、無意識的で生得的な動機
  言語を学習する能力
(2)言語の習得は、意識的、能動的な世界3の学習と探究の過程である。
 世界2:個々の言語を実際に学習する過程
(3)人間の理性と人間の自由の創発
  思考は、言語で表現され外部の対象となることで、間主観的な批判に支えられた客観的な基準の世界3に属するようになる。(カール・ポパー(1902-1994))
 (a)思考はひとたび言語に定着させられると、われわれの外部の対象となる。
 (b)外部の対象となることで、間主観的に批判できるものとなる。
 (c)間主観的に批判できることで、客観的な基準の世界、すなわち世界3が出現してくる。
 (d)世界3に属することで、等値、導出可能性、矛盾といった論理的関係が意味を持つようになる。
 (e)客観的な基準の世界に対して、世界2は主観的な思考過程という位置づけが成立する。

(4)言語の機能
 言語が、記述機能と論証機能を獲得し、世界3が創造されたことによって、自然選択によらない非遺伝的成長が可能となり、理性や人間の自由が創発された。
 (4.1)表出機能
 (4.2)通信機能
 (4.3)記述機能:記述内容には、真・偽の区別がある。
 (4.4)論証機能:論証には、妥当かどうかの区別がある。
  (a)世界3の創造
   記述機能、論証機能によって世界3が創造された。
  (b)非遺伝的成長
   自然選択から、合理的批判にもとづく選択に依存して成長できるようになった。
  (c)人間の理性と人間の自由の創発

(5)言語は、以下に対して強いフィードバック効果を持っている。
 (a)自らの物質的環境への精通
 (b)他者との関係
 (c)自我、人格の形成
(6)すなわち、自我、人格とは、
 (a)能動的な学習と探究の成果の所産である。
 (b)世界3の所産である。
 (c)物質的環境との相互作用の所産である。
 (d)他者との相互作用の所産である。
 「人間は、《記述》機能と真理値をともない、また、《論証》機能と論証の妥当値をともなう人間の言語を創造したのであり、それによって、たんに表出機能と通信機能しかもっていない動物を超え出たのである。それとともに人間は、客観的な世界3を創造した。世界3は、動物界にはかなりかすかな類事物しか見られない。そして、世界3とともに人間は、文明、学習、非遺伝的成長――つまり、遺伝子コードによって伝達されるのではない成長――からなる新世界を作り出した。つまり、自然選択というよりも合理的批判にもとづく選択に依存して成長する新世界を作り出したのである。
 したがって、この第三の大きな奇蹟、つまり、人間の脳と人間の精神の創発、人間の理性と人間の自由の創発を説明しようとするならば、人間の言語と世界3の役割にこそ目が向けられるべきなのである。」
(カール・ポパー(1902-1994),『開かれた宇宙―非決定論の擁護』,付録1,人間の状況と自然界,p.159,岩波書店(1999),小河原誠,蔭山泰之,(訳))
(索引:心身問題における言語の役割,言語,言語の記述機能,言語の論証機能)

開かれた宇宙―非決定論の擁護


(出典:wikipedia
カール・ポパー(1902-1994)の命題集(Propositions of great philosophers)  「あらゆる合理的討論、つまり、真理探究に奉仕するあらゆる討論の基礎にある原則は、本来、《倫理的な》原則です。そのような原則を3つ述べておきましょう。
 1.可謬性の原則。おそらくわたくしが間違っているのであって、おそらくあなたが正しいのであろう。しかし、われわれ両方がともに間違っているのかもしれない。
 2.合理的討論の原則。われわれは、ある特定の批判可能な理論に対する賛否それぞれの理由を、可能なかぎり非個人的に比較検討しようと欲する。
 3.真理への接近の原則。ことがらに即した討論を通じて、われわれはほとんどいつでも真理に接近しようとする。そして、合意に達することができないときでも、よりよい理解には達する。
 これら3つの原則は、認識論的な、そして同時に倫理的な原則であるという点に気づくことが大切です。というのも、それらは、なんと言っても寛容を合意しているからです。わたくしがあなたから学ぶことができ、そして真理探究のために学ぼうとしているとき、わたくしはあなたに対して寛容であるだけでなく、あなたを潜在的に同等なものとして承認しなければなりません。あらゆる人間が潜在的には統一をもちうるのであり同等の権利をもちうるということが、合理的に討論しようとするわれわれの心構えの前提です。われわれは、討論が合意を導かないときでさえ、討論から多くを学ぶことができるという原則もまた重要です。なぜなら討論は、われわれの立場が抱えている弱点のいくつかを理解させてくれるからです。」
 「わたくしはこの点をさらに、知識人にとっての倫理という例に即して、とりわけ、知的職業の倫理、つまり、科学者、医者、法律家、技術者、建築家、公務員、そして非常に重要なこととしては、政治家にとっての倫理という例に即して、示してみたいと思います。」(中略)「わたくしは、その倫理を以下の12の原則に基礎をおくように提案します。そしてそれらを述べて〔この講演を〕終えたいと思います。
 1.われわれの客観的な推論知は、いつでも《ひとりの》人間が修得できるところをはるかに超えている。それゆえ《いかなる権威も存在しない》。このことは専門領域の内部においてもあてはまる。
 2.《すべての誤りを避けること》は、あるいはそれ自体として回避可能な一切の誤りを避けることは、《不可能である》。」(中略)「
 3.《もちろん、可能なかぎり誤りを避けることは依然としてわれわれの課題である》。しかしながら、まさに誤りを避けるためには、誤りを避けることがいかに難しいことであるか、そして何ぴとにせよ、それに完全に成功するわけではないことをとくに明確に自覚する必要がある。」(中略)「
 4.もっともよく確証された理論のうちにさえ、誤りは潜んでいるかもしれない。」(中略)「
 5.《それゆえ、われわれは誤りに対する態度を変更しなければならない》。われわれの実際上の倫理改革が始まるのは《ここにおいて》である。」(中略)「
 6.新しい原則は、学ぶためには、また可能なかぎり誤りを避けるためには、われわれは《まさに自らの誤りから学ば》ねばならないということである。それゆえ、誤りをもみ消すことは最大の知的犯罪である。
 7.それゆえ、われわれはたえずわれわれの誤りを見張っていなければならない。われわれは、誤りを見出したなら、それを心に刻まねばならない。誤りの根本に達するために、誤りをあらゆる角度から分析しなければならない。
 8.それゆえ、自己批判的な態度と誠実さが義務となる
 9.われわれは、誤りから学ばねばならないのであるから、他者がわれわれの誤りを気づかせてくれたときには、それを受け入れること、実際、《感謝の念をもって》受け入れることを学ばねばならない。われわれが他者の誤りを明らかにするときは、われわれ自身が彼らが犯したのと同じような誤りを犯したことがあることをいつでも思い出すべきである。」(中略)「
 10.《誤りを発見し、修正するために、われわれは他の人間を必要とする(また彼らはわれわれを必要とする)ということ》、とりわけ、異なった環境のもとで異なった理念のもとで育った他の人間を必要とすることが自覚されねばならない。これはまた寛容に通じる。
 11.われわれは、自己批判が最良の批判であること、しかし《他者による批判が必要な》ことを学ばねばならない。それは自己批判と同じくらい良いものである。
 12.合理的な批判は、いつでも特定されたものでなければならない。それは、なぜ特定の言明、特定の仮説が偽と思われるのか、あるいは特定の論証が妥当でないのかについての特定された理由を述べるものでなければならない。それは客観的真理に接近するという理念によって導かれていなければならない。このような意味において、合理的な批判は非個人的なものでなければならない。」
(カール・ポパー(1902-1994),『よりよき世界を求めて』,第3部 最近のものから,第14章 寛容と知的責任,VI~VIII,pp.316-317,319-321,未来社(1995),小河原誠,蔭山泰之,(訳))

カール・ポパー(1902-1994)
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