2018年11月22日木曜日

21.意識を伴わない感覚信号の検出、精神機能、ニューロン活動が存在し、活動の持続時間が500ms以上になると意識的な機能となる。持続時間の延長には、「注意」による選択が関与しているらしい(仮説)。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))

タイム-オン(持続時間)理論

【意識を伴わない感覚信号の検出、精神機能、ニューロン活動が存在し、活動の持続時間が500ms以上になると意識的な機能となる。持続時間の延長には、「注意」による選択が関与しているらしい(仮説)。(ベンジャミン・リベット(1916-2007))】

持続時間理論(仮説)
(1)意識を伴う感覚経験を生み出すには、その感覚事象が閾値に近い場合、適切な脳活動が最低でも500ms持続していなければならない。
(2)この同じ脳活動の持続時間が、アウェアネスに必要な持続時間よりも短い場合でも、この脳活動にはアウェアネスのない無意識の精神活動を生み出す働きがある。
 (2.1)無意識の機能が現れるには、より少ない時間(100ms前後)でよい。
 (2.2)この場合、意識的な神経反応に似た、記録可能なニューロンの反応が見られる。
(3)したがって、無意識機能の適切な脳活動の持続時間を単に長くしさえすれば、意識機能に変わる。

意識的な感覚経験
 ↑
 │
事象関連電位(ERP)
 ↑500ms以上の持続時間
 │
初期誘発電位
 ↑14~50ms後。
 │
閾値に近い刺激

(4)タイム-オン(持続時間)はおそらく、無意識と意識との移行の唯一の要因というわけではなく、むしろ一つの制御因子としてみなすことができる。以下は、仮説である。
 (4.1)感覚信号が、無意識に検出される。
 (4.2)他の信号ではなく、ある信号に「注意」を集中する。
 (4.3)注意が、大脳皮質のある特定の領域を「点火」または活性化し、この興奮性のレベルの増加が、神経細胞反応の持続時間の延長を促し、アウェアネスに必要な活性化時間を継続させる。

《仮説》「注意」が選択するという仮説

意識的な感覚経験
 ↑
 │
事象関連電位(ERP)
 ↑↑500ms以上の持続時間
 │└────────────┐
初期誘発電位        「注意」
 ↑14~50ms後。       ↑
 │             │
閾値に近い刺激      能動的な自己?

 「タイム-オン(持続時間)理論
 ――脳はどのように意識と無意識の精神機能を区別しているのか?――
 意識および無意識の精神機能の最も重要な違いというのは、前者にはアウェアネスがあり、後者にはそれがないというところにあります。感覚信号のアウェアネスを「生み出す」には脳にはある程度の時間(約0.5秒間)が必要である一方、無意識の機能が現れるにはより少ない時間(100ミリ秒前後)でよいことを、私たちはこれまでに発見しています。それでは、脳の活性化の継続時間がアウェアネスを生み出すには十分でない場合、その短い時間の間に、脳は何をしていたのでしょう? 脳は沈黙しているどころか、アウェアネスを生じるのに適するほどまで継続した場合の神経反応に似た、記録可能なニューロンの反応を示しました。こうした短い時間だけ継続する連発神経細胞反応は、アウェアネスを生み出すことができません。しかし、これらの反応は感覚信号を無意識に検出するメカニズムとしての働きがあるのか、という疑問が生じます。この疑問から、無意識の精神機能が生じるのに必要な脳の活動から、意識的な精神機能が生み出されるために必要な脳の活動への移行を説明する、タイム-オン(持続時間)理論が導き出されました。
 タイム-オン理論は二つのシンプルな主張から成り立っています。
 (1) 意識を伴う感覚経験(つまり、アウェアネスを伴う意識的な感覚経験)を生み出すには、(その感覚事象が閾値に近い場合)適切な脳活動が最低でも500ミリ秒間持続していなければなりません。すなわち、そのタイム-オンまたは活動持続時間は約0.5秒間ということになります。私たちはこの特性をすでに実験的に実証しました。
 (2) したがって、この同じ脳活動の持続時間がアウェアネスに必要な持続時間よりも短い場合でも、この脳活動にはアウェアネスのない無意識の精神活動を生み出す働きがある、ということを私たちは提案しました。すると、無意識機能の適切な脳活動の持続時間(タイム-オン)を単に長くさえすれば、意識機能に変わるということになります。
 タイム-オン(持続時間)はおそらく、無意識と意識との移行の唯一の要因というわけではなく、むしろ一つの制御因子としてみなすことができるかもしれないことに私たちは気づきました。
 そうなると、アウェアネスが生じるのに十分な長さのタイム-オン(持続時間)と、十分の長さがないその他のものの違いはどこで生じるのか、という疑問を持つことでしょう。私たちはその疑問には、完全には答えられません。しかし、与えられた感覚信号へ注意を集中することが、感覚反応が意識的なものになる規定因かもしれないと考えられる十分な理由があります。脳機能がどのように、ほかの信号ではなくある信号に集中することを「決める」のかは、まだわかっていません。しかし、注意のメカニズムが大脳皮質のある領域を「点火」または活性化することができるという証拠はあります。こうした領域においての興奮性のレベルの増加が、アウェアネスに必要なタイム-オン(持続時間)を始動させる、神経細胞反応の持続時間の延長を促すのかもしれません。
 意識または無意識のどちらの精神事象にとっても「適切」な神経活動とはどのようなものであるかを、私たちは正確には知りません。しかし、適切な神経細胞活動がどのようなものであっても、こうした活動の持続時間というものが、二種類の精神事象を識別するために重要な要素であろう、というのが私の主張です。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第3章 無意識的/意識的な精神機能,岩波書店(2005),pp.117-119,下條信輔(訳))
(索引:タイム-オン(持続時間)理論)

マインド・タイム 脳と意識の時間


(出典:wikipedia
ベンジャミン・リベット(1916-2007)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「こうした結果によって、行為へと至る自発的プロセスにおける、意識を伴った意志と自由意志の役割について、従来とは異なった考え方が導き出されます。私たちが得た結果を他の自発的な行為に適用してよいなら、意識を伴った自由意志は、私たちの自由で自発的な行為を起動してはいないということになります。その代わり、意識を伴う自由意志は行為の成果や行為の実際のパフォーマンスを制御することができます。この意志によって行為を進行させたり、行為が起こらないように拒否することもできます。意志プロセスから実際に運動行為が生じるように発展させることもまた、意識を伴った意志の活発な働きである可能性があります。意識を伴った意志は、自発的なプロセスの進行を活性化し、行為を促します。このような場合においては、意識を伴った意志は受動的な観察者にはとどまらないのです。
 私たちは自発的な行為を、無意識の活動が脳によって「かきたてられて」始まるものであるとみなすことができます。すると意識を伴った意志は、これらの先行活動されたもののうち、どれが行為へとつながるものなのか、または、どれが拒否や中止をして運動行動が現れなくするべきものなのかを選びます。」
(ベンジャミン・リベット(1916-2007),『マインド・タイム』,第4章 行為を促す意図,岩波書店(2005),pp.162-163,下條信輔(訳))
(索引:)

ベンジャミン・リベット(1916-2007)
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