集中的な注意から無意識への系列
【集中的な注意,延長意識,中核意識,情動,低いレベルの注意,覚醒,精神分析的無意識,意識化されないイメージ,イメージ化以前のニューラル・パターン,ニューラル・パターン以前の獲得された傾性とその改編,生得的傾性。(アントニオ・ダマシオ(1944-))】(7)、(8)追加記載。
(1)集中的な注意
・集中的な注意は、意識が生まれてから生じる。
(2)延長意識:「わたし」という自己感を授け、過去と未来を自覚させる。
・言語、記憶、理性は、延長意識の上に成立する。
(3)中核意識:「いま」と「ここ」についての自己感を授けている。
・中核意識は、言語、記憶、理性、注意、ワーキング・メモリがなくても成立する。
・統合的、統一的な心的風景を生み出すことそのものが、意識ではない。統合的、統一的なのは、有機体の単一性の結果である。
・意識のプロセスのいくつかの側面を、脳の特定の部位やシステムの作用と関係づけることができる。
(4)情動
・意識と情動は、分離できない。
・意識に障害が起こると、情動にも障害が起こる。
(5)低いレベルの注意
・生得的な低いレベルの注意は、意識に先行して存在する。
・注意は、意識にとって必要なものだが、十分なものではない。注意と意識とは異なる。
(6)覚醒
・正常な意識がなくても、人は覚醒と注意を維持できる。
(参照: 意識に関する諸事実:(a)特定脳部位との関係付け。(b)意識、低いレベルの注意、覚醒。(c)意識と情動の非分離性。(d)中核意識、延長意識の区別。(e)中核意識の成立条件。(f)統合的な心的風景について。(アントニオ・ダマシオ(1944-))
(7)精神分析的無意識
自伝的記憶を支えている神経システムにそのルーツがある。
(8)中核意識においても延長意識においても認識されず、非意識的なままとどまっている大量のプロセスとコンテンツ。
(8.1)意識化されないイメージ
われわれが注意を向けていない、完全に形成されたすべてのイメージ。
(8.2)イメージ以前のニューラル・パターン
決してイメージにはならない全てのニューラル・パターン。
(8.3)ニューラル・パターン以前の獲得された傾性
経験をとおして獲得されるが、休眠したままで、恐らく明示的ニューラル・パターンにはならない全ての傾性。
(8.4)獲得された傾性の改編
そのような傾性の静かなる改編の全てと、それら全ての静かなる再ネットワーク化。
(8.5)生得的傾性
自然が生得的、ホメオスタシス的傾性の中に具現化した、すべての隠れたる知恵とノウハウ。
「精神分析的無意識の世界は自伝的記憶を支えている神経システムにそのあたりルーツがあり、ふつう精神分析は、自伝的記憶の中の複雑に絡み合った心理学的結びつきを調べる手段とみなされている。
しかし、必然的にその世界は、私がいま概略を述べた他の種類の結びつきとも関係している。
われわれの文化の中で言われてきた狭い意味での「無意識」は、中核意識においても延長意識においても認識されず、非意識的なままとどまっている大量のプロセスとコンテンツのうちの、ほんの一部でしかない。実際、「認識されていない」もののリストは仰天するほどである。どんなものがそれに含まれるかを考えると、
(1) われわれが注意を向けていない完全に形成されたすべてのイメージ。
(2) けっしてイメージにはならないすべてのニューラル・パターン。
(3) 経験をとおして獲得されるが、休眠したままで、おそらく明示的ニューラル・パターンにはならないすべての傾性。
(4) そのような傾性の静かなる改編のすべてと、それらすべての静かなる再ネットワーク化――たぶん明示的に認識されない。
(5) 自然が生得的、ホメオスタシス的傾性の中に具現化した、すべての隠れたる知恵とノウハウ。 われわれがいかにわずかしか認識していないかに驚かされる。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『起こっていることの感覚』(日本語名『無意識の脳 自己意識の脳』)第3部 意識の神経学、第7章 延長意識とアイデンティティ、pp.280-281、講談社(2003)、田中三彦(訳))
(索引:精神分析的無意識,意識化されないイメージ,イメージ化以前のニューラル・パターン,ニューラル・パターン以前の獲得された傾性とその改編,生得的傾性。)
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(出典:wikipedia)
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(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第4章 感情の存在理由、pp.209-210、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))
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