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2018年10月18日木曜日

「囚人のジレンマ」ゲームの多様な戦略を実装したコンピュータプログラムの総当たり戦で、最も成績が良かったのは、協力する相手に対しては協力し、裏切られたら裏切るという「しっぺ返し」戦略であった。(ロバート・アクセルロッド(1943-))

「しっぺ返し」戦略

【「囚人のジレンマ」ゲームの多様な戦略を実装したコンピュータプログラムの総当たり戦で、最も成績が良かったのは、協力する相手に対しては協力し、裏切られたら裏切るという「しっぺ返し」戦略であった。(ロバート・アクセルロッド(1943-))】

「囚人のジレンマ」ゲームの多様な戦略を実装したコンピュータプログラムの総当たり戦で、最も成績が良かったのは、「しっぺ返し」と呼ばれる次のアルゴリズムである。
(1)まず協力する(すなわち、黙秘する)。
(2)相手が前回に行なったことを、そのまま繰り返す。すなわち、
 (2.1)前回相手が協力していれば、今回も協力する(黙秘する)。
 (2.2)前回相手が裏切れば、今回は裏切る(自白する)。

(出典:personal.umich.edu
ロバート・アクセルロッド(1943-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)
ロバート・アクセルロッド(1943-)
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 「1980年代初頭、政治学者のロバート・アクセルロッドと進化生物学者のウィリアム・ハミルトンは、「囚人のジレンマ」の総当たり戦の結果を報告する、古典的な論文を発表した。参加者は人間ではなくアルゴリズム、すなわち「囚人のジレンマ」ゲームの多様な戦略を実装したコンピュータプログラムだった。もっとも単純な二つの戦略は、つねに協力する(つねに黙秘する)か、けっして協力しない(つねに自白する)というものだ。(非協力はふつう「裏切り」と呼ばれる。)アクセルロッドとハミルトンは、研究者たちに、総当たり戦に参加するプログラムの提出を呼びかけた。多くのプログラムは非常に複雑だったが、優勝したのはアナトール・ラパポートが提出した、「つねに協力する」と「けっして協力しない」と同じくらい単純な戦略を採用したプログラムだった。「しっぺ返し」と呼ばれるこのプログラムは、まず協力し(黙秘する)、その後、相手が前回に行なったことをそのままくり返す。相手が前回協力すれば協力する。協力しなかったら協力しない。だから「しっぺ返し」なのだ。近年「しっぺ返し」に辛勝するプログラムも出てきたが、これらもすべて「しっぺ返し」を変形したものだ。互恵性は非常にうまくいく。」
(ジョシュア・グリーン(19xx-),『モラル・トライブズ』,第1部 道徳の問題,第2章 道徳マシン,岩波書店(2015),(上),pp.42-43,竹田円(訳))
(索引:「しっぺ返し」戦略)

モラル・トライブズ――共存の道徳哲学へ(上)


(出典:Joshua Greene
ジョシュア・グリーン(19xx-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「あなたが宇宙を任されていて、知性と感覚を備えたあらたな種を創造しようと決意したとする。この種はこれから、地球のように資源が乏しい世界で暮らす。そこは、資源を「持てる者」に分配するのではなく「持たざる者」へ分配することによって、より多くの苦しみが取り除かれ、より多くの幸福が生み出される世界だ。あなたはあらたな生物の心の設計にとりかかる。そして、その生物が互いをどう扱うかを選択する。あなたはあらたな種の選択肢を次の三つに絞った。
 種1 ホモ・セルフィッシュス
 この生物は互いをまったく思いやらない。自分ができるだけ幸福になるためには何でもするが、他者の幸福には関心がない。ホモ・セルフィッシュスの世界はかなり悲惨で、誰も他者を信用しないし、みんなが乏しい資源をめぐってつねに争っている。
 種2 ホモ・ジャストライクアス
 この種の成員はかなり利己的ではあるが、比較的少数の特定の個体を深く気づかい、そこまでではないものの、特定の集団に属する個体も思いやる。他の条件がすべて等しければ、他者が不幸であるよりは幸福であることを好む。しかし、彼らはほとんどの場合、見ず知らずの他者のために、とくに他集団に属する他者のためには、ほとんど何もしようとはしない。愛情深い種ではあるが、彼らの愛情はとても限定的だ。多くの成員は非常に幸福だが、種全体としては、本来可能であるよりはるかに幸福ではない。それというのも、ホモ・ジャストライクアスは、資源を、自分自身と、身近な仲間のためにできるだけ溜め込む傾向があるからだ。そのためい、ホモ・ジャストライクアスの多くの成員(半数を少し下回るくらい)が、幸福になるために必要な資源を手に入れられないでいる。
 種3 ホモ・ユーティリトゥス
 この種の成員は、すべての成員の幸福を等しく尊重する。この種はこれ以上ありえないほど幸福だ。それは互いを最大限に思いやっているからだ。この種は、普遍的な愛の精神に満たされている。すなわち、ホモ・ユーティリトゥスの成員たちは、ホモ・ジャストライクアスの成員たちが自分たちの家族や親しい友人を大切にするときと同じ愛情をもって、互いを大切にしている。その結果、彼らはこの上なく幸福である。
 私が宇宙を任されたならば、普遍的な愛に満たされている幸福度の高い種、ホモ・ユーティリトゥスを選ぶだろう。」(中略)「私が言いたいのはこういうことだ。生身の人間に対して、より大きな善のために、その人が大切にしているものをほぼすべて脇に置くことを期待するのは合理的ではない。私自身、遠くでお腹をすかせている子供たちのために使った方がよいお金を、自分の子供たちのために使っている。そして、改めるつもりもない。だって、私はただの人間なのだから! しかし、私は、自分が偽善者だと自覚している人間でありたい、そして偽善者の度合いを減らそうとする人間でありたい。自分の種に固有の道徳的限界を理想的な価値観だと勘違いしている人であるよりも。」
(ジョシュア・グリーン(19xx-),『モラル・トライブズ』,第4部 道徳の断罪,第10章 正義と公正,岩波書店(2015),(下),pp.357-358,竹田円(訳))
(索引:)

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