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2018年7月11日水曜日

最初の「情動を誘発しうる刺激」の存在が、しばしば、その刺激と関連する別の「情動を誘発しうる刺激」をいくつか想起させ、当初の情動を拡大、変化、減少させ、複雑な感情の土台を作る。(アントニオ・ダマシオ(1944-))

狭義の情動、感情

【最初の「情動を誘発しうる刺激」の存在が、しばしば、その刺激と関連する別の「情動を誘発しうる刺激」をいくつか想起させ、当初の情動を拡大、変化、減少させ、複雑な感情の土台を作る。(アントニオ・ダマシオ(1944-))】
狭義の情動の身体過程 (再掲)
《身体過程》
 (a)感覚で与えられた対象や事象、あるいは想起された対象や事象を感知し、評価する。
  (場所:感覚連合皮質と高次の大脳皮質)
 (b)(a)によって、自動的に、神経的/化学的な反応の複雑な集まりが、引き起こされる。
  (場所:例えば、「恐れ」であれば、扁桃体が誘発し、前脳基底、視床下部、脳幹が実行する。)
 (c)(b)によって、身体の内部環境、内蔵、筋骨格システムの状態が一時的に変化する。
 (d)脳構造の状態も一時的に変化し、身体のマップ化や思考へも影響を与える。
 (e)特定の行動が引き起こされる。
 (f)引き起こされた(c)~(e)は、特有の身体的パターンであり、互いに区別できるこのような身体的パターンの種類がいくつか存在し、これが情動である。

「情動を誘発しうる刺激」A
   │
   ├─→Aと関連して想起された対象や事象B
   ↓  (新たな情動誘発刺激となる)
  情動a    │
         ├─→想起された対象や事象C
         ↓    ↓
        情動b  情動c
 情動aは持続、拡大したり、変化したり、減少したりする。
 これら、身体的状態のパターンである情動a、b、cと、心の内容である対象や事象の全体が、特定の「感情」の土台を構成する。

 「情動と感情のプロセスについてほどほどの説明をするというのが目的なので、これまで私はプロセスを単純化し、一つの刺激からはじまりその刺激と関係する感情の土台を確立して終わるような一本の事象の連鎖にそれをはめ込んできた。しかし予想されるように、実際にはそのプロセスは側性的に広がって並行的な事象の連鎖となり、プロセスそのものが拡大する。理由は、最初の「情動を誘発しうる刺激」の存在が、しばしば、その刺激と関連する別の「情動を誘発しうる刺激」をいくつか想起させるからだ。時間が進むにつれて、そうした付加的な刺激が、同じ情動の誘発を持続させたり、その情動の変化を誘発したり、相容れない情動を引き起こしたりする。最初の刺激に関して言えば、情動状態の継続性と強さは、ひとえに、現在進行している認知的プロセスにかかっている。つまり、心の内容は情動反応に対するさらなる誘発因を授けるか、それともそういった誘発因を除去するかのいずれかであり、帰結は、情動の維持ないしはさらなる拡大、でなければその減少である。
 情動のプロセスにはつぎの二つの道筋が関係している。一つは、情動反応に対する誘発因をもたらす心の内容の流れ。もう一つは、実行された反応そのもの、すなわち、情動を構成し最終的には感情を生み出すもの。情動の誘発からはじまり情動の実行を継続する連鎖は、適切な身体感知脳領域に感情のための土台をつくっていく。
 興味深いことに、プロセスが感情を組み立てる段階に達するころまでには、われわれは心の領域に――つまり、思考の流れに――戻っている。通常そこは情動の全面的な迂回がはじまったところだ。感情は、情動を誘発する対象や事象と同じぐらい心的である。感情を心的現象として際立たせているものは、その特別な起源と内容――本物の、あるいは身体感知脳領域にマップ化されている、有機体の身体状態――である。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第2章 欲求と情動について、pp.95-96、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))
(索引:狭義の情動)

感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ


(出典:wikipedia
アントニオ・ダマシオ(1944-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「もし社会的情動とその後の感情が存在しなかったら、たとえ他の知的能力は影響されないという非現実的な仮定を立てても、倫理的行動、宗教的信条、法、正義、政治組織といった文化的構築物は出現していなかったか、まったく別の種類の知的構築物になっていたかのいずれかだろう。が、少し付言しておきたい。私は情動と感情だけがそうした文化的構築物を出現させているなどと言おうとしているのではない。第一に、そうした文化的構築物の出現を可能にしていると思われる神経生物学的傾性には、情動と感情だけでなく、人間が複雑な自伝を構築するのを可能にしている大容量の個人的記憶、そして、感情と自己と外的事象の密接な相互関係を可能にしている延長意識のプロセスがある。第二に、倫理、宗教、法律、正義の誕生に対する単純な神経生物学的解釈にはほとんど望みがもてない。あえて言うなら、将来の解釈においては神経生物学が重要な役割を果たすだろう。しかし、こうした文化的現象を十分に理解するには、人間学、社会学、精神分析学、進化心理学などからの概念と、倫理、法律、宗教という分野における研究で得られた知見を考慮に入れる必要がある。実際、興味深い解釈を生み出す可能性がもっとも高いのは、これらすべての学問分野と神経生物学の〈双方〉から得られた統合的知識にもとづいて仮説を検証しようとする新しい種類の研究だ。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第4章 感情の存在理由、pp.209-210、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))

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情動を誘発しうる刺激(ECS)の存在に、われわれが気づいていようといなかろうと、情動は自動的に引き起こされる。(アントニオ・ダマシオ(1944-))

意識されない情動誘発刺激の効果

【情動を誘発しうる刺激(ECS)の存在に、われわれが気づいていようといなかろうと、情動は自動的に引き起こされる。(アントニオ・ダマシオ(1944-))】
狭義の情動  (再掲)
《定義》感覚で与えられた対象や事象、あるいは想起された対象や事象を感知したとき、自動的に引き起こされる身体的パターンであり、喜び、悲しみ、恐れ、怒りなどの語彙で表現される。それは、対象や事象の評価を含み、脳や身体の状態を一時的に変更することで、思考や行動に影響を与える。

(補足説明)
 (a)「想起された対象や事象」:その対象と他の対象との関係や、その対象と過去との結びつきなど、意識的な思考が行う評価であることもある。むしろ、原因的対象と自動的な情動反応との間に、特定の文化の要求と調和するような意識的な評価段階をさしはさむことは、教育的な成長の重要な目標の一つである。
 (b)「自動的に引き起こされる」:(a)にもかかわらず、そのような意識的な評価は、情動が生じるためには必要ではない。
 (c)「対象や事象の評価を含む」:意識的な評価なしに自動的に引き起こされた情動にも、その対象や事象に対する評価結果が織り込まれている。ただし、それは意識的評価をはさんだ場合とは、異なるかもしれない。
 (b')「自動的に引き起こされる」:意識的な評価どころか、情動を誘発しうる刺激(ECS)の存在に、われわれが気づいていようといなかろうと、情動は自動的に引き起こされる。

 「興味深いことに、情動を誘発しうる刺激(ECS)の存在にわれわれが気づいていようといなかろうと、正常な扁桃体はその誘発的機能を行使する。情動を誘発しうる刺激を非意識的に感知する扁桃体の能力。その証拠は、まずポール・ウェイレンの研究から得られた。彼は健常者たちにそのような刺激を素早く提示したので、健常者たちは自分たちがいま何を見ているのかまったく自覚していなかったが、脳スキャンにより、扁桃体が活性化していることが明らかになった。またアー二―・オーマンとレイモンド・ドランの最近の研究で、特定の刺激(たとえば、単なる怒りの顔ではなく、ある特別な怒りの顔)がある不快な事象と関係していることを、健常者たちがいつの間にか学習することが明らかとなっている。悪い事象と結びついている顔をこっそり提示すると、〈右の〉扁桃体が活性化される。しかし、それ以外の顔をひそかに提示してもそうはならない。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第2章 欲求と情動について、pp.91-92、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))
(索引:意識されない情動誘発刺激の効果)

感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ


(出典:wikipedia
アントニオ・ダマシオ(1944-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「もし社会的情動とその後の感情が存在しなかったら、たとえ他の知的能力は影響されないという非現実的な仮定を立てても、倫理的行動、宗教的信条、法、正義、政治組織といった文化的構築物は出現していなかったか、まったく別の種類の知的構築物になっていたかのいずれかだろう。が、少し付言しておきたい。私は情動と感情だけがそうした文化的構築物を出現させているなどと言おうとしているのではない。第一に、そうした文化的構築物の出現を可能にしていると思われる神経生物学的傾性には、情動と感情だけでなく、人間が複雑な自伝を構築するのを可能にしている大容量の個人的記憶、そして、感情と自己と外的事象の密接な相互関係を可能にしている延長意識のプロセスがある。第二に、倫理、宗教、法律、正義の誕生に対する単純な神経生物学的解釈にはほとんど望みがもてない。あえて言うなら、将来の解釈においては神経生物学が重要な役割を果たすだろう。しかし、こうした文化的現象を十分に理解するには、人間学、社会学、精神分析学、進化心理学などからの概念と、倫理、法律、宗教という分野における研究で得られた知見を考慮に入れる必要がある。実際、興味深い解釈を生み出す可能性がもっとも高いのは、これらすべての学問分野と神経生物学の〈双方〉から得られた統合的知識にもとづいて仮説を検証しようとする新しい種類の研究だ。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第4章 感情の存在理由、pp.209-210、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))

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2018年7月4日水曜日

情動の根拠には(a)生得的なもの、(b)学習されたものがある。また、情動の誘発は、(a)無意識的なもの、(b)意識的評価を経由するものがあるが、いずれも反応は自動的なものであり、誘発対象の評価が織り込まれている。(アントニオ・ダマシオ(1944-))

狭義の情動

【情動の根拠には(a)生得的なもの、(b)学習されたものがある。また、情動の誘発は、(a)無意識的なもの、(b)意識的評価を経由するものがあるが、いずれも反応は自動的なものであり、誘発対象の評価が織り込まれている。(アントニオ・ダマシオ(1944-))】

(再掲)
狭義の情動
《定義》感覚で与えられた対象や事象、あるいは想起された対象や事象を感知したとき、自動的に引き起こされる身体的パターンであり、喜び、悲しみ、恐れ、怒りなどの語彙で表現される。それは、対象や事象の評価を含み、脳や身体の状態を一時的に変更することで、思考や行動に影響を与える。

(補足説明)
 (a)「想起された対象や事象」:その対象と他の対象との関係や、その対象と過去との結びつきなど、意識的な思考が行う評価であることもある。むしろ、原因的対象と自動的な情動反応との間に、特定の文化の要求と調和するような意識的な評価段階をさしはさむことは、教育的な成長の重要な目標の一つである。
 (b)「自動的に引き起こされる」:(a)にもかかわらず、そのような意識的な評価は、情動が生じるためには必要ではない。
 (c)「対象や事象の評価を含む」:意識的な評価なしに自動的に引き起こされた情動にも、その対象や事象に対する評価結果が織り込まれている。ただし、それは意識的評価をはさんだ場合とは、異なるかもしれない。

《誘発原因》
 狭義の情動が引き起こされるとき、その情動の原因となった対象や事象を、〈情動を誘発しうる刺激〉(ECS Emotionally Competent Stimulus)という。進化の過程で獲得したものも、個人の生活の中で学習したものも存在する。

(補足説明)
 ある情動の根拠は進化の過程で獲得され、他の情動の根拠は個人の生活の中で学習される。あるときは無意識的に情動が誘発され、またあるときは意識的な評価段階を経て情動が誘発される。このような情動が、人間の発達の歴史において重要な役割を演じている。

《身体過程》
 (a)感覚で与えられた対象や事象、あるいは想起された対象や事象を感知し、評価する。
  (場所:感覚連合皮質と高次の大脳皮質)
 (b)(a)によって、自動的に、神経的/化学的な反応の複雑な集まりが、引き起こされる。
  (場所:例えば、「恐れ」であれば、扁桃体が誘発し、前脳基底、視床下部、脳幹が実行する。)
 (c)(b)によって、身体の内部環境、内蔵、筋骨格システムの状態が一時的に変化する。
 (d)脳構造の状態も一時的に変化し、身体のマップ化や思考へも影響を与える。
 (e)特定の行動が引き起こされる。
 (f)引き起こされた(c)~(e)は、特有の身体的パターンであり、互いに区別できるこのような身体的パターンの種類がいくつか存在し、これが情動である。

 「情動は、脳と心が有機体の内部環境と周辺の環境を評価し、それにしたがい適応的に反応する手段を提供する。事実、多くの場合、われわれは情動を引き起こす対象を、まさに「評価」という本来の言葉の意味で、意識的に評価している。つまり、われわれはある対象の存在を処理するだけでなく、その対象と他の対象との関係や、その対象と過去との結びつきも処理しているのだ。そういう場合には、情動の装置がありのままに評価する一方で、意識を有する心の装置が思考しながら同時に評価している。
 いや、われわれは情動反応を調節することもできる。基本的に、われわれの教育的な成長の重要な目標の一つは、原因的対象と情動反応の間に非自動的な評価段階をさしはさむことだ。われわれはそうすることで、われわれの自然な情動反応が特定の文化の要求と調和するようにしている。
 以上はまぎれもない真実だが、私がここで指摘したい点は、情動が生じるために原因的対象を、いわんやその対象があらわれる状況を意識的に評価する〈必要〉はないということ。情動はさまざまな状況で起こりうるということである。
 たとえ情動反応が、情動を誘発しうる刺激の意識的認識なしに生じても、その情動には、そのときの状況に対する有機体の評価結果があらわれている。その評価が自身に明確に認識されていないことはどうでもいい。
 人間の発達の歴史の重要な側面の一つは、われわれの脳を取り巻いているほとんどの対象が強い情動だったり弱い情動だったり、よい情動だったり悪い情動だったりと、何らかの種類の情動を誘発する力をもつようになり、意識的あるいは無意識的にそうした情動が誘発されうる、ということと関係している。このような情動誘発の中には進化によってセットされているものもあるが、そうではなく個人的経験をとおして、われわれの脳により、情動を誘発しうる対象と結びつけられるようになっているものもある。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第2章 欲求と情動について、pp.84-85、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))
(索引:狭義の情動)

感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ


(出典:wikipedia
アントニオ・ダマシオ(1944-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「もし社会的情動とその後の感情が存在しなかったら、たとえ他の知的能力は影響されないという非現実的な仮定を立てても、倫理的行動、宗教的信条、法、正義、政治組織といった文化的構築物は出現していなかったか、まったく別の種類の知的構築物になっていたかのいずれかだろう。が、少し付言しておきたい。私は情動と感情だけがそうした文化的構築物を出現させているなどと言おうとしているのではない。第一に、そうした文化的構築物の出現を可能にしていると思われる神経生物学的傾性には、情動と感情だけでなく、人間が複雑な自伝を構築するのを可能にしている大容量の個人的記憶、そして、感情と自己と外的事象の密接な相互関係を可能にしている延長意識のプロセスがある。第二に、倫理、宗教、法律、正義の誕生に対する単純な神経生物学的解釈にはほとんど望みがもてない。あえて言うなら、将来の解釈においては神経生物学が重要な役割を果たすだろう。しかし、こうした文化的現象を十分に理解するには、人間学、社会学、精神分析学、進化心理学などからの概念と、倫理、法律、宗教という分野における研究で得られた知見を考慮に入れる必要がある。実際、興味深い解釈を生み出す可能性がもっとも高いのは、これらすべての学問分野と神経生物学の〈双方〉から得られた統合的知識にもとづいて仮説を検証しようとする新しい種類の研究だ。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第4章 感情の存在理由、pp.209-210、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))

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2018年7月3日火曜日

狭義の情動とは?(アントニオ・ダマシオ(1944-))

狭義の情動

【狭義の情動とは?(アントニオ・ダマシオ(1944-))】
狭義の情動
《定義》感覚で与えられた対象や事象、あるいは想起された対象や事象を感知したとき、自動的に引き起こされる身体的パターンであり、喜び、悲しみ、恐れ、怒りなどの語彙で表現される。それは、対象や事象の評価を含み、脳や身体の状態を一時的に変更することで、思考や行動に影響を与える。
《誘発原因》
 狭義の情動が引き起こされるとき、その情動の原因となった対象や事象を、〈情動を誘発しうる刺激〉(ECS Emotionally Competent Stimulus)という。進化の過程で獲得したものも、個人の生活の中で学習したものも存在する。
《身体過程》
 (a)感覚で与えられた対象や事象、あるいは想起された対象や事象を感知し、評価する。
  (場所:感覚連合皮質と高次の大脳皮質)
 (b)(a)によって、自動的に、神経的/化学的な反応の複雑な集まりが、引き起こされる。
  (場所:例えば、「恐れ」であれば、扁桃体が誘発し、前脳基底、視床下部、脳幹が実行する。)
 (c)(b)によって、身体の内部環境、内蔵、筋骨格システムの状態が一時的に変化する。
 (d)脳構造の状態も一時的に変化し、身体のマップ化や思考へも影響を与える。
 (e)特定の行動が引き起こされる。
 (f)引き起こされた(c)~(e)は、特有の身体的パターンであり、互いに区別できるこのような身体的パターンの種類がいくつか存在し、これが情動である。

(再掲)
ホメオスタシスの一般的なプロセス
(1) 一個の有機体の内部あるいは外部の環境で、何かが変化する。
(2) その変化が、その有機体の命の方向を変える。
(3) 有機体は、そうした変化を検出し、有機体の自己保存と効率的機能にとって、最も有益な状況を生み出すように反応する。
(3.1) 有機体の内部と外部の状況を評価する。有機体は、ただ単に生きている状態ではなく、より「優れた命の状態」を目指しているように見える。すなわち、人間であれば「健康でしかも幸福である」状態を目指しているように見える。
(3.2) 反応。
(3.3) 結果として、健全性への脅威を取り除き、また、改善への好機を手に入れる。

 「さて、さまざまな種類の情動を考慮に入れながら、狭義の情動に対する作業仮説を定義という形で提示してみよう。
1 喜び、悲しみ、当惑、共感、のような狭義の情動は、ある特有の身体的パターンを形成する化学的ならびに神経的な反応の複雑な集まりである。
2 それらの反応は、正常な脳が〈情動を誘発しうる刺激〉(ECS Emotionally Competent Stimulus)――本物であれ、心の中で想起されたものであれ、その存在が情動を誘発するような対象または事象――を感知すると、その脳により生み出される。反応は自動的である。
3 いくつかの特定のECSに対しては一連のきまった作用で脳が反応するよう、進化により手はずが整えられている。ただし、ECSのリストは進化が定めたものにだけ限定されているわけではない。そのリストには、われわれが生活の中で学習した他の多くのものも含まれている。
4 これらの反応の即刻の帰結は、「狭義の身体」の一時的な状態変化、そして、身体をマップ化したり思考を支えたりしている脳構造の一時的な状態変化である。
5 これらの反応の最終的帰結は、直接的あるいは間接的に、有機体を生存と幸福に通ずる環境に置くことである。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第2章 欲求と情動について、pp.82-83、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))

 例として「恐れ」を使いながら、情動の誘発と実行のための主な段階を示している。
(1) 「情動(恐れ)を誘発しうる刺激」の評価と定義
 (感覚連合皮質と高次の大脳皮質)
(2) 誘発
 (扁桃体)
(3) 実行
 (前脳基底、視床下部、脳幹)
(4) 情動状態
 (内部環境、内蔵、筋骨格システムにおける一時的変化。特定の行動)

(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第2章 欲求と情動について、p.95、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))
(索引:恐れ、狭義の情動)

感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ


(出典:wikipedia
アントニオ・ダマシオ(1944-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「もし社会的情動とその後の感情が存在しなかったら、たとえ他の知的能力は影響されないという非現実的な仮定を立てても、倫理的行動、宗教的信条、法、正義、政治組織といった文化的構築物は出現していなかったか、まったく別の種類の知的構築物になっていたかのいずれかだろう。が、少し付言しておきたい。私は情動と感情だけがそうした文化的構築物を出現させているなどと言おうとしているのではない。第一に、そうした文化的構築物の出現を可能にしていると思われる神経生物学的傾性には、情動と感情だけでなく、人間が複雑な自伝を構築するのを可能にしている大容量の個人的記憶、そして、感情と自己と外的事象の密接な相互関係を可能にしている延長意識のプロセスがある。第二に、倫理、宗教、法律、正義の誕生に対する単純な神経生物学的解釈にはほとんど望みがもてない。あえて言うなら、将来の解釈においては神経生物学が重要な役割を果たすだろう。しかし、こうした文化的現象を十分に理解するには、人間学、社会学、精神分析学、進化心理学などからの概念と、倫理、法律、宗教という分野における研究で得られた知見を考慮に入れる必要がある。実際、興味深い解釈を生み出す可能性がもっとも高いのは、これらすべての学問分野と神経生物学の〈双方〉から得られた統合的知識にもとづいて仮説を検証しようとする新しい種類の研究だ。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第4章 感情の存在理由、pp.209-210、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))

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2018年6月24日日曜日

2次のニューラルマップとは?(アントニオ・ダマシオ(1944-))

2次のニューラルマップ

【2次のニューラルマップとは?(アントニオ・ダマシオ(1944-))】

(a) 1次のマップ
 (a1) 対象のマップ:原因的対象の変化を表象する神経構造
 (a2) 原自己のマップ:原自己の変化を表象する神経構造
(b) 2次のマップ:(a1)と(a2)の双方の時間的関係を再表象する神経構造(仮説)
 (b1) はじめの瞬間の原自己の状態(a1)が反映される。
 (b2) 感覚されている対象の状態(a2)が反映される。
 (b3) 対象によって修正された原自己の状態(a1)が反映される。
 (b4) (b1)~(b3)を時間順に記述してゆくような、神経パターンが作られる。
 (b5) (b4)から直接的、または間接的に、流れる意識のイメージが作られる。
 (b6) 対象のイメージを強調するような信号が、直接的、または間接的に(a1)に戻される。
(b)のような2次のマップが複数あり、相互に信号をやり取りしている(仮説)。

   原自己のマップ
     │
対象X の │
マップ  │
  │  ├→はじめの瞬間の
  │  │   原自己のマップ
  ├───→対象X のマップ
  │  ├→修正された
  │  │   原自己のマップ
  │  │   ↓
  │  │(2次マップの組み立て)
  │  │   ↓
  │  │(イメージ化された
  │  │   │  2次マップ)
強調された←───┘
対象X の │
マップ  │
  │  │
  ↓  ↓

(再掲)
上記の神経構造における過程から、「中核自己」が発現する様子。

(1)生命体が、ある対象に遭遇する。
(2)ある対象が、感覚的に処理される。
(3)対象からの関与が、原自己を変化させる。
(4)原初的感情が変化し、「その対象を知っているという感情」が発生する。
(5)知っているという感情が、対象に対する「重要性」を生み出し、原自己を変化させた対象へ関心/注意を向けるため、処理リソースを注ぎ込むようになる。
(6)「ある対象が、ある特定の視点から見られ、触られ、聞かれた。それは、身体に変化を引き起こし、その対象の存在が感じられた。その対象が重要とされた。」こうしたことが、起こり続けるとき、対象によって変化させられたもの、視点を持っているもの、対象を知っているもの、対象を重要だとし関心と注意を向けているもの、これらを担い所有する主人公が浮かび上がってくる。これが「中核自己」である。

対象→原自己→変調された原初的感情
↑      変調されたマスター生命体
│       │    ↓
│       │   視点
│       ↓
│     知っているという感情
│       ↓     │
└─────対象の重要性  ↓
             所有の感覚
             発動力

 「有機体が対象と相互作用することで生じる原自己の変化。その変化のストーリーを語るには、そのためのプロセス、そのための神経基盤が必要だ。ごく単純に言えば、原因的対象と原自己の変化を別々に表象する多くの神経構造のほかに、原自己と対象の双方を時間的関係で「再表象」し、そうすることでいまその有機体に実際に起きていること――「はじまりの瞬間における原自己」、「感覚的表象になる対象」、「はじまりの原自己から対象によって修正された原自己への変化」――を表象できるような別の構造が、少なくとも一つは必要だ。
 私は、人間の脳には、一次の事象を二次のニューラル・パターンとして再表象できる構造がいくつかあると思う。有機体と対象との関係についての非言語的、イメージ的説明に対する二次のニューラル・パターンは、たぶん、いくつかの「二次の」構造の間の複雑な信号のやりとりをもとにしている。どこか一つの脳部位に絶対的な二次のニューラル・パターンがある可能性は低い。
 相互作用によって二次のマップを生むそうした二次の構造の主たる特徴は、以下のごとくである。どの二次の構造も、
(1) 原自己の表象に関わっている部位からの信号、そして対象を表象しうる部位からの信号、その「双方を」軸索を介して受け取ることができなければならない。
(2) 一次のマップで生じている事象を、時間順に「記述」していくニューラル・パターンを生み出すことができなければならない。
(3) そのニューラル・パターンから生じるイメージを、直接的ないしは間接的に、われわれが思考と呼ぶイメージの流れの中にもち込むことができなければならない。
(4) 対象のイメージが強調されるよう対象を処理している構造に、直接的ないしは間接的に、信号を戻すことができなければならない。」

   原自己のマップ
     │
対象X の │
マップ  │
  │  ├→はじめの瞬間の
  │  │   原自己のマップ
  ├───→対象X のマップ
  │  ├→修正された
  │  │   原自己のマップ
  │  │   ↓
  │  │(2次マップの組み立て)
  │  │   ↓
  │  │(イメージ化された
  │  │   │  2次マップ)
強調された←───┘
対象X の │
マップ  │
  │  │
  ↓  ↓

(アントニオ・ダマシオ(1944-)『起こっていることの感覚』(日本語名『無意識の脳 自己意識の脳』)第3部 意識の神経学、第6章 中核意識の発見――無意識と意識の間、pp.223-225、講談社(2003)、田中三彦(訳))
(索引:2次のニューラルマップ)

無意識の脳 自己意識の脳


(出典:wikipedia
アントニオ・ダマシオ(1944-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「もし社会的情動とその後の感情が存在しなかったら、たとえ他の知的能力は影響されないという非現実的な仮定を立てても、倫理的行動、宗教的信条、法、正義、政治組織といった文化的構築物は出現していなかったか、まったく別の種類の知的構築物になっていたかのいずれかだろう。が、少し付言しておきたい。私は情動と感情だけがそうした文化的構築物を出現させているなどと言おうとしているのではない。第一に、そうした文化的構築物の出現を可能にしていると思われる神経生物学的傾性には、情動と感情だけでなく、人間が複雑な自伝を構築するのを可能にしている大容量の個人的記憶、そして、感情と自己と外的事象の密接な相互関係を可能にしている延長意識のプロセスがある。第二に、倫理、宗教、法律、正義の誕生に対する単純な神経生物学的解釈にはほとんど望みがもてない。あえて言うなら、将来の解釈においては神経生物学が重要な役割を果たすだろう。しかし、こうした文化的現象を十分に理解するには、人間学、社会学、精神分析学、進化心理学などからの概念と、倫理、法律、宗教という分野における研究で得られた知見を考慮に入れる必要がある。実際、興味深い解釈を生み出す可能性がもっとも高いのは、これらすべての学問分野と神経生物学の〈双方〉から得られた統合的知識にもとづいて仮説を検証しようとする新しい種類の研究だ。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第4章 感情の存在理由、pp.209-210、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))

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2018年6月15日金曜日

中核自己とは?(アントニオ・ダマシオ(1944-)

中核自己

【中核自己とは?(アントニオ・ダマシオ(1944-)】
(1)生命体が、ある対象に遭遇する。
(2)ある対象が、感覚的に処理される。
(3)対象からの関与が、原自己を変化させる。
(4)原初的感情が変化し、「その対象を知っているという感情」が発生する。
(5)知っているという感情が、対象に対する「重要性」を生み出し、原自己を変化させた対象へ関心/注意を向けるため、処理リソースを注ぎ込むようになる。
(6)「ある対象が、ある特定の視点から見られ、触られ、聞かれた。それは、身体に変化を引き起こし、その対象の存在が感じられた。その対象が重要とされた。」こうしたことが、起こり続けるとき、対象によって変化させられたもの、視点を持っているもの、対象を知っているもの、対象を重要だとし関心と注意を向けているもの、これらを担い所有する主人公が浮かび上がってくる。これが「中核自己」である。

 「私の見たところ、原自己の決定的な変化は知覚される各種の対象との瞬間ごとの関与から来るのだ。その関与は、その対象の感覚的な処理と時間的にきわめて近い範囲で生じる。生命体が対象に遭遇すると、それがどんな対象であれ、原自己はその遭遇で変化を被る。なぜなら物体をマッピングするためには、脳は身体を適切な形で調整しなくてはならないからで、さらにそうした調整の結果とマッピングされたイメージのコンテンツも原自己に信号として送られるからだ。
 原自己への変化は、瞬間的に中核自己の創出を開始させ、一連の出来事を引き起こす。その一連の中で最初の出来事は、原初的感情の変化であり、それが「その対象を知っているという感情」をもたらす。これは、その対象をその瞬間の間は他の対象と区別する感情だ。第二の出来事は、知っているという感情の結果となる。それは接触している対象に対する「重要性」を生み出す。この場合の関心/注意のためには、ある特定の対象に対して他の対象よりも処理リソースを注ぎ込まねばならない。つまり中核自己は、変化した原自己を、その変化の原因となった対象と結びつけることで生み出される。その対象は、いまや感情によって重要なものとされ、関心/注意によって拡張されることになる。
 このサイクルの終わりで、心は単純でとてもありがちな出来事のシーケンスに関するイメージを含む。その対象は、ある特定の視点から見られたり触られたり聞かれたりしたときに身体を関与させた。その関与は身体に変化を引き起こした。その対象の存在が感じられた。その対象が重要とされた。この一連のシーケンスだ。  こうしたいつまでも起こり続ける出来事の非言語的な物語は、心の中でそうした出来事が起こっている主人公がいるのだという事実を描き出す。その主人公とは物質的な自分だ。この非言語的な物語での描き方は、主人公を造って明らかにすると共に、その生命体により造り出された行動をその主人公に結びつけ、そしてその対象と関与することで生み出された感情とともに、所有の感覚を生み出すのだ。
 単純な心的プロセスに追加され、意識ある心を生み出しているのは、一連のイメージ、つまり生命体のイメージ(これは変更された原自己という代理物が提供している)、対象に関連した情動反応(つまりは感情)のイメージ、瞬間的に強調されたその原因たる対象のイメージだ。《自己が心にやってくるのは、イメージという形を取ってのことだ。そのイメージは、絶え間なくこうした関与の物語を語り続けている》。変化を受けた原自己と、知っているという感情は、ことさら強いものである必要さえない。どんな微妙な形であれ単に心の中にあって、ほのめかしより多少は強く、対象と生命体との間のつながりを提供すればいい。結局のところ、プロセスが適応性を持つためには、最も重要なのはその対象なのだから。」

 「中核自己メカニズムの模式図。中核自己状態は複合体だ。主要コンポーネントは、知っているという感情と対象の重要度となる。他の重要なコンポーネントは、視点と所有の感覚と発動力(agency)だ。」

対象→原自己→変調された原初的感情
↑      変調されたマスター生命体
│       │    ↓
│       │   視点
│       ↓
│     知っているという感情
│       ↓     │
└─────対象の重要性  ↓
             所有の感覚
             発動力


(アントニオ・ダマシオ(1944-)『自己が心にやってくる』第3部 意識を持つ、第8章 意識ある心を作る、pp.242-243,251、早川書房 (2013)、山形浩生(訳))
(索引:中核自己)

自己が心にやってくる


(出典:wikipedia
アントニオ・ダマシオ(1944-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「もし社会的情動とその後の感情が存在しなかったら、たとえ他の知的能力は影響されないという非現実的な仮定を立てても、倫理的行動、宗教的信条、法、正義、政治組織といった文化的構築物は出現していなかったか、まったく別の種類の知的構築物になっていたかのいずれかだろう。が、少し付言しておきたい。私は情動と感情だけがそうした文化的構築物を出現させているなどと言おうとしているのではない。第一に、そうした文化的構築物の出現を可能にしていると思われる神経生物学的傾性には、情動と感情だけでなく、人間が複雑な自伝を構築するのを可能にしている大容量の個人的記憶、そして、感情と自己と外的事象の密接な相互関係を可能にしている延長意識のプロセスがある。第二に、倫理、宗教、法律、正義の誕生に対する単純な神経生物学的解釈にはほとんど望みがもてない。あえて言うなら、将来の解釈においては神経生物学が重要な役割を果たすだろう。しかし、こうした文化的現象を十分に理解するには、人間学、社会学、精神分析学、進化心理学などからの概念と、倫理、法律、宗教という分野における研究で得られた知見を考慮に入れる必要がある。実際、興味深い解釈を生み出す可能性がもっとも高いのは、これらすべての学問分野と神経生物学の〈双方〉から得られた統合的知識にもとづいて仮説を検証しようとする新しい種類の研究だ。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第4章 感情の存在理由、pp.209-210、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))

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外的に向けられた感覚ポータルマップとは?(アントニオ・ダマシオ(1944-)

外的に向けられた感覚ポータルマップ

【外的に向けられた感覚ポータルマップとは?(アントニオ・ダマシオ(1944-)】
外的に向けられた感覚ポータルマップ
《知覚の種類》視覚、聴覚、嗅覚、味覚、平衡覚の〈特殊感覚〉と、マスター生命体マップの一部である目、耳、鼻、舌を収めている身体領域とその動きの知覚。
《例》視覚であれば、目を動かす眼筋、レンズや瞳孔の直径を調節する仕組み、目のまわりの筋肉、まばたきしたり、笑いを表現したりするための筋肉など。
《特徴》
(a)〈特殊感覚〉が、心の「質的」な側面を構築する。
(b)〈特殊感覚〉が、マスター生命体マップのどの身体領域から受け取っているのかを知り、身体領域を調節して視点を構築する。

 「感覚ポータルについては第4章で、感覚プローブ――ダイヤモンド――がはめこまれている補強枠の話をすることで間接的に触れた。ここではそれを自己に奉仕するものとして描こう。身体内の各種感覚ポータル――たとえば目、耳、舌、鼻を収めている身体領域――の表現は、マスター生命体マップの別個で特殊な事例だ。感覚ポータルマップがマスター生命体マップの枠組みにおさまるのは、マスター感情システムがそこにおさまるのと同じで、実際のマップの移転よりはむしろ時間的な調整によって起こるのだと思う。こうしたマップの一部がずばりどこにあるのか、というのが、いま検討したいことだ。
 感覚ポータルマップは二重の役目を果たす。まずは視点を構築すること(意識においては大きな側面となる)および心の質的な側面の構築だ。物体の認識について興味深い側面の一つは、その物体を記述する心的なコンテンツと、その知覚を行っている身体部分に対応する心的コンテンツとの間に構築される、見事な関係性だ。見るのは目で行うことは知っているが、《自分が自分の目で見ていることも感じられる》。」(中略)「視覚の場合、感覚ポータルに含まれるのは目を動かす眼筋だけでなく、レンズの大きさを調整することでモノに焦点をあわせる仕組みのすべて、瞳孔の直径を増減することで、光量を変える装置(目のカメラシャッター)、そして目のまわりの筋肉、顔をしかめたりまばたきしたり、笑いを表現したりするための筋肉などもある。目の動きやまばたきは、自分の視覚イメージの操作に重要な役割を果たすし、驚異的なことだがフィルムイメージの有効で現実味ある編集にも一役買っている。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『自己が心にやってくる』第3部 意識を持つ、第8章 意識ある心を作る、pp.234-236、早川書房 (2013)、山形浩生(訳))
(索引:感覚ポータルマップ)

自己が心にやってくる


(出典:wikipedia
アントニオ・ダマシオ(1944-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「もし社会的情動とその後の感情が存在しなかったら、たとえ他の知的能力は影響されないという非現実的な仮定を立てても、倫理的行動、宗教的信条、法、正義、政治組織といった文化的構築物は出現していなかったか、まったく別の種類の知的構築物になっていたかのいずれかだろう。が、少し付言しておきたい。私は情動と感情だけがそうした文化的構築物を出現させているなどと言おうとしているのではない。第一に、そうした文化的構築物の出現を可能にしていると思われる神経生物学的傾性には、情動と感情だけでなく、人間が複雑な自伝を構築するのを可能にしている大容量の個人的記憶、そして、感情と自己と外的事象の密接な相互関係を可能にしている延長意識のプロセスがある。第二に、倫理、宗教、法律、正義の誕生に対する単純な神経生物学的解釈にはほとんど望みがもてない。あえて言うなら、将来の解釈においては神経生物学が重要な役割を果たすだろう。しかし、こうした文化的現象を十分に理解するには、人間学、社会学、精神分析学、進化心理学などからの概念と、倫理、法律、宗教という分野における研究で得られた知見を考慮に入れる必要がある。実際、興味深い解釈を生み出す可能性がもっとも高いのは、これらすべての学問分野と神経生物学の〈双方〉から得られた統合的知識にもとづいて仮説を検証しようとする新しい種類の研究だ。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第4章 感情の存在理由、pp.209-210、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))

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2018年6月14日木曜日

マスター生命体マップとは?(アントニオ・ダマシオ(1944-)

マスター生命体マップ

【マスター生命体マップとは?(アントニオ・ダマシオ(1944-)】
マスター生命体マップ
《知覚の種類》身体の形、身体の動き。
《特徴》発達の途中で変わってゆく。
《マスター内知覚マップとマスター生命体マップの関係》
 マスター内知覚マップは、マスター生命体マップの中に収まる。ある特定の内部知覚は、マスター生命体マップの中の解剖学的図式に当てはまる領域の部分で知覚される。例として、吐き気が胃のあたりで体験される等。
 「マスター生命体マップは、全身の模式図を主要コンポーネントつき――頭、体幹、四肢――で、落ち着いた状態で記述する。身体の動きは、このマスターマップとの比較でマッピングされる。内知覚マップとはちがって、マスター生命体マップは発達の途中で劇的に変わる。というのもこのマップは骨格筋システムとその動きを描くからだ。必然的に、こうしたマップは身体の大きさが増大したり、動きの幅や質が変わったりすれば、それに応じて変わる。赤ん坊、思春期の若者、成人の各段階でそれが同じなどということは考えられない。もちろん、何らかの一時的な安定性にはやがて到達するのだが、結果としてマスター生命体マップは、原自己を構成するのに必要となる単一性の源としては理想的とは言えない。
 マスター内知覚システムは、マスター生命体模式図で作られた全般的な枠組みの中におさまらなければならない。ざっとした素描が、マスター生命体枠組みの外周部の中に、マスター内知覚システムを描き出す。片方がもう片方におさまるからといって、実際にマップが移転されるわけではないが、両方のマップが動員できるような協調は可能になる。たとえば、身体のある特定内部領域のマッピングは、マスター生命体枠組みの中で、全体的な解剖学的図式に最もあてはまる領域の部分に信号が送られる。人が吐き気を感じるとき、それが身体のある部分との関連で体験される――たとえば胃、などだ。漠然としてはいても、内知覚マップは全体としての生命体マップにおさまるように作られる。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『自己が心にやってくる』第3部 意識を持つ、第8章 意識ある心を作る、pp.233-234、早川書房 (2013)、山形浩生(訳))
(索引:マスター生命体マップ)

自己が心にやってくる


(出典:wikipedia
アントニオ・ダマシオ(1944-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「もし社会的情動とその後の感情が存在しなかったら、たとえ他の知的能力は影響されないという非現実的な仮定を立てても、倫理的行動、宗教的信条、法、正義、政治組織といった文化的構築物は出現していなかったか、まったく別の種類の知的構築物になっていたかのいずれかだろう。が、少し付言しておきたい。私は情動と感情だけがそうした文化的構築物を出現させているなどと言おうとしているのではない。第一に、そうした文化的構築物の出現を可能にしていると思われる神経生物学的傾性には、情動と感情だけでなく、人間が複雑な自伝を構築するのを可能にしている大容量の個人的記憶、そして、感情と自己と外的事象の密接な相互関係を可能にしている延長意識のプロセスがある。第二に、倫理、宗教、法律、正義の誕生に対する単純な神経生物学的解釈にはほとんど望みがもてない。あえて言うなら、将来の解釈においては神経生物学が重要な役割を果たすだろう。しかし、こうした文化的現象を十分に理解するには、人間学、社会学、精神分析学、進化心理学などからの概念と、倫理、法律、宗教という分野における研究で得られた知見を考慮に入れる必要がある。実際、興味深い解釈を生み出す可能性がもっとも高いのは、これらすべての学問分野と神経生物学の〈双方〉から得られた統合的知識にもとづいて仮説を検証しようとする新しい種類の研究だ。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第4章 感情の存在理由、pp.209-210、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))

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マスター内知覚マップとは?(アントニオ・ダマシオ(1944-)

マスター内知覚マップ

【マスター内知覚マップとは?(アントニオ・ダマシオ(1944-)】
マスター内知覚マップ
《知覚の種類》器官、組織、内臓、その他内部環境の状態に由来する知覚。
《情動》原初的な感情(最適、平常、問題あり)、痛覚、温冷、飢え、喉の渇き、快楽。
《特徴》内部状態は、ホメオスタシス機構により、変化は極めて狭い範囲でしか生じない。従って、この知覚は他の知覚と比較し、生涯を通じて安定しており、不変性の基礎を提供する。

(再掲)
(g)代謝のプロセス
《定義》
・内部の化学的作用のバランスを維持するための、化学的要素(内分泌、ホルモン分泌)と機械的要素(消化と関係する筋肉の収縮など)
《機能》
・体内に適正な血液を分配するための、心拍数や血圧の調整。
・血液中や細胞と細胞の間にある液の酸度とアルカリ度の調整。
・運動、化学酵素の生成、有機体組織の維持と再生に必要なエネルギーを供給するための、タンパク質、脂質、炭水化物の貯蔵と配備の調整。
 「これらは内部状態と内臓から出てくる内知覚信号からコンテンツを組み立てられるマップやイメージとなる。内知覚信号は中枢神経系に、生命体の状態を継続的に伝える。その状態には最適状態から平常、問題あり、といったバリエーションがあり、器官や組織の総合性が損なわれて体内で損傷が起こった場合などを告げる(ここで言っているのは侵害受容信号であり、これは痛覚感情の基盤となる)。内知覚信号は、生理的補正の必要性を報せる。これが心の中で具体化すると、飢えやのどの渇きといった感情となる。温度を伝えるあらゆる信号や、内部状態の働きについての無数のパラメータもこの分類に入る。最後に、内知覚信号は快楽状態とそれに対応する快感感情の構築に貢献する。」(中略)
 「原初的な感情は、その他のあらゆる感情に先立つものだ。それは、脳幹と相互接続されている、生きた身体だけを独自に参照している。あらゆる情動の感情は進行中の原初的感情の変種だ。物体と生命体との相互作用により生じるあらゆる感情は、継続中の原初的感情の変種だ。原初的感情とその情動的な変種は、心の中で起こる他のあらゆるイメージに伴う忠実なコーラスを生み出す。」(中略)「内知覚はいずれ自己を構成することになるもののための、一種の安定した足場を作るのに必要となる、相対的な《不変性》の源としておあつらえ向きなのだ。
 この相対的不変性の問題はきわめて重要だ。というのも自己は単一のプロセスであり、その単一性を基礎づける生物学的な可能性を突き止める必要があるからだ。」(中略)「内部状態とそれに関連する多くの内臓パラメータは、生命体の中でどんな年齢でも生涯を通じて最も不変の部分を提供するが、それはこれらが変わらないからではなく、その働きのために、その変化がきわめて狭い範囲でしか起こってはならないせいだ。骨は発達期を通じて成長するし、それを動かす筋肉も成長するが、生命が生じる化学溶液の本質――そのパラメータの平均的な範囲――は、その人が3歳だろうと、50だろうと80だろうとほぼ同じだ。また身長が60センチのときも180センチのときも、恐怖の状態や幸せの状態の生物学的な本質は、おそらくそうした状態が内部状態の化学としてどう構築されるか、そして内臓における平滑筋の収縮や延伸の度合いから見れば、ほぼまちがいなく同じままだろう。恐怖や幸福といった状態の原因――そうした状態を引き起こす考え――は生涯でかなり変わるが、そうした原因に対するその人の情動的な反応は変わらないということは指摘しておこう。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『自己が心にやってくる』第3部 意識を持つ、第8章 意識ある心を作る、pp.229-231、早川書房 (2013)、山形浩生(訳))
(索引:マスター内知覚マップ)

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(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第4章 感情の存在理由、pp.209-210、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))

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