2018年7月26日木曜日

グリアの数はニューロンの6倍にも達する。その大まかな種類は、シュワン細胞、稀突起膠細胞(オリゴデンドロサイト)、アストロサイト、小膠細胞(ミクログリア)。(R・ダグラス・フィールズ(19xx-))

グリア

【グリアの数はニューロンの6倍にも達する。その大まかな種類は、シュワン細胞、稀突起膠細胞(オリゴデンドロサイト)、アストロサイト、小膠細胞(ミクログリア)。(R・ダグラス・フィールズ(19xx-))】

 「現在のところ、神経組織にはニューロンに加えて、大きく4種類に分類されるグリアが存在することがわかっている。そのうちの2種類、すなわち末梢神経にあるシュワン細胞と、脳や脊髄に見られる稀突起膠細胞(オリゴデンドロサイト)は、軸索の周囲にミエリンという絶縁体を形成する。また脳と脊髄の全域に、アストロサイトと小膠細胞(ミクログリア)というグリアも存在する。ミクログリアは、脳を損傷や病気から保護しており、脳や脊髄が損傷から回復するうえで中心的な役割を担う。あらゆる種類のグリアがニューロン内の電気信号を感知して、それに応答している可能性を示す興味深い手がかりも見つかっている。
 その意味するところを考えてみよう。脳内の電気活動は、知覚や経験、思考、そして気分を伝える。グリア細胞は神経系で多様な機能を実行しているので、もしグリアが神経インパルスの活動を感知できるならば、広範囲にわたる脳機能がグリアの影響を受けている可能性がある。感染に対する免疫系の反応から、軸索の絶縁、脳の配線の敷設・組換えや、病気や損傷からの脳の回復に至るあらゆる機能が、グリアを介して作用するインパルス活動の影響を受けているかもしれない。
 グリアの数はニューロンの6倍にも達するが、その正確な比率は神経系の部位ごとに異なる。それはちょうど、男女の比率は平均すると1対1であるものの、その正確な割合は場所によって大きく異なるのと同じだ。たとえば、理髪店では男性10人に対して女性1人だが、手芸店ではちょうどその逆になる。末梢の神経線維沿いや脳内の白質神経路では、グリアとニューロンの比率は100対1にもなりうる。なぜなら、軸索は全長にわたって、およそ1ミリメートル感覚でミエリン形成グリアに被覆されているからだ。人の前頭皮質におけるアストロサイトとニューロンの比率は4対1だが、クジラやイルカの巨大な前脳では、ニューロン1個あたり7個のアストロサイトが存在する。」
(R・ダグラス・フィールズ(19xx-),『もうひとつの脳』,第1部 もうひとつの脳の発見,第2章 脳の中を覗く――脳を構成する細胞群,講談社(2018),pp.52-54,小松佳代子(訳),小西史朗(監訳))
(索引:シュワン細胞,稀突起膠細胞,オリゴデンドロサイト,アストロサイト,小膠細胞,ミクログリア)

もうひとつの脳 ニューロンを支配する陰の主役「グリア細胞」 (ブルーバックス)


(出典:R. Douglas Fields Home Page
R・ダグラス・フィールズ(19xx-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「アストロサイトは、脳の広大な領域を受け持っている。一個のオリゴデンドロサイトは、多数の軸索を被覆している。ミクログリアは、脳内の広い範囲を自由に動き回る。アストロサイトは一個で、10万個ものシナプスを包み込むことができる。」(中略)「グリアが利用する細胞間コミュニケーションの化学的シグナルは、広く拡散し、配線で接続されたニューロン結合を超えて働いている。こうした特徴は、点と点をつなぐニューロンのシナプス結合とは根本的に異なる、もっと大きなスケールで脳内の情報処理を制御する能力を、グリアに授けている。このような高いレベルの監督能力はおそらく、情報処理や認知にとって大きな意義を持っているのだろう。」(中略)「アストロサイトは、ニューロンのすべての活動を傍受する能力を備えている。そこには、イオン流動から、ニューロンの使用するあらゆる神経伝達物質、さらには神経修飾物質(モジュレーター)、ペプチド、ホルモンまで、神経系の機能を調節するさまざまな物質が網羅されている。グリア間の交信には、神経伝達物質だけでなく、ギャップ結合やグリア伝達物質、そして特筆すべきATPなど、いくつもの通信回線が使われている。」(中略)「アストロサイトは神経活動を感知して、ほかのアストロサイトと交信する。その一方で、オリゴデンドロサイトやミクログリア、さらには血管細胞や免疫細胞とも交信している。グリアは包括的なコミュニケーション・ネットワークの役割を担っており、それによって脳内のあらゆる種類(グリア、ホルモン、免疫、欠陥、そしてニューロン)の情報を、文字どおり連係させている。」
(R・ダグラス・フィールズ(19xx-),『もうひとつの脳』,第3部 思考と記憶におけるグリア,第16章 未来へ向けて――新たな脳,講談社(2018),pp.519-520,小松佳代子(訳),小西史朗(監訳))
(索引:)

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