2020年5月30日土曜日

13.社会的認識,思想,信念を自分たちに有利な方向に形成する方法:(a)教育,官公庁,マスコミへの影響力の活用(b)社会的距離,社会的に構築されたカテゴリーの活用(c)研究機関と宣伝,広告を活用した思想の売り込み(d)経済学を通じた影響(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-))

社会的認識,思想,信念を自分たちに有利な方向に形成する方法

【社会的認識,思想,信念を自分たちに有利な方向に形成する方法:(a)教育,官公庁,マスコミへの影響力の活用(b)社会的距離,社会的に構築されたカテゴリーの活用(c)研究機関と宣伝,広告を活用した思想の売り込み(d)経済学を通じた影響(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-))】

(3)社会的認識、思想、信念を、自分たちに有利な方向に形成する方法
 (3.1)教育、官公庁、マスコミへの影響力の活用
  もしひとつのグループが、教育の機会あるいは官公庁やマスコミへのアクセスの点できわめて不利な立場に立たされていたら、“一般通念”が生まれる審議の場に対等の立場で参加することはできない。それゆえに生まれない思想もあれば、効果的に抑制される思想もあるだろう。
 (3.2)社会的距離、社会的に構築されたカテゴリーの活用
  (3.2.1)貧しい人々を、そのままにすること
   経済的機会に恵まれず、はるかに貧しいままであれば、ほかのグループとの人的交流が限られて、異なる文化を発展させる可能性が高い。貧しいグループを特別視する思想が、ほぼ確実に根づいて長く存在しつづける。
  (3.2.2)社会的カテゴリーを使うこと
   社会的に構築されたカテゴリーが持つ力は、社会的に構築されているようには見えないことから生じている。異なるカテゴリーに入れられた人々は、異なる行動をとるようになり、ひいては本質的に異なるように見えてしまうのである。
 (3.3)政策を下支えする思想は、一切の制限なく自由に市場で売り込むことができる
  (3.3.1)研究機関の活用
   十分な財源を持っている人々にとっては、有利な思想を形成するための道具、研究所やシンクタンクを使うことができる。
  (3.3.2)宣伝と広告の活用
   製品を売り込むときにゆがめられた情報を提供しても、さらには嘘をついても、心が痛まなかった企業が多い。
 (3.4)経済学が公正や平等の理念へ及ぼした影響
  もちろん、教育も信念や認識をつくり上げるし、おそらくそれは誰より経済学者にあてはまる。経済学の訓練が認識を形成するという証拠もある。そして、経済学者がだんだんと公共政策で果たすようになった役割を考えると、経済学者が持つ、何が公正かについての認識と、平等と効率性の兼ね合いについての見解は、本来の価値からすれば不釣り合いなほどに重視されてきたのかもしれない。

 「政策についての認識のつくられ方
 いま、社会の不平等をそのまま残したいと望む人々は、そういう不平等を受け入れやすくするような認識や信念の形成をもくろんでいる。

そういう人々は、その目的を遂げるための知識も道具も資産もインセンティブも持っている。たとえ過去に社会的認識を形成しようとする試みがすでに数多くなされていたとしても、現在はその手法がますます洗練されている。たとえば、そうしようとする人々は思想や好みを形成する方法についての知識を増やしている。思想が自分に有利な方向へ進化するのをただ祈りながら座して待つ必要はないのだ。

 上位1パーセントが社会の認識を形成できるという事実は、誰も思想の進化をコントロールできないという考えかたに、重大な警告を突きつける。

コントロールのしかたはいろいろある。ひとつは、教育とマスコミを利用する方法だ。もしひとつのグループが教育の機会あるいは官公庁やマスコミへのアクセスの点できわめて不利な立場に立たされていたら、“一般通念”が生まれる審議の場に対等の立場で参加することはできない。それゆえに生まれない思想もあれば、効果的に抑制される思想もあるだろう。

 ふたつめの方法は、社会的距離を生み出す方法だ。ひとつのグループがほかのグループと比べて、経済的機会に恵まれず、はるかに貧しいままであれば、ほかのグループとの人的交流が限られて、異なる文化を発展させる可能性が高い。

その場合、貧しいグループを特別視する思想が、ほぼ確実に根づいて長く存在しつづける。“認知の枠組み”について過去の著作で触れたように、このように社会的に構築されたカテゴリーが持つ力は、社会的に構築されているようには見えないことから生じている。異なるカテゴリーに入れられた人々は異なる行動をとるようになり、ひいては本質的に異なるように見えてしまうのである。


 最も重要なのは、もし品物を市場で売ることができるのなら、思想、特に政策を下支えする思想も市場で売ることができるという点だ。現代の市場取引は、認識を形成する技と科学を教えた。そして、じゅうぶんな財源を持っている人々(富裕層)にとっては、形成するための道具も存在している。

 製品を売り込むときにゆがめられた情報を提供しても――さらには嘘をついても――心が痛まなかった企業が多い。だからこそ、煙草会社は喫煙が健康に害をもたらすという科学的な証拠に疑いを投げかけることに成功したのだ。疑いの余地はないという証拠を自分たちが持っていたにもかかわらず。

 同じように〈エクソン〉は、地球温暖化の危険にかんする科学的証拠に疑いを投げかけたシンクタンクを支援することに、良心の呵責を感じているそぶりも見せなかった。公正広告法は、企業の行動をきびしく制限しようとするが、思想と政策を売り込むときには、そういう制限はいっさいない。

すでにいくつもの例を見てきた――アメリカは他国ほど平等ではないかもしれないが、機会の平等は他国より保障されているという主張や、大不況の根本的原因は、貧しい者への住宅供給を促進しようという政府の努力にあるという主張などだが、ほかの例も見てみよう。

 もちろん、教育も信念や認識をつくり上げるし、おそらくそれは誰より経済学者にあてはまる。公正さなどについての経済学者の認識が、社会に生きるほかの人々の認識とは著しく異なっているという証拠は、いまではかなりそろっている。

シカゴ学派の経済学者リチャード・ターラーは、一般の回答者のうち82パーセントが暴風雨のあとに除雪用シャベルの値段を上げるのは不当だと思っているのに対して、自分が教えているビジネススクールの学生でそう考えている者はたった24パーセントしかいないと報告している。

それはひとつには、経済学に魅力を感じる層が、全国民のうち公正さという観念にあまり重きを置かない人々だからだとも考えられる。

しかし、経済学の訓練が認識を形成するという証拠もある。そして、経済学者がだんだんと公共政策で果たすようになった役割を考えると、経済学者が持つ、何が公正かについての認識と、平等と効率性の兼ね合いについての見解は、本来の価値からすれば不釣り合いなほどに重視されてきたのかもしれない。

 保守派は認識を形成する際の教育の重要性を認めてきた。だからこそ、学校のカリキュラム設計に積極的に影響力を行使しようとしてきたし、より“経済的に洗練された”判断を下すための、つまり、世界を保守的経済学者の狭いレンズを通して見るようにするための、“教育”プログラムの制定に乗り出したのだ。」
(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第6章 大衆の認識はどのように操作されるか,pp.240-241,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
(索引:社会的認識,思想,信念,社会的距離,社会的カテゴリー,宣伝,広告,研究機関,経済学)

世界の99%を貧困にする経済


(出典:wikipedia
ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)の命題集(Propositions of great philosophers)  「改革のターゲットは経済ルール
 21世紀のアメリカ経済は、低い賃金と高いレントを特徴として発展してきた。しかし、現在の経済に組み込まれたルールと力学は、常にあきらかなわけではない。所得の伸び悩みと不平等の拡大を氷山と考えてみよう。
 ◎海面上に見える氷山の頂点は、人々が日々経験している不平等だ。少ない給料、不充分な利益、不安な未来。
 ◎海面のすぐ下にあるのは、こういう人々の経験をつくり出す原動力だ。目には見えにくいが、きわめて重要だ。経済を構築し、不平等をつくる法と政策。そこには、不充分な税収しか得られず、長期投資を妨げ、投機と短期的な利益に報いる税制や、企業に説明責任をもたせるための規制や規則施行の手ぬるさや、子どもと労働者を支える法や政策の崩壊などがふくまれる。
 ◎氷山の基部は、現代のあらゆる経済の根底にある世界規模の大きな力だ。たとえばナノテクノロジーやグローバル化、人口動態など。これらは侮れない力だが、たとえ最大級の世界的な動向で、あきらかに経済を形づくっているものであっても、よりよい結果へ向けてつくり替えることはできる。」(中略)「多くの場合、政策立案者や運動家や世論は、氷山の目に見える頂点に対する介入ばかりに注目する。アメリカの政治システムでは、最も脆弱な層に所得を再分配し、最も強大な層の影響力を抑えようという立派な提案は、勤労所得控除の制限や経営幹部の給与の透明化などの控えめな政策に縮小されてしまう。
 さらに政策立案者のなかには、氷山の基部にある力があまりにも圧倒的で制御できないため、あらゆる介入に価値はないと断言する者もいる。グローバル化と人種的偏見、気候変動とテクノロジーは、政策では対処できない外生的な力だというわけだ。」(中略)「こうした敗北主義的な考えが出した結論では、アメリカ経済の基部にある力と闘うことはできない。
 わたしたちの意見はちがう。もし法律やルールや世界的な力に正面から立ち向かわないのなら、できることはほとんどない。本書の前提は、氷山の中央――世界的な力がどのように現われるかを決める中間的な構造――をつくり直せるということだ。
 つまり、労働法コーポレートガバナンス金融規制貿易協定体系化された差別金融政策課税などの専門知識の王国と闘うことで、わたしたちは経済の安定性と機会を最大限に増すことができる。」

  氷山の頂点
  日常的な不平等の経験
  ┌─────────────┐
  │⇒生活していくだけの給料が│
  │ 得られない仕事     │
  │⇒生活費の増大      │
  │⇒深まる不安       │
  └─────────────┘
 経済を構築するルール
 ┌─────────────────┐
 │⇒金融規制とコーポレートガバナンス│
 │⇒税制              │
 │⇒国際貿易および金融協定     │
 │⇒マクロ経済政策         │
 │⇒労働法と労働市場へのアクセス  │
 │⇒体系的な差別          │
 └─────────────────┘
世界規模の大きな力
┌───────────────────┐
│⇒テクノロジー            │
│⇒グローバル化            │
└───────────────────┘

(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『アメリカ経済のルールを書き換える』(日本語書籍名『これから始まる「新しい世界経済」の教科書』),序章 不平等な経済システムをくつがえす,pp.46-49,徳間書店(2016),桐谷知未(訳))
(索引:)

ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)
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検索(スティグリッツ)

審議会等や懇談会等については,当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程を合理的に跡付け,又は検証することができるよう,開催日時,開催場所,出席者,議題,発言者及び発言内容を記載した議事の記録を作成するものとする.(行政文書の管理に関するガイドライン)

審議会等や懇談会等の議事録

【審議会等や懇談会等については,当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程を合理的に跡付け,又は検証することができるよう,開催日時,開催場所,出席者,議題,発言者及び発言内容を記載した議事の記録を作成するものとする.(行政文書の管理に関するガイドライン)】

主権者である国民
 ↑
 │公文書等
 │↑健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源
 ││
 │適正な管理、保存
 │↑責任の明確化
 ││ 経緯も含めた意思決定に至る過程を文書化
 ││  主管局長や主管課長における経緯・過程も
 ││  複数の行政機関の間の協議は職員の役職にかかわらず
 ││  審議会等や懇談会等については、発言者及び発言内容を記載
 ││正確性の確保
 ││ 事業の実績を合理的に跡付け、検証可能な文書化
 ││
 │現在及び将来の国民に説明する責務
行政
 適正かつ効率的な運営

○ なお、審議会等や懇談会等については、法第1条の目的の達成に資するため、当該 行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び 事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、開催日時、開催場所、 出席者、議題、発言者及び発言内容を記載した議事の記録を作成するものとする。
行政文書の管理に関するガイドライン内閣府 行政文書の管理
(索引:2009_公文書等の管理に関する法律)

文書化が不要な「処理に係る事案が軽微なもの」とは、厳格かつ限定的に解される必要がある。事後確認が不要で、当該事案が政策判断や国民の権利義務に影響を及ぼすようなものでなく、職務上支障が生じないようなものである。(行政文書の管理に関するガイドライン)

処理に係る事案が軽微なもの

【文書化が不要な「処理に係る事案が軽微なもの」とは、厳格かつ限定的に解される必要がある。事後確認が不要で、当該事案が政策判断や国民の権利義務に影響を及ぼすようなものでなく、職務上支障が生じないようなものである。(行政文書の管理に関するガイドライン)】
○ 「処理に係る事案が軽微なものである場合」は、法第1条の目的を踏まえ、厳格か つ限定的に解される必要がある。すなわち、事後に確認が必要とされるものではなく、 文書を作成しなくとも職務上支障が生じず、かつ当該事案が歴史的価値を有さないよ うな場合であり、例えば、所掌事務に関する単なる照会・問い合わせに対する応答、 行政機関内部における日常的業務の連絡・打合せなどが考えられる。当該事案が政策 判断や国民の権利義務に影響を及ぼすような場合は含まれない。
行政文書の管理に関するガイドライン内閣府 行政文書の管理
(索引:2009_公文書等の管理に関する法律)

最終決定だけでなく,立案経緯,過程に応じ主管局長や主管課長における過程についても,また,複数の行政機関の間でなされた協議は,事後的に検証可能なように,"実際に協議を行った職員の役職にかかわらず"文書化が必要である.(行政文書の管理に関するガイドライン)

経緯も含めた意思決定に至る過程の文書化

【最終決定だけでなく,立案経緯,過程に応じ主管局長や主管課長における過程についても,また,複数の行政機関の間でなされた協議は,事後的に検証可能なように,"実際に協議を行った職員の役職にかかわらず"文書化が必要である.(行政文書の管理に関するガイドライン)】

主権者である国民
 ↑
 │公文書等
 │↑健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源
 ││
 │適正な管理、保存
 │↑責任の明確化
 ││ 経緯も含めた意思決定に至る過程を文書化
 ││  主管局長や主管課長における経緯・過程も
 ││  複数の行政機関の間の協議は職員の役職にかかわらず
 ││正確性の確保
 ││ 事業の実績を合理的に跡付け、検証可能な文書化
 ││
 │現在及び将来の国民に説明する責務
行政
 適正かつ効率的な運営


○ 「意思決定に関する文書作成」については、①法第4条に基づき必要な意思決定に 至る経緯・過程に関する文書が作成されるとともに、②最終的には行政機関の意思決 定の権限を有する者が文書に押印、署名又はこれらに類する行為を行うことにより、 その内容を当該行政機関の意思として決定することが必要である。このように行政機 関の意思決定に当たっては文書を作成して行うことが原則であるが、当該意思決定と 同時に文書を作成することが困難であるときは、事後に文書を作成することが必要で ある。
○ 例えば、法令の制定や閣議案件については、最終的には行政機関の長が決定するが、 その立案経緯・過程に応じ、最終的な決定内容のみならず、主管局長や主管課長にお ける経緯・過程について、文書を作成することが必要である。また、法第4条第3号 で「複数の行政機関による申合せ・・・及びその経緯」の作成義務が定められている が、各行政機関に事務を分担管理させている我が国の行政システムにおいて、行政機 関間でなされた協議を外部から事後的に検証できるようにすることが必要であるこ とから、当該申合せに関し、実際に協議を行った職員の役職にかかわらず、文書の作 成が必要である。

行政文書の管理に関するガイドライン内閣府 行政文書の管理
(索引:2009_公文書等の管理に関する法律)

行政の"適正かつ効率的な運営"のためには,"正確性の確保","責任の明確化"等の観点も重要であり,"経緯も含めた意思決定に至る過程",事業の実績を"合理的に跡付け","検証"できるように文書化する必要がある. (行政文書の管理に関するガイドライン)

文書主義の原則

【行政の"適正かつ効率的な運営"のためには,"正確性の確保","責任の明確化"等の観点も重要であり,"経緯も含めた意思決定に至る過程",事業の実績を"合理的に跡付け","検証"できるように文書化する必要がある. (行政文書の管理に関するガイドライン)】

主権者である国民
 ↑
 │公文書等
 │↑健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源
 ││
 │適正な管理、保存
 │↑責任の明確化
 ││ 経緯も含めた意思決定に至る過程を文書化
 ││正確性の確保
 ││ 事業の実績を合理的に跡付け、検証可能な文書化
 ││
 │現在及び将来の国民に説明する責務
行政
 適正かつ効率的な運営

<文書主義の原則>
○ 行政機関の意思決定及び事務事業の実績に関する文書主義については、行政機関の 諸活動における正確性の確保、責任の明確化等の観点から重要であり、行政の適正か つ効率的な運営にとって必要である。このため、法第4条に基づき、第3-1におい て、行政機関の意思決定及び事務事業の実績に関する文書主義の原則を明確にしてい る。これに基づき作成された文書は「行政文書」となる。

第3 作成
1 文書主義の原則
職員は、文書管理者の指示に従い、法第4条の規定に基づき、法第1条の目的の 達成に資するため、○○省における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに○○省 の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に 係る事案が軽微なものである場合を除き、文書を作成しなければならない。

行政文書の管理に関するガイドライン内閣府 行政文書の管理
(索引:2009_公文書等の管理に関する法律)

公文書等は,"健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源"であり,行政が"適正かつ効率的に運営され"その諸活動の"現在及び将来の国民に説明する責務"を果すため,主権者である国民が主体的に利用できるよう適正な管理,保存が必要だ.(公文書等の管理に関する法律)第1条

公文書管理法の目的

【公文書等は,"健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源"であり,行政が"適正かつ効率的に運営され"その諸活動の"現在及び将来の国民に説明する責務"を果すため,主権者である国民が主体的に利用できるよう適正な管理,保存が必要だ.(公文書等の管理に関する法律)第1条】

主権者である国民
 ↑
 │公文書等
 │↑健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源
 ││
 │適正な管理、保存
 │↑
 │現在及び将来の国民に説明する責務
行政
 適正かつ効率的な運営

第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。
公文書等の管理に関する法律
(索引:2009_公文書等の管理に関する法律)

憲法、制定法、あらゆる先例を整合的に正当化し得る原理の体系は、過誤の理論を含む。それは、ある制度的出来事に認められる特定の権威は認めるが、原理の体系の首尾一貫性から、その牽引力を否定する。(ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013))

過誤の理論

【憲法、制定法、あらゆる先例を整合的に正当化し得る原理の体系は、過誤の理論を含む。それは、ある制度的出来事に認められる特定の権威は認めるが、原理の体系の首尾一貫性から、その牽引力を否定する。(ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013))】

(3.4.3)追加。

 (3.4)憲法、制定法、あらゆる先例を整合的に正当化し得る原理の体系
  憲法、制定法、あらゆる先例を整合的に正当化し得る原理の体系は、政治哲学、道徳哲学、様々な争点に関する判断を含み、裁判官や法学者ごとに不可避的に異なり、より具体的な階層の法理論に影響を及ぼす。(ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013))
  (3.4.1)垂直的な配列関係
   (a)憲法、最高裁判所やその他の裁判所の判決、種々の立法府の制定法といった配列関係である。
   (b)憲法理論は、政治哲学や道徳哲学に関する判断を含む。
   (c)憲法理論は、制度的適合性に関する複雑な争点についての判断を要求する。
   (d)憲法理論は、裁判官によって不可避的に異なったものになる。
   (e)垂直的な配列関係の高いレベルで認められるこれらの差異は、低いレヴェルで各裁判官が提出する理論体系に相当程度の影響力を及ぼすことになろう。
  (3.4.2)水平的な配列関係
   単にあるレヴェルでの判決を正当化すると解された諸原理が、同じレヴェルでの他の判決に与えられる正当化とも矛盾すべきでないことを要請する。

  (3.4.3)過誤の理論
   (3.4.3.1)以後の論証への影響
    (a)ある制度的出来事に認められる特定の権威と、その牽引力との区別
     (i)ある制度的出来事に認められる特定の権威
      制度的出来事が、特定の制度上の帰結を結果として惹き起こす力である。
     (ii)牽引力
      今後の論証において働く、原理としての力である。
    (b)過誤とは何か
     ある制度的出来事に認められる特定の権威は認めるが、牽引力は否定されること。
     (i)この牽引性を認めることは、自らの理論における首尾一貫性と矛盾することになる。
     (ii)填め込まれた過誤
      牽引力を失っているが、特定の権威が固定され生き残っている過誤である。
     (iii)訂正しうる過誤
      それに認められた特定の権威が、牽引力消失の後では存続しえないような仕方で牽引力に依存しているような過誤である。
   (3.4.3.2)しかし、自らの理論と両立不可能な制度史のいかなる部分をも、自由に過誤と解してよいわけではない。
    続く。

 「ハーキュリーズは自己の理論を拡張して、制度史の正当化はその歴史のある部分を過誤として指摘することがある、という考えをその中に取り入れなければならない。しかし彼はこの手段を無原則に利用することはできない。なぜならば、もし彼が自分の一般理論に何ら変更を加えることなしに両立不可能な制度史のいかなる部分をも自由に過誤と解して構わないのであれば、首尾一貫性の要請はそもそも真の要請とは言えなくなるからである。そこで、彼は制度上の過誤に関して何らかの理論を発展させなければならず、しかもこの過誤の理論は二つの部分を持たねばならない。第一にこの理論は、何らかの制度的出来事が過誤とされることから、その後の論証にとってどのような帰結が生じるかを示さねばならず、第二に、このようにして処理されうる出来事の数と性格を限定しなければならない。
 ハーキュリーズはこの過誤の理論の第一の部分を、二組の区別によって構成するであろう。彼はまず、ある制度的出来事に認められる特定の権威と、その牽引力とを区別するであろう。前者は、制度的出来事が制度的行為として有する力、すなわち、当の出来事により記述された特定の制度上の帰結を結果として惹き起こす力を意味する。さて、彼が何らかの出来事を過誤として分類する場合、彼はその出来事に認められる特定の権威を否定しているのではなく、その牽引力を否定しているのである。したがって彼は首尾一貫性に違背することなく他の論証においてこの牽引力に訴えることはできない。彼はまた制度の中に填め込まれた過誤と訂正しうる過誤とを区別するであろう。填め込まれた過誤とは、その過誤に認められる特定の権威が固定され、その結果それが牽引力を失った後でも生き残るような過誤である。これに対し訂正しうる過誤とは、それに認められた特定の権威が、牽引力消失の後では存続しえないような仕方で牽引力に依存しているような過誤である。
 彼の憲法的レヴェルでの理論において、どの過誤が填め込まれた過誤かが決定されるであろう。たとえば立法府の優位に関する彼の理論は、過誤として扱われる制定法がその牽引力は失っても特定の権威は失わないことを保証するだろう。たとえ彼が航空機事故責任制限法の牽引力を否定するとしても、その制定法はそれ故に廃止されるわけでない。この過誤は填め込まれた過誤であり、したがってそれに認められた特定の権威は生き残る。彼はこの制定法が賠償責任に対して課する制限を尊重し続けなければならないが、他の事案において、賠償請求権が弱い権利であることを主張するためにこの制定法を用いたりはしないであろう。」
(ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013),『権利論』,第3章 難解な事案,5 法的権利,B コモン・ロー,木鐸社(2003),pp.151-152,木下毅(訳),野坂泰司(訳),小林公(訳))
(索引:過誤の理論,法の牽引力)

権利論


(出典:wikipedia
ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013)の命題集(Propositions of great philosophers)  「法的義務に関するこの見解を我々が受け容れ得るためには、これに先立ち多くの問題に対する解答が与えられなければならない。いかなる承認のルールも存在せず、またこれと同様の意義を有するいかなる法のテストも存在しない場合、我々はこれに対処すべく、どの原理をどの程度顧慮すべきかにつきいかにして判定を下すことができるのだろうか。ある論拠が他の論拠より有力であることを我々はいかにして決定しうるのか。もし法的義務がこの種の論証されえない判断に基礎を置くのであれば、なぜこの判断が、一方当事者に法的義務を認める判決を正当化しうるのか。義務に関するこの見解は、法律家や裁判官や一般の人々のものの観方と合致しているか。そしてまたこの見解は、道徳的義務についての我々の態度と矛盾してはいないか。また上記の分析は、法の本質に関する古典的な法理論上の難問を取り扱う際に我々の助けとなりうるだろうか。
 確かにこれらは我々が取り組まねばならぬ問題である。しかし問題の所在を指摘するだけでも、法実証主義が寄与したこと以上のものを我々に約束してくれる。法実証主義は、まさに自らの主張の故に、我々を困惑させ我々に様々な法理論の検討を促すこれら難解な事案を前にして立ち止まってしまうのである。これらの難解な事案を理解しようとするとき、実証主義者は自由裁量論へと我々を向かわせるのであるが、この理論は何の解決も与えず何も語ってはくれない。法を法準則の体系とみなす実証主義的な観方が我々の想像力に対し執拗な支配力を及ぼすのは、おそらくそのきわめて単純明快な性格によるのであろう。法準則のこのようなモデルから身を振り離すことができれば、我々は我々自身の法的実践の複雑で精緻な性格にもっと忠実なモデルを構築することができると思われる。」
(ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013),『権利論』,第1章 ルールのモデルⅠ,6 承認のルール,木鐸社(2003),pp.45-46,木下毅(訳),野坂泰司(訳),小林公(訳))

ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013)
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