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2018年7月26日木曜日

顔、首、腕、手の近くの空間に、体に向って動いて来る3次元物体の視覚刺激を受けると、顔、首、腕、手に対する触覚も同時に発生する。これは、体性感覚と視覚の両方に活性化する二重様相ニューロンが実現している。(ジャコモ・リゾラッティ(1938-))

二重様相ニューロン

【顔、首、腕、手の近くの空間に、体に向って動いて来る3次元物体の視覚刺激を受けると、顔、首、腕、手に対する触覚も同時に発生する。これは、体性感覚と視覚の両方に活性化する二重様相ニューロンが実現している。(ジャコモ・リゾラッティ(1938-))】
(a)体性感覚ニューロン
 顔、首、腕、手が、軽く触れられたり、肌を何かがかすったりするような、体の表面の触覚刺激によって活性化する。
(b)二重様相(バイモーダル)ニューロン(体性感覚-視覚ニューロン)
 (1)体性感覚面では、純粋な体性感覚ニューロンと似ている。
 (2)視覚刺激、とくに三次元の物体に反応する。ほとんどは、動いている物、とりわけ、体に向って動いてくる物に反応しやすいが、静止している物に強く反応するものも、あることはある。
 (3)視覚刺激が触覚受容野の近くに現われたときだけしか反応しない。全空間のうち、顔、首、腕、手などそれぞれの体性感覚受容野の周辺に、各固有の形や大きさ、厚み(数センチメートルから40~50センチメートル)を持った、それぞれ固有の視覚受容野が存在する。言い換えると、視覚受容野が、体性感覚受容野の拡張部分を形成している。
(c)三重様相(トリモーダル)ニューロン(体性感覚-視覚-聴覚ニューロン)

 「第1章で見たとおり、腹側前運動皮質はF5野とF4野によって形成されている。F4野は腹側前運動皮質の後側-背側部にあり、下頭頂小葉、とくに腹側頭頂間野(VIP)から強い求心性信号を受け取る。皮質内に微小な電気刺激を与える実験から、首や口、腕の動き(腕の動きは、体そのものや空間内の特定の位置に向けるもの)がF4野で表象されることがわかっている。さらに、F4ニューロンの大半は、運動行為を行っているときと、感覚刺激を受けたときの両方で活性化することが、個々のニューロンの測定からわかっている。この結果を踏まえ、こうしたニューロンは二つのグループに分類された。「体性感覚ニューロン」と「体性感覚-視覚ニューロン」で、後者は「二重様相(バイモーダル)ニューロン」とも言われる。最近では、「三重様相(トリモーダル)ニューロン」という、体性感覚と視覚と聴覚の刺激に反応するニューロンが記録されている。
 F4野の体性感覚ニューロンのほとんどは、体の表面の触覚刺激によって活性化する。軽く触れられたり、肌を何かがかすったりする感覚さえあれば、活性化するのだ。体性感覚受容野は顔や首、腕、手にある。受容野はかなり広く、何平方センチメートルにも及んでいる。
 バイモーダルニューロンは体性感覚面では、純粋な体性感覚ニューロンと似ているものの、視覚刺激、とくに三次元の物体に反応する。ほとんどは、動いている物(とりわけ、体に向って動いてくる物)に反応しやすいが、静止している物に強く反応するものも、あることはある。こうした特性に加えて、F4バイモーダルニューロンの機能面でたいへん興味深いのは、視覚刺激には刺激が触覚受容野の近くに現われたとき《だけ》しか反応しない点だ。もっと正確に言えば、視覚受容野であって、かつ体性感覚受容野の拡張部分を形成すると思われる。空間の特定部分に刺激が現れたときにしか反応しないのだ。
 図3-1に、F4ニューロンの体性感覚-視覚受容野を示してある。注意すべきは、視覚受容野は必ずそれぞれの体性感覚受容野の周辺に位置する点だ。視覚受容野の形や大きさは異なり、厚みはほんの数センチメートルから40~50センチメートルに及ぶ。このため、サルの前腕をこすったときに発火するニューロンは、実験者がサルの前腕に手を近づけて視覚受容野に入れたときにも活性化する。もしこれが信じられなければ、自分の頬に手を近づけてみるとよい。指が実際に頬に触れる前にそこに指があることを感じるだろう。まるで、頬の個人空間(つまり皮膚空間)が、頬を取り巻く視覚空間に及んでいるかのようだ。」
(ジャコモ・リゾラッティ(1938-),コラド・シニガリア(1966-),『ミラーニューロン』,第3章 周りの空間,紀伊國屋書店(2009),pp.68-69,柴田裕之(訳),茂木健一郎(監修))
(索引:二重様相ニューロン,バイモーダルニューロン)

ミラーニューロン


(出典:wikipedia
ジャコモ・リゾラッティ(1938-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「みなさんは、行為の理解はまさにその性質のゆえに、潜在的に共有される行為空間を生み出すことを覚えているだろう。それは、模倣や意図的なコミュニケーションといった、しだいに複雑化していく相互作用のかたちの基礎となり、その相互作用はますます統合が進んで複雑化するミラーニューロン系を拠り所としている。これと同様に、他者の表情や動作を知覚したものをそっくり真似て、ただちにそれを内臓運動の言語でコードする脳の力は、方法やレベルは異なっていても、私たちの行為や対人関係を具体化し方向づける、情動共有のための神経基盤を提供してくれる。ここでも、ミラーニューロン系が、関係する情動行動の複雑さと洗練の度合いに応じて、より複雑な構成と構造を獲得すると考えてよさそうだ。
 いずれにしても、こうしたメカニズムには、行為の理解に介在するものに似た、共通の機能的基盤がある。どの皮質野が関与するのであれ、運動中枢と内臓運動中枢のどちらがかかわるのであれ、どのようなタイプの「ミラーリング」が誘発されるのであれ、ミラーニューロンのメカニズムは神経レベルで理解の様相を具現化しており、概念と言語のどんなかたちによる介在にも先んじて、私たちの他者経験に実体を与えてくれる。」
(ジャコモ・リゾラッティ(1938-),コラド・シニガリア(1966-),『ミラーニューロン』,第8章 情動の共有,紀伊國屋書店(2009),pp.208-209,柴田裕之(訳),茂木健一郎(監修))
(索引:)

ジャコモ・リゾラッティ(1938-)
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