量子進化
生命が宿る原子の配列は、全くランダムな組み合わせの試行では、実現できない。しかし、可能な配列の無数の組み合わせの量子力学的な重ね合わせは、その中の生命として意味のある配列を、古典的に不可逆的な測定として生じさせたのかもしれない。(ジョンジョー・マクファデン(1956-))
「別の説明では、量子ゼノン効果および逆量子ゼノン効果の力によって量子的確率を高めるこ とが再び引き合いに出される。変異を蓄積するがらくたDNAは量子領域の中で発達し、可能 な遺伝子配列が集まったある種の量子の森を構成するだろう。前述のように、そのうちの一つ が原型酵素活性を得て周囲環境と絡まり、測定を生じさせるかもしれない。しかし、この原型 酵素は生命の起源のシナリオの場合と同様に、量子測定から無傷で出てくるだろう。だが、時 には一連の原型酵素が協調的に作用することによって細胞に新たな代謝能力を与え、量子状態 を古典レベルに不可逆的に増幅するかもしれない。
このような一連の測定が、AMPをつくるための生化学経路A→B→C→D→E→F→G→H→I→ J→K→L→Mを導いたのかもしれない。この経路にそった個々の原型酵素は量子測定を行った だろうが、それとは別に、測定から出てきた酵素は量子多宇宙の中で進化を続けただろう。だ が、一連の原型酵素がいっしょになって細胞に新たな代謝活性を与えると、そこでこの量子測 定のラインは終止する。一連の酵素の量子状態は不可逆的に収縮して古典的状態となる。次 に、いまではおなじみの古典的状態への一連の測定が行われ、逆量子ゼノン効果の力によって その状態に達する確率が増加する。この経路にそったそれぞれの酵素は、第8章の実験の偏向 レンズが行ったのと同種の量子測定の役割を果たすことができたと考えられる。光の経路に一 連のレンズを挿入することによって光子が透過する確率を高めることができたのとまったく同 じように、代謝経路に一連の酵素を挿入することによって経路全体の進化の確率が高められた のではないだろうか。
この代謝経路が重ね合わせから出てくれば、ダーウィンの自然淘汰がその後の発達を導いた だろう。こうしたダーウィンの自然淘汰による変化は、遺伝子族のメンバーが漸進的に変化す る際に、その記録を分子時計に残した。しかし、それを開始する事象、つまり経路全体の出現 や一連の酵素の発生は、それが量子多宇宙の中で起こったため、その足跡を残さなかった。こ のように、量子進化を用いればさまざまな遺伝子族の存在と複雑な代謝経路の存在の両方を理 解することができる。
ここで重要なのは、量子進化は自然淘汰にとって代わったわけではない、ということだ。そ うではなく、進化の重要な接続地点において、量子進化は自然淘汰を量子の領域に移動させる のだ。すると、ダーウィン進化が量子多宇宙の中で起こる。このようにして、低級な大腸菌細 胞さえもが自身の運命をある程度調整できるようになる。それは無生物には許されない調整で ある。このために、生物は特別なものとなる。生物は量子測定を使って方向性のある作用を行うことができ、そうした作用のひとつが量子進化なのだ。」
(ジョンジョー・マクファデン(1956)『量子進化』第12章 量子進化、pp.367-369、共 立出版(2003)、斎藤成也(監訳)、十河誠治、十河和代(訳))
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