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2022年2月28日月曜日

官僚制は支配者にとって不可欠であるだけでなく、非統治者にとっても利点がある。それは現金取引に似ており、魂がない。他面では、それらはともに単純で予測可能、そして少なくとも特定の文脈内部では、万人を多かれ少なかれ同等に扱う。また、複雑で疲弊を招くような解釈労働も不要である。(デヴィッド・グレーバー(1961-2020))

非人格的な官僚制の利点

官僚制は支配者にとって不可欠であるだけでなく、非統治者にとっても利点がある。それは現金取引に似ており、魂がない。他面では、それらはともに単純で予測可能、そして少なくとも特定の文脈内部では、万人を多かれ少なかれ同等に扱う。また、複雑で疲弊を招くような解釈労働も不要である。(デヴィッド・グレーバー(1961-2020))





(a)非人格的な官僚制的諸関係は現金取引に似ている
 官僚制的手続きの放つ魅力についてのもっともシンプルな説明は、その非人格性によるものである。 冷血で非人格的な官僚制的諸関係は、現金取引にそっくりであり、ともに似たような利点と欠 点をもっている。
(b)魂がないが予測可能で平等である
 官僚制にも現金取引にも魂がない。他面では、それらはともに単純で予測可能、そして少なくとも特定の文脈内部では、万人を多かれ少なかれ同等に扱う。官僚制は、複雑で疲弊を招くような解釈労働を、どちらの側にも求めることはない。



「二番目にありうる説明は、官僚制は支配者にとって不可欠であるだけでなく、官僚制に よって管理される者たちにとってもまごくことなき魅力がある、というものである。官僚制の 効率性についてのヴェーバーによる奇妙な称賛について、ここで同意する必要はない。官僚制 的手続きの放つ魅力についてのもっともシンプルな説明は、その非人格性によるものである。 冷血で非人格的な官僚制的諸関係は、現金取引にそっくりであり、ともに似たような利点と欠 点をもっている。一面では、それらはともに魂がない。他面では、それらはともに単純で予測 可能、そして少なくとも特定の文脈内部では、万人を多かれ少なかれ同等に扱う。いずれにせ よ、万物が魂であるような世界で暮らしたいと、だれが望むであろうか? 官僚制は、本書の 第1章でえがきだしたような、複雑で疲弊を招くような解釈労働を、どちらの側にも求めるこ とはない。あるいは、少なくとも、官僚制はそのような人間関係の可能性だけは提示している のである。たとえば、じぶんのお金をカウンターにおけば、それだけでじぶんの服装をレジ係 がどうみているか、おもいわずらう必要はないし、写真付きのIDカードを提示すれば、どうし て同性愛をテーマとした18世紀のブリテンの詩をどうしても読みたいのか説明する必要もな い。これが魅力のひとつであることは、まちがいない。実際、この問題をじっくりと考えてみ るならば、たとえわたしたちがユートピア的な共同体社会を設立しえたとしても、非人格的 (あえていえば官僚制的)制度がいっさい不要となる、などということを想像することはむず かしい。それは、まさに以上の理由からなのである。ひとつ、はっきりとした事例をあげてみ よう。どうしても必要な臓器移植のため、非人格的抽選システムや順番待ちリストにやきもき することは疎外や苦悩の種であろう。だが、比較的良好の心臓や腎臓のかぎられたプールを配 分する方法として、これ以上に非人格的ではない方法を想像することも困難なのである。」 

(デヴィッド・グレーバー(1961-2020),『官僚制のユートピア』,3 規則のユートピア、あ るいは、つまるところ、なぜわたしたちは官僚制を愛しているのか,pp.215-216,以文社 (2017),酒井隆史(訳),芳賀達彦(訳),森田和樹(訳))

官僚制のユートピア テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則 [ デヴィッド・グレーバー ]




デヴィッド・グレーバー
(1961-2020)






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