2022年2月17日木曜日

8.合意形成プロセスの本質とはただ、誰もが決定に対して平等に関わることができるべきであり、誰も自分の気にくわない決定に縛られるべきではないということである。(デヴィッド・グレーバー(1961-2020))

合意形成プロセスの本質

合意形成プロセスの本質とはただ、誰もが決定に対して平等に関わることができるべきであり、誰も自分の気にくわない決定に縛られるべきではないということである。(デヴィッド・グレーバー(1961-2020))


合意形成4つの原則
 (a)誰であれ、提案について発言すべきことがあると思えば、その意見は丁寧に検討されなければならない。
 (b)誰であれ、強い不安や意義があれば、その不安や意義は勘案され、できる限り最終的な提案に盛り込まれなければならない。
 (c)誰であれ、提案が集団で共有されている基本原則を侵害していると思えば、それに対して拒否権を行使する機会が与えられなければならない。
 (d)誰であれ、同意していない決定に従うよう強制されてはならない。



「合意形成プロセスの本質とはただ、誰もが決定に対して平等に関わることができるべきであり、誰も自分の気にくわない決定に縛られるべきではないということである。

実践的にいえ ば、これは4つの原則に要約できるだろう。
 ・誰であれ、提案について発言すべきことがあると思えば、その意見は丁寧に検討されなければならない。
 ・誰であれ、強い不安や異議があれば、その不安や異議は勘案され、できる限り最終的な提案に盛り込まれなければならない。
 ・誰であれ、提案が集団で共有されている基本原則を侵害していると思えば、それに対して拒否権を行使(「ブロック」)する機会が与えられなければならない。
 ・誰であれ、同意していない決定に従うよう強制されてはならない。

   長年にわたってさまざまな集団や個人が、これらの目的を達成しようと形式的な合意形成プ ロセスの制度を発展させてきた。これはいくつかの異なった形態をとりうる。

しかし、形式的 なプロセスは必ずしも必要というわけではない。それが役に立つこともあれば、役に立たない こともある。

集団が小規模であればあるほど、形式的な手順は一切なしに運営できるように なっていく。実際、この4つの原則の精神に基づいて意思決定を試みる方法には尽きることの ない多様性がある。」
 (デヴィッド・グレーバー(1961-2020),『デモクラシー・プロジェクト』,第IV章 変革の方 法,pp.249-250,航思社(2015),木下ちがや(訳),江上賢一郎(訳),原民樹(訳))


デヴィッド・グレーバー
(1961-2020)






7.圧倒的な富の不平等や奴隷制、債務労働、賃労働のような社会的諸制度は、軍隊と監獄、警察による支えがある場合のみ存在し得ることが、歴史的に明らかにされてきた。暴力の脅威で絶えず強制されることなく、人々が平等性と連帯に基づいて自由に結合するような社会は可能だろうか。(デヴィッド・グレーバー(1961-2020))

真に自由な社会

圧倒的な富の不平等や奴隷制、債務労働、賃労働のような社会的諸制度は、軍隊と監獄、警察による支えがある場合のみ存在し得ることが、歴史的に明らかにされてきた。暴力の脅威で絶えず強制されることなく、人々が平等性と連帯に基づいて自由に結合するような社会は可能だろうか。(デヴィッド・グレーバー(1961-2020))


(a)真に自由な社会
 真に自由な社会とは、暴力の脅威で絶えず強制されることなく、人々が平等性と連帯に基づいて自由 に結合し、生きる価値の見出せる未来社会像や計画、構想を絶えずさまざまに追求していくような社会である。
(b)債務労働、賃労働の基礎としての軍隊、監獄、警察
 圧倒的な富の不平等や奴隷制、債務労働、賃労働のような社会的諸制度は、軍隊と監獄、警察による支えがある場合にのみ存在しうるということが歴史的に明らかにされてきた。
(c)構造的不平等の基礎としての力の脅威
 人種主義や性差別主義といったもっと根深い構造的不平等でさえ、究極的にはより巧妙かつ狡猾な力の脅威に基礎づけられている。




「どちらの文脈でも、一言でいえばアナキズムとは真に自由な社会の実現をめざす政治的運 動であり、「自由な社会」とは暴力の脅威で絶えず強制されることなく人々がお互いに民主主 義的な関係を取り結ぶことで初めて生まれるのである。

圧倒的な富の不平等や奴隷制、債務労 働、賃労働のような社会的諸制度は、軍隊と監獄、警察による支えがある場合にのみ存在しう るということが歴史的に明らかにされてきた。人種主義や性差別主義といったもっと根深い構 造的不平等でさえ、究極的にはより巧妙かつ狡猾な力の脅威に基礎づけられている。

したがっ て、アナキストが思い描くのは平等性と連帯に基づいた世界であり、そこでは人間同士が自由 に結合し、生きる価値の見出せる未来社会像や計画、構想を絶えずさまざまに追求していくの である。

アナキズム的社会に存在しうる組織とはどのようなものかと問われたら、僕はいつも こう答えている。

人間が想像しうるあらゆる形態の組織、そしてその多くは現在のわれわれに は想像もできないような組織だろうが、たったひとつだけ条件がある――いかなる場合でも武装 した男を頼みにして「お前の話などどうでもいい、黙って言われたとおりにしろ」という権限 をもつ人間を必要とせずに成立しうる組織であることだ。  

こうした意味合いにおいては、アナキストはいつでも存在してきたのだ。

ある人々の集団が かれらを抑圧する権力あるいは支配のシステムに直面し、それに激しく反対するなかから、ど んな権力や支配にも縛られずにお互いを扱う方法を想像しはじめるところでは、つねに数多く のアナキストを見いだすことができる。」
(デヴィッド・グレーバー(1961-2020),『デモクラシー・プロジェクト』,第III章 「群衆 は知性と理性を手に入れはじめる」,pp.222-223,航思社(2015),木下ちがや(訳),江上賢一 郎(訳),原民樹(訳)


デヴィッド・グレーバー
(1961-2020)






6.多くの夢を砕き、別の未来の可能性への感性、想像力、欲望、個人の自由を抑え込むよう設計された絶望装置は、今あるシステムの改善、革新能力を失っていく。実際、過去の経済的革新の多くは、政治的なものだった。非正規雇用、労働組合の破壊、労働の非政治化、長時間労働等々。(デヴィッド・グレーバー(1961-2020))

感性、想像力、自由の抑圧がもたらすもの

多くの夢を砕き、別の未来の可能性への感性、想像力、欲望、個人の自由を抑え込むよう設計された絶望装置は、今あるシステムの改善、革新能力を失っていく。実際、過去の経済的革新の多くは、政治的なものだった。非正規雇用、労働組合の破壊、労働の非政治化、長時間労働等々。(デヴィッド・グレーバー(1961-2020))



(a)想像力、欲望、個人の自由の封じ込め
 想像力、欲望、個人の自由といった、過去の偉大な世界革命において解放された一切は、消費主義のなかに、あるいはインターネットの仮想現実のなかに確実に封じ込められなければならなかった。
(b)別の未来の可能性への感性の抑圧
 多くの夢を砕き、別の未来の可能性へのあらゆる感性を抑え込むよう設計された絶望装置は、今ある資本主義が唯一実行可能な経済システムであると思わせる。その結果、我々は資本主義システムが崩壊していくのを目の当たりにするという奇妙な状況に置かれることとなった。

(c)非正規雇用、労働組合の破壊、労働の非政治化、長時間労働
 過去30年間の経済的革新の多くは、経済的というよりも政治的なものだった。終身雇用を打ち切って非正規雇用にすることは、より効率的な労働力を現実的に生み出すことは ないが、そのかわり組合の破壊や労働の非政治化を驚くほど効率的に成し遂げる。とどまることのない労働時間の増加についてもそうだ。週60時間の労働をしていれば、誰も政治活動などできない。


「実際に、過去30年間の経済的革新の多くは、経済的というよりも政治的なものだった。

終 身雇用を打ち切って非正規雇用にすることは、より効率的な労働力を現実的に生み出すことは ないが、そのかわり組合の破壊や労働の非政治化を驚くほど効率的に成し遂げる。

とどまるこ とのない労働時間の増加についてもそうだ。週60時間の労働をしていれば、誰も政治活動など できない。

いつも思うのは、資本主義が唯一実行可能な経済システムであると思わせる選択肢 と、資本主義をより発展可能な経済システムにする選択肢のどちらかを選ぶ場合、新自由主義はつねに前者を選択するということだ。

その複合的帰結は、人間の想像力に対する容赦ない攻撃である。厳密にいえば想像力、欲望、個人の自由といった、過去の偉大な世界革命において解放された一切は、消費主義のなかに、あるいはインターネットの仮想現実のなかに確実に封じ込められなければならなかった。他のすべての領域ではそれらは厳しく禁じられなければならない。

われわれは多くの夢を砕き、別の未来の可能性へのあらゆる感性を抑え込むよう設計された絶望装置の押しつけについて語っている。

だが、人々の試みの一切を政治的な檻のなかに事実上押し込めた結果、われわれは資本主義システムが崩壊していくのを目の当たりにするという奇妙な状況に置かれることとなり、結局のところそれとともに、誰もが別のいかなるシステムも実現不可能だという判断を下してしまったのだ。

        *  おそらくこれが、僕が第II章で指摘した、表面上は政治的に分裂している両サイドの支配階 級が、自らの権力によってつくりだせるもの以外に現実はないと信じ込むようになった世界に ついて、われわれが予期しうることのすべてである。

バブル経済は、政治システムを作動させ ている統治原理を買収するとともに、システム内部で現実そのものの原理を操作する一つの政 治プログラムから生じる。

まるでこの戦略が、ありとあらゆるものを消費してしまったかのよ うである。  

だがこのことは、常識レベルでのあらゆる革命が、目下の権力に対して破壊的な効果がある ことを意味している。

支配者はこうした想像力の爆発を夢想だにさせないことに一切に賭けて いる。

もしかれらがこの賭けに負ければその影響は(かれらには)計り知れないものになるだ ろう。」
 (デヴィッド・グレーバー(1961-2020),『デモクラシー・プロジェクト』,第V章 呪文を解 く,pp.326-328,航思社(2015),木下ちがや(訳),江上賢一郎(訳),原民樹(訳))


デヴィッド・グレーバー
(1961-2020)






5.ある政府、社会運動、ゲリラ軍、その他の組織的グループを非難もしくは支持に値するかを判断しようとするときに、まずこう質問する。彼らは、レイプ、拷問、殺人といった行為に関与しているか、もしくは関与することを他の人間に命令しているか。人権侵害という言葉が事態を曖昧にする場合がある。(デヴィッド・グレーバー(1961-2020))

レイプ、拷問、殺人テスト

ある政府、社会運動、ゲリラ軍、その他の組織的グループを非難もしくは支持に値するかを判断しようとするときに、まずこう質問する。彼らは、レイプ、拷問、殺人といった行為に関与しているか、もしくは関与することを他の人間に命令しているか。人権侵害という言葉が事態を曖昧にする場合がある。(デヴィッド・グレーバー(1961-2020))




「「人権侵害」という言葉について考えてみよう。表面的にはこの言葉が何かを覆い隠し ていそうには見えない。

では、正気の人間が人権侵害を支持するだろうか。誰も支持しないの は明らかだ。

だが、不同意にも程度があって、この場合でいうと、たいてい人権侵害といわれ る事態を別の言葉で考えてみればその違いが明らかになる。  以下の文章を比較してみよう。

・「私は、自分たちの生死がかかった戦略命令を遂行するためなら、人権侵害を行う政権に対応し、場合によっては支持することすら必要であると考えている」

・「私は、自分たちの生死がかかった戦略命令を遂行するためなら、レイプ、拷問、殺人を行う政権に対応し、場合によっては支持することすら必要であると考えている」

この二番目の事例は確実に受け入れられない。これを耳にしたら、誰もが「この戦略命令は 本当に死活的なものなのか」、あるいは「そもそも戦略命令とは何か」と問いたくなるだろ う。

ここには、「権利」という言葉についてのかすかな据わりの悪さが込められている。

ほと んど「資格」に近く、まるで怒れる拷問の犠牲者たちが、自分たちの処遇に不満を言い、何か を要求しているかのようである。  

僕としては、この「レイプ、拷問、殺人」テストと呼ぶものがとても有効なことがわかっ た。これはごく簡単なものだ。

ある政府であれ、社会運動であれ、ゲリラ軍であれ、あるいは 他の組織的グループであれ、何らかの政治的実体が出現し、それを非難もしくは支持に値する かを判断しようとするときに、まずこう質問するのだ。「かれらは、レイプ、拷問、殺人と いった行為に関与しているか、もしくは関与することを他の人間に命令しているか」。

これは 自明の問いのようにも思えるが、でもこうした問いは驚くほど稀にしか発せられない――問われ たとしても、せいぜいのところ恣意的にしかなされないのだ。

あるいは、このような問いを立 ててみると、世界政治の多くの問題について一般に広く受け入れられている見解がただちに覆 されることに気づいて、驚くだろう。」

 (デヴィッド・グレーバー(1961-2020),『デモクラシー・プロジェクト』,第II章 なぜうま くいったのか,pp.140-141,航思社(2015),木下ちがや(訳),江上賢一郎(訳),原民樹(訳)) 


デヴィッド・グレーバー
(1961-2020)






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