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2022年4月22日金曜日

感情の共同体とは、家族、隣人、議会、ギルド、修道院、教区教会の構成員などであり、感情の表現、評価、統制に関して、同じ社会の中にも、異なる共同体の間に互いに競合する予測や規則が存在する。感情表現において、予期され、推奨され、許容され、非難される様式は、 それぞれ異なる。(バーバラ・H・ローゼンワイン(1945-))

感情の共同体

感情の共同体とは、家族、隣人、議会、ギルド、修道院、教区教会の構成員などであり、感情の表現、評価、統制に関して、同じ社会の中にも、異なる共同体の間に互いに競合する予測や規則が存在する。感情表現において、予期され、推奨され、許容され、非難される様式は、 それぞれ異なる。(バーバラ・H・ローゼンワイン(1945-))






「スーザン・マットは、「同じ社会の中にも互いに競合する予測や規則が存在すると提唱する」 歴史家について語った。ここでマットの念頭にあったのは間違いなく、バーバラ・H・ローゼンワインの ことである。二〇〇二年、この頃の感情史研究を評価した論文において、ローゼンワインは「感情の 共同体 (emotional communities)」を研究するよう提唱した。曰く
 『感情の共同体は、家族、隣人、議会、ギルド、修道院、教区教会の構成員などの社会共同体と全 く同じである。しかし、感情の共同体に着目する研究者は、とりわけ感じ方のシステムを解明す ることを目指すのである。具体的に言えば、これらの共同体(およびその個々の成員)において、ど んな感情が有益もしくは有害であると定義され評価されるのか。他者の感情はどのように評価さ れるのか。人と人とのあいだにあると認識される情動のつながりは、どのような性質なのか。感 情表現において、予期される様式、推奨される様式、許容される様式、そして非難される様式は、 それぞれどのようなものか。』
(バーバラ・H・ローゼンワイン(1945-),リッカルド・クリスティアーニ,『感情史とは何か』,2 アプローチ,感情の共同体,pp.61-62,伊東剛史(訳),森田直子(訳), 小田原琳(訳), 舘葉月(訳))

感情史とは何か [ バーバラ・H.ローゼンワイン ]



感情体制とは、規範的感情の一式と、 それを表現し、人々に教え込む公的な儀礼、実践およびエモーティヴのことであり、感情統制は権力行使そのものである。支配的な感情規範は、本来なら自己探求的で自己変容的、創造的なエモーティヴを抑圧し、感情の避難所を創出してしまう。(ウィリアム・M・レディ(1947-))

感情体制とエモーティヴ

感情体制とは、規範的感情の一式と、 それを表現し、人々に教え込む公的な儀礼、実践およびエモーティヴのことであり、感情統制は権力行使そのものである。支配的な感情規範は、本来なら自己探求的で自己変容的、創造的なエモーティヴを抑圧し、感情の避難所を創出してしまう。(ウィリアム・M・レディ(1947-))

















(a)感情体制
 エモー ティヴは、感情体制の支配下にある。感情体制とは、「規範的感情の一式と、 それを表現し、人々に教え込む公的な儀礼、実践およびエモーティヴ」のことである。
 (i)規範的感情の一式
 (ii)支配的な感情規範
  感情を表現し、人々に教え込む公的な儀礼、実践
 (iii)エモーティヴ

(b)感情コントロールとしての権力行使
 「感情のコントロールは、権力行使の現場である。 所与の文脈や関係性のもとに立ち現れた気持ちや欲望を、不当なものとして抑圧したり、価値あるものとして重視したりする責務を負うのは誰なのか。政治とはまさに、この誰かを決める過程である」。

(c)エモーティヴの自己変容効果
 どのような感情も、「短時間のうちには注意が翻訳することのできない」ものであり、表現された感 情は人を常に自己 探求へと導くかもしれない。
(d)支配的な感情規範からの「感情の避難所」
 感情体制は、ほぼその定義 ゆえに、エモーティヴが潜在的可能性を十全に発揮することを許さないため、感情の避難所、すなわち「支配的な感情規範から人を安全に解放し、感情的努力を軽減する(...)また、既存の感情体制を補 助したり脅かしたりする可能性のある、(...)関係、作法、もしくは組織」を創出する。 
(e)統制的な感情体制と感情の避難所
 感情体制があまりにも統制的であり、エモーティヴの自己変容効果を妨害し、人々が目標を変化させることを妨げ ると仮定しよう。すると、感情体制は人々に感情的苦痛をもたらすばかりでなく、感情体制に損失を与えうる感情の避難所を生み出すのである。




「愛は感情の一つである。しかし、愛は一つに定まらない。同じことが、どの感情についても言える。 どのような感情も、「短時間のうちには注意が翻訳することのできない」ものである。表現された感 情は、そのすべてがエモーティヴである。このような仕組みによって、エモーティヴは人を常に自己 探求へと導くかもしれない。しかし、エモーティヴは他から切り離されているわけではない。 エモー ティヴは、「感情体制」の支配下にあるからである。 ここで「感情体制」とは、「規範的感情の一式と、 それを表現し、人々に教え込む公的な儀礼、実践およびエモーティヴ」のことである。レディはさら に詳しく説明する。 「感情のコントロールは、権力行使の現場である。 所与の文脈や関係性のもとに 立ち現れた気持ちや欲望を、不当なものとして抑圧したり、価値あるものとして重視したりする責務を負うのは誰なのか。政治とはまさに、この誰かを決める過程である」。 感情体制は、ほぼその定義 ゆえに、エモーティヴが潜在的可能性を十全に発揮することを許さないため、感情の避難所、すなわ ち「支配的な感情規範から人を安全に解放し、感情的努力を軽減する・・・・・・また、既存の感情体制を補 助したり脅かしたりする可能性のある、・・・関係、作法、もしくは組織」を創出する。 感情体制があ まりにも統制的であり、エモーティヴの自己変容効果を妨害し、人々が目標を変化させることを妨げ ると仮定しよう。すると、感情体制は人々に感情的苦痛をもたらすばかりでなく、感情体制に損失を 与えうる感情の避難所を生み出すのである。」
(バーバラ・H・ローゼンワイン(1945-),リッカルド・クリスティアーニ,『感情史とは何か』,2 アプローチ,エモーショノロジー,pp.57-58,伊東剛史(訳),森田直子(訳), 小田原琳(訳), 舘葉月(訳))

感情史とは何か [ バーバラ・H.ローゼンワイン ]



ある社会やその内部の特定の集団が、基本感情とその適切な表現に対して 保持する態度や基準をエモーショノロジーという。こうした態度や基準は、諸制度に反映され、促進される。(ピーター・スターンズ(1936-))

エモーショノロジー

ある社会やその内部の特定の集団が、基本感情とその適切な表現に対して 保持する態度や基準をエモーショノロジーという。こうした態度や基準は、諸制度に反映され、促進される。(ピーター・スターンズ(1936-))



















(a)基本感情は普遍的であり、変化することはな い。(ポール・エクマン(1934-))
(b)感情は「管理される」ものである。(アーリ ・ホックシールド(1940-))
(c)基本感情が変化を被らなかったとしても、人が感情をどこでどのように表現するべきかに関する基準は急速に変化してきた。
(d)エモーショノロジー(ピーター・スターンズ(1936-))
 ある社会やその内部の特定の集団が、基本感情とその適切な表現に対して 保持する態度や基準。こうした態度や基準は、諸制度に反映され、促進される。
 (i)求愛行為には、婚姻関係において情動がどのように評価されるのかが、反映されている。
 (ii)社員研修には、 職務上の人間関係において怒ることがどう評価されるのかが、反映されている。



「『エモーショノロジー:ある社会やその内部の特定の集団が、基本感情とその適切な表現に対して 保持する態度や基準。人間の行動におけるこうした態度を諸制度が反映し促進する流儀。 例えば、 求愛行為は婚姻関係において情動がどのように評価されるのかを表している。 社員研修には、 職 務上の人間関係において怒ることがどう評価されるのかが反映される。』
 この定義が示すように、 スターンズ夫妻は基本感情の概念を受容している。一九七〇年代に心理学者 ポール・エクマンとその他の研究者が規定したように、基本感情は普遍的であり、変化することはな い。しかし、スターンズ夫妻は普遍主義の観点と社会構築主義的な立場とを調和させる方法を見つけ た。生物学と社会とのあいだに不一致を見出すのではなく、彼らから見て生物学的なるもの、すなわ ち基本感情を、社会的なるものから注意深く切り離したのである。基本感情が変化を被らなかったと しても、人が感情をどこでどのように表現するべきかに関する基準は急速に変化してきた。 アーリ ・ホックシールドが示したように、感情は「管理される」ものであった。スターンズ夫妻は、感情 を管理する過去の慣習を発見する方法として、エモーショノロジーを提唱したのである。」
(バーバラ・H・ローゼンワイン(1945-),リッカルド・クリスティアーニ,『感情史とは何か』,2 アプローチ,エモーショノロジー,p.48,伊東剛史(訳),森田直子(訳), 小田原琳(訳), 舘葉月(訳))

感情史とは何か [ バーバラ・H.ローゼンワイン ]

 


2022年4月20日水曜日

短時間のうちには注意が翻訳することのできない思考材料を、ある目的や目標のために感情的な発話行為へと翻訳し、この思考材料を活性化させる。この発話行為が、エモーティヴである。エモーティヴは感情に関する活性化した思考材料に対して、説明を付与する効果と、自ら変化する効果を持つ。(ウィリアム・M・レディ(1947-))

エモーティヴ

短時間のうちには注意が翻訳することのできない思考材料を、ある目的や目標のために感情的な発話行為へと翻訳し、この思考材料を活性化させる。この発話行為が、エモーティヴである。エモーティヴは感情に関する活性化した思考材料に対して、説明を付与する効果と、自ら変化する効果を持つ。(ウィリアム・M・レディ(1947-))


















(a)思考材料
 短時間のうちには注意が翻訳することのできない思考材料が現れる。ここには、何らかの事実が起こっている。私たちが誰かを愛するのは「事実」である。
(b)概念化
 思考材料は、概念化されている。(心理学的構築論)
(c)目的や目標
 感情とは、ある目的や目標のために、思考材料を活性化させることである。(認知科学)
(d)エモーティヴ
「あなたを愛している」という発言は、思考材料が感情的な発話行為へと「翻訳され」活性化された結果である。私たちはそのように発言するとき、「あなたを愛している」と言うことでかろうじて表現される、様々な気持ちをそのもの全体として抱いている。
(e) エモーティヴの効果
 エモーティヴは感情的状態を描写し、エモーティヴは対象を変容させ、そしてエモーティヴはその発言 をした人に様々な気持ちを呼び起こすのである。 エモーティヴは「感情に関する活性化した思考材料に対して、説明を付与する効果と、自ら変化する効果を持つ」。
(f)エモーティヴの誠実、不誠実
 エモーティヴは、それと合致する目標 が一つだという点で誠実である。しかし、人は一つ以上の目標を持つ故に、同一のエモーティヴが競 合する目標と関連づけられる点において、 エモーティヴは不誠実である。



「レディは「感情」を次のように定義する。「短時間のうちには注意が翻訳することのできない思考 材料を、目標のために活性化させることである」。この定義の特徴の一部は、よく知られている。認 知科学者は目的や目標について論じており、レディの「思考材料」への言及は、感情の定義に関して レディが、認知科学者と同じ陣営に立ったことを意味した。 感情は脳によって生成された「概念化さ れたもの」の一つであると考える心理学的構築論者とも、同じ陣営である。 しかし、認知されたものを 「短時間のうちには注意が翻訳することはできない」という考え方は、情動理論の一側面に準拠し ており、これが「エモーティヴ」という仮説を導いた。「あなたを愛している」という発言を考えて みよう。 レディにとって、この発言は、思考材料が感情的な発話行為へと「翻訳され」活性化され た結果である。事実、私たちはそのように発言するとき、「あなたを愛している」と言うことでかろ うじて表現される、様々な気持ちをそのもの全体として抱いている。しかし、その気持ちすべてに注 意を向けることができないため(なぜならそれらの気持ちすべてを「注意は翻訳することができない」からで ある)、少なくとも、私たちが 「あなたを愛している」と発言する「短時間のうち」においては、私 たちは「愛」に注目する。そうすることで、私たちは、他の目標に関連した気持ちも活性化させるこ  とになる。 
 エモーティヴ、すなわち発話によって規定される感情は、それゆえ、他の発言とは異なる。エモーティヴは感情的状態を描写し(私たちが誰かを愛するのは「事実」である)、エモーティヴはそこに向けられた対象を変容させ(愛していると言われて動じない人はいないだろう)、そしてエモーティヴはその発言 をした人に様々な気持ちを呼び起こすのである。 レディ自身の言葉を用いれば、エモーティヴは「感 情に関する活性化した思考材料に対して、説明を付与する効果と、自ら変化する効果を持つ」。 「あな たを愛している」という発言は、 新たな思考を活性化させる。それは、「今まで考えていた以上にあ なたを愛している」 かもしれないし、「あれ、本当にこの人を愛しているのかしら」かもしれない。 レディにとって、エモーティヴは誠実でも、不誠実でもある。エモーティヴは、それと合致する目標 が一つだという点で誠実である。しかし、人は一つ以上の目標を持つ故に、同一のエモーティヴが競 合する目標と関連づけられる点において、 エモーティヴは不誠実である。それは、このような場合で ある。「あなたを愛している」けれども、一人でいたいとも思うの。 「あなたを愛している」 - でも、あの人のことが忘れられない。」
(バーバラ・H・ローゼンワイン(1945-),リッカルド・クリスティアーニ,『感情史とは何か』,2 アプローチ,エモーショノロジー,pp.56-57,伊東剛史(訳),森田直子(訳), 小田原琳(訳), 舘葉月(訳))

感情史とは何か [ バーバラ・H.ローゼンワイン ]



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