2020年6月9日火曜日

9感情が引き起こす身体変化のうち自律神経系は、主として視床を通して作用するフィードバック・システムとして働き、入力情報を受信し、呼吸、心拍、筋肉収縮、口の渇き、発汗、胃などへ影響を波及させる。(ジョナサン・H・ターナー(1942-))

自律神経系

【感情が引き起こす身体変化のうち自律神経系は、主として視床を通して作用するフィードバック・システムとして働き、入力情報を受信し、呼吸、心拍、筋肉収縮、口の渇き、発汗、胃などへ影響を波及させる。(ジョナサン・H・ターナー(1942-))】

(1)感情が引き起こす身体変化
 (1.1)視床下部、下垂体、ホルモン
  (a)視床下部が受信した神経情報は、下垂体を経由して、ホルモン情報に変換される。
 (1.2)自律神経系
  (a)自律神経系は、主として視床を通して作用するフィードバック・システムとして働き、入力情報を受信し、他の感情システムや大脳皮質に伝達する。
  (b)感情は、自律神経系を介して、呼吸、心拍、筋肉収縮、口の渇き、発汗、胃もたれなどの身体変化を生じる。
 (1.3)反応の連鎖
  (a)ある刺激への最初の興奮は最初の興奮を維持し、変換し、あるいは強化する仕方で身体系を動員する。その一方で、他の感情的身体系を起動させる。
(2)反応の社会的機能
 (2.1)ジェスチャーの無意識的な表現を含む自己呈示(役割づくり)
  自己呈示は、しばしば無意識に進行する。自己呈示に反応した他者が役割を取得し、その他者の反応を彼らの無意識なジェスチャー表現と気づくまで、自らの身体動員にしばしば無意識である。
 (2.2)自己呈示に対する他者の反応(役割取得)
  自己呈示が無意識であることに起因して、感情システムの興奮に起因するフィードバックは、しばしば他者が役割を取得することに依存する。

 「自律神経系(ANS)は、感情興奮に随伴する本能的な反応を制御する平滑筋組織から構成されている。こうした反応、呼吸、心拍、筋肉収縮、口の渇き、発汗、胃もたれを含む(Shepered 1994:p.395)。図4-2は自律神経系の反応に関与する重要な脳システムの大略をしめしている。」
 新皮質───┐ …─→自律神経系
  運動領野 │
  感覚皮質 │
  前頭葉  │
  前頭前葉 │
 前葉帯───│──┐ …─→自律神経系
 扁桃体───│─┐│ …─→自律神経系
 海馬    │ ││ …─→自律神経系
 前脳基底  │ ││ …─→自律神経系
┌視床←───┘ ││ …─→自律神経系
│ ↓      ││
│視床下部←───┘┘ …─→自律神経系
│ ↓
│下垂体 …─→自律神経系

└→脳幹:間脳 …─→自律神経系

「ずば抜けて重要なのは視床下部であり、これが脳の他の領野からの入力情報を受信し、そして血流に分泌する下垂体にねらいを定めることによって神経情報をホルモン情報に変換する。

これがひとたび起動すると、自律神経系は、主として視床を通して作用するフィードバック・システムとして働き、入力情報を受信し、そしてそれを他の感情システムや大脳皮質に伝達する(Le Doux 1996)。

ダマシオ(Damasio 1994)とルドゥー(Le Doux 1996)が論じているように、こうしたフィードバック・システムは感情興奮にとって重要である。ある刺激への最初の興奮は最初の興奮を維持し、変換し、あるいは強化する仕方で身体系を動員する。

その一方で、他の感情的身体系を起動させる。

そしてわたしが論じているように、自己呈示(ジェスチャーの無意識的な表現を含めて)において、あるいは役割づくり(R.H.Turner 1962)、そしてこうした呈示に対する他者の反応、あるいは役割取得(Mead 1934)において非常に重要であるのは、そうした身体系の動員なのである。

さらに、個人が他者の役割を取得し、そして、そうした他者の反応を彼らの無意識なジェスチャー表現とみなすまで、自らの身体動員にしばしば無意識である。

だから、感情システムの興奮に起因するフィードバックは、個人にとって内面的であるだけでなく、それはしばしば身体系動員の視覚的な光景に反応する他者の役割を取得することに依存している。

自律神経系について真であることは、すぐ後でみるように、他の三つの身体系についても同じく真である。」
(ジョナサン・H・ターナー(1942-)『感情の起源』第4章 人間感情の神経学、pp.132-135、明石書店 (2007)、正岡寛司(訳))
(索引:)

感情の起源 ジョナサン・ターナー 感情の社会学



(出典:Evolution Institute
ジョナサン・H・ターナー(1942-)の命題集(Propositions of great philosophers)  「実のところ、正面切っていう社会学者はいないが、しかしすべての社会学の理論が、人間は生来的に(すなわち生物学的という意味で)《社会的》であるとする暗黙の前提に基づいている。事実、草創期の社会学者を大いに悩ませた難問――疎外、利己主義、共同体の喪失のような病理状態をめぐる問題――は、人間が集団構造への組み込みを強く求める欲求によって動かされている、高度に社会的な被造物であるとする仮定に準拠してきた。パーソンズ後の時代における社会学者たちの、不平等、権力、強制などへの関心にもかかわらず、現代の理論も強い社会性の前提を頑なに保持している。もちろんこの社会性については、さまざまに概念化される。たとえば存在論的安全と信頼(Giddens,1984)、出会いにおける肯定的な感情エネルギー(Collins,1984,1988)、アイデンティティを維持すること(Stryker,1980)、役割への自己係留(R. Turner,1978)、コミュニケーション的行為(Habermas,1984)、たとえ幻想であれ、存在感を保持すること(Garfinkel,1967)、モノでないものの交換に付随しているもの(Homans,1961;Blau,1964)、社会結合を維持すること(Scheff,1990)、等々に対する欲求だとされている。」(中略)「しかしわれわれの分析から帰結する一つの結論は、巨大化した脳をもつヒト上科の一員であるわれわれは、われわれの遠いイトコである猿と比べた場合にとくに、生まれつき少々個体主義的であり、自由に空間移動をし、また階統制と厳格な集団構造に抵抗しがちであるということだ。集団の組織化に向けた選択圧は、ヒト科――アウストラロピテクス、ホモ・ハビリス、ホモ・エレクトゥス、そしてホモ・サビエンス――が広く開けた生態系に適応したとき明らかに強まったが、しかしこのとき、これらのヒト科は類人猿の生物学的特徴を携えていた。」
(ジョナサン・H・ターナー(1942-)『社会という檻』第8章 人間は社会的である、と考えすぎることの誤謬、pp.276-277、明石書店 (2009)、正岡寛司(訳))

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