2021年11月16日火曜日

呼出と指向:膨大な感覚情報の飽和を解決するため、脳は情報を選択し、フィルタリングし、増幅し、指向した対象の処理を深くする。(スタニスラス・ドゥアンヌ(1965-))

呼出と指向

膨大な感覚情報の飽和を解決するため、脳は情報を選択し、フィルタリングし、増幅し、指向した対象の処理を深くする。(スタニスラス・ドゥアンヌ(1965-))

 「そんなとき、脳は警戒と待受(「注意の維持」とも言われる)、選択と放念、指向と信号のフィルタリング といった、注意の要となる状態の大半を、数分の間に通り抜ける。認知科学で言われる「注意」とは、 脳が情報を選択し、増幅し、流し、その処理を深くする仕組みすべてを指す。そうした仕組みは進化で は古くからある。犬が耳の向きを変えたり、鋭い音を耳にしたネズミがすくんだりするときは、私たち が持っているのとよく似た注意回路を使っている。

 注意機構がそれほど多くの動物種に進化したのはなぜかというと、注意が情報飽和と いうありふれた問題を解決するからだ。脳には絶えず刺激が降り注いでいる。視覚、聴覚、嗅覚、触覚といった感覚が毎秒何億ビットもの情報を送ってくる。当初は、こうした通信のすべてが別々のニューロンで並 行して処理される。 しかしそれを深いところまで整理できるほどの資源は脳にはない。 そのため、注 意機構のピラミッドは、巨大なフィルターのように組織され、しかるべき優先順位をつ ていく。脳は 各段階で、しかじかの入力にどれだけの重みを与えるかを決定し、必須と考える情報にのみ資源を割り 当てる。

 適切な情報を選ぶことは、学習の根本にかかわる。注意がなければ、データの山にパターンを発見するというのは、よく言われる干し草の山で針を探すようなことになる。それが従来のニューラルネットワークが遅いことの主な理由だ。ネットワークは、情報を整理して適切な情報にすることができず、提供されるデータがとりうるすべての組合せの分析ばかりに相当の時間を浪費してしまうのだ。」

(スタニスラス・ドゥアンヌ(1965-),『脳はこうして学ぶ』,3 学習の四本柱,7章 注意,pp.198-199,森北出版,2021,松浦利輔,中村仁洋)

脳はこうして学ぶ [ スタニスラス・ドゥアンヌ ]






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