官僚制は知識や意図を秘匿する
官僚制は、重大な情報へのアクセスを独占し、「職務上の秘密」として知識や意図を秘匿することによって非統治者からの批判を回避し、優位性を高める。官僚制が議会に対立する場合、議会が自分自身の手段を用いて利害関係者たちから専門的知識を得ようとするあらゆる企てに対し挑戦する。(マックス・ヴェーバー(1864-1920))
(a)知識や意図の秘密保持によって批判を回避し優位性を高める
いかなる官僚制も、その知識や意図の秘密保持という手段によってかような職業的ヴェテランの優越性をいっそう高めようとする。官僚制的行政は、その傾向からすれば、つねに、公開禁止をもってする行政である。官僚制はできるだけその知識と行為を批判からかくまうものである......。
(b)「職務上の秘密」の熱狂的な擁護
この「職務上の秘密」という概念は官僚制独自の発明にかかるもので、事の性質上それの許される領域外では、純即物的に首肯しがたいこの態度ほど、官僚制が熱狂的に擁護するものは他にない。
(c)権力本能からする議会への対抗
官僚制が議会に対立するばあい、それは、確実な権力本能から、議会が自分自身の手段(......)を用いて利害関係者たちから専門的知識を得ようとするあらゆる企てに対 し挑戦する......。
「官僚制たるもの、いったん形成されるや、権力行使につとめる人間にはかれがなにをしよ うとしているのかにかかわらず、ただちに必要不可欠のものになるであろう。[官僚制を通し て権力行使する]その主要な方法は、つねに重大な情報へのアクセスを独占することによるも のである。この点について、ヴェーバーは、長い引用に値する。 『いかなる官僚制も、その知識や意図の秘密保持という手段によってかような職業的ヴェテ ランの優越性をいっそう高めようとする。官僚制的行政は、その傾向からすれば、つねに、公 開禁止をもってする行政である。官僚制はできるだけその知識と行為を批判からかくまうもの である......。 この「職務上の秘密」という概念は官僚制独自の発明にかかるもので、事の性質上それのゆ るされる領域外では、純即物的に首肯しがたいこの態度ほど、官僚制が熱狂的に擁護するもの はほかにない。官僚制が議会に対立するばあい、それは、確実な権力本能から、議会が自分自 身の手段(......)を用いて利害関係者たちから専門的知識をえようとするあらゆるくわだてに対 し挑戦する......。』」
(デヴィッド・グレーバー(1961-2020),『官僚制のユートピア』,3 規則のユートピア、あ るいは、つまるところ、なぜわたしたちは官僚制を愛しているのか,p.213,以文社(2017),酒 井隆史(訳),芳賀達彦(訳),森田和樹(訳))
官僚制のユートピア テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則 [ デヴィッド・グレーバー ]
|