人はできうるかぎりつかみどころがなく、しかも希望をもたせるような答えにとどめるように気をくばらなければならない。しかもこのばあい、可能なかぎりはっきりした約束を避けることである。」(フランチェスコ・グィッチャルディーニ(1483-1540)
「君が世話をするつもりもないようなことは約束しないのが誠実で男らしい態度である。
ところが、人間は理性に支配されるものではないので、たとえすじの通った理由があっての上でも、君が断わったその相手は、おおむね不満をいだくものである。
これとは反対のことが、気安く約束してやったときにもおこってくる。というのは、多くのことがおこってきて、君が約束していたことを守る必要がなくなるばあいがあるからである。
このばあいでも、君は労せずして満足を与えることができることになる。またたとえ、君が約束を実行しなければならないようなばあいでさえも、いいのがれする道はあるのだ。そして多くの人間は血のめぐりの悪いものだから、口先でだまされてしまう。
けれども、君がした約束を破ってしまうのは、醜悪なことなので、それによって君がひきだしたあらゆる利益をも台無しにしてしまう。
このようなわけなので、人はできうるかぎりつかみどころがなく、しかも希望をもたせるような答えにとどめるように気をくばらなければならない。しかもこのばあい、可能なかぎりはっきりした約束を避けることである。」
(フランチェスコ・グィッチャルディーニ(1483-1540)、『リコルディ』B、八七 他人からの依頼、フィレンツェ名門貴族の処世術、p.220、[永井三明・1998])
索引:)
フィレンツェ名門貴族の処世術―リコルディ (講談社学術文庫) |