好奇心
好奇心は、私たちの脳がすでに知っていることと、これから知りたくなること(潜在的な学習領域)とのギャップを検出したときに必ず生じる。私たちはいつ何どきでも、自分がとりうる様々な動作から、この知識のギャップを埋めて有益な情報が得られそうなものを選ぶ。(スタニスラス・ドゥアンヌ(1965-))
「何人かの心理学者が、人間の好奇心を支えるアルゴリズムを特定しようとしてきた。実際、この学習 には欠かせない成分がもっとよく理解できれば、それを操ることができたり、さらにはいずれ人類のす ることを模倣するようなマシン、つまり好奇心を持ったロボットに再現できたりするかもしれない。
このアルゴリズム方式は実を結び始めている。ウィリアム・ジェームズやジャン・ピアジェやドナル ド・ヘップといった大心理学者が、好奇心を支える心の動き方がどういうものかについて推測してき た。こうした心理学者によると、好奇心は、子どもが世界を理解してそのモデルを構築しようという意 欲が直接に表れたものだ。好奇心は、私たちの脳がすでに知っていることと、これから知りたくなること——潜在的な学習領域――とのギャップを検出したときに必ず生じる。私たちはいつ何どきでも、自 分がとりうる様々な動作から、この知識のギャップを埋めて有益な情報が得られそうなものを選ぶ。 この説によれば、好奇心は、サイバネティクス装置のように学習を制御する。蒸気機関で蒸気圧を調節 して一定の速さを保つために弁を開閉する、有名なワットの調速器のようなものだ。好奇心は脳の調速 器、つまり一定の学習圧力を維持しようとする調節装置なのだ。好奇心は私たちを、自分に学習できる と思うことへと導く。 逆の退屈状態になると、人はすでに知っていること、あるいは、 過去の経験からしてもう教えられることが残っていそうにない領域を放棄する。」
(スタニスラス・ドゥアンヌ(1965-),『脳はこうして学ぶ』,第3部 学習の四本柱,第8章 能動的関与,p.250,森北出版,2021,松浦利輔,中村仁洋)