2024年4月23日火曜日

1990年代と2000年代には、また別のすさまじい変化があった。(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)

1990年代と2000年代には、また別のすさまじい変化があった。(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)

 「1990年代と2000年代には、また別のすさまじい変化があった。

この期間、規制を緩和された金融セクターは、企業にむけて“短期主義”を奨励した。結局、1990年代にみられた成長の多くは不安定で、バブルの上に築かれていたことがわかった――まずはITバブル、次に住宅バブル。

“大いなる安定”は幻影であることが判明した。もたらされたのは、よりよく制御された経済につながる新しい経済的見識(たとえば金融政策の実施にかんしてなど)ではなく、さらなる不安定と、成長の鈍化と、不平等の拡大だった。

 同時期に、テクノロジーとグローバル化にも変化があり、世界の国々がより緊密に統合されはじめた。

これらの進歩は、中流層の生活を脅かすのではなく、生活水準を向上させるはずだった。うまく制御すれば、実現していたかもしれない。

しかし、広く受け入れられていた前提は、自由化された市場が自動的に人々すべてを豊かにするというもので、その前提は悲惨なほど間違っていることがあきらかになった。

グローバル化とテクノロジーは世界市場にさらなる相互依存をもたらした一方で、労働コストの“底辺への競争”に対するセーフガードがなかったため、アメリカ経済における大規模な失業と賃金引き下げへの圧力をもたらした。

さらにこの圧力は、アメリカ経済の金融化が増大するとともに、製造工程の複数の段階を一手に担う垂直統合の製造業を衰退させる一因にもなった。これらすべての要素の極致が、レントと搾取が蔓延し、賃金と雇用が削減されたアメリカ経済なのだ。


 ※短期主義 Short-termism

 短期的な利潤と株主の利益に重点を置いた1980年代以降のコーポレートガバナンスのモデル。持続性とイノベーションと成長につながる人材や研究への長期投資といった長期的な考えかたとは対照的。


 今日、多くの人が1990年代と2000年代の画期的なイノベーションに希望を託している。

インターネットで可能になった分散コンピューティング、ナノテクノロジーの有望性、バイオテクノロジーや個別化医療の大きな可能性。これまでのところ、強力な企業をつくったり、インターネットの力の上に財産を築くなど、いくつかの分野で成長がみられる。

しかし経済をめぐる最も重要な疑問は、これらのテクノロジーがさらなる成長と機会と快適な暮らしを生み出し、もっと多くの人に分配するのに役立つかどうかだ。

インターネットとその未開発の革新的な潜在力は、21世紀の今、あらゆる所得水準の人々にとって20世紀の製造業に匹敵するものになれるだろうか? それとも、レントの蔓延した目下の経済に拍車をかけるのだろうか? 

ウェブ技術は多くの利益をもたらしているが、繁栄の幅広い共有をうながすかどうかはまだわかっていない。実のところ、いくつかの新しいテクノロジーは、所得と富と権力のさらなる集中を招く傾向にある。

 これがわたしたちの課題だ。イノベーションのすばらしさを実感するには、目前の問題をまず解決しなければならない。35年にわたるサプライサイドの考えかたとルールが、アメリカの経済と社会のあらゆる面をつくり替え、成長の鈍化と前例のない不平等へ導き、それによって数々の問題がのこされているからだ。」

(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『アメリカ経済のルールを書き換える』(日本語書籍名『これから始まる「新しい世界経済」の教科書』),序章 不平等な経済システムをくつがえす,pp.44-46,徳間書店(2016),桐谷知未(訳))

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(出典:wikipedia
ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-)の命題集(Propositions of great philosophers)


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