2024年4月30日火曜日

人間-機械の「奇妙な」とでも言うしかないような、やりとりの中で拡大され、次第に大きな事態になっていく(高木仁三郎(1938-2000)

 人間-機械の「奇妙な」とでも言うしかないような、やりとりの中で拡大され、次第に大きな事態になっていく(高木仁三郎(1938-2000)



「これらの事故によって、原発の運転におけるヒューマン・ファクターが見直されるようになった。

そのこと自体は誤りではないが、通常言われるような「運転員の訓練の向上」ということによっては、困難は克服されないだろう。

というのは、TMIやチェルノブイリの事故が明らかにしたのは、きわめて微妙な機械と人間の関係だからである。

 TMIでは、機械部分の小さな異常を契機として事故が進展し、それによってもたらされた混乱が人間の判断ミスを誘い、それがさらに機械部分の異常を拡大し―――という風に、機械と人間がやりとりしながら、異常を増幅していった。

たとえば、制御室には最盛時には一分間に何十もの警報が寄せられ、温度計はクエッション・マークを出し続け、コンピュータの打出しは遅れに遅れ、各種の計器やランプの表示も適切を欠いた。

これは、単純に人間のミスが事故を誘発した(そういう種類の事故は、このシステムをフール・プルーフにすることによりかなり防ぎうる)ということでも、逆に機械の欠陥が事故を誘発した(これはフェイル・セーフ設定によりある程度防ぎうる)ということでもない。

ひとつひとつは、小さな混乱と思われることが、人間-機械の「奇妙な」とでも言うしかないような、やりとりの中で拡大され、次第に大きな事態になっていくのである。

チェルノブイリも、その点ではまったく同様で、信じられないような規則違反が連続したことじたいが、右のような奇妙なシチュエーションを考えない限り説明され得ないだろう。」
(高木仁三郎(1938-2000)『高木仁三郎著作集 第二巻 脱原発へ歩みだすⅡ』共著書の論文 核エネルギーの解放と制禦、p.524)



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