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2018年7月27日金曜日

すべての会話は、共通の目標をもった協調活動であり、模倣と刷新の相乗効果で、新しい言語の進化の場でもある。聴覚障害児によって創出された自然発生的な「ニカラグア手話」は、その実例である。(マルコ・イアコボーニ(1960-))

ニカラグア手話

【すべての会話は、共通の目標をもった協調活動であり、模倣と刷新の相乗効果で、新しい言語の進化の場でもある。聴覚障害児によって創出された自然発生的な「ニカラグア手話」は、その実例である。(マルコ・イアコボーニ(1960-))】

 「すべての会話は共通の目標をもった協調活動であり、ある意味では、新しい言語の進化をその場に再現していると言えなくもない。実際、会話の中の一部の言葉が、互いの暗黙の了解によって決まった特定の意味を帯びているということ自体、模倣と刷新の相乗効果でコミュニケーションが形成されていくことを示したものだと言える。この考えを裏づける最も驚くべき事例が、1970年代末から80年代にかけて、ニカラグアの学校の聴覚障害児によって創出された自然発生的な、しかし充分に発達したサイン言語(手話)である。それ以前、ニカラグアの聴覚障害児はほとんど社会から疎外されており、単純な身ぶりや身内にしか通じない「自家製」のサイン体系を使って友人や家族とコミュニケーションをとるだけだった。そこにサンディニスタ革命が起こり、聴覚障害児の特別教育施設が設けられるようになった。そしてマナグアの二つの学校に数百人が入学した――いまにして思えば、「臨界質量」とでも言おうか、ある結果をもたらすのに必要十分な人数が揃っていたわけである。校庭やバスの中や道端で互いに顔を合わせているうちに、子供たちはしだいにそれぞれの慣れ親しんだ身ぶりを組み合わせながら共通のサイン言語を発達させていった。最初はそれも比較的単純な言語で、文法も単純、類義語はほとんどない、いわゆるピジン語のようなものであった。やがて、年長の子供たちにこの単純な言語を教えてもらった年少の子供たちが、もっと精密で、明確で、揺らぎのない、成熟したサイン言語を発達させた。これが現在「ニカラグア手話」と呼ばれているものである。皮肉なことに、学校の教職員は子供たちが互いにどんなサインを出しあっているのかを理解できず、外部の助けに頼らなくてはならなかった。アメリカ手話の専門家であるアメリカ人言語学者ジュディ・ケーグルが招かれて、初めてここでなにが進行しているかわかったのである。」
(マルコ・イアコボーニ(1960-),『ミラーニューロンの発見』,第3章 言葉をつかみとる,早川書房(2009),pp.126-127,塩原通緒(訳))
(索引:ニカラグア手話)

ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ新書juice)


(出典:UCLA Brain Research Institute
マルコ・イアコボーニ(1960-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「ミラーリングネットワークの好ましい効果であるべきものを抑制してしまう第三の要因は、さまざまな人間の文化を形成するにあたってのミラーリングと模倣の強力な効果が、きわめて《局地的》であることに関係している。そうしてできあがった文化は互いに連結しないため、昨今、世界中のあちこちで見られるように、最終的に衝突にいたってしまう。もともと実存主義的現象学の流派では、地域伝統の模倣が個人の強力な形成要因として強く強調されている。人は集団の伝統を引き継ぐ者になる。当然だろう? しかしながら、この地域伝統の同化を可能にしているミラーリングの強力な神経生物学的メカニズムは、別の文化の存在を明かすこともできる。ただし、そうした出会いが本当に可能であるならばの話だ。私たちをつなぎあわせる根本的な神経生物学的機構を絶えず否定する巨大な信念体系――宗教的なものであれ政治的なものであれ――の影響があるかぎり、真の異文化間の出会いは決して望めない。
 私たちは現在、神経科学からの発見が、私たちの住む社会や私たち自身についての理解にとてつもなく深い影響と変化を及ぼせる地点に来ていると思う。いまこそこの選択肢を真剣に考慮すべきである。人間の社会性の根本にある強力な神経生物学的メカニズムを理解することは、どうやって暴力行為を減らし、共感を育て、自らの文化を保持したまま別の文化に寛容となるかを決定するのに、とても貴重な助けとなる。人間は別の人間と深くつながりあうように進化してきた。この事実に気づけば、私たちはさらに密接になれるし、また、そうしなくてはならないのである。」
(マルコ・イアコボーニ(1960-),『ミラーニューロンの発見』,第11章 実存主義神経科学と社会,早川書房(2009),pp.331-332,塩原通緒(訳))
(索引:)

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2018年7月26日木曜日

赤ん坊は、模倣ごっこが大好きだ。自分を模倣する人に注意を向ける。幼児も、模倣ごっこが大好きだ。あらゆるものが二つずつ用意してある遊び場を設定すると、自発的な模倣ごっこが始まり、果てしなく続く。(マルコ・イアコボーニ(1960-))

模倣ごっこ

【赤ん坊は、模倣ごっこが大好きだ。自分を模倣する人に注意を向ける。幼児も、模倣ごっこが大好きだ。あらゆるものが二つずつ用意してある遊び場を設定すると、自発的な模倣ごっこが始まり、果てしなく続く。(マルコ・イアコボーニ(1960-))】

 「もし私が友人宅での集まりに出かけていって、その家に赤ん坊がいたなら、私は真っ先にその赤ん坊のすることを真似してみせる。するといきなり、私はその子の一番の注目株になる(もちろん両親を除いて)。赤ん坊は模倣ごっこをするのが大好きなのだ。また、親と赤ん坊がしょっちゅうお互いに真似をしあうのは誰でも知っているところだろう。実際、このときの模倣(と親和力)は発達中の脳のミラーニューロンを強化する主要な形成要因なのかもしれない。この仮説についてはあとの章で述べよう。
 あるいは幼児どうしがお互いを真似しあう例もたくさんある。発達心理学者のジャクリーン・ネーデルは、この自発的な模倣ごっこを促すために、あらゆるものが二つずつ用意してある遊び場を設定した。まだ言葉の話せない小さな子供たちがこの状況で自発的な模倣をするのは、見ていてとても面白い。ある子供が帽子をかぶると、別の子供がもう一つの帽子をかぶる。最初の子がサングラスをかけると、あとの子もそれにならう。ある子が傘を拾い上げると、別の子ももう一つの傘を拾う。最初の子が傘を回しはじめると、もう一人の子も回しはじめる。傘を下ろせば、同じように傘を下ろす。風船をつかめば、やはり風船をつかむ。模倣ごっこは果てしなく続く。片方の子が風船をつかんでいる手を軽く振り動かしただけでも、もう片方はすかさずそれを模倣する。一方、同じ発達心理学者のキャロル・エッカーマンは、幼児における模倣と言語コミュニケーションの強い結びつきを証明してきた。まだ話し方を知らない幼児どうしがいっしょに遊ぶときは、たいてい模倣ごっこをする。そして模倣ごっこを熱心にやる幼児ほど、1年から2年後に、言葉を多く使うようになるのだ。」
(マルコ・イアコボーニ(1960-),『ミラーニューロンの発見』,第2章 サイモン・セッズ,早川書房(2009),pp.68-69,塩原通緒(訳))
(索引:模倣ごっこ)

ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ新書juice)


(出典:UCLA Brain Research Institute
マルコ・イアコボーニ(1960-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「ミラーリングネットワークの好ましい効果であるべきものを抑制してしまう第三の要因は、さまざまな人間の文化を形成するにあたってのミラーリングと模倣の強力な効果が、きわめて《局地的》であることに関係している。そうしてできあがった文化は互いに連結しないため、昨今、世界中のあちこちで見られるように、最終的に衝突にいたってしまう。もともと実存主義的現象学の流派では、地域伝統の模倣が個人の強力な形成要因として強く強調されている。人は集団の伝統を引き継ぐ者になる。当然だろう? しかしながら、この地域伝統の同化を可能にしているミラーリングの強力な神経生物学的メカニズムは、別の文化の存在を明かすこともできる。ただし、そうした出会いが本当に可能であるならばの話だ。私たちをつなぎあわせる根本的な神経生物学的機構を絶えず否定する巨大な信念体系――宗教的なものであれ政治的なものであれ――の影響があるかぎり、真の異文化間の出会いは決して望めない。
 私たちは現在、神経科学からの発見が、私たちの住む社会や私たち自身についての理解にとてつもなく深い影響と変化を及ぼせる地点に来ていると思う。いまこそこの選択肢を真剣に考慮すべきである。人間の社会性の根本にある強力な神経生物学的メカニズムを理解することは、どうやって暴力行為を減らし、共感を育て、自らの文化を保持したまま別の文化に寛容となるかを決定するのに、とても貴重な助けとなる。人間は別の人間と深くつながりあうように進化してきた。この事実に気づけば、私たちはさらに密接になれるし、また、そうしなくてはならないのである。」
(マルコ・イアコボーニ(1960-),『ミラーニューロンの発見』,第11章 実存主義神経科学と社会,早川書房(2009),pp.331-332,塩原通緒(訳))
(索引:)

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