眠る者すら働き人
【仮に君が、自分に起こった出来事を非難し、これに反抗し、また自己の使命を自覚せず、この宇宙の真理を何も理解せず、たとえ眠っていたとしても、やはり、この宇宙を支配している諸法則に従っているのだ。(マルクス・アウレーリウス(121-180))】(1) 我々はみな一つの目的の遂行に向かって協力している。
(2)「眠る者すら働き人」であり、宇宙の中の出来事における協力者である。出来事を非難する者、これに反抗しようとする者、これを消滅させようとする者さえも協力するのである。
(3) このように、人はそれぞれ異なった方法で協力する。ある者は自覚と理解をもって、ある者はそれと知らずに。残るは、君がいかなる人間の仲間に入るつもりか決心することだ。
「我々はみな一つの目的の遂行に向かって協力している。ある者は自覚と理解をもって、ある者はそれと知らずに。たしかヘーラクレイトスがいったように、『眠る者すら働き人』であり、宇宙の中の出来事における協力者である。それも人はそれぞれ異なった方法で協力するのであって、これに加うるに出来事を非難する者、これに反抗しようとする者、これを消滅させようとする者さえも協力するのである。なぜなら宇宙はこのような者をも必要としたからである。残るは、君がいかなる人間のなかまにはいるつもりか決心することだ。もちろんいずれにしても宇宙の支配者は君をうまく用い、協力者や助手たちの間のどこかへ加えてくれるだろう。しかし君としては、クリューシッポスが言及している劇の中のくだらぬ、笑うべき詩句のような場所を占めぬように気をつけるがよい。」
(マルクス・アウレーリウス(121-180)『自省録』第六巻、四二、p.109、[神谷美恵子・2007])
(索引:眠る者すら働き人)
(出典:wikipedia)
「波の絶えず砕ける岩頭のごとくあれ。岩は立っている、その周囲に水のうねりはしずかにやすらう。『なんて私は運が悪いんだろう、こんな目にあうとは!』否、その反対だ、むしろ『なんて私は運がいいのだろう。なぜならばこんなことに出会っても、私はなお悲しみもせず、現在におしつぶされもせず、未来を恐れもしていない』である。なぜなら同じようなことは万人に起りうるが、それでもなお悲しまずに誰でもいられるわけではない。それならなぜあのことが不運で、このことが幸運なのであろうか。いずれにしても人間の本性の失敗でないものを人間の不幸と君は呼ぶのか。そして君は人間の本性の意志に反することでないことを人間の本性の失敗であると思うのか。いやその意志というのは君も学んだはずだ。君に起ったことが君の正しくあるのを妨げるだろうか。またひろやかな心を持ち、自制心を持ち、賢く、考え深く、率直であり、謙虚であり、自由であること、その他同様のことを妨げるか。これらの徳が備わると人間の本性は自己の分を全うすることができるのだ。今後なんなりと君を悲しみに誘うことがあったら、つぎの信条をよりどころとするのを忘れるな。曰く『これは不運ではない。しかしこれを気高く耐え忍ぶことは幸運である。』」
(マルクス・アウレーリウス(121-180)『自省録』第四巻、四九、p.69、[神谷美恵子・2007])
(索引:波の絶えず砕ける岩頭の喩え)
マルクス・アウレーリウス(121-180)
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