幾何学者の方法
【命題から虚飾をはぎとり、相互依存の順序と主題の順序に従って配列する幾何学者の方法は、無秩序に増大する情報の増大に対処し、また各命題の発見者の名声を忘却から救う。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))】多くの発見、重要な考察、真理の探究のための熱意に事欠かない卓越した精神が、どれだけ多く存在するかを思うとき、われわれはもっと多くのことをなしうる状態にあり、学問に関する人類の状況は、わずかの間に様相を一変しうると思う。その一方、対立、敵意、構築するよりは破壊、協力よりは仲間を差し押さえ、論争、うわべだけのお話、無駄な好奇心の浪費などを考えると、自分たちの過ちのせいで、混乱と欠乏の状態に陥るのではないかと危惧する。
さらに、たえず増えていく恐ろしいばかりのこの本の数、そして無秩序はほとんど乗り越えがたいものとなり、著者たちはすべて全き忘却にさらされかねない。古代の幾何学者のなかには、われわれがその作品を手にできない人々がいる。しかし、彼らの名声は、彼らのものとされるいくつかの命題によって保持されてきた。先に示した、普遍的学問と幾何学者の方法によって、各命題の発見者の名声を讃えながら、秩序と調和をもった知恵の体系を維持していくことが可能となる。
「私は、われわれがどれだけ多くの発見を行なってきたか、どれだけ多くの堅固で重要な考察をもたらしてきたか、どれだけ多くの、真理の探究のための熱意に事欠かない卓越した精神が存在することか、ということに思いをこらすとき、われわれはもっと多くのことをなしうる状態にあり、学問に関する人類の状況はわずかの間に様相を一変しうると思う。しかし、他方で、人々の計画はほとんど一致せず、人々が取る方途は対立しており、一方の人々は他方の人々に敵意をむきだしにして、構築することよりは破壊することを考え、一緒に進むことよりは自分の仲間を差し押さえることを考えているのを見ると、そして最後には、実践は理論があたえる光をまったく活用せず、人々は論争の数を減らそうとはまったくせずむしろ増やそうと努めており、真面目で決定的な方法の変わりに、うわべだけのお話に満足しているということを考えるとき、私は、われわれが自分たちの過ちのせいで陥っている混乱と欠乏の状態に長くとどまろうとしているのではないかと恐れるのである。私はさらに、人々は、われわれの探究からわれわれの幸福のために重要な何らかの益を引き出すこともなしに好奇心を無駄に使い果たしたことから、学問に嫌気がさしているのではないか、また、決定的な絶望感から人間は再び野蛮状態に戻るのではないかとさえ危惧する。
この怖れに、たえず増えていく恐ろしいばかりのこの本の数がおおいに加担しうるであろう。というのも、最後には本の無秩序はほとんど乗り越えがたいものとなり、わずかの間に著者の数が無数にものぼるために、著者たちはすべて全き忘却にさらされかねず、多くの人々を学問研究の仕事へと駆り立てる栄光に対する期待も一挙に止むであろう。」(中略)「古代の幾何学者のなかには、ニコメデスやディノストラトスのように、われわれがその作品を手にできない人々がいる。しかし、彼らの名声は、彼らのものとされるいくつかの命題によって保持されてきたのである。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『諸学問を進展させるための格率』、ライプニッツ著作集10、pp.242-244、[小林道夫・1991])
(索引:幾何学者の方法)
(出典:wikipedia)
「すべての実体は一つの全たき世界のようなもの、神をうつす鏡もしくは全宇宙をうつす鏡のようなものである。実体はそれぞれ自分の流儀に従って宇宙を表出するが、それはちょうど、同一の都市がそれを眺める人の位置が違っているのに応じて、さまざまに表現されるようなものである。そこでいわば、宇宙は存在している実体の数だけ倍増化され、神の栄光も同様に、神のわざについてお互いに異なっている表現の数だけ倍増化されることになる。また、どの実体も神の無限な知恵と全能という特性をいくぶんか具えており、できる限り神を模倣している、とさえ言える。というのは、実体はたとえ混雑していても、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出しており、このことは無限の表象ないしは無限の認識にいささか似ているからである。ところで、他のすべての実体もそれなりにこの実体を表出し、これに適応しているので、この実体は創造者の全能を模倣して、他のすべての実体に自分の力を及ぼしていると言うことができる。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『形而上学叙説』九、ライプニッツ著作集8、pp.155-156、[西谷裕作・1990])
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)
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