2018年6月10日日曜日

ホメオスタシスのプロセス:(1)内的、外的環境の変化、(2)変化の感知、(3)評価、反応。(アントニオ・ダマシオ(1944-))

ホメオスタシスのプロセス

【ホメオスタシスのプロセス:(1)内的、外的環境の変化、(2)変化の感知、(3)評価、反応。(アントニオ・ダマシオ(1944-))】
ホメオスタシスのプロセス
(1) 一個の有機体の内部あるいは外部の環境で、何かが変化する。
(2) その変化が、その有機体の命の方向を変える。
(3) 有機体は、そうした変化を検出し、有機体の自己保存と効率的機能にとって、最も有益な状況を生み出すように反応する。
(3.1) 有機体の内部と外部の状況を評価する。有機体は、ただ単に生きている状態ではなく、より「優れた命の状態」を目指しているように見える。すなわち、人間であれば「健康でしかも幸福である」状態を目指しているように見える。
(3.2) 反応。
(3.3) 結果として、健全性への脅威を取り除く、改善への好機を手に入れる。

 「自然は、単なる生存という恩恵に満足せず、どうやらすばらしい後知恵も使ったようだ。じつは、生得的な生命調節装置は生と死の中間的な状態を目標とはしていない。そうではなく、ホメオスタシスの努力の目標は中間よりも優れた命の状態を、つまり、思考する豊かな生き物であるわれわれ人間が「健康でしかも〈幸福〉である」とみなす状態へ導くことだ。

 ホメオスタシスの全プロセスは、われわれの体の一つひとつの細胞の中で、刻一刻、命を調節している。この調節は以下のような単純な手順で実現されている。

第一に、一個の有機体の内部あるいは外部の環境で、何かが変化する。第二に、その変化がその有機体の命の方向を変える(その変化は有機体の健全性への脅威にもなるし、有機体の改善の好機にもなる)。第三に、有機体はそうした変化を検出し、有機体の自己保存と効率的機能にとってもっとも有益な状況を生み出すように反応する。

 すべての反応はこのような手順で起こる。それらは有機体の内部と外部の状況を〈評価し〉、それにしたがって動作する手段である。またそれらは、あるときはトラブルを検出し、またあるときは好機を検出する。そしてそれに働きかけることで、トラブルを取り除くという問題や、あるいは好機を手に入れるという問題を解決している。

あとで、狭義の情動――悲しみ、愛、罪悪感といった情動――においてさえ、そのような手順が形をとどめていることを述べる。ただし、その評価と反応は、単純な反応の場合と比較して、はるかに複雑である。それらの情動は、もともと、単純な反応が生物進化の過程で合体したものだからだ。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第2章 欲求と情動について、pp.60-61、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))
(索引:ホメオスタシス)

感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ


(出典:wikipedia
アントニオ・ダマシオ(1944-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「もし社会的情動とその後の感情が存在しなかったら、たとえ他の知的能力は影響されないという非現実的な仮定を立てても、倫理的行動、宗教的信条、法、正義、政治組織といった文化的構築物は出現していなかったか、まったく別の種類の知的構築物になっていたかのいずれかだろう。が、少し付言しておきたい。私は情動と感情だけがそうした文化的構築物を出現させているなどと言おうとしているのではない。第一に、そうした文化的構築物の出現を可能にしていると思われる神経生物学的傾性には、情動と感情だけでなく、人間が複雑な自伝を構築するのを可能にしている大容量の個人的記憶、そして、感情と自己と外的事象の密接な相互関係を可能にしている延長意識のプロセスがある。第二に、倫理、宗教、法律、正義の誕生に対する単純な神経生物学的解釈にはほとんど望みがもてない。あえて言うなら、将来の解釈においては神経生物学が重要な役割を果たすだろう。しかし、こうした文化的現象を十分に理解するには、人間学、社会学、精神分析学、進化心理学などからの概念と、倫理、法律、宗教という分野における研究で得られた知見を考慮に入れる必要がある。実際、興味深い解釈を生み出す可能性がもっとも高いのは、これらすべての学問分野と神経生物学の〈双方〉から得られた統合的知識にもとづいて仮説を検証しようとする新しい種類の研究だ。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第4章 感情の存在理由、pp.209-210、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))

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