2018年6月11日月曜日

運動における決定の根源的完全性と、魂における自由な決定の根源的完全性とが、いかに両立し、なおかつ魂における決定に、身体が依存するのか。この依存は、形而上学的依存である。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))

自由意志の問題

【運動における決定の根源的完全性と、魂における自由な決定の根源的完全性とが、いかに両立し、なおかつ魂における決定に、身体が依存するのか。この依存は、形而上学的依存である。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))】
(a)自然学的依存は、一方がそれの依存する他方から受けとる直接的影響に存する。たとえば魂は、非意志的活動において、よく考えてみると身体に依存している。
(b)一方、思考の内には秩序と連結がある。また、善や悪は思考する存在者を強いずに傾かせ、意志による決定は自由である。つまり、選択を伴っている。
(c)このとき、運動における決定は、そのままで変わらない。
(d)運動における決定の根源的完全性と、魂における自由な決定の根源的完全性とが、いかに両立し、なおかつ魂における決定に、身体が依存するのか。これは自然学的依存とは異なる。形而上学的依存である。
 「運動においてもそうですが、思考の内には秩序と連結があります。なぜなら、一方は他方に完全に対応するからです。もっとも、運動における決定はそのままです。ところが思考する存在者においては、決定は自由である、つまり選択を伴っている。善や悪は思考する存在者を強いずに傾かせるのみです。というのも、魂は身体を表現する際に自分の完全性を保存するからです。それに、魂は非意志的活動において(よく考えてみると)身体に依存しているにもかかわらず、他の活動においては独立していて、まさに身体を魂自身に依存させるのです。しかしこの依存は形而上学的でしかなく、神が一方を規制するときに他方を顧慮するところに存する。言い換えれば、各々の根源的完全性に応じて一方よりも他方を神がいっそう多く顧慮するところに存するのです。これに対して自然学的依存は、一方がそれの依存する他方から受けとる直接的影響に存するでしょう。それに、非意志的思考が私たちにやってくる場合、一部分は私たちの感覚を刺激する諸対象によって外部から、また一部分は、先行の諸表象が残した(しばしば非可感的な)刻印のゆえに内部からきます。この先行の諸表象は活動を続け、新たにやってくるものと混ざりあう。この点で私たちは受動的であって、眠らずにいるときでさえ、夢の中と同様、呼び寄せられたわけでもないのにイメージが浮かんできます。(イメージということで私は、形の表現のみならず音声や他の可感的性質の表現をも含めて考えています)。ドイツ語ではそれを fliegende Gedanken 、つまり飛びまわっている思考と呼んでいます。それは私たちの思い通りにはならないし、そこには時として善良な人々に良心のためらいを抱かせるような馬鹿げたところ、決疑論者や教導者に試練を課すような馬鹿げたところがあります。幻燈の中で何かを回すとそれに応じて壁に図形が現われる。この思考はこうした幻燈の中で起ることと同じです。しかし私たちの精神は、再び現われる何らかのイメージを意識して「止まれ」と言いうるし、いわばそれを停止させることができます。さらに精神は、自分で然りと思う通りにある思考の進行に入っていき、それによって他の思考へと導かれるのです。けれども、これが当てはまるのは内的あるいは外的な印象が優勢でないときです。その点に関して人々は、気質によっても、また自らの行なった自己統制の訓練によっても著しく異なっているのは確かです。したがって、ある人が身をゆだねてしまう印象を別の人は克服しうるのです。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『人間知性新論』第二部・第二一章[一二]、ライプニッツ著作集4、pp.203-204、[谷川多佳子・福島清紀・岡部英男・1993])
(索引:心身問題、自由意志)

認識論『人間知性新論』 (ライプニッツ著作集)


(出典:wikipedia
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「すべての実体は一つの全たき世界のようなもの、神をうつす鏡もしくは全宇宙をうつす鏡のようなものである。実体はそれぞれ自分の流儀に従って宇宙を表出するが、それはちょうど、同一の都市がそれを眺める人の位置が違っているのに応じて、さまざまに表現されるようなものである。そこでいわば、宇宙は存在している実体の数だけ倍増化され、神の栄光も同様に、神のわざについてお互いに異なっている表現の数だけ倍増化されることになる。また、どの実体も神の無限な知恵と全能という特性をいくぶんか具えており、できる限り神を模倣している、とさえ言える。というのは、実体はたとえ混雑していても、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出しており、このことは無限の表象ないしは無限の認識にいささか似ているからである。ところで、他のすべての実体もそれなりにこの実体を表出し、これに適応しているので、この実体は創造者の全能を模倣して、他のすべての実体に自分の力を及ぼしていると言うことができる。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『形而上学叙説』九、ライプニッツ著作集8、pp.155-156、[西谷裕作・1990])

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