2022年3月1日火曜日

30.支配の諸関係の内部で、当該の社会的諸関係がどのように実際には作動しているのかは、実質的に従属した人々がどのように考え、行動しているかで理解できる。召使は自分を雇っている家庭の事情について事細かに知っているものだが、その逆はほとんどあり得ないのである。(デヴィッド・グレーバー(1961-2020))

想像的同一化

支配の諸関係の内部で、当該の社会的諸関係がどのように実際には作動しているのかは、実質的に従属した人々がどのように考え、行動しているかで理解できる。召使は自分を雇っている家庭の事情について事細かに知っているものだが、その逆はほとんどあり得ないのである。(デヴィッド・グレーバー(1961-2020))



「解釈労働の一般理論を発展することは可能だろうか? わたしたちはたぶん、ここには、結合してはいるが形式的には区別する必要のある、二つの重要な要素があることを認識するこ とからはじめねばならない。第一の要素は、知の形式としての想像的同一化の過程である。す なわち、支配の諸関係の内部では、当該の社会的諸関係がどのように実際には作動しているの かを理解する作業は、実質的に従属した人々に一般的にはゆだねられている、という事実であ る。たとえば、食堂のキッチンで働いたことのある者ならば周知のことがある。盛大なヘマが あって、怒った支配人が顔を出し、状況を把握しようとしたとして、かれがこまごまと調査を することはないし、あわてて事態を説明しようとする従業員の話をまじめに聞こうとすら、た いていはしないということである。全員を黙らせ、適当にストーリーをこしらえ、即座の判断 をくだす、という可能性の方がはるかに高いのだ。「ジョー、おまえはこんなしくじりはしな いな。マーク、おまえだな、おまえは新入りだしな。二度とやったら、今度はクビだぞ」。ミ スの再発を防ぐべく、真の原因を探り出す作業は、人を雇用したり解雇したりする力をもたな い人間がやることになる。同様のことは、たいてい、持続する関係のうちに起きるものであ る。たとえば、だれもが知っていることだが、召使はじぶんを雇っている家庭の事情について 事細かに知っているものだが、その逆はほとんどありえない。」
(デヴィッド・グレーバー(1961-2020),『官僚制のユートピア』,1 想像力の死角? 構造 的愚かさについての一考察,pp.100-101,以文社(2017),酒井隆史(訳),芳賀達彦(訳),森田 和樹(訳))

官僚制のユートピア テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則 [ デヴィッド・グレーバー ]



デヴィッド・グレーバー
(1961-2020)







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