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2019年4月18日木曜日

米国では、不法移民の差別禁止と権利保護のため、取締の権限が連邦政府の管轄とされた。また、仮に連邦法に違反している不法移民でも保護するサンクチュアリ都市宣言をしている都市が全米各地に400以上存在する。(池上彰(1950-))

不法移民とサンクチュアリ都市

【米国では、不法移民の差別禁止と権利保護のため、取締の権限が連邦政府の管轄とされた。また、仮に連邦法に違反している不法移民でも保護するサンクチュアリ都市宣言をしている都市が全米各地に400以上存在する。(池上彰(1950-))】

 「なぜ「不法」移民は、これまで追い出されなかったのか?
 これはトランプ大統領の移民政策も同様です。当初は「不法移民1100万人を全員追放」と言っていましたが、ここへきて、全員を追い出すわけではないと穏健な方針に切り替えつつあります。その結果、オバマ政権時代よりは強硬な政策になっているのに、多くの人が受け入れてしまう、というわけです。
 それにしても、アメリカに不法移民が1100万人いると聞くと、疑問が湧きませんか。「不法」ならばなぜ強制退去の対象にならないのでしょうか? 日本ですと、不法滞在している疑いのある外国人がいると、警察官が職務質問。パスポートや滞在許可書類がなければ身柄を拘束されます。
 実はアメリカでも日本と同じことができるようにしようという動きがあったのですが、憲法違反だという判決が下っているのです。
 アメリカ南部のアリゾナ州は2010年、独自に不法移民取締法を制定しました。これは現場の警察官に取り締まりの権限を与えるというものです。ところがその法律のなかに、「外見で不法移民の疑いがあれば警察官が滞在資格を確認できる」という内容があったことから、特定の人種を対象にした差別につながるという批判が出て、裁判に発展。12年、連邦最高裁は、不法移民の取り締まりの権限は連邦政府の管轄であり、アリゾナ州が独自に取締法を制定したのは憲法違反だという判断を下しました。
 つまり、連邦政府が取り締まろうとしないかぎり、不法移民は不法でもアメリカに滞在できるというわけです。オバマ前大統領は不法移民を摘発しようとしませんでしたから、犯罪を起こさないかぎり、不法移民でもアメリカに滞在できたのです。
 さらに全米各地には「サンクチュアリ都市」(聖域都市)を宣言している都市が400以上あるとみられます。これらはリベラルな民主党の勢力の強い地域で、連邦法に違反している不法移民がいても、連邦政府に通報せずに守るという方針を貫いています。不法移民は、ニューヨークやシカゴ、ボストンなどの聖域都市に逃げ込めば、摘発や強制送還の心配なく暮らせるのです。同じく聖域都市のサンフランシスコ市は17年1月、聖域都市への補助金停止を求める大統領令が憲法違反にあたるとして、その差し止めを求めて訴訟を起こしました。
 法律に違反しても、人権を守る。人権意識の高さには感心します。
 日本では「トランプ大統領の移民政策はひどい」と他人事のように批判している人たちがいますが、トランプ大統領は、移民受け入れに慎重な日本のようにしたいだけだとも言えます。トランプ大統領を批判する人たちは、自覚せずに日本の移民政策を批判していることになるのです。」
(池上彰(1950-),『世界はどこに向かうのか』第1部「米国編」アメリカ・ファーストの衝撃,Chapter2 自由の国を守る人々,pp.38-41,日本経済新聞社(2017))
(索引:不法移民,サンクチュアリ都市)

池上彰の 世界はどこに向かうのか


(出典:wikipedia
池上彰(1950-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「あなたが同じ立場だったらどうするか?
 もし、あなた方があのときにそのチッソの水俣工場で働いている社員だったら、どうしますか、ということです。つまり熊本県でも有数の企業です。水俣にとってはいちばん大手の企業です。水俣で生まれ育って、学校を出て、チッソに就職するというのは地元の人にとってはいちばんのエリートコースですよね。それこそ、みなさんがもしチッソに就職が決まったと報告をすれば、家族はもちろん親戚もみんな、「いやあいいところに就職したね、よかったね」と祝福してくれるはずです。もちろん、プラスチックの可塑剤という、日本という国が豊かになるときに必要なものをつくっているわけですから、みんな誇りを持って働いていたはずです。ところがやがて、そこから出てくる廃水が原因で、地元の住民に健康被害が出る、という話が聞こえるようになってきた。さあ、みなさんは果たしてどんな行動をとりますか、ということです。当時のチッソの社員たち。たとえば病院の医師が、原因究明のために猫を使って実験をしていた。でも会社から、そんな実験はやめろ、と言われたからやめてしまった。あるいは多くの社員は気がついていたからこそ、排水口の場所を変えたわけです。それによってさらに被害を広めてしまった。労働組合が分裂をして、そこで初めて、企業の仕打ちに気がついた社員たちが声を上げるようになった。さあ、もしそういうことになったら、みなさんはどういう態度をとりますか。
 いまの日本は廃水の基準に厳しいですから、何かあればすぐわかるでしょう。でもいま、実は、まったく同じようなことが中国のあちこちで起きています。開発途上国で同じようなことが起きているのですね。みなさんが就職をしました。そこの会社が実は、東南アジアあるいはアフリカに、現地の工場を持っている。現地の工場に、要員として派遣されました。そこで働いていた。そうしたらその周辺で、健康被害が出ている住民たちがいることに気がついた。あなたはどういう態度をとるのか。まさにそれが問われている、ということなのですね。決して他人事ではないのだということがわかっていただけるのではないでしょうか。」
(池上彰(1950-),『「経済学」講義 歴史編』lecture5 高度経済成長の歪み,pp.228-229,KADOKAWA(2015))
(索引:)

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