理論と想像力
【理論における想像力の役割:何の手がかりもなしに新たな理論を「想像しようと試みる」には、わたしたちの空想力はあまりに貧弱である。すでに成功を収めている理論と実験データに、この世界の真の姿の兆候が現われている。(カルロ・ロヴェッリ(1956-))】科学の理論は、確かに人間の自由な創造であり、理論における想像力の役割には大きいものがある。しかし、この世界について、何の手がかりもなしに「想像」するには、わたしたちの空想はあまりに貧弱である。わたしたちが所有している手がかり、この世界の真の姿を知るのに利用できる兆候とは、成功を収めた理論と実験データであり、それ以外の何物でもない。科学の歴史を考えてみれば、コペルニクスも、ニュートンも、マクスウェルも、アインシュタインも、決して何の手がかりもなしに、新たな理論を「想像しようと試みる」ことはなかった。
「今日、じつに多くの理論物理学者が、新たな理論を求めて勝手気ままな仮説を立てている。その人たちの口癖が、「想像してみよう……」というものである。
わたしには、このような科学の手法が良い結果をもたらすとは思えない。世界がいかにして成り立っているのか手がかりもなしに「想像」するには、わたしたちの空想はあまりに貧弱である。
わたしたちが所有している手がかりとは、わたしたちが利用できる兆候とは、成功を収めた理論と実験データであり、それ以外の何物でもない。いまだ想像できていない事柄は、こうしたデータや理論から見つけ出してくるべきである。
コペルニクスも、ニュートンも、マクスウェルも、アインシュタインも、そうして科学を発展させてきた。彼らは決して、新たな理論を「想像しようと試みる」ことはなかった。
しかしわたしの見るところ、今日ではあまりに多くの物理学者が、好んで想像の世界に浸かっている。」
(カルロ・ロヴェッリ(1956-)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第4部 空間と時間を超えて、第9章 実験による裏づけとは?、p.212、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))
(索引:想像力、理論)
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(出典:wikipedia)
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