2018年6月3日日曜日

記号とは、ある事物であって、それによって他の事物の相互関係が表現され、後者よりも容易に扱われるものである。その応用としての、幾何学的記号法について。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))

幾何学的記号法

【記号とは、ある事物であって、それによって他の事物の相互関係が表現され、後者よりも容易に扱われるものである。その応用としての、幾何学的記号法について。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))】
 記号とは、ある事物であって、それによって他の事物の相互関係が表現され、後者よりも容易に扱われるものである。
事物         ⇔ 記号
事物におけるある陳述 ⇔ 演算
機械         ⇔ 設計図
物体         ⇔ 平面図

 例えば、平面図における事物のある像の上で、ある幾何学的演算を行ったとするならば、その演算の結果は平面図におけるある点を与えるであろう。そして、それに対応する点を事物において発見する。
 ところで、図形を代数方程式で表現して、幾何学的な問題を解くような場合は、どのような図形が得られるかを計算によって表示することは全く困難であり、また、計算によって発見されたものを図形に表現することも難しい。しかし、図形の点を表わすのに文字を使用し、点と点の関係で図形の特性を文字で表現することによって、さまざまな図形を記号的に表示することができれば、幾何学を驚くほど前進させることになるだろう。

図形の点       ⇔ 文字
点と点の関係     ⇔ 文字と文字の関係
図形         ⇔ 文字の組合せで、記号的に表示する
 「一――記号(characteres)は、ある事物であってそれによって他の事物の相互関係が表現され、後者よりも容易に扱われるものである。したがって記号において行われるすべての演算には事物におけるある陳述が対応する。そしてしばしば事物自体の考察を記号の処理の完成まで延期することができる。実際、記号において求められるものが発見されるならば、初めから設定されている事物と記号の対応関係によって同じものが容易に事物において発見されるであろう。このようにして機械は設計図によって提示され、物体は平面図で表現される。したがって物体の点で、遠近法の規則に従いそれに対応する点が平面図に表示され得ないようなものはないのである。かくて遠近法的に平面図において事物の像の上である幾何学的演算を行ったとするならば、その演算の結果は平面図におけるある点を与えるであろう、そしてそれに対応する点を事物において発見することは容易である。従って体積問題の解も平面で実現される。
 二――しかし記号が精密であればあるほど、即ちそれによって事物の関係が多く表現されればされるほど、その有効性が明らかとなる。私の用いた算術的記号がなすように記号がすべての、事物の相互関係を明示するならば、記号によって把握されないものは事物にないことになろう。代数記号も算術的記号と同じく優れている、それは不定数を表わすからである。等しい諸部分からなる目盛りが与えられたとき幾何学においては数によって表現されない何物もないから、幾何学的研究の何であれ、計算に従属させられることになる。
 三――しかし同じ事物が種々なる方法で記号化されることを知らねばならない。そのときある方法は他の方法よりも適切であるということになろう。物体がそこに遠近法的に作図される図面は凸面であってもよいが、平面図の使用の方が優れている。現行の数の記号―――アラビア数字またはインド数字と呼ばれている―――が古いギリシアとローマの数字より計算に適合していることは誰も承認している。もちろん後者によっても計算は十分に遂行される。同じことは幾何学的使用においても生じる;代数記号は空間において考察されねばならないことすべてを表現するわけではなく(すでに発見され証明された諸原理を前提している)、また点の位置自体を直接表わさない、むしろ量によって長い迂路を通ってそれを扱うのである。その結果、どのような図形が得られるかを計算によって表示することは全く困難であり、なおさら、計算によって発見されたものを図形において実現することは困難である。」(中略)
「五――しかし、このような図形の点を表わす文字の使用によってかなりの図形の特性が表示されることに気付いたときに、任意の図形の点の関係のすべてが同一の文字によって表示されるのではないか、従って全図形が記号的に表示されるのであるまいかということを認識し始めた。何回もの線の作図によってかろうじて与えられる、むしろほとんど与えられないものがこの文字の配列と置き換えのみで発見されるであろう。」(中略)
「七――さて一度図形と物体を文字によって正確に表現できたとするならば、幾何学を驚くほど前進させるのみならず、また光学、運動学と力学、一般に想像力に従属するものすべてを一定の方法によりいわば解析的に扱うことになるであろう。そしてこの驚くべき技術によって将来機械の発明は幾何学的問題の作図以上に困難ではなくなることが実現されるであろう。かくていかなる苦労もなくまた費用も要らずに大変複雑な機械、さらに自然の事物すら図なしで素描されよう。従ってそれは後世に伝承されて、望むときはいつでもその記述からその図が最高の正確さで作られ得るのである。ところが現今図を素描する困難と費用のために多くが失われており、人々は新たに発見された国家のために有用な事物の記述に追いまくられているのである;実際言葉は十分に正確でもなく、また記述にふさわしいほど十分に適合してもいないのである。」(後略)
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『幾何学的記号法』一~三、五、七、ライプニッツ著作集1、pp.318-321、[澤口昭聿・1988])
(索引:幾何学的記号法)

論理学 (ライプニッツ著作集)


(出典:wikipedia
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「すべての実体は一つの全たき世界のようなもの、神をうつす鏡もしくは全宇宙をうつす鏡のようなものである。実体はそれぞれ自分の流儀に従って宇宙を表出するが、それはちょうど、同一の都市がそれを眺める人の位置が違っているのに応じて、さまざまに表現されるようなものである。そこでいわば、宇宙は存在している実体の数だけ倍増化され、神の栄光も同様に、神のわざについてお互いに異なっている表現の数だけ倍増化されることになる。また、どの実体も神の無限な知恵と全能という特性をいくぶんか具えており、できる限り神を模倣している、とさえ言える。というのは、実体はたとえ混雑していても、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出しており、このことは無限の表象ないしは無限の認識にいささか似ているからである。ところで、他のすべての実体もそれなりにこの実体を表出し、これに適応しているので、この実体は創造者の全能を模倣して、他のすべての実体に自分の力を及ぼしていると言うことができる。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『形而上学叙説』九、ライプニッツ著作集8、pp.155-156、[西谷裕作・1990])

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