現実存在命題
【すべての現実存在命題は、真なる偶然的命題である。現実存在命題の証明は、無限個の個体の完備概念を含み、決して完了した証明には達し得ない。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))】(再掲)
真なる偶然的命題:無限に継続される分解を必要とする命題。
しかし、真なる偶然的命題は、経験によって、この命題が真であることがあり得ないと証明される可能性がつねに存在する。これが「偶然的」の意味である。
すべての現実存在命題は、真ではあるが必然的ではない。何故ならば、それは、無限個の命題の使用によって、つまり無限にいたる分解によってのみ証明されるからである。仮に、我々が完備な項に到達可能であるとしても、ある命題は、現実存在するものを無限に含む個体の完備概念によってのみ証明される。よって、決して完了した証明に達することはできない。
「七四――すべての現実存在命題(propositiones existentiales)は真ではあるが必然的ではない。何故ならば、それは、無限個の命題の使用によって、つまり無限にいたる分解によってのみ証明されるからである。即ち、それは、現実存在するものを無限に含む個体の完備概念(notio completa)によってのみ証明されるのである。例えば”ペテロは否認する”と私がいうとき、それを特定の時間について考えると、とにかくその時間の本性が前提されており、その本性は確かにその時間に現実存在したすべてを含んでいる。私が時間を離れて不定に”ペテロは否認する”というとき、すでに否認したのであれ、否認しようとしているのであれ、これが真なるためには少なくともペテロの概念からこの事実が証明されねばならない。しかしペテロの概念は完備で、そのため無限に多くのものを含んでいる。よって決して完了した証明に達することはできないが、その差が任意の与えられた差より小となるように漸近的に接近するのである。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『概念と真理の解析についての一般的研究』七四、ライプニッツ著作集1、p.179、[澤口昭聿・1988])
(索引:現実存在命題)
(出典:wikipedia)
「すべての実体は一つの全たき世界のようなもの、神をうつす鏡もしくは全宇宙をうつす鏡のようなものである。実体はそれぞれ自分の流儀に従って宇宙を表出するが、それはちょうど、同一の都市がそれを眺める人の位置が違っているのに応じて、さまざまに表現されるようなものである。そこでいわば、宇宙は存在している実体の数だけ倍増化され、神の栄光も同様に、神のわざについてお互いに異なっている表現の数だけ倍増化されることになる。また、どの実体も神の無限な知恵と全能という特性をいくぶんか具えており、できる限り神を模倣している、とさえ言える。というのは、実体はたとえ混雑していても、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出しており、このことは無限の表象ないしは無限の認識にいささか似ているからである。ところで、他のすべての実体もそれなりにこの実体を表出し、これに適応しているので、この実体は創造者の全能を模倣して、他のすべての実体に自分の力を及ぼしていると言うことができる。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『形而上学叙説』九、ライプニッツ著作集8、pp.155-156、[西谷裕作・1990])
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)
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