社会的情動、支配と従順
【社会的情動のうち支配と従順も、人間のコミュニティにおいて不可欠な役割を果たすとともに、同時にまた、集団全体の破滅を早めてしまうようなネガティブな作用を及ぼすこともある。(アントニオ・ダマシオ(1944-))】「そして、取り組むべきもう一つ別の自然の闇がある。
「支配」という形質は、その対である「従順」同様、社会的情動の重要な要素である。支配的な人間はコミュニティの問題に解決をもたらそうとする傾向があるから、支配にはポジティブな顔がある。支配的な人間は交渉し、戦いを先導する。支配的な人間は、水、果物、住み処へと通じる道に、あるいは予言と知恵に、救いの道を見いだす。
しかしそういった支配的な人間は、乱暴なごろつき、暴君、圧制者にもなりうる。とくに、支配が「カリスマ」という悪の対と結びつくときはそうだ。不適切に交渉し、他者を誤った戦いへ仕向ける。
そういう人間においては、親切な情動の表示は、彼ら自身と彼らにもっとも近い支援者からなるきわめて小さい集団のために取ってある。
同様に、紛争をめぐる同意や合意の形成にきわめて有用な役割を果たすはずの従順という形質が、暴君のもとでは人間を畏縮させ、あるのはひたすら服従ばかりで、それが集団全体の破滅を早める。」
(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第4章 感情の存在理由、p.215、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))
(索引:社会的情動,支配と従順)
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(出典:wikipedia)
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(アントニオ・ダマシオ(1944-)『スピノザを探し求めて』(日本語名『感じる脳 情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』)第4章 感情の存在理由、pp.209-210、ダイヤモンド社(2005)、田中三彦(訳))
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