音声行為、用語行為、意味行為
【「何かを言う」とは、(a)物理的な音声を発する音声行為、(b)ある構文に従い単語を発する用語行為、(c)連続する複数の単語を使用し、ある言及対象と一定の意味を発する意味行為の、3つの側面から理解できる。(ジョン・L・オースティン(1911-1960))】「何かを言う」とは、
(A・a)ある一定の音声(音声素)を発する行為(音声行為)。
(A・b)ある一定の単語(用語素)を発する行為(用語行為)。
(A・c)連続する複数の単語を使用し、ある言及対象(意味素)と一定の意味を発する行為(意味行為)。
「いまや、「言葉を発する」(issuing an utterance)というときの諸状況を精査すべき時に至った。まずはじめに、私が(A)と標示する一群の意味が存在する。そこでは何かを言うことが、常に何かを行うことであるといえる。このさまざまな意味をすべて足し合わせると、「言う」(say)ということの完全な意味において、何かを「言う」ことになる。定式化の細部に固執しないならば、およそ何かを言うということは、次の三つの行為を遂行していることになるということにわれわれは同意することができるであろう。
(A・a)常に、ある一定の音声(noises)を発する行為(「音声」(phonetic)行為を遂行する)。この場合、発せられた言葉は、音声素(a phone)である。
(A・b)常に、ある一定の音語(vocables)あるいは単語(words)を発する行為を遂行する。すなわち、一定のイントネーションその他を伴い、一定の文法に合致し、かつ、合致している限りの一定の構文の中に組み込まれた、一定の語彙に属し、かつ、属している限りの一定の型の音声を発する行為である。この行為を「用語」行為(phatic act)と呼び、当の発する行為によって発せられた言葉を「用語素」(a pheme)と(言語理論における「言素」(phememe)とは区別して)呼ぶことができるであろう。
(A・c)一般に、ある一定の、ある程度明確な「意味」(sense)と、ある程度明確な「言及対象」(reference)とを伴って、(この両者を合わせたものがいわゆる「意味」(meaning)と一致する)用語素、あるいは、連続する複数の用語素を使用する行為を遂行する。この行為を、「意味」行為(rhetic act)と呼び、当の語を発する行為によって発せられた言葉を「意味素」(a rheme)と呼ぶことができるであろう。」
(ジョン・L・オースティン(1911-1960),『いかにして言葉を用いて事を為すか』(日本語書籍名『言語と行為』),第7講 行為遂行的発言と事実確認的発言,pp.161-162,大修館書店(1978),坂本百大(訳))
(索引:何かを言うこと,音声行為,用語行為,意味行為)
![]() |

(出典:wikipedia)

(ジョン・L・オースティン(1911-1960),『センスとセンシビリア』(日本語書籍名『知覚の言語』),Ⅶ 「本当の」の意味,pp.96-97,勁草書房(1984),丹治信春,守屋唱進)
ジョン・L・オースティン(1911-1960)
ジョン・L・オースティンの関連書籍(amazon)

検索(ジョン・L・オースティン)


政治思想ランキング