がらくたDNA
あらゆる生物のゲノムには、特定の機能を持たないがらくたDNAが多く含まれ、細胞環境の量子測定装置にはかからずに量子領域を漂流している。ひそかな変異と重ね合わせが、細胞環境との相互作用により、不可逆的な測定をもたらす機能を獲得したとき、新たな配列が固定する。(ジョンジョー・マクファデン(1956-))
「じつは、あらゆる生物のゲノムのかなりの割合が、いま仮定した倍増した配列と同じよう に、この種の量子配列漂流を起こしうる。ほとんどの細菌ゲノムの最大約一〇パーセントが、 がらくたDNA、つまり、なんらかの理由で機能を失った配列だと考えられている。人間など のもっと複雑なゲノムでは、がらくたDNAの割合がずっと高くなる。もしかすると、われわ れのDNAの九〇パーセント近くは、がらくたDNAかもしれない。それは細胞の量子測定装 置にはわからないため、それらは量子領域の中でひそかに変異を起こして漂流することができ る。
余分な遺伝子が量子多宇宙を漂流するのを止めることができる唯一の事象は、それが細胞の 周囲環境と絡み合う別の鎖を確立することである。それは、重ね合わせに、細胞の環境と相互 作用できるような新たな酵素、たとえば新たな基質を利用できる酵素などをコードする配列が 含まれるときに起こっただろう。そのときには新たな絡み合いの鎖が形成されて、量子測定の ための新たな経路をつくり出す。その遺伝子の重ね合わせは収縮し、再び単一の古典配列に なっただろう。
周囲環境と絡まるようになったその遺伝子配列は、新たな遺伝子族の祖先となる新たな酵素 をコードしていたかもしれない。その酵素は、細胞に独特の代謝機能を与え、それはその後の 生物の進化にとってきわめて重要なものだったかもしれない。だが、たとえこの重要な配列が 波動関数収縮を起こすために必須の測定を行ったとしても、重ね合わせの中に存在する他の無 数の役立たずの配列よりも大きな実在性を要求することはなかっただろう。もし、このような ことしか起こらなかったとすれば、新たな配列が発生する確率は、古典的な進化のシナリオよ りも多くはならないだろう。
ここで、われわれは人間多宇宙(多世界理論)を呼び出すことによって、この困難な状況か ら抜け出すことができる。そうすれば、われわれが存在するのは、新たな配列によって与えら れた進化的革新があったからだ、と提案するだけでよい。同様にして、タンパク質配列の主要 な遺伝子族すべての発生を説明できる。われわれがいまここにいるという事実によって、われ われの住む宇宙は知的生命体の発生に必要なすべての酵素遺伝子族をすくいとるという大当た りを出した幸運な宇宙だということが保証される。これは、とくに進化の中間部分の配列が存 在しないという事実を説明できるものではあるが、私は前節と同じようにこの説明には不満で ある。」
(ジョンジョー・マクファデン(1956)『量子進化』第12章 量子進化、pp.366-367、共 立出版(2003)、斎藤成也(監訳)、十河誠治、十河和代(訳))
量子力学で生命の謎を解く/ジム・アル=カリーリ/ジョンジョー・マクファデン/水谷淳【3000円以上送料無料】 |