技術的社会科学
技術的社会科学は、社会制度改革を目指す者全員の仕事の基盤として不可欠となるはずの事実を、すべて見つけ出すことを目標とする。それは、制度設計に制約を課すような各種法則であり、社会生活の一般法則の研究へとつながるだろう。 (カール・ポパー(1902-1994))
「歴史主義者によれば、社会学者の務めは、社会構造がそれに沿って変化するような《広範 なトレンド》についての一般的な観念を得るべく努力することであるという。それだけでな く、社会学者はこのプロセスの原因、変化をもたらす力の働きを理解すべく努めなければなら ない。社会の発展の底に流れる一般的トレンドについて仮説を形成する努力が必要である。そ うした法則から予言を導き出すことにより、差し迫った変化に自身を適応させられるというの である。 先に、二種類の予測と、それに関連する二種類の科学を区別したが、この区別をさらに深く 考察すれば、社会学についての歴史主義者の考え方をより明確にできる。 歴史主義者の方法論に対して、私たちは《技術的社会科学》を目的とする別の方法論を考え ることができる。この方法論は、社会制度改革を目指す者全員の仕事の基盤として不可欠とな るはずの事実をすべて見つけ出すことを目標とする、社会生活の一般法則の研究へとつながる だろう。 そうした事実が存在することに疑いの余地はない。私たちは実際、単純にこれらの事実を十 分に考慮していないがゆえに実践不可能となっているユートピア主義的システムを数多く知っ ている。私たちが考えている技術的方法論は、このような非現実的構想を避ける手段をもたら すことを目指すものだ。それは反歴史主義的ではあるが、けっして反歴史的ではない。歴史的 経験は、この種の情報の最も重要な源泉となるはずである。ただ、技術的方法論は社会発展の 法則を見出そうとするのでなく、社会制度の構築に制約を課すような各種法則を探そうとす る。別の種類の一様性(歴史主義者は、そのようなものは存在しないというが)を探究するの である。」
(カール・ポパー(1902-1994),『歴史主義の貧困』,第2章 歴史主義の親自然主義的な見 解,16 歴史的発展の理論,pp.86-88,日経BPクラシックスシリーズ(2013),岩坂彰(訳))
【中古】歴史主義の貧困 社会科学の方法と実践 カール R.ポパー、 久野 収; 市井 三郎 状態良
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