フランシス・ベーコン(1561-1626)の命題集
「不死こそ、子をうみ、家名をあげる目的であり、それこそ、建築物と記念の施設と記念碑 をたてる目的であり、それこそ、遺名と名声と令名を求める目的であり、つまり、その他すべ ての人間の欲望を強めるものであるからである。そうであるなら、知力と学問の記念碑 のほうが、権力あるいは技術の記念碑よりもずっと永続的であることはあきらかである。 というのは、ホメロスの詩句は、シラブル一つ、あるいは文字一つも失われることなく、二千 五百年、あるいはそれ以上も存続したではないか。そのあいだに、無数の宮殿と神殿と城塞と 都市がたちくされ、とりこわされたのに。」(中略)「ところが、人びとの知力と知識の似姿 は、書物のなかにいつまでもあり、時の損傷を免れ、たえず更新されることができるのであ る。これを似姿と呼ぶのも適当ではない。というのは、それはつねに子をうみ、他人の精 神のなかに種子をまき、のちのちの時代に、はてしなく行動をひきおこし意見をうむ からである。それゆえ、富と物資をかなたからこなたへ運び、きわめて遠く隔たった地域 をも、その産物をわかちあうことによって結びつける、船の発明がりっぱなものであると考え られたのなら、それにもまして、学問はどれほどほめたたえられねばならぬことだろう。 学問は、さながら船のように、時という広大な海を渡って、遠く隔たった時代に、つぎつぎ と、知恵と知識と発明のわけまえをとらせるのである。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『学問の進歩』第一巻、八・六、pp.109-110、[服部 英次郎、多田英次・1974])(索引:学問の船)
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『学問の進歩』第一巻、八・六、pp.109-110、[服部 英次郎、多田英次・1974])(索引:学問の船)
《目次》
(1)イドラ論
(2)知識の探究法
(3)技術論
(4)自由意志論
(5)悪を理解することの重要性
(6)反乱の防止法
(1)イドラ論
人間の知性を捕えてしまって、そこに深く根を下ろしている「イドラ」および偽りの概念を前 もって知り、自分を守らなければ、真理への道を開くのは困難になろう。(フランシス・ ベーコン(1561-1626))
今、あなたが、この文を読んでいる。この事実だけから、明らかになる真理がある。以下、読者であるあなたを、一人称「私」で記述する。最も基本的な真理は、私が存在するということ、私が私以外の人たちから様々なことを学んできたということ、この世界には人間以外の様々な動物や植物が存在するということ、真理とはこの宇宙すべてに関するものであることである。
真理は、人間がとらえた真理であり、ここには人間としての何らかの制約があるはずである(種族のイドラ)。また、真理とは過去から現在までの人々の行為に関わるものであり、新たな真理の発見や、その技術的な応用の担い手は間違いなく諸個人に他ならないにも関わらず、諸個人は間違えることがあり(洞窟のイドラ)、真理とは諸個人を超えて人々に共有される何らかの遺産である。
諸個人を超えて引き継がれる真理の獲得のためには、言語の果たす役割が決定的に重要であるが、言語は同時に、誤謬の最大の原因でもある(市場のイドラ)。過去、様々な誤った学説が「真理」として唱えられてきた(劇場のイドラ)。
誤りは、ずるさや意図的な騙しによって混入する(詭弁的哲学)だけではない。私たちは、様々な真理を他者から引き継ぐのであって、もともと他者の言葉を信じやすく、学説の創始者への過度の信用から誤る場合もある。変革を憎む保守的な考えも、古いものを抹殺しようする革新的な考えも、ともに不健康な状態である。また、経験的な技術への過信から誤りが混入したり(経験的哲学)、言葉を使うことによる誤りの混入(衒った学問、迷信的哲学、論争的な学問)は、最もありふれたものである。
()種族のイドラ
種族のイドラ:人間の知性は、いわば事物の光線に対して平らでない鏡、事物の本性に自分の 性質を混じて、これを歪め着色する鏡のごときものである。(フランシス・ベーコン (1561-1626))
()種族のイドラの例
種族のイドラの一例:宇宙の果ての向こう側とか、永遠の時間とか、無限に可分的な線分と か、限りなく原因を考えること。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
種族のイドラの一例:宇宙の果ての向こう側とか、永遠の時間とか、無限に可分的な線分と か、限りなく原因を考えること。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
()洞窟のイドラ
洞窟のイドラ:各個人は、受けた教育、談話した人々、読んだ書物、尊敬し嘆賞する人々の権 威などに応じて、多様で全く不安定な、いわば偶然的で特殊な性質を、それぞれ持っている。 (フランシス・ベーコン(1561-1626))
()個人に影響を及ぼす諸要因
性質、欲望と目的、習慣、生活様式、長所と強み、弱点と短所、無防備なところ、友人と一味 徒党と子分たち、反対者とそねむ者と競争者、機嫌と潮時、主義、しきたり、習性、行動特 性・評価・重要性。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
性質、欲望と目的、習慣、生活様式、長所と強み、弱点と短所、無防備なところ、友人と一味 徒党と子分たち、反対者とそねむ者と競争者、機嫌と潮時、主義、しきたり、習性、行動特 性・評価・重要性。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
()個人の意志と欲望に影響を及ぼす方法
道徳論:精神の健康を回復し良好な状態を保持するため、意志と欲望に影響を及ぼし性格を変 える方法は、習慣、鍛錬、習性、教育、模範、模倣、競争、交わり、友人、賞賛、非難、勧 告、名声、おきて、書物、学問である。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
道徳論:精神の健康を回復し良好な状態を保持するため、意志と欲望に影響を及ぼし性格を変 える方法は、習慣、鍛錬、習性、教育、模範、模倣、競争、交わり、友人、賞賛、非難、勧 告、名声、おきて、書物、学問である。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
()市場のイドラ
市場のイドラ:人間を社会的に結合する会話、生活の中で獲得されてきた言葉は、驚くべき仕 方で知性の妨げをし、人々を空虚で数知れぬ論争や虚構へと連れ去る。(フランシス・ ベーコン(1561-1626))
()政治における噂の影響の研究
噂は、政治において非常に大きな力を持ち大きな役割を演ずる。それ故、噂の真偽の判別、発 生と拡散、収束と消滅などを研究し、十分に警戒することが必要だ。(フランシス・ベー コン(1561-1626))
噂は、政治において非常に大きな力を持ち大きな役割を演ずる。それ故、噂の真偽の判別、発 生と拡散、収束と消滅などを研究し、十分に警戒することが必要だ。(フランシス・ベー コン(1561-1626))
()劇場のイドラ
劇場のイドラ:哲学の様々な教説、論証の誤った諸規則が、まるで架空的で舞台的な世界を作 り出す芝居のように、生み出され演ぜられてきた。(フランシス・ベーコン(1561- 1626))
劇場のイドラ:哲学の様々な教説、論証の誤った諸規則が、まるで架空的で舞台的な世界を作 り出す芝居のように、生み出され演ぜられてきた。(フランシス・ベーコン(1561- 1626))
()過去の哲学の研究の必要性
過去の哲学は、各々ある特定の真理を、他の哲学よりも明確に見ていたかもしれず、集録と評 価が必要である。その際、各哲学に調和と統一を与えている根本的な思想や方法を壊さないよ うにすること。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
()忘れ去られた真理もある
最新の学説や学派が、つねに最善のものであると考えてしまうのは、過ちである。時には、重 い、中身のつまった価値のある学説が、忘れ去られている場合もある。(フランシス・ ベーコン(1561-1626))
過去の哲学は、各々ある特定の真理を、他の哲学よりも明確に見ていたかもしれず、集録と評 価が必要である。その際、各哲学に調和と統一を与えている根本的な思想や方法を壊さないよ うにすること。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
()忘れ去られた真理もある
最新の学説や学派が、つねに最善のものであると考えてしまうのは、過ちである。時には、重 い、中身のつまった価値のある学説が、忘れ去られている場合もある。(フランシス・ ベーコン(1561-1626))
()誤った学説の諸原因
学問を空想的にしてしまう原因:(a)ずるさによる意図的な騙し、(b)人の信じやすい傾向、 (c)他愛のないお喋り、詮索、噂、(d)技術に対する過度の信頼、(e)学説の創始者への過度の 信用。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
(a)ずるさによる意図的な騙し
()詭弁的哲学
詭弁的哲学に注意せよ。それは、まず恣意的な一般的命題を作り、それを正当化するため経験 的事実を歪め、相手を説き伏せるために言葉を飾る。(フランシス・ベーコン(1561- 1626))
詭弁的哲学に注意せよ。それは、まず恣意的な一般的命題を作り、それを正当化するため経験 的事実を歪め、相手を説き伏せるために言葉を飾る。(フランシス・ベーコン(1561- 1626))
(b)人の信じやすい傾向
(c)他愛のないお喋り、詮索、噂
言語を媒介としていることによる。
()衒った学問
衒った学問には、注意せよ。それは、事柄よりも言葉を追いまわす学問の病気である。字句、 洗練された構成、文節の心地よいリズム、ことばのあやと比喩。(フランシス・ベーコン (1561-1626))
衒った学問には、注意せよ。それは、事柄よりも言葉を追いまわす学問の病気である。字句、 洗練された構成、文節の心地よいリズム、ことばのあやと比喩。(フランシス・ベーコン (1561-1626))
()迷信的哲学
迷信的哲学には、注意せよ。それは、誤謬を神格化し虚影を崇拝し、空想的で大げさで詩的で あり、知性の野心にへつらい虜にする、知性の疫病である。(フランシス・ベーコン (1561-1626))
迷信的哲学には、注意せよ。それは、誤謬を神格化し虚影を崇拝し、空想的で大げさで詩的で あり、知性の野心にへつらい虜にする、知性の疫病である。(フランシス・ベーコン (1561-1626))
()論争的な学問
論争的な学問には注意せよ。それは、新規で珍しい用語で独断的な主張をし、論争を引き起こ す。しかし実のところ、より総合的な諸学問の調和の中においては、この類いの反対論は、簡 単に論破されるようなものなのである。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
論争的な学問には注意せよ。それは、新規で珍しい用語で独断的な主張をし、論争を引き起こ す。しかし実のところ、より総合的な諸学問の調和の中においては、この類いの反対論は、簡 単に論破されるようなものなのである。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
(d)技術に対する過度の信頼
()経験的哲学
経験的哲学に注意せよ。それは、数少ない特殊な実験事実をもとに一般的命題を作り、さらに 普遍的な原理へと跳躍し、残余のことは原理に合わせて歪められる。(フランシス・ベー コン(1561-1626))
経験的哲学に注意せよ。それは、数少ない特殊な実験事実をもとに一般的命題を作り、さらに 普遍的な原理へと跳躍し、残余のことは原理に合わせて歪められる。(フランシス・ベー コン(1561-1626))
(e)学説の創始者への過度の信用
()保守的な考え、革新的な考え
変革を憎む保守的な考え、古いものを抹殺する急進的な考えは、ともに不健康な状態である。 古いものを尊敬し、その基礎の上に立って最善の道を見極め、見極めた確信に基づき変革する こと。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
変革を憎む保守的な考え、古いものを抹殺する急進的な考えは、ともに不健康な状態である。 古いものを尊敬し、その基礎の上に立って最善の道を見極め、見極めた確信に基づき変革する こと。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
()限りない未知の世界
どんなものがいまさら新たに発見されるであろうかという疑念を抱くことは、過ちである。大 昔から気づかれずに見落とされているものが、いくらでもあるのだ。(フランシス・ベー コン(1561-1626))
今まで発見も理解もされなかったことは、将来に向かっても発見も理解もされ得ないことだと 思うことは、小心、貧しさ、乏しさを示すだけでなく、僭越かつ傲慢である。(フランシ ス・ベーコン(1561-1626))
(2)知識の探究法
観察や実験の結果を集めるだけ(経験派)では、知識は得られない。
(1)知識探究の全体の構造
経験派は蟻の流儀でただ集めては使用する。合理派は蜘蛛のやり方で、自らのうちから出して 網を作る。しかるに蜜蜂のやり方は中間で、庭や野の花から材料を吸い集めるが、それを自分 の力で変形し消化する。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
(2)経験派(蟻の流儀)
()世界の分析と解剖
諸学の目標ないし目的は、抽象的で澄んで明るく静けさをもった知恵かもしれないが、たとえ 混乱と動乱の中にあっても、最も熱心な世界の分析と解剖を通してでなければ、世界の真の雛 型には、到達できない。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
()過度の一般化に注意せよ
彼らが最も感心した考え方や、最もよく研究した学問の色で、彼の考えと学説を染まらせ、他 の一切のものにも、まったく真実でない、本来とは違う色をつけてしまうのは、過ちである。 (フランシス・ベーコン(1561-1626))
(2)合理派(蜘蛛のやり方)
()精神と知性に対する過度の尊敬
人間の精神と知性に対する過度の尊敬と一種の崇拝が、過ちに陥らせることがある。大きな書 物である自然を、一字一字を拾いながら、少しずつ判じ取るように観察し考察しなければ、真 理には到達できない。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
()独断的な哲学
疑うことがもどかしく、断定をいそぐあまりに、時機が十分熟するまで判断をさしひかえない ことは、あやまちである。疑いからはじめることに甘んじれば、確信に終わるであろう。 (フランシス・ベーコン(1561-1626))
(3)蜜蜂のやり方
()普遍的認識を扱う第一哲学の必要性
いろいろ専門に分かれた技術と学問の中だけにとどまれば、技術と学問の進歩を止め、阻まず にはおかない。事物の普遍的認識あるいは「第一哲学」が必要である。(フランシス・ ベーコン(1561-1626))
()帰納法と中間的公理
帰納法:感覚や実験により事物の本性に迫り、低次の命題から高次の命題へ、飛躍することな く段階的に探求してゆく。真実で実質的な生きた公理は、中間的公理であり、空想的な一般的 公理ではない。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
()帰納法の普遍性
推論式による通常の論理学がすべての学問に適用できるように、帰納法も、自然哲学だけでな く、残りの諸学、論理学・倫理学・政治学についても、適用される。(フランシス・ベー コン(1561-1626))
()異常で驚異的な現象による理論の是正
異常な自然の歴史や驚異的な現象を発見、収集し、研究することは、次の点で効用がある。 (1)熟知な例に基づいた一般的命題や学説の偏見を是正する。(2)驚異的な現象を人工的に実 演する技術を発見する。なお、魔術、妖術、夢、占いなど迷信的で超自然的なものも、無意味 ではなかろう。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
(a)一般的命題は、ありふれた熟知の例のみに基づいて打ちたてられるのがつねであるが、そ の偏見を是正するのに異常で驚異的な現象が役立つ。
(b)人工的に驚異的な現象を実演する技術を見つけるためには、自然の驚異を研究して、それ がどのような仕組みで起こっているのかを研究するのが、一番の近道である。
(c)なお、魔術や妖術や夢や占いなどに関する迷信的で超自然力のせいにされている結果も、 どのような場合に、どの程度まで自然的原因に関係があるのかがまだわかっていないので、事 実や証拠に基づいて、研究することにも意義があろう。
異常な自然の歴史や驚異的な現象を発見、収集し、研究することは、次の点で効用がある。 (1)熟知な例に基づいた一般的命題や学説の偏見を是正する。(2)驚異的な現象を人工的に実 演する技術を発見する。なお、魔術、妖術、夢、占いなど迷信的で超自然的なものも、無意味 ではなかろう。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
(a)一般的命題は、ありふれた熟知の例のみに基づいて打ちたてられるのがつねであるが、そ の偏見を是正するのに異常で驚異的な現象が役立つ。
(b)人工的に驚異的な現象を実演する技術を見つけるためには、自然の驚異を研究して、それ がどのような仕組みで起こっているのかを研究するのが、一番の近道である。
(c)なお、魔術や妖術や夢や占いなどに関する迷信的で超自然力のせいにされている結果も、 どのような場合に、どの程度まで自然的原因に関係があるのかがまだわかっていないので、事 実や証拠に基づいて、研究することにも意義があろう。
()過去の誤りを訂正することによる大きな希望
最大の希望:過ぎたことに関して最悪のことは、未来に対しては最善と見られねばならない。 なぜなら、私たちの課題や問題が、過去の誤りによるのなら、それを除き訂正することで、大 きく好転させ得る希望がある。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
最大の希望:過ぎたことに関して最悪のことは、未来に対しては最善と見られねばならない。 なぜなら、私たちの課題や問題が、過去の誤りによるのなら、それを除き訂正することで、大 きく好転させ得る希望がある。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
()質問や疑問の一覧表
質問や疑問の一覧表の効用は、(1)誤りをもとに誤りを積み重ねてしまうことを防止する、 (2)不用意に見逃されてしまいやすい問題へ注意を喚起し、解決を促す。(フランシス・ ベーコン(1561-1626))
()誤りの一覧表
言葉として、また意見としては通用しているが、それにもかかわらず、嘘であるとはっきり看 破され確認されているような誤りは、一覧にしておく必要がある。(フランシス・ベーコ ン(1561-1626))
()記憶術の目的
記憶術の意図は次の通り。(1)目的の記憶を想起するための範囲を「予知」すること、(2)知 的な想念を記憶しやすいように、感覚的な映像で「象徴」すること。(フランシス・ベー コン(1561-1626))
()知識の伝達方法
二つの方法:(1)教え込むことで、伝達された知識を利用させる方法、(2)発見された方法 や、基礎的な考え方や、証明の仕方を学ばせ、伝達された知識を成長させられるような根を移 植する方法。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
(3)技術論
(1)目的と手段
学問や技術そのものが、諸悪の原因であるという非難には、注意すること。なぜなら、知能・ 勇気・力・容姿・富などと同様に、それは正しい理性と健全な宗教の導き次第だからだ。 (フランシス・ベーコン(1561-1626))
(2)欲する結果を明確にする
(2)欲する結果を明確にする
事物の本性が人間の精神に満足を与えない場合に、想像力が自由に、より豊かな偉大さ、厳格 な善、完全な多様性とを表現する、極度に無拘束な学問の部門がある。詩である。(フラ ンシス・ベーコン(1561-1626))
()フランシス・ベーコンの夢:理想と考える一つの法体系、あるいは国家の最良の様態、型を記 述すること。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
()フランシス・ベーコンの夢:理想と考える一つの法体系、あるいは国家の最良の様態、型を記 述すること。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
(3)原因から結果を生ぜしめる自然の法則を知る
(4)欲する結果のための原因を配置する
人間は、原因から結果を生ぜしめる自然の法則を知り、欲する結果のための原因を配置する。 そして、あとは自然が自らのうちで成しとげる。このようにして、人間の知識と力とはひとつ に合一する。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
(5)あとは自然が自らのうちで成しとげる
(6)知識を求める真の目的
(a)愛(人生の福祉と有用 )
(a.1)人類の利益になり役に立つよう、誠実に立派に使うため。創造主を賛美し人間のみじめさを救うために、豊かな倉庫を求めているようである。
参考:知識の真の目的は、人生の福祉と有用である。力への欲求や知識への欲求からではなく、愛の うちで学問は成しとげられ、愛によって支配されるべきである。(フランシス・ベーコン (1561-1626))
参考: 学問の真の目的は、人類の利益に役立つことだ。以下のような目的の見誤りは大きな過ちであ る。金儲けや生活の手段、戦いに勝つための知恵、装飾と名声、好奇心と探求の欲求、心を楽 しませてくれる喜び。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
(b)野心
(b.1)自分の祖国において、自己の力を伸ばそうと欲する。
(b.2)祖国の勢力と支配とを、人類の間に伸長することに努める。
(b.3)もしも人が、人類そのものがもつ全世界への力と支配とを、革新し伸長することに努めるとしたならば、疑いもなくその野心こそは、残余のものに比べて、より健全でもあればより高貴でもある。
参考:野心の3つの種類:(1)自己の力を伸ばす、(2)祖国の力を伸ばす、(3)人類の力を伸ばす。よ り健全で高貴なのは(3)だ。そして、力の伸長に肝要なのは、自然はこれに従うこと(知識) なくしては、命令されない(技術)ということだ。(フランシス・ベーコン(1561- 1626))
(c)力への欲求
(c.1)金儲けと生活の資のため。
利得や販売のための店を、求めているようである。
(c.2)知恵で勝って相手をやっつけることができるため。戦い争うための砦や展望のきく陣地を求めているようである。
(c.3)装飾と名声のため。高慢な精神が、その上に登るための高い塔を求めているようである。
利得や販売のための店を、求めているようである。
(c.2)知恵で勝って相手をやっつけることができるため。戦い争うための砦や展望のきく陣地を求めているようである。
(c.3)装飾と名声のため。高慢な精神が、その上に登るための高い塔を求めているようである。
(d)知識への欲求
(d.1)自然な好奇心と探求の欲求のため。さ迷い歩く移り気な精神が、美しい景色を見ながらあちこちと歩くためのテラスを求めて いるようである。
(d.2)様々な喜びで心を楽しませるため。探し求めて落ち着かない精神を休ませるための臥床を求めているようである。
(d.1)自然な好奇心と探求の欲求のため。さ迷い歩く移り気な精神が、美しい景色を見ながらあちこちと歩くためのテラスを求めて いるようである。
(d.2)様々な喜びで心を楽しませるため。探し求めて落ち着かない精神を休ませるための臥床を求めているようである。
(e)不死の欲求
不死への欲求が、名声を求めさせ、建築物と記念碑を作らせてきたが、学問こそ永続するだろ う。それは、さながら船のように、時という広大な海を渡って、遠く隔たった時代に、人々の 精神に種をまき、意見と行動を通じて、知恵と知識と発明の分け前を取らせる。(フラン シス・ベーコン(1561-1626))
(e.1)子をうみ、家名をあげ、不死を得る。
(e.2)遺名と名声と令名を求め、不死を得る。
(e.3)建築物と記念の施設と記念碑をたて、不死を得る。
(e.4)知力と学問の記念碑により、不死を得る。
人びとの知力と知識の似姿は、書物の中にいつまでもあり、時の損傷を免れ、たえず更新さ れることができる。それはつねに子を産み、他人の精神のなかに種子をまき、のちのちの時代 に、果てしなく行動を引き起こし意見を生む。「学問は、さながら船のように、時という広大 な海を渡って、遠く隔たった時代に、つぎつぎと、知恵と知識と発明のわけまえをとらせるの である。」
不死への欲求が、名声を求めさせ、建築物と記念碑を作らせてきたが、学問こそ永続するだろ う。それは、さながら船のように、時という広大な海を渡って、遠く隔たった時代に、人々の 精神に種をまき、意見と行動を通じて、知恵と知識と発明の分け前を取らせる。(フラン シス・ベーコン(1561-1626))
(e.1)子をうみ、家名をあげ、不死を得る。
(e.2)遺名と名声と令名を求め、不死を得る。
(e.3)建築物と記念の施設と記念碑をたて、不死を得る。
(e.4)知力と学問の記念碑により、不死を得る。
人びとの知力と知識の似姿は、書物の中にいつまでもあり、時の損傷を免れ、たえず更新さ れることができる。それはつねに子を産み、他人の精神のなかに種子をまき、のちのちの時代 に、果てしなく行動を引き起こし意見を生む。「学問は、さながら船のように、時という広大 な海を渡って、遠く隔たった時代に、つぎつぎと、知恵と知識と発明のわけまえをとらせるの である。」
(4)自由意志論
《目次》
(1)理性による支配から、理性を妨害する3つのもの
(2)理性を助けるための方法
(2.1) 巧妙な詭弁への対策(論理学)
(2.1) 巧妙な詭弁への対策(論理学)
(2.2) 激烈な情念と感情への対策(道徳哲学)
(2.3) しつこい想像、印象への対策(弁論術)
(2.3.1)想像力の大きな力、信仰の力
(2.3.2)想像力と感情の制御(道徳学、政治学)
(1)理性による支配から、理性を妨害する3つのもの
(a1) 巧妙な詭弁:論理学に関係のある罠で、まちがった推論によって理性は罠をかけられ る。
(b1) 激烈な情念と感情:道徳哲学に関係し、我を忘れさせられる。
(c1) しつこい想像、印象:弁論術に関係のある罠で、印象あるいは所見にまといつかれる。
(2)理性を助けるための方法
意志を、理性の命ずる方向に動かすにあたっては、どうすれば良いか。すなわち理性の命令 を、想像力に受け入れさせるには、どうすれば良いか。
(2.1) 巧妙な詭弁への対策(論理学)
意志を、理性の命ずる方向に動かすにあたっては、どうすれば良いか。すなわち理性の命令 を、想像力に受け入れさせるには、どうすれば良いか。
(2.1) 巧妙な詭弁への対策(論理学)
論理学の力をかりて巧妙な詭弁を見破り、理性を確実にする。理性は未来と時間の全体とを見るという点で、情念とは異なる。
(2.2) 激烈な情念と感情への対策(道徳哲学)
(2.2) 激烈な情念と感情への対策(道徳哲学)
(a)感情そのものにも、つねに、善への欲求がある。
(b)ところが、感情は現在だけを見るので、未来と時間の全体とを見る理性よりも、いっそ う多く想像力をかきたて、理性はふつう負かされてしまう。
そこで、
(2.3) しつこい想像、印象への対策(弁論術)
(b)ところが、感情は現在だけを見るので、未来と時間の全体とを見る理性よりも、いっそ う多く想像力をかきたて、理性はふつう負かされてしまう。
そこで、
(2.3) しつこい想像、印象への対策(弁論術)
弁論術の力をかりて雄弁と説得とで、理性が命ずるもの、例えば未来の遠いものを現在 のように見えさせてしまえば、そのときは想像力が、現在だけを見ている感情から、理性のほ うへ寝がえり、理性が勝つ。
(2.3.1)想像力の大きな力、信仰の力
参考:想像力は、感官や理性の代理人となり真の判定、善の実行を助けるが、想像力自身に真や善の 権威が付与されるか、それを僭称している。信仰の問題で、想像力は理性の及ばないところま で高まる。比喩と象徴、たとえ話、まぼろし、夢。(フランシス・ベーコン(1561- 1626))
(a) 悟性と理性は、決定と判定を生む。
(b) 意志と欲望と感情は、行動と実行を生む。
(c) 想像力は、感官と理性の代理人あるいは「使者」の役割をつとめる。
・感官が、想像力に映像を送ってはじめて、理性が「真」であると判定を下す。
参考:想像力は、感官や理性の代理人となり真の判定、善の実行を助けるが、想像力自身に真や善の 権威が付与されるか、それを僭称している。信仰の問題で、想像力は理性の及ばないところま で高まる。比喩と象徴、たとえ話、まぼろし、夢。(フランシス・ベーコン(1561- 1626))
(a) 悟性と理性は、決定と判定を生む。
(b) 意志と欲望と感情は、行動と実行を生む。
(c) 想像力は、感官と理性の代理人あるいは「使者」の役割をつとめる。
・感官が、想像力に映像を送ってはじめて、理性が「真」であると判定を下す。
・理性が、想像力に映像を送ってはじめて、理性の判定「善」が実行に移される。すなわち、 想像はつねに意志の運動に先だつ。能弁によって行われるすべての説得や、事物の真のすがた を色どり偽装するような、説得に似た性質の印象づけにおいて、理性を動かすのは、主として 想像力に訴えることによるのである。
(d) 想像力は、感官や理性からの「真」や「善」の伝言の使者に過ぎないのではなく、それ 自身決して小さくない権威そのものを付与されるか、そうっとそれを僭称している。すなわ ち、感官や理性の伝言を超えて、自ら「真」や「善」の権威を僭称する。
(e) 信仰と宗教の問題において、われわれはその想像力を理性の及ばないところに高めるので あって、それこそ、宗教がつねに比喩と象徴とたとえ話とまぼろしと夢によって、精神に近づ こうとした理由なのである。
(d) 想像力は、感官や理性からの「真」や「善」の伝言の使者に過ぎないのではなく、それ 自身決して小さくない権威そのものを付与されるか、そうっとそれを僭称している。すなわ ち、感官や理性の伝言を超えて、自ら「真」や「善」の権威を僭称する。
(e) 信仰と宗教の問題において、われわれはその想像力を理性の及ばないところに高めるので あって、それこそ、宗教がつねに比喩と象徴とたとえ話とまぼろしと夢によって、精神に近づ こうとした理由なのである。
(2.3.2)想像力と感情の制御(道徳学、政治学)
参考:ある感情を、他の感情によってどう制御し変化させるかについての研究は、道徳と政治に関す ることがらに特別に役だつ。想像力により感情が静められ、あるいは燃え立たされ、行動が抑 制され、あるいは発動する。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
(a) 想像力により、どのように感情が燃え立たされ、かき立てられるか。抑えられていた感情 が、どのようにして外に出るか、それがどう活動するか。
(b) 想像力により、感情がどのように静められ、抑えられるか。感情が行動に発展するのをど う抑制されるか。
(c) それらの感情がどのように重なりあうか、どのようにたがいに戦い対立し合うか。ある感 情が、他の感情によってどのように制されるか。どう変化するか。
悪のすべての種類と本性を心得ていなければ、ヘビの賢さとハトの素直さを兼ねそなえること はできない。なぜなら、悪を見破ることなくしては悪に勝つことはできず、邪悪な人たちを改 悛させることもできないから。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
悪に対して、どう対処するか。
(1)無防備にも、ぺてんと邪悪な手管に先手を取られれば、あなたの生命が危うくされるが、 逆に、あなたが先に悪を見破れば、悪はその効力を失う。
(2)あなたが悪を知っているということを認めさせることができなくては、卑劣で精神の腐敗 した人たちは、一切の道徳を軽蔑することになる。また、正直な人も、悪の知識の助け無くし ては、邪な人たちを改悛させることができない。
(3)従って、人間は何をなすべきかとは別に、人間は実際に何をなしているか、すなわち悪の すべての種類と本性を心得ていなければ、ヘビの賢さとハトの素直さを兼ねそなえることはで きない。
狡猾の一覧表(フランシス・ベーコン(1561-1626))
(1)相手を用心深く見る。
(2)別の話しで喜ばせ、油断に乗じて提案する。
(3)相手が考えるゆとりがない時に、不意打ちで提案する。
(4)成功を願っているふりをして、失敗する要素を提案する。
(5)言い出したことを途中で打ち切り、知りたいという欲望を掻き立てる。
(6)いつもと違う様子や顔つきを見せて、相手に尋ねさせる。
(7)ほかの誰かに口火を切ってもらい、もっと発言力のある人が、その人の質問に答えるよう なかたちで、言い(8)「世間の噂では」とか「こんな話が広がっている」とか。
(9)最も重要なことを、付けたりであるかのように追伸で書く。
(10)最も話したいことを、ほとんど忘れていたことのように話す。
(11)偶然を装って、相手に見せたい行動を、相手に見せる。
(12)相手に使わせようとする言葉を、ふと漏らしておき、相手が使ったら、それにつけこむ。
(13)自分が他の人に言ったことを、まるで他の人が自分に言ったことのように、他の人のせい にする。
(14)「私はこういうことはしない」。
(15)むきつけに言わず、噂話や物語を使って間接的に言う。
(16)もらいたいと思う返事を、あらかじめ自分の言葉や提案でまとめておく。
(17)自分の言いたいことは隠して、多くの別のことを持ち出しまわり道し、忍耐強く長い間待 つ。
(18)不意の、無遠慮な、思いがけない問い。
参考:ある感情を、他の感情によってどう制御し変化させるかについての研究は、道徳と政治に関す ることがらに特別に役だつ。想像力により感情が静められ、あるいは燃え立たされ、行動が抑 制され、あるいは発動する。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
(a) 想像力により、どのように感情が燃え立たされ、かき立てられるか。抑えられていた感情 が、どのようにして外に出るか、それがどう活動するか。
(b) 想像力により、感情がどのように静められ、抑えられるか。感情が行動に発展するのをど う抑制されるか。
(c) それらの感情がどのように重なりあうか、どのようにたがいに戦い対立し合うか。ある感 情が、他の感情によってどのように制されるか。どう変化するか。
(5)悪を理解することの重要性
悪のすべての種類と本性を心得ていなければ、ヘビの賢さとハトの素直さを兼ねそなえること はできない。なぜなら、悪を見破ることなくしては悪に勝つことはできず、邪悪な人たちを改 悛させることもできないから。(フランシス・ベーコン(1561-1626))
悪に対して、どう対処するか。
(1)無防備にも、ぺてんと邪悪な手管に先手を取られれば、あなたの生命が危うくされるが、 逆に、あなたが先に悪を見破れば、悪はその効力を失う。
(2)あなたが悪を知っているということを認めさせることができなくては、卑劣で精神の腐敗 した人たちは、一切の道徳を軽蔑することになる。また、正直な人も、悪の知識の助け無くし ては、邪な人たちを改悛させることができない。
(3)従って、人間は何をなすべきかとは別に、人間は実際に何をなしているか、すなわち悪の すべての種類と本性を心得ていなければ、ヘビの賢さとハトの素直さを兼ねそなえることはで きない。
狡猾の一覧表(フランシス・ベーコン(1561-1626))
(1)相手を用心深く見る。
(2)別の話しで喜ばせ、油断に乗じて提案する。
(3)相手が考えるゆとりがない時に、不意打ちで提案する。
(4)成功を願っているふりをして、失敗する要素を提案する。
(5)言い出したことを途中で打ち切り、知りたいという欲望を掻き立てる。
(6)いつもと違う様子や顔つきを見せて、相手に尋ねさせる。
(7)ほかの誰かに口火を切ってもらい、もっと発言力のある人が、その人の質問に答えるよう なかたちで、言い(8)「世間の噂では」とか「こんな話が広がっている」とか。
(9)最も重要なことを、付けたりであるかのように追伸で書く。
(10)最も話したいことを、ほとんど忘れていたことのように話す。
(11)偶然を装って、相手に見せたい行動を、相手に見せる。
(12)相手に使わせようとする言葉を、ふと漏らしておき、相手が使ったら、それにつけこむ。
(13)自分が他の人に言ったことを、まるで他の人が自分に言ったことのように、他の人のせい にする。
(14)「私はこういうことはしない」。
(15)むきつけに言わず、噂話や物語を使って間接的に言う。
(16)もらいたいと思う返事を、あらかじめ自分の言葉や提案でまとめておく。
(17)自分の言いたいことは隠して、多くの別のことを持ち出しまわり道し、忍耐強く長い間待 つ。
(18)不意の、無遠慮な、思いがけない問い。
(6)反乱の防止法
反乱の防止法:(a)既得権益の維持(b)上層階級取り込み(c)大きすぎない貧富の差(d)適度の 自由(e)希望を抱かせる(f)政策の真の意図秘匿(g)反対派リーダー籠絡(h)反対派分裂(i)反 対派分断化(j)実力行使(フランシス・ベーコン(1561-1626))
一般に、国民を怒らせて政権に反対する共通の目的のために団結させるようなことが起こら ない限り、政権交代は起らない。注意すべき政策は、
(1)既得権益の維持、重税には注意すること。
(2)上層階級の取り込み
(a)しかし一般に、多数派である貧しい人たちが不満を抱えていても、彼らはやっと生活す るのに忙しく、政治的意識にも乏しく、余裕も知識もある恵まれている人たちによって扇動さ れない限り政治的な動きは概してにぶい。そこで、大切なことは次のことである。
(b)上層階級と一般大衆の両方に不満を抱かせないこと。とくに、上層階級の人たちの不満 が危険である。
(3)貧富の差を大きくし過ぎないこと。
貧富の差や不公平があったとしても、ある程度の生活水準が確保できていれば、政権は維持 できる。その際、考慮すべきは次のことである。
(4)国民に適度の自由を与えること。
(5)国民に希望を抱かせ続けること。
(6)政策の真の意図秘匿
秘密にしておくべき政策の真の意図を、ふとした「失言」によって漏らさないこと。
また、不満を持つ人たちや反対派の人たちを団結させないように、しっかり手を打つこと。
(7)反対派リーダー籠絡
反対派のリーダーを国家の側に引き入れること。
(8)反対派分裂
反対派にもう一人のリーダーを立て、反対派を分裂させること。
(9)反対派分断化
反対派を分裂、分断し、お互いに反目させること。
(10)実力による担保も必要だ。
「不死こそ、子をうみ、家名をあげる目的であり、それこそ、建築物と記念の施設と記念碑 をたてる目的であり、それこそ、遺名と名声と令名を求める目的であり、つまり、その他すべ ての人間の欲望を強めるものであるからである。そうであるなら、知力と学問の記念碑 のほうが、権力あるいは技術の記念碑よりもずっと永続的であることはあきらかで
ある。 というのは、ホメロスの詩句は、シラブル一つ、あるいは文字一つも失われることなく、二千 五百年、あるいはそれ以上も存続したではないか。そのあいだに、無数の宮殿と神殿と城塞と 都市がたちくされ、とりこわされたのに。」(中略)「ところが、人びとの知力と知識の似姿 は、書物のなかにいつまでもあり、時の損傷を免れ、たえず更新されることができるのであ る。これを似姿と呼ぶのも適当ではない。というのは、それはつねに子をうみ、他人の精 神のなかに種子をまき、のちのちの時代に、はてしなく行動をひきおこし意見をうむ からである。それゆえ、富と物資をかなたからこなたへ運び、きわめて遠く隔たった地域 をも、その産物をわかちあうことによって結びつける、船の発明がりっぱなものであると考え られたのなら、それにもまして、学問はどれほどほめたたえられねばならぬことだろう。 学問は、さながら船のように、時という広大な海を渡って、遠く隔たった時代に、つぎつぎ と、知恵と知識と発明のわけまえをとらせるのである。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『学問の進歩』第一巻、八・六、pp.109-110、[服部 英次郎、多田英次・1974])(索引:学問の船)
一般に、国民を怒らせて政権に反対する共通の目的のために団結させるようなことが起こら ない限り、政権交代は起らない。注意すべき政策は、
(1)既得権益の維持、重税には注意すること。
(2)上層階級の取り込み
(a)しかし一般に、多数派である貧しい人たちが不満を抱えていても、彼らはやっと生活す るのに忙しく、政治的意識にも乏しく、余裕も知識もある恵まれている人たちによって扇動さ れない限り政治的な動きは概してにぶい。そこで、大切なことは次のことである。
(b)上層階級と一般大衆の両方に不満を抱かせないこと。とくに、上層階級の人たちの不満 が危険である。
(3)貧富の差を大きくし過ぎないこと。
貧富の差や不公平があったとしても、ある程度の生活水準が確保できていれば、政権は維持 できる。その際、考慮すべきは次のことである。
(4)国民に適度の自由を与えること。
(5)国民に希望を抱かせ続けること。
(6)政策の真の意図秘匿
秘密にしておくべき政策の真の意図を、ふとした「失言」によって漏らさないこと。
また、不満を持つ人たちや反対派の人たちを団結させないように、しっかり手を打つこと。
(7)反対派リーダー籠絡
反対派のリーダーを国家の側に引き入れること。
(8)反対派分裂
反対派にもう一人のリーダーを立て、反対派を分裂させること。
(9)反対派分断化
反対派を分裂、分断し、お互いに反目させること。
(10)実力による担保も必要だ。
「不死こそ、子をうみ、家名をあげる目的であり、それこそ、建築物と記念の施設と記念碑 をたてる目的であり、それこそ、遺名と名声と令名を求める目的であり、つまり、その他すべ ての人間の欲望を強めるものであるからである。そうであるなら、知力と学問の記念碑 のほうが、権力あるいは技術の記念碑よりもずっと永続的であることはあきらかで
ある。 というのは、ホメロスの詩句は、シラブル一つ、あるいは文字一つも失われることなく、二千 五百年、あるいはそれ以上も存続したではないか。そのあいだに、無数の宮殿と神殿と城塞と 都市がたちくされ、とりこわされたのに。」(中略)「ところが、人びとの知力と知識の似姿 は、書物のなかにいつまでもあり、時の損傷を免れ、たえず更新されることができるのであ る。これを似姿と呼ぶのも適当ではない。というのは、それはつねに子をうみ、他人の精 神のなかに種子をまき、のちのちの時代に、はてしなく行動をひきおこし意見をうむ からである。それゆえ、富と物資をかなたからこなたへ運び、きわめて遠く隔たった地域 をも、その産物をわかちあうことによって結びつける、船の発明がりっぱなものであると考え られたのなら、それにもまして、学問はどれほどほめたたえられねばならぬことだろう。 学問は、さながら船のように、時という広大な海を渡って、遠く隔たった時代に、つぎつぎ と、知恵と知識と発明のわけまえをとらせるのである。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『学問の進歩』第一巻、八・六、pp.109-110、[服部 英次郎、多田英次・1974])(索引:学問の船)