想像力と詩
【事物の本性が人間の精神に満足を与えない場合に、想像力が自由に、より豊かな偉大さ、厳格な善、完全な多様性とを表現する、極度に無拘束な学問の部門がある。詩である。(フランシス・ベーコン(1561-1626))】事物の本性が人間の精神に満足を与えないような場合に、想像力が自由に、人間の霊の要求に応じて、より豊かな偉大さと、厳格な善と、完全な多様性とを表現する極度に無拘束な学問の部門がある。詩である。詩は、歴史上の行為とか事件とかを、より偉大で、かつ英雄的なものとして、仮作してきた。
「詩は、韻律の点では大いに制約されているが、しかし他のすべての点では、極度に無拘束な学問の部門であって、ほんとうに想像力に関係するものである。
想像力は、物質の法則にしばられることなく、好き勝手に、自然がひきはなしているものを結びつけ、自然が結びつけているものをひきはなし、こうして、自然の法則に反する結婚や離婚をさせるのであって、「画家や詩人には、創作の自由がある」〔ホラティウス『詩篇』九〕といわれているとおりである。」
「この仮作の歴史の効用は、世界のほうが人間の魂よりもその品位がおとっているので、事物の本性が人間の精神に満足を与えないような場合に、ある満足の影のようなものを与えることであった。
そうしたわけで、詩には、人間の霊の要求に応じて、事物の本性に見出されうるよりも豊かな偉大さと、厳格な善と、完全な多様性とがあるのである。
こういう次第で、ほんとうの歴史上の行為とか事件とかは、人間の精神を満足させるほどの偉大さをもたないから、詩はそれよりも偉大で、かつ英雄的な行為と事件を仮作するのである。
ほんとうの歴史は、行動の結末と成行きを、因果応報の理に応じて述べないから、それゆえに、詩は、それらがもっと正しく応報をうけ、神の示された摂理にもっと一致するように仮作する。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『学問の進歩』第二巻、四・一、四・二、pp.146-147、[服部英次郎、多田英次・1974])
(索引:想像力、詩、仮作された歴史)
(出典:wikipedia)
「不死こそ、子をうみ、家名をあげる目的であり、それこそ、建築物と記念の施設と記念碑をたてる目的であり、それこそ、遺名と名声と令名を求める目的であり、つまり、その他すべての人間の欲望を強めるものであるからである。そうであるなら、知力と学問の記念碑のほうが、権力あるいは技術の記念碑よりもずっと永続的であることはあきらかである。というのは、ホメロスの詩句は、シラブル一つ、あるいは文字一つも失われることなく、二千五百年、あるいはそれ以上も存続したではないか。そのあいだに、無数の宮殿と神殿と城塞と都市がたちくされ、とりこわされたのに。」(中略)「ところが、人びとの知力と知識の似姿は、書物のなかにいつまでもあり、時の損傷を免れ、たえず更新されることができるのである。これを似姿と呼ぶのも適当ではない。というのは、それはつねに子をうみ、他人の精神のなかに種子をまき、のちのちの時代に、はてしなく行動をひきおこし意見をうむからである。それゆえ、富と物資をかなたからこなたへ運び、きわめて遠く隔たった地域をも、その産物をわかちあうことによって結びつける、船の発明がりっぱなものであると考えられたのなら、それにもまして、学問はどれほどほめたたえられねばならぬことだろう。学問は、さながら船のように、時という広大な海を渡って、遠く隔たった時代に、つぎつぎと、知恵と知識と発明のわけまえをとらせるのである。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『学問の進歩』第一巻、八・六、pp.109-110、[服部英次郎、多田英次・1974])(索引:学問の船)
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(フランシス・ベーコン(1561-1626)『学問の進歩』第二巻、四・一、四・二、pp.146-147、[服部英次郎、多田英次・1974])
(索引:想像力、詩、仮作された歴史)
(出典:wikipedia)
「不死こそ、子をうみ、家名をあげる目的であり、それこそ、建築物と記念の施設と記念碑をたてる目的であり、それこそ、遺名と名声と令名を求める目的であり、つまり、その他すべての人間の欲望を強めるものであるからである。そうであるなら、知力と学問の記念碑のほうが、権力あるいは技術の記念碑よりもずっと永続的であることはあきらかである。というのは、ホメロスの詩句は、シラブル一つ、あるいは文字一つも失われることなく、二千五百年、あるいはそれ以上も存続したではないか。そのあいだに、無数の宮殿と神殿と城塞と都市がたちくされ、とりこわされたのに。」(中略)「ところが、人びとの知力と知識の似姿は、書物のなかにいつまでもあり、時の損傷を免れ、たえず更新されることができるのである。これを似姿と呼ぶのも適当ではない。というのは、それはつねに子をうみ、他人の精神のなかに種子をまき、のちのちの時代に、はてしなく行動をひきおこし意見をうむからである。それゆえ、富と物資をかなたからこなたへ運び、きわめて遠く隔たった地域をも、その産物をわかちあうことによって結びつける、船の発明がりっぱなものであると考えられたのなら、それにもまして、学問はどれほどほめたたえられねばならぬことだろう。学問は、さながら船のように、時という広大な海を渡って、遠く隔たった時代に、つぎつぎと、知恵と知識と発明のわけまえをとらせるのである。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『学問の進歩』第一巻、八・六、pp.109-110、[服部英次郎、多田英次・1974])(索引:学問の船)
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