神経伝達物質と神経刺激性ペプチド
【感情が引き起こす身体変化のうち神経伝達物質と神経刺激性ペプチドは、次のような影響を及ぼす。(a)満足感、福利感、リラクセーション、快楽、(b)注意、興奮、(c)学習、記憶、(d)摂食への刺激、(e)睡眠、覚醒(ジョナサン・H・ターナー(1942-))】神経伝達物質と神経刺激性ペプチド
例えば、次のような変化を引き起こす。
(a)満足感、福利感、リラクセーション、快楽
(b)注意、興奮
(c)学習、記憶
(d)摂食への刺激
(e)睡眠、覚醒
「この身体系は神経伝達物質の放出に関係する。もっとも重要なものは表4-3ならびに図4-3に列挙されている。」
神経伝達物質 | |
アセチルコリン(ACh) | 皮質興奮、学習、そして記憶、これらが身体系を刺激する。アセチルコリンが中程度の満足と関係するといういくらかの証拠がある。 |
モノアミン | |
ドーパミン | 運動機能と視床機能を規制し、またほとんどの辺縁系を刺激する。 |
ノルアドレナリン (ノルエピネフリン) |
入力情報に反応し、興奮を刺激するニューロンの能力を強化する。 |
アドレナリン (ピネフリン) |
ノルアドレナリンと同じ。 |
セロトニン | 睡眠-覚醒サイクルを調整し、またリラクセーションと快楽を生成する。 |
ヒスタミン | 十分にわかっていないが、神経内分泌機能に関与すると考えられる。 |
アミノ酸 | |
ガンマアミノ酪酸 (GABA) |
抑制行動がニューロンの出力を制御する。 |
グリシン | 不分明であるが、しかしグルタミンの効果を緩和する。 |
グルタミン | 辺縁系のニューロンを含めて、ニューロンの興奮行動の原因である。 |
神経刺激性ペプチド | 判明している数十種のペプチドのうち、多くのペプチドは脳で生産され、伝達物質のように作用する。その理由は、これが微小であり、また脳脈管系を往き来する能力のゆえである。これらは種々の辺縁系によって刺激される広範な感情に影響すると考えられる。オピオイドは感情反応でとくに重要と考えられる。多数のペプチドが内分泌系、また身体のより包括的な循環器系を介して作用する。最近のデータはサブスタンスPが感情反応、とくにモノアミンとの関係において決定的に重要であることを立証している(Wahlestedt 1998,Kramer et al. 1998)。 |
「感情状態に含まれる神経伝達物質のほとんどはふつう、他の感情システムからの刺激のもとで、そしてドレヴェットら(Drevets et al. 1997)の最近の研究が明らかにしているように、脳梁膝下の前頭前皮質の影響下で脳幹の中脳部位によって放出される。
前脳基底もまた一つの伝達物質であるアセチルコリン(ACh)を放出していると考えられる。
そして視床も直接に関与しているのかもしれない(Bentivoglio,Kutas-Ilinsky,and Ilinsky 1993)。
ところで、最近発表された研究では、伝達物質が以前に考えられていた以上に脳幹の外側の領野で放出されていると考えられている。
表4-3にしめしたように、伝達物質それぞれの気分高揚の効果を列挙するのは伝達物質を議論するうえで魅力的である。
たとえば、われわれはセロトニンを福利感、リラクセーション、そして睡眠を生みだすのに関与するものとみなし、またドーパミンを注意、興奮、摂食への刺激とみなすことができるかもしれない。
しかしこうした伝達物質の効果はおそらくそれぞれ異なり、またそれらの相互作用効果はまだ十分にわかっていない。
ケェティ(Kety 1970:p.120)が二五年以上前に指摘したように、「特定の感情状態を一つあるいは複数の成体アミンの活動によって考察しようとする企てはそもそも不毛であると思われる。これらのアミンは複雑なニューロン・ネットワークの非常に重要な結節点で、単独で、もしくは結びあって機能すると考えられる。〔中略〕しかしこれらは個人の経験におそらく由来している」。」
(ジョナサン・H・ターナー(1942-)『感情の起源』第4章 人間感情の神経学、pp.134-138、明石書店 (2007)、正岡寛司(訳))
(索引:神経伝達物質,神経刺激性ペプチド)
![]() |

(出典:Evolution Institute)

(ジョナサン・H・ターナー(1942-)『社会という檻』第8章 人間は社会的である、と考えすぎることの誤謬、pp.276-277、明石書店 (2009)、正岡寛司(訳))
ジョナサン・H・ターナー(1942-)
ジョナサン・H・ターナーの関連書籍(amazon)

検索(Jonathan H. Turner)
検索(ジョナサン・H・ターナー)