2020年6月28日日曜日

ミエリン形成グリアは、軸索上のどこにランヴィエ絞輪を配置するかを制御することで、秒速1mから100mという神経インパルスの伝達速度の違いを制御することができる。(R・ダグラス・フィールズ)

ミエリン形成グリアの作用

【ミエリン形成グリアは、軸索上のどこにランヴィエ絞輪を配置するかを制御することで、秒速1mから100mという神経インパルスの伝達速度の違いを制御することができる。(R・ダグラス・フィールズ(19xx-))】

(1)ミエリン形成グリアは、軸索上のどこにランヴィエ絞輪を配置するかを決める。
 (a)化学物質を放出して、絞輪用、あるいは絞輪間部用の軸索膜を形成するよう軸索に指示する。
 (b)グリアがむき出しの軸索を包み込んで、ミエリンを形成し始めるときに、軸索膜のナトリウムチャネルを絞輪部分に物理的に集中させる。
(2)その結果、秒速わずか1メートルという遅い速度から、最速で秒速100メートルという速度の違いを実現している。

 「高速のインターネットとの類推から、軸索はすべて、できるかぎり速く情報を伝えていると考えるかもしれないが、そうではないのだ。私たちの末梢神経系や脳の回路を伝わるインパルスの速度は、軸索ごとに異なる。秒速わずか1メートルという遅い速度(ゆっくりとした歩行のペース)で、インパルスを伝導する軸索がある一方で、最速の軸索は、秒速100メートルでインパルスを伝える。これはどうしてなのか? 自然は、急いで実行しなくてはならないプロセスには、最速の情報伝達手段を使用する。たとえば、運動神経の軸索にインパルスを送って脚を動かして、空中に体を投げ出し、その跳躍の途中で、片方の足で体重を受け止めることを繰り返すとき――つまり走るときには、この最速の手段を使う。だが、すべての軸索が、同じような高速で伝導しないのはなぜだろう? さらに、何が軸索のインパルス伝導の速度を決定しているのだろうか?
 有髄軸索の通信速度を制御しているのは、グリアだ。ある軸索にどれほど多くの絶縁体を作るかを決定することだけでなく、軸索上のどこにランヴィエ絞輪を配置するかを決め、ナトリウムチャネルとカリウムチャネルを集積的に発現させて、絞輪と絞輪間部の領域を形成することによっても、伝導速度は制御されている。グリア細胞が軸索の周囲をより多くのミエリン層で被覆すれば、軸索の絶縁性は高まり、電位の喪失は少なくなるので、信号はより速く伝わる。ランヴィエ絞輪がリピータであるならば、軸索を通してインパルスを最高速度で中継するために最適な絞輪の数と間隔があることは、言うまでもない。グリアは、ランヴィエ絞輪の間隔を制御し、それによってインパルス伝導の速度も制御しているのだ。
 ミエリン形成グリアは、発達期や損傷後の修復において、軸索の建造を采配する現場監督である。絞輪を形成する位置を、グリアが指示する方法は二通りある。第一に、化学物質を放出して、絞輪用、あるいは絞輪間部用の軸索膜を形成するよう軸索に指示する方法、第二に、グリアがむき出しの軸索を包み込んで、ミエリンを形成し始めるときに、軸索膜のナトリウムチャネルを絞輪部分に物理的に集中させるという方法である。ミエリン形成グリアが学習の過程に関与しているとすれば、このグリアによるインパルス伝導の制御を活用しているに違いない。」
(R・ダグラス・フィールズ(19xx-),『もうひとつの脳』,第3部 思考と記憶におけるグリア,第15章 シナプスを超えた思考,講談社(2018),pp.498-499,小松佳代子(訳),小西史朗(監訳))
(索引:ミエリン形成グリア)

もうひとつの脳 ニューロンを支配する陰の主役「グリア細胞」 (ブルーバックス)


(出典:R. Douglas Fields Home Page
R・ダグラス・フィールズ(19xx-)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「アストロサイトは、脳の広大な領域を受け持っている。一個のオリゴデンドロサイトは、多数の軸索を被覆している。ミクログリアは、脳内の広い範囲を自由に動き回る。アストロサイトは一個で、10万個ものシナプスを包み込むことができる。」(中略)「グリアが利用する細胞間コミュニケーションの化学的シグナルは、広く拡散し、配線で接続されたニューロン結合を超えて働いている。こうした特徴は、点と点をつなぐニューロンのシナプス結合とは根本的に異なる、もっと大きなスケールで脳内の情報処理を制御する能力を、グリアに授けている。このような高いレベルの監督能力はおそらく、情報処理や認知にとって大きな意義を持っているのだろう。」(中略)「アストロサイトは、ニューロンのすべての活動を傍受する能力を備えている。そこには、イオン流動から、ニューロンの使用するあらゆる神経伝達物質、さらには神経修飾物質(モジュレーター)、ペプチド、ホルモンまで、神経系の機能を調節するさまざまな物質が網羅されている。グリア間の交信には、神経伝達物質だけでなく、ギャップ結合やグリア伝達物質、そして特筆すべきATPなど、いくつもの通信回線が使われている。」(中略)「アストロサイトは神経活動を感知して、ほかのアストロサイトと交信する。その一方で、オリゴデンドロサイトやミクログリア、さらには血管細胞や免疫細胞とも交信している。グリアは包括的なコミュニケーション・ネットワークの役割を担っており、それによって脳内のあらゆる種類(グリア、ホルモン、免疫、欠陥、そしてニューロン)の情報を、文字どおり連係させている。」
(R・ダグラス・フィールズ(19xx-),『もうひとつの脳』,第3部 思考と記憶におけるグリア,第16章 未来へ向けて――新たな脳,講談社(2018),pp.519-520,小松佳代子(訳),小西史朗(監訳))
(索引:)

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