2018年6月7日木曜日

人君としての災害は、人を信用することから起こる。なぜなら、臣下は愛情からではなく権勢に縛られてやむを得ず仕えており、いつでも隙を狙っている。仮に信用し、依存するなら、どうなるか。(韓非(B.C.280頃-B.C.233))

人を信ずるということ

【人君としての災害は、人を信用することから起こる。なぜなら、臣下は愛情からではなく権勢に縛られてやむを得ず仕えており、いつでも隙を狙っている。仮に信用し、依存するなら、どうなるか。(韓非(B.C.280頃-B.C.233))】
 人君としての災害は、人を信用することから起こる。なぜか。
(a) 人を信用すると、その人に事を委任するようになって、このことで制約されることになる。
(b) また、臣下はその主君に対して、肉親の愛情を持っているわけではなく、権勢に縛られてやむを得ず仕えているのである。
(c) しかも、人の臣下というものは、その君の心を探ろうとしてしばらくも休まないでいる。
(d) 一方、君主の方は何もせずに怠けて、臣下の頭の上で威張っているとしたら、どうだろう。君主が脅かされるのは、当然ではないか。
 「人君としての災害は、人を信用することから起こる。人を信用すると〔事を委任するようになって〕その人物に制約されることになる。臣下はその主君に対して肉親の愛情を持っているわけではなく、権勢にしばられてやむをえず仕えているのである。だから、人の臣下というものは、その君の心をさぐろうとしてしばらくも休まないでいるものだが、君主の方は何もせずに怠けて臣下の頭の上で威張っている。それこそ、世間で君主を脅かしたり殺したりする事件が起こる理由である。」(後略)
(韓非(B.C.280頃-B.C.233)『韓非子』備内 第十七、(第1冊)pp.312-313、岩波文庫(1994)、金谷治(訳))
(索引:人を信ずるということ)
(原文:17.備内韓非子法家先秦兩漢中國哲學書電子化計劃

韓非子 (第1冊) (岩波文庫)




(出典:twwiki
韓非(B.C.280頃-B.C.233)の命題集(Collection of propositions of great philosophers) 「国を安泰にする方策として七つのことがあり、国を危険にするやり方として六つのことがある。
安泰にする方策。第一は、賞罰は必ず事の是非に従って行うこと、第二は、禍福は必ず事の善悪に従ってくだすこと、第三は、殺すも生かすも法のきまりどおりに行うこと、第四は、優秀か否かの判別はするが、愛憎による差別はしないこと、第五は、愚か者と知恵者との判別はするが、謗ったり誉めたりはしないこと、第六は、客観的な規準で事を考え、かってな推量はしないこと、第七は、信義が行われて、だましあいのないこと、以上である。
 危険にするやり方。第一は、規則があるのにそのなかでかってな裁量をすること、第二は、法規をはみ出してその外でかってな裁断をくだすこと、第三は、人が受けた損害を自分の利益とすること、第四は、人が受けた禍いを自分の楽しみとすること、第五は、人が安楽にしているのを怯かして危うくすること、第六は、愛すべき者に親しまず、憎むべき者を遠ざけないこと、以上である。こんなことをしていると、人々には人生の楽しさがわからなくなり、死ぬことがなぜいやなのかもわからなくなってしまう。人々が人生を楽しいと思わなくなれば、君主は尊重されないし、死ぬことをいやがらなくなれば、お上の命令は行われない。」
(韓非(B.C.280頃-B.C.233)『韓非子』安危 第二十五、(第2冊)pp.184-185、岩波文庫(1994)、金谷治(訳))
(原文:25.安危韓非子法家先秦兩漢中國哲學書電子化計劃

韓非(B.C.280頃-B.C.233)
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