2018年6月5日火曜日

行動の傾向性や慣習、情念は、必ずしも意識されない微小表象に由来し、それは意志決定においても「強いずに傾ける」。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))

微小表象

【行動の傾向性や慣習、情念は、必ずしも意識されない微小表象に由来し、それは意志決定においても「強いずに傾ける」。(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716))】
(a) 熟慮を経ないで、私が、一方の行動よりも他方へ傾くとき、それは必ずしも意識されているとは限らない微小表象の連鎖と協働の結果である。
(b) 私たちの熟慮において、多くの感応力を与える慣習や情念でさえ、必ずしも意識されているとは限らない微小な刻印の連鎖に由来している。
(c) 自由意志論における「ビュリダンのロバ」の非決定は、これら必ずしも感じとれない微小表象の刻印を忘れている結果である。しかし、これらの刻印は、「強いずに傾ける」のである。
 「あらゆる刻印が結果をもっていますが、すべての結果が常に目立つとはかぎりません。私が一方よりも他方を向くとき、それはしばしば微小な刻印の連鎖によるのです。そうした微小な刻印を、私は意識しているわけではありませんが、これらの刻印はひとつの運動を他の運動より少しだけ起りにくくするのです。熟慮を経ない私たちの行動はすべて、微小表象の協働の結果です。私たちの熟慮において多くの感応力を与える慣習や情念でさえ、それに由来しています。というのも、こうした習慣は少しずつ生まれるものですし、したがって微小表象なくして、私たちはそういう目立つ態勢に到ることはないからです。すでに指摘したように、そうした微小表象のもたらす結果を道徳において否定する者は、自然学において、感じとれない微粒子を否定するようなひどい教育を受けた人々の轍を踏むことになります。しかしながら、自由について語る人々のなかには、均衡を破りうるこれら感じとれない刻印に注意を払わず、道徳的行為におけるまったき非決定を思い描く人を見かけます。これではまるで、二つの牧草地の真中に置かれた「ビュリダンのロバ」の非決定と同じです。これについては後にもっと詳しく話し合いましょう。でもこれらの刻印が、強いずに傾けるものであることは認めておきます。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『人間知性新論』第二部・第一章[一五]、ライプニッツ著作集4、p.120、[谷川多佳子・福島清紀・岡部英男・1993])
(索引:微小表象)

認識論『人間知性新論』 (ライプニッツ著作集)


(出典:wikipedia
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「すべての実体は一つの全たき世界のようなもの、神をうつす鏡もしくは全宇宙をうつす鏡のようなものである。実体はそれぞれ自分の流儀に従って宇宙を表出するが、それはちょうど、同一の都市がそれを眺める人の位置が違っているのに応じて、さまざまに表現されるようなものである。そこでいわば、宇宙は存在している実体の数だけ倍増化され、神の栄光も同様に、神のわざについてお互いに異なっている表現の数だけ倍増化されることになる。また、どの実体も神の無限な知恵と全能という特性をいくぶんか具えており、できる限り神を模倣している、とさえ言える。というのは、実体はたとえ混雑していても、過去、現在、未来における宇宙の出来事のすべてを表出しており、このことは無限の表象ないしは無限の認識にいささか似ているからである。ところで、他のすべての実体もそれなりにこの実体を表出し、これに適応しているので、この実体は創造者の全能を模倣して、他のすべての実体に自分の力を及ぼしていると言うことができる。」
(ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(1646-1716)『形而上学叙説』九、ライプニッツ著作集8、pp.155-156、[西谷裕作・1990])

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