所有にかかわる問題群
【所有にかかわる問題群:(a)そもそも所有とは何か、権利なのか、(b)所有の主体、対象、根拠、目的、(c)所有に内在する義務とは何か、あるべき所有とは等々。(井上達夫(1954-))】所有にかかわる問題群
(1)所有とはそもそも何か。
(a)所有の概念を、所有権という権利としてのみ構成することは妥当か。
(b)功利主義的発想と個人権理論的発想、あるいは、帰結主義的発想と義務論的発想は、所有の概念規定と正当化において、どのように関係するのか。
(2)いかなる主体が何を、何ゆえに、何のために、所有できるのか。
(a)所有の主体になり得るものは何か。
(b)何を所有し得るのか。
(c)何によってそれは正当化されるのか。
(d)何のために所有できるのか。
(3)所有することによって、誰に対して何ができ、何を拒否できるのか。
(a)「所有は義務づける」と言うとき、この「義務付け」が単なる外在的制約ではないとすれば、それは所有の意味および正当化根拠と、どのように関係しているのか。
(b)自由と責任を調和させる所有システムは、どのようなものか。
(c)私的所有者の自由な交換としての市場システムが、自己の倫理的基礎の破壊を帰結しないための条件は何か。
(出典:週刊読書人ウェブ)
「これは、誰が何をしてよいのか、受け取ってよいのか、何をしてはならないのか、受け取ってはならないのか、ということである。こうしてこの問いは規範の総体に関わることになる。全てを問題にすることに等しい。ただ、全てをこの本の中で扱えるわけではない。中心となる論点があり、それを本章に記した。井上達夫は一九九一年度の日本法哲学会の統一テーマ「現代所有論」に関して次のように述べる。
「所有とはそもそも何か。何によってそれは正当化されるのか。いかなる主体…が何を、何ゆえに、何のために、所有できるのか。所有することによって、誰に対して何ができ、何を拒否できるのか。/所有の概念を、所有権という権利としてのみ構成することは妥当か。「所有は義務づける(Eigentum verpflichtet)」と言うとき、この「義務付け」が単なる外在的制約ではないとすれば、それは所有の意味および正当化根拠と、どのように関係しているのか。また、功利主義的発想と個人権理論的発想、あるいは、帰結主義的発想と義務論的発想は、所有の概念規定と正当化において、どのように関係するのか。/自由と責任を調和させる所有システムは、どのようなものか。私的所有者の自由な交換としての市場システムが、自己の倫理的基礎の破壊を帰結しないための条件は何か。所有システムの再構築による社会主義の救済は可能か、また、いかにしてか。/…/問題のリストは無限に続く。提示した問題群は例示的列挙である。」(井上[1992:3-4])」
(立岩真也(1960-),『私的所有論 第2版』,第1章 私的所有という主題,◆01,<Kyoto Books<生存学)
(索引:)
(出典:立命館大学大学院・先端総合学術研究科)
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