2026年10月18日日曜日

008必ずわかる難問題4

 


1. 問題(こんな疑問や悩みはありませんか?)


・「自分は内向的だ」「自尊心が低い」と思っているけれど、その言葉の「本当の意味」を客観的に説明できますか?

・心理学の専門家と私たち一般の人々で、「人間を理解し、人生をコントロールしようとする姿勢」に違いはあるのでしょうか?

・他人の言葉や自分自身の自己評価(「恋に落ちたかも」「親しみづらい人間だ」など)を、曖昧な感情論ではなく明確な根拠を持って理解するにはどうすればよいでしょうか?


2. 用語集(この記事で学べること)


※本テキストを理解する上で重要な順に掲載しています。


① コンストラクト(Construct)

【意味】人が人生の出来事を予期し、統制・解釈するために自分自身で作り出す枠組みや仮説(=私的なパーソナリティ理論)。


② 参照例 / 行動例(Referent / Behavioral Example)

【意味】抽象的なコンストラクト(思考や自己評価)の言葉が何を意味しているかを具体的に捉え、知るための「実際の行動の例」。言葉の真意は行動を通してのみ理解できます。


③ 人間=科学者(Person as Scientist)

【意味】専門の心理学者だけでなく、すべての人間は自らの人生の出来事を予期し統制するために仮説(コンストラクト)を立てて検証している、というジョージ・ケリーの人間観。


④ 認知的な明晰さ(Cognitive Clarity)

【意味】自分を取り巻く状況や現象の理由をはっきりと理解し、すっきり整理したいという欲求や状態。


⑤ 現象学的・人間性レベル(Phenomenological / Humanistic Level)

【意味】人間を単なる無意識や環境刺激の犠牲者として見るのではなく、その人自身が世界をどのように解釈し、意味づけているかという「主体的な視点」からパーソナリティを理解する心理学的アプローチ。


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007必ずわかる難問題3

   ★007_必ずわかる難問題3


 ★(16.1)マスター内知覚マップ

追記


★(1)物理学

前回、宇宙の構造と、法則の概要を話しました。現代の物理学は、かなりの精度で真理を掴んでいて、高度な技術の基礎知識にもなっています。

★(2)生命

この宇宙の法則から、生命が生まれて進化することが理解できるだろうか

★(3)意識

意識が生まれ、その意識が宇宙の法則を理解することを、説明できるだろうか。

★(4)量子力学

宇宙の出来事の生成は、確率の法則に従っているが、個々の出来事の生成は、偶然に支配されている。

★(5)生命

ところが生命は、良くなろうとする傾向がある。物理学の法則とは矛盾しないのか?

★(6)生命の誕生

(仮説)はじめの一歩は、小さな一歩で、偶然だったのだろう。ある分子の配列が、「自己保存」に適したものを探り当てたとき、変化はランダムではなく、方向性を持つことになった。もしかしたら、最初の探り当ても、無数の分子配列の量子的な重ね合わせの中から、まさに「自己保存する」がゆえに出来事として発生するのではないのか? 量子コンピュータのような速さで、無数の組み合わせが一瞬のうちに試行され、自己保存する配列が生き残る。この仮説が正しいなら、生命の発生は、必然だったことになる。


★(6.1)量子進化

「グリーンランドの片麻岩の地層が形成されつつあった三五億年前、古代のイスアの海底に あった泥火山から突き出した蛇紋石の小さな穴のなかに、微量の原始のスープが閉じ込められ ていたとしよう。それはダーウィンのいう「暖かい小さな池」に相当し、「あらゆる種類のア ンモニアやリン酸塩、光、熱、電気などが存在し」、そのなかでは「たんぱく質化合物が......さ らに複雑な変化へつながって」いったかもしれない。

★ここでさらに、スタンリー・ミラーが発 見したのと同様の化学プロセスによって作られた「たんぱく質分子」(あるいはRNA分子か もしれない)のうちの一個が、何らかの酵素活性は持っていながらいまだ自己複製分子には なっていない、原始酵素(あるいはリボザイム)だったとしよう。さらに、その酵素に含まれ ている粒子のうちのいくつかは、異なる位置へ移動しようとしても、古典的なエネルギー障壁 に阻まれて移動できなかったとしよう。

★しかし第3章で説明したとおり、電子も陽子も、古典的な移動を阻むエネルギー障壁を量子トンネル効果ですり抜けることができ、それが酵素活性 に重要な役割を果たしている。電子や陽子は、同時にエネルギー障壁の両側に存在するのだ。 それがこの原始酵素のなかでも起きるとしたら、配置の違い、つまり粒子がエネルギー障壁の どちら側にあるかによって、酵素活性が異なり、加速される化学反応の種類も違ってくる。も しかしたらそのなかには、自己複製反応も含まれているかもしれない。

★  計算を簡単にするために、この仮想的な原始酵素のなかで合計六四個の陽子や電子のそれぞ れが、二つの位置のどちら側にもトンネルできるとしよう。すると、この原始酵素が取ること のできる構造は264種類とさらに膨大で、考えられる配置はものすごい数にな る。ここで、その配置のうちの一通りだけが、自己複製する酵素となるのに必要な配置だった としよう。では、生命の出現につながりうるその特定の配置は、どの程度簡単に見つけられる のだろうか?」(中略)

★「古典的に考えると、この原始酵素が264通りの配置 のうちのごく一部分を探索するだけでも、とてつもなく長い時間がかかるのだ。しかし、この 原始酵素の鍵を握る六四個の粒子が、二つの一のあいだをトンネルできる電子や陽子だったと すると、状況は一変する。量子系であるその原始酵素は、量子重ね合わせ状態として同時にす べての配列で存在することができる。」(中略)

★「しかし一つ問題がある。量子計算をおこな うには、キュビットをコヒーレントなもつれ状態に維持しなければならないのだった。ひとた びデコヒーレンスが起きれば、 264 通りの状態の重ね合わせ状態は収縮してし まい、一通りしか残らない。そんなことで役に立つのだろうか? 一見したところその答えは ノーだ。量子重ね合わせ状態が収縮して、自己複製体というたった一通りの状態が残る確率 は、先ほどと同じくコインの表が六四回連続で出る確率と同じで、264分の1 とごく小さいのだ。

★しかしここから先の話は、量子的記述と古典的記述とで食い違ってくる。  もし分子が量子力学的には振る舞わずに、自己複製できない間違った原始の配列にあったと したら(ほとんどの場合そうだ)、それとは別の配列を試すには、分子の結合をばらばらにし て再び組なおすという、地質学的に遅いプロセスを使うしかない。しかし先ほどの原始酵素が 量子的であれば、たとえデコヒーレンスを起こしても、六四個電子や陽子はほぼ瞬時に、取り うる両方の位置の重ね合わせ状態へと再びトンネルし、264通りの配列の量子 重ね合わせ状態を回復する。

★六四キュビット状態である量子的な原始複製体分子は、量子の世 界のなかで自己複製体探しをいつまでも繰り返すことができるのだ。  デコヒーレンスが起きると重ね合わせ状態は再び速やかに収縮してしまうが、そのときこの 分子は 264 通りの古典的配置のうちの別の状態になる。再度デコヒーレンスに よって重ね合わせ状態が収縮すると、この系はさらに別の配置を取り、このプロセスが際限な く続いていく。

★要するにこの比較的保たれた環境のなかでは、量子重ね合わせ状態の生成と消 滅は可逆なプロセスである。重ね合わせとデコヒーレンスによって量子のコインはつねにトス されつづけ、そのプロセスは、化学結合を古典的に作ったり切ったりするのよりもはるかに速 いのだ。

 ★ しかし、この量子コイントスを終わらせてしまう現象が一つある。量子的な原始複製分子が やがて自己複製状態へ収縮すると、第7章で説明した飢えた大腸菌のように複製を始め、それ によってこの系は不可逆的に変化して古典的な世界へ入る。量子コイントスはそれで打ち止め となり、最初の自己複製体が古典的な世界に生まれ出るのだ。

 ★もちろん、その複製に関わる、 分子内や分子間や環境とのあいだの生化学的プロセスは、自己複製体の配置が見つかるまでに 起きていたプロセスとは明らかに違うはずだ。つまり、その特別な配置が失われて分子が次の 量子的配置へ変わる前に、その特別な配置で固定させるメカニズムが必要となる。」 (ジョンジョー・マクファデン&ジム・アル-カリーリ(1956)『量子力学で生命の謎を解 く』第9章 生命の起源、pp.322-325、SBクリエイティブ(2015)、水谷淳(訳))


★(7)有機体は、外部環境と内部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、外部環境と内部環境を変更する。


★(8)ホメオスタシスの入れ子構造:(1)各機構は、より単純な機構を構成要素としている。(2)そ の際、新しい問題に対応している。(3)全体として「幸福を伴う生存」が目指されている。 (アントニオ・ダマシオ(1944-))


★ホメオスタシスの各階層

(a)感情

(b)狭義の情動

(c)多数の動因と動機、あるいは欲求

(d)快(および報酬)または苦(および罰)と結びついている行動

(e)免疫系

(f)基本的な反射

(g)代謝のプロセス


★(9)代謝のプロセス

 有機体は、内部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、代謝のプロセスで内部環境を調整する。


★(10)基本的な反射

 有機体は、外部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、基本的な反射で対応する


★(11)免疫系

 有機体は、内部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、免疫系で内部環境を調整する。《誘発原因》は、有機体の外部から侵入してくるウイルス、細菌、寄生虫、毒性化学分子など。有機体の内部であっても、例えば死滅しつつある細胞から放出される有害な化学分子。


★(12)快(および報酬)または苦(および罰)と結びついている行動――快楽行動、苦痛行動

 有機体は、外部環境と内部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、代謝のプロセスや免疫系で内部環境を調整したり、基本的な反射で反応したりするが、やがて外部環境の特定の対象や状況への接近反応や退避反応をするようになる。


★(12.1)低いレベルの注意

「意識の理論は単に、脳はどのように対象のイメージに目を向けるか、というような理論であっては「ならない」。私が見るところ、生得的な低いレベルの注意は意識に先行して存在し、一方、集中的な注意は意識が生まれてから生じる。意識にとって、注意はイメージをもつのと同じぐらい必要なものである。しかし、注意は意識にとって十分なものではないし、意識と同じものでもない。(アントニオ・ダマシオ(1944-)『起こっていることの感覚』(日本語名『無意識の脳 自己意識の脳』)第1部 脳と意識の謎、第1章「脳の中の映画」とは何か、pp.35-38、講談社(2003)、田中三彦(訳))


★(13)多数の動因と動機、あるいは欲求

有機体は、外部環境と内部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、代謝のプロセスや免疫系で内部環境を調整したり、基本的な反射で反応したりするが、やがて外部環境の特定の対象や状況への接近反応や退避反応をするようになる。そして、外部環境と内部環境の変化検出と評価の一部を意識化することで、特定の動因による行動を組織化するようになる。


《定義》欲求:ある特定の動因によって活発化する有機体の行動的状態


《例》空腹感、喉の渇き、好奇心、探究心、気晴らし、性欲など。


★(14)意識化された外部環境、内部環境

・外部感覚(特殊感覚)

・自分の肢体のなかにあるように感じる痛み、熱さ、その他の変様(表在性感覚、深部感覚)

・身体ないしその一部に関係付ける知覚としての、飢え、渇き、その他の自然的欲求(内臓感覚)

参考:精神の受動のひとつ、身体ないしその一部に関係づける知覚として、飢え、渇き、その他の自然的欲求、自分の肢体のなかにあるように感じる痛み、熱さ、その他の変様がある。(ルネ・デカルト(1596-1650))


★(15)情動

 感覚で与えられた対象や事象、あるいは想起された対象や事象を感知したとき、自動的に引き起こされる身体的パターンであり、喜び、悲しみ、恐れ、怒りなどの語彙で表現される。 それは、対象や事象の評価を含み、脳や身体の状態を一時的に変更することで、思考や行動に 影響を与える。情動誘発因のあるものは進化の過程で獲得され、他のものは個人の生活の中で学習される。あるときは無意識的に情動が誘発され、またあるときは意識的な評価段階を経て情動 が誘発される。誘発された情動の実体はまた意識の諸様相であり情動誘発因の場合もある。


★(15.1)「第三の、そしてたぶんもっとも意味深い事実は、意識と情動は分離「できない」ということ。(中略)通常、意識に障害が起こると情動にも障害が起こる。」(アントニオ・ダマシオ(1944-)『起こっていることの感覚』(日本語名『無意識の脳 自己意識の脳』)第1部 脳と意識の謎、第1章「脳の中の映画」とは何か、pp.35-38、講談社(2003)、田中三彦(訳))



★(16)原自己

「原自己は、中核自己の構築に必要な踏み石だ。それは《生命体の物理構造の最も安定した側面を、一瞬ごとにマッピングする別個の神経パターンを統合して集めたもの》だ。原自己マップは、それが身体イメージだけでなく《感じられた》身体イメージも生み出すという点に特色がある。こうした身体の原初的感情は、通常の目を覚ました脳には自発的に存在している。

★原自己に貢献するものとしては、《マスター内知覚マップ》、《マスター生命体マップ》、《外的に向けられた感覚ポータルのマップ》がある。★解剖学的観点からすると、こうしたマップは脳幹と皮質領域の両方から生じる。原自己の基本的状態は、その内知覚コンポーネントと感覚ポータルコンポーネントの平均だ。★こうした多様で空間的に分布したマップの統合は、同じ時間の窓の中での相互信号により実行される。多様なコンポーネントをマッピングしなおすための、単一の脳サイトは必要としない。(アントニオ・ダマシオ(1944-)『自己が心にやってくる』第3部 意識を持つ、第8章 意識ある心を作る、p.228、早川書房 (2013)、山形浩生(訳))


 ★(16.1)マスター内知覚マップ


★内知覚信号は中枢神経系に、生命体の状態を継続的に伝える。その状態には最適状態から平常、問題あり、といったバリエーションがあり、器官や組織の総合性が損なわれて体内で損傷が起こった場合などを告げる(ここで言っているのは侵害受容信号であり、これは痛覚感情の基盤となる)。

★内知覚信号は、生理的補正の必要性を報せる。これが心の中で具体化すると、飢えやのどの渇きといった感情となる。温度を伝えるあらゆる信号や、内部状態の働きについての無数のパラメータもこの分類に入る。最後に、内知覚信号は快楽状態とそれに対応する快感感情の構築に貢献する。」(中略)

★「原初的な感情は、その他のあらゆる感情に先立つものだ。それは、脳幹と相互接続されている、生きた身体だけを独自に参照している。あらゆる情動の感情は進行中の原初的感情の変種だ。物体と生命体との相互作用により生じるあらゆる感情は、継続中の原初的感情の変種だ。原初的感情とその情動的な変種は、心の中で起こる他のあらゆるイメージに伴う忠実なコーラスを生み出す。」(アントニオ・ダマシオ(1944-)『自己が心にやってくる』第3部 意識を持つ、第8章 意識ある心を作る、pp.229-231、早川書房 (2013)、山形浩生(訳))


https://sententiarum2.blogspot.com/2018/06/1944_79.html


★(17)中核意識と延長意識

「意識は単純なものと複雑なものに分けることが可能であり、神経学的証拠からその分離は明白だ。私が「中核意識」(core consciousness)と呼ぶもっとも単純な種類の意識は、有機体に一つの瞬間「いま」と一つの場所「ここ」についての自己感を授けている。」(中略)

★「他方、私が「延長意識」(extended consciousness)と呼んでいる多くのレベルと段階からなる複雑な種類の意識は、有機体に精巧な自己感――まさに「あなた」、「私」というアイデンティティと人格――を授け、また、生きてきた過去と予期される未来を十分に自覚し、また外界を強く意識しながら、その人格を個人史的な時間の一点に据えている。」(アントニオ・ダマシオ(1944-)『起こっていることの感覚』(日本語名『無意識の脳 自己意識の脳』)第1部 脳と意識の謎、第1章「脳の中の映画」とは何か、pp.35-38、講談社(2003)、田中三彦(訳))





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2026年10月9日金曜日

006必ずわかる難問題2

   ★006a_必ずわかる難問題2


★難問題に入っていく前に、物理学が理解している最新の宇宙の姿を、知って欲しい。次の記述は、簡潔で丁寧にまとめて書かれているので、何回も読んで欲しい。復習します。毎回少しずつ詳しくしていきます。


以下を追記

★(4.1)情報は有限である


★(1)「わたしたちが生きる世界には、屈曲した時空間が広がっている。★(1.1)無限に小さな時空はない

★(2)時空のはじめ

★(2.1)時空のはじめの向こう

★(3)一般相対性理論

★(4)量子場

★(4.1)情報は有限である

★(5)量子力学

★(5.1)場の量子論の発散問題

★(5.2)無限とは何か?

★(6)未解決問題

★(6.1)一般相対性理論と量子力学★(6.2)ヒッグス粒子

★(7)未解決問題

★(7.1)超ひも理論




★(1)「わたしたちが生きる世界には、屈曲した時空間が広がっている。★(1.1)無限に小さな時空はない

量子力学以前の理論、つまりアインシュタインの方程式によれば、この宇宙は無限に押しつぶされる。そうして最後は、原子核に飲みこまれる電子のように、一点となって消失する。これが、アインシュタインの方程式によって予見される、「点」としてのビッグバンである。(中略)★しかし、量子力学を考慮に入れれば、宇宙の収縮にも限界があることが判明する。それはあたかも、量子的な反発によって、宇宙が跳ね返っているかのような状況である。収縮過程にある宇宙が、広がりを持たない「点」まで縮むことはない。(カルロ・ロヴェッリ(1956)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第4部 空間と時間を超えて、第8章 ビッグバンの先にあるもの、pp.202-204、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))

★(2)時空のはじめ

どのようにしてかは分からないが、それは今から一四〇億年前に、巨大な爆発によって誕生した。以来、時空間はずっと膨張を続けている。

★(2.1)時空のはじめの向こう

ビッグバンのさなかの決定的な移行過程においては、わたしたちはもはや、明確に記述された空間や時間を想定することはできない。わたしたちの考察の対象となるのは確率の雲だけであり、空間と時間はその雲のなかですっかり姿を消してしまう。ビッグバンの前後では、確率が泡立つ雲のなかに、世界はきれいに溶解する。★そして、量子重力理論の方程式なら、こうした確率の雲を記述することができる。今日の物理学者は、わたしたちの宇宙が生まれる前には、別の宇宙が存在していたと考えている。空間と時間が確率のなかで溶解する量子的な局面を経た末に、ひとつの宇宙が崩壊し、新しい宇宙が生まれたのである。」(カルロ・ロヴェッリ(1956)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第4部 空間と時間を超えて、第8章 ビッグバンの先にあるもの、pp.202-204、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))


★(3)一般相対性理論

この空間は実在する「事物」であり、物理的な「場」である。時空間の力学は、アインシュタインの方程式によって記述される。物質の重みのもとで、空間は折れたり曲がったりする。物質が極度に凝縮されたときには、空間がブラックホールへ呑みこまれていくこともある。


★(4)量子場

宇宙には無数の銀河が散らばっており、ひとつひとつの銀河に無数の星が散らばっている。銀河を形づくっている物質は、量子場によって形づくられている。量子場は、電子や光子のように、粒子の形態をとって現われる。または、量子場は電磁波のように、波の形で現われることもある。テレビの映像や、太陽の光や、星の輝きをわたしたちに伝えているのは、電磁波である。情報は有限である


★(4.1)情報は有限である

「ここで、ひとつ想像してみてほしい。あなたは、ある物理現象の計測を行い、その現象がどのような状態にあるかを突きとめようとしている。たとえば、振り子の振り幅を計測して、五センチと六センチのあいだであることが分かったとしよう(物理学ではどんな計測も、完璧に正確であるということはありえない)。量子力学が確立される以前は、五センチと六センチのあいだに、振り幅が取りうる値は無限に存在していた(たとえば、5.1センチであったり、5.101センチであったり、5.101001センチであったり……)。したがって、振り子の動きには「無限」の可能性が存在することになる。振り子に関するわたしたちの無知もまた、文字通り「無限」の状態にあるわけである。 ★一方で、量子力学はわたしたちにこう教えている。五センチと六センチのあいだで、振り幅が取りうる値の数は「有限」である。だから、振り子についてわたしたちが所持していない情報の量もまた、「有限」であるといえる。★この議論はあらゆる文脈に適用できる。つまり、量子力学の第一の重要な意義は、ある現象のうちに存在する「情報」の総量に限界を設けたことにある。ここでいう「情報」とは、「ある現象のなかで生じうる、たがいに区別可能な状態」を指している。★自然の奥底に潜む粒性が、「無限」にたいして「限界」を設定する。デモクリトスが洞察したこの粒性こそ、量子論を支える第一の側面である。このような粒性があらわになる極小のスケールは、プランク定数hによって規定されている。」(カルロ・ロヴェッリ(1956)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第2部 革命の始まり、第4章 量子――複雑奇怪な現実の幕開け、pp.130-131、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))


★(5)量子力学

原子や光をはじめ、宇宙に存在するあらゆる事物は、量子場によって記述される。量子場は奇妙な存在である。量子場を形成するひとつひとつの粒子は、別のなにかと相互作用を起こすときだけ、ある一点に居場所を定め、その姿をあらわにする。ひとたび相互作用を終えるなり、粒子は「確率の雲」のなかへ溶けこんでいく。世界とは、素粒子が起こす事象の湧出である。波のように振動する、大きく躍動的な空間の海に、素粒子は浸かっている。

★(5.1)場の量子論の発散問題

「場の量子論に登場する無限は、この理論の基礎を成すある前提に由来するものだった。その前提とは、空間の際限のない分割性である。かつてファインマンが教えてくれたように、ある過程が生じる確率を計算するには、この過程がたどることのできるあらゆる道筋を足し合わせればよい。しかし、この「道筋」は無限に存在する。なぜなら、計算の対象となっている過程は、連続的な空間に存在する無限個の点のすべてをたどることができるからである。このために、多くの場合、無限という計算結果が導き出される。★量子重力理論を考慮に入れれば、このような無限もまた姿を消す。理由は明快である。空間を無限に分割することはできず、無限に小さな点は存在しない。したがって、足し合わせるべき「道筋」が無限に存在することもない。粒的であり離散的である空間の構造が、場の量子論を苦しめている無限を除去し、この理論が抱えている難題を解決する。(カルロ・ロヴェッリ(1956)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第4部 空間と時間を超えて、第11章 無限の終わり、pp.227-229、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))



★(5.2)無限とは何か?


★「無限に限界を設定することは、現代物理学に繰り返し登場するテーマである。特殊相対性理論の内容を一言に圧縮するなら、「あらゆる物理的な系が共有する最大速度(つまり光速)の発見」ということになる。★同じように、量子力学は、「あらゆる物理的な系が共有する情報の最小単位の発見」と要約できる(情報は次章のテーマである)。★最小の長さはプランク長Lpであり、最大の速さは光速cであり、情報の最小単位はプランク定数hによって規定される。」(中略)「三つの定数をもとに自然を描写することは、たんなる形式上の変化に留まらない深遠な意味をもっている。これら三つの定数が特定されることによって、それまで自然界に存在すると思われていたさまざまな「無限」に、限界が設定されたからである。無限であるように見えるものは、実際には、わたしたちがまだ理解していなかった(または数えられていなかった)ものでしかないことを、これらの定数は繰り返し示してきた。★わたしが思うに、これは普遍的な真実である。「無限」とは、つまるところ、未知の事物にわたしたちが与えた名前にすぎない。自然について多くを学べば学ぶほど、自然はわたしたちに、本当に無限なものなど存在しないと語りかけてくるようである。★もうひとつ、人間の思索をつねに惑乱させてきた「無限」がある。それは、宇宙空間の無限の広がりである。しかし、第3章で解説したとおり、アインシュタインの理論のおかげで、「果てはないが有限な宇宙」について考えるための方法が明らかになった。現在の計測によれば、宇宙の全長は千億光年を超えるとのことである。これが、わたしたちの住まう宇宙に存在する最大の長さである。これは、プランク長のおよそ10の60乗倍に相当する。10の60乗とは、1のあとに0が六十個つづく数値である。プランクのスケールと宇宙のスケールのあいだには、数字にして六十桁もの莫大な開きがある。大変な違いである。それでも、プランク長と宇宙の大きさを比較するのに、「無限」をもち出す必要はない。 ★クオークも、陽子も、原子も、さまざまな構造をもつ化学物質も、山も、星も、太陽のような天体が千億個も集まってできる銀河も、銀河の一群も……いまだにわたしたちはその一側面しか理解できていない、目もくらむほどに複雑な宇宙全体が、この大きさのなかに収まっている。宇宙は巨大であり、しかし同時に、有限である。」(カルロ・ロヴェッリ(1956)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第4部 空間と時間を超えて、第11章 無限の終わり、pp.229-231、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))




★(6)未解決問題

世界のこのようなイメージと、このイメージを形づくるわずかな方程式によって、わたしたちの目に映るほとんどすべてのものを記述することができる。そう。あくまで、「ほとんど」である。肝心な何かが、まだ欠けている。今日のわたしたちが要求しているのは、その何かである。」(カルロ・ロヴェッリ(1956-)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第3部 量子的な空間と相関的な時間、pp.142-143、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))


★(6.1)一般相対性理論と量子力学

「一般相対性理論は、宇宙論、天体物理学、重力波やブラックホール研究の基礎である。一方の量子力学は、原子物理学、核物理学、素粒子物理学、物性物理学をはじめ、多くの分野の研究基礎となっている。

★(6.2)ヒッグス粒子

「素粒子物理学の分野において、二〇一三年に得られた重要な実験結果には、以下の二つが挙げられる。一つ目は、ジュネーヴのCERNでヒッグス粒子が確認されたことであり、この報せは世界中のマスメディアを賑わせた。二つ目は人工衛星プランクの測定データであり、それは二〇一三年にまとまった形で公開された。(中略)★ヒッグス粒子の発見は、量子力学にもとづく素粒子の標準模型を支持する確固たる証拠である。今回の発見は、三〇年前に発表された予測の正しさを裏づけている。「プランク」の測定結果は、宇宙項を加えた一般相対性理論にもとづく、宇宙論的標準模型を支持する確固たる証拠である。(中略)★自然がわたしたちに告げた内容はシンプルだった。「一般相対性理論と量子力学は正しい。量子力学の分野において、標準模型は正しい」。これですべてだった。」(カルロ・ロヴェッリ(1956-)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第4部 空間と時間を超えて、第9章 実験による裏づけとは?、pp.210-212、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))


★(7)未解決問題

一般相対性理論の重力場は、量子力学を考慮に入れずに記述されている。つまり一般相対性理論は、「量子化された場(量子場)」を想定していない。量子力学はというと、「時空間は曲がる」という点を無視して定式化されている。量子力学の扱う空間に、アインシュタインの方程式は当てはまらない。」(カルロ・ロヴェッリ(1956-)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第3部 量子的な空間と相関的な時間、第5章 時空間は量子的である、p.144、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))


★(7.1)超ひも理論

「本書で紹介してきた理論のほかに、現在もっとも盛んに研究されているのは、いわゆる「超ひも理論」である。ジュネーヴに拠点を置くCERN(欧州原子核研究機構)は、LHC(大型ハドロン衝突型加速器)と呼ばれる新型の素粒子加速器を擁している。★超ひも理論の分野(またはその関連分野)の研究に取り組んでいる物理学者の大部分は、LHCが実用化されるなり、超ひも理論が要請する未発見の粒子、つまり超対称性粒子が観測されるだろうと想定していた。超ひも理論が成り立つためには、この粒子の存在が確認されなければならず、そのため「ひも論者」たちは、超対称性粒子の発見を期待していたのである。LHCが稼働してから現在にいたるまで、超対称性粒子は観測されていない。(中略)★超対称性粒子は、多くのひも論者が想定していたエネルギーの範囲内には存在していなかった。もちろんこれは、決定的な証拠ではない。わたしたちはまだ、決定的な答えからは遠く離れた場所にいる。(カルロ・ロヴェッリ(1956-)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第4部 空間と時間を超えて、第9章 実験による裏づけとは?、pp.210-212、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))


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2026年10月4日日曜日

005必ずわかる難問題1

   ★005a_必ずわかる難問題1



★(7.4.1)関係事象

追加しました


★何百年も議論されても、明確に解けたと思えないような難しい問題が、いくつかあります。その中の一つ。


宇宙が誕生し、星々ができ、地球上で生命が生まれ進化して、人間が生まれ、心を持つようになった。


私たちは、たしかに、自分で考えて、自由に選択する、Aを選ぶか、Bを選ぶか? しかし人間も、物質には違いなく、宇宙を支配している物理学の法則に従っているはずだ。

★生命とは何か?

意識とは何か?

人間に自由意志はあるのか?

未来は選べるのか?


しばらくは、ポパーの考えたことを、紹介してみたい。


★(1)物質の世界を世界1、心の世界を、世界2と呼ぶことにする。ポパーは。もう一つの世界があるという。世界3だ。世界3とは、人間の心が作ったものの世界だ。


★(2)たぶん誰でも、ごく素朴な直感として、物質の世界1の存在を、確信している。(これが素朴な唯物論)


★(3)ところが良く考えると、物質があると思っているのは、私ではないのか。科学や技術は、物質の世界を、解明している? 私が勝手に思っているだけということはないのか。少なくとも、私の心の世界2は存在する。


(3.1)よく考えてみると、すべてのことは、私が感じ考えていることだ。


(3.2)もしかしたら、宇宙すべては、私の夢なのではないのか?(これが独我論)


★(4)私は決して他者の心の世界2を経験できないが、他者の心の世界2も存在する。


★(5)物質の世界を解明しているという科学や技術とは何か。誰か個人の心の中にあるというようなものではない。それは、膨大な書籍に書いてあったり、コンピュータシステムに記録されたデータやプログラムだったり、観測機器や製造装置だったりする。これらは、物質の世界1の存在だ。


★(6)ところが、これらの、人間の心が作り出したものが、人間と相互作用しあうと、宇宙の秘密を解き明かしたり、ロケットを飛ばしたりできるようになる。


★(6.1)仮に、人間が滅びて1人もいない世界を考えると、これらの物質の塊が、働き出すことはない。


★(7)次の概念は、すべて本質的には、同じだ。


★(7.1)心は、人間の心がつくったもの(ポパーの世界3)と相互作用して、元の自分とは違う心と相互作用する。


★(7.1.1)心身問題における言語の役割

「言語を学習する能力は――そして言語を学習する強い必要性さえも――人間の遺伝的構造の一部であるようにみえる。これとは対照的に、個々の言語を実際に学習することは、無意識の生得的な必要性と動機に影響されるとはいえ、遺伝子に制御された過程、したがって自然的過程ではなく、世界3に制御された、文化的過程である。(中略)★普通の子供はみな、楽しくそしてたぶん苦痛でもあるきわめて能動的な勉強によって、一つの言語を習得する。言語に伴う知的成果は多大なものである。★もちろん、この努力は子供の人格、他人への関係、自らの物質的環境への関係に対して強いフィードバックの効果をもっている。こうして、子供は部分的には彼自身の成果の所産であると言うことができる。彼は自分自身ある程度まで世界3の所産である。子供の物質的環境への精通とその意識が、自分の新しく習得した話すという能力によって拡大されるが、それと同じことが彼自身の意識についても言える。自我、人格は、他我、彼の環境内の人工物ならびに他の対象との相互作用から生じる。これはすべて言語の習得に深く影響を与える。」(カール・ポパー(1902-1994)『自我と脳』第1部、P2章 世界1・2・3、15――世界3と心身問題(上)pp.80-82、思索社(1986)、西脇与作・沢田允茂(訳))


★(7.2)心は、他者と交流しているとき、元の自分とは違う心になっている。(ライプニッツのモナドがつくる実体的紐帯)


★(7.3)人間と人間の間の人(ブーバー)


★(7.4)人以外のものとも、関係が成立する(ブーバー、我と汝)

 

★(7.4.1)関係事象

《自然人》をおそう根元的で、霊を揺すぶりおこすような印象や感動は、関係事象そのもの、つまり向かいあう存在をありありと体感すること、そして関係状態そのもの、つまり向かうあう存在とともに生きることからひき起こされるものである。自然人は彼が夜毎に見る月のことで考えをわずらわしたりはしないのだ。その月が、眠りあるいは目覚めている彼に向って、生きた肉体としてせまってきて、身の動きによって彼を魅惑するとか、彼の体にふれて、不快なことにせよ甘美なことにせよ、何かをしかけるまでは。★(中略)原始人が《神秘的威力》に帰しているさまざまな現象は、すべて根元的な関係事象、つまり彼の身体を刺戟し、ひとつの《刺戟像》を彼のなかに残してゆくからこそ、彼が考えをわずらわすところの事象なのである。だから、夜なかに彼のもとを訪れて苦痛や歓喜を与える月や死者が、また、彼を焼きこがす太陽が、彼にむかって吠えたてる野獣が、けわしい眼つきで無理を強いる酋長が、歌によって狩りへの熱狂をかきたてる巫者(シャーマン)が、そのような威力の持ち主なのだ。」(マルティン・ブーバー(1878-1965)『我と汝』第1部(集録本『我と汝・対話』)pp.28-30、みすず書房(1978)、田口義弘(訳))

https://sententiarum2.blogspot.com/2018/09/1878-1965_9.html


★(7.5)ある印の意味がわかるのは、その印を書いた人の意図がわかったとき


★(7.6)メモ書きしたとき、そのメモは、心の一部になる。


★(8)感じたり考えたりすることは、すべて身体と脳の働きによって作り出されたものだ。(唯物論)すべては物質の法則に従っていることになる。

★(9)メモの書かれた一枚の紙切れ。物質としての紙切れ。人間がいなければ、物質としては、大きな作用はしない。


★(10)ところが、この紙切れが、人間の心と相互作用すると、地球の運命を変えるほど、物質の世界に影響することもある。人間の心の世界と、心が作った世界(紙切れ)もたしかに存在する。


★(11)再掲(8)感じたり考えたりすることは、すべて身体と脳の働きによって作り出されたものだ。(唯物論)すべては物質の法則に従っていることになる。心の世界は、ただ身体の動きの影のようなものなのか? しかし、心が作った世界が働きはじめるとき、能動的な動きをすることがわかった


★「われわれは、世界2と世界3の相互作用の一つ(《把握作用》)は、世界3の対象を作り出す働きとして、そして批判的な選択によってそれら対象を照合する働きとして解釈できるということをみてきた。同じようなことは世界1の対象の視覚による知覚についても正しいように思われる。★このことは世界2を能動的――生産的で批判的(製作的と調合的)――とみるべきであることを示唆している。だが、ある無意識的な神経生理学的過程がまさにそれを行っているのだ、と考えるべき理由をわれわれはもっている。このことはおそらく、意識過程も同じ仕方で行なわれていることを《理解する》のを少しは容易にしてくれる。」(カール・ポパー(1902-1994)『自我と脳』第1部、P2章 世界1・2・3、15――世界3と心身問題(上)p.80、思索社(1986)、西脇与作・沢田允茂(訳))

★(12)心身問題


★ (3)随伴現象論の解釈:(1)(徹底的唯物論)と同様に、物理過程が存在する。その他の側面も(2)(汎心論)と異なっていない。だが、次のような(2)とは異なる点がある。

  (a)《生命のある》対象のみが《内的》または主観的経験をもつ。

  (b)(2)(汎心論)ではわれわれは二つの異なった、しかし同等に妥当な説明をもてたが、随伴現象論者は物理的説明に優位性を与えるばかりでなく、主観的経験は因果的に余分なものであることを強調する。(カール・ポパー(1902-1994)『自我と脳』第1部、P3章 唯物論批判、16――4つの唯物論的あるいは物理主義的な立場(上)pp.91-92、思索社(1986)、西脇与作・沢田允茂(訳))


  

★ (4)同一説:(1)(徹底的唯物論)と同様であるが、しかしここではわれわれは、意識経験と同一でない世界1の過程(世界 1p:下に書いたpは《純粋に物理的》を示す)と、経験された過程ないし意識的過程と同一である物理過程(世界 1m:下に書いたmは《心的を示す》)とを区別できる。世界1の二つの部分(つまり、部分世界 1pと 1m)はむろん相互作用が可能である。したがって、私の痛み(世界 1m)は私の記憶の蓄積に作用して、電話番号を調べさす。すべてのことは相互作用論者の分析と同じように生起する。(私の考えでは、これがこの見解を魅惑的なものにしている)。★ただ、(主観的な知識を含んだ)私の世界2だけが世界 1m、すなわち世界1の部分と同一視され、世界3は世界1の他の部分と、すなわち、電話帳や電話のような《道具ないし装置》と同一視される(あるいは、おそらく大脳過程と同一視される。というのは、同一論者にとっては、私の世界3の核心となる《抽象的な知識内容》は存在しないからである)。」(カール・ポパー(1902-1994)『自我と脳』第1部、P3章 唯物論批判、16――4つの唯物論的あるいは物理主義的な立場(上)pp.91-92、思索社(1986)、西脇与作・沢田允茂(訳))



★(4)同一説または中枢状態説は、心身問題に答えようと展開された理論の中では現在最も有力なものである。これは汎心論と随伴現象論の修正の一つとみることができる。随伴現象論のように、《汎》のない汎心論とみることができる。だが、随伴現象論とは反対に、心的事実を重要で因果的に効果のあるものと考える。この理論は、心的過程と一定の大脳の過程の間に、ある種の《同一性》(identity)が存在する、と主張する。(中略)★M・シュリック(Schlick)とファイグルによる同一説の形式では、心的過程は(ライプニッツ同様)内側から感得的に(by aquaintance)知られる物自体として考えられている。一方、われわれの大脳過程――理論的記述によってのみ知られる過程――に関する理論は同じ物を外側から記述することになる。随伴現象論とは対照的に、同一論者は心的過程は物理過程と相互作用するということができる。なぜならば、心的過程は単に物理過程《であり》、より正確には、特殊な大脳過程にすぎないからである。」(カール・ポパー(1902-1994)『自我と脳』第1部、P3章 唯物論批判、16――4つの唯物論的あるいは物理主義的な立場(上)pp.90-91、思索社(1986)、西脇与作・沢田允茂(訳))

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2026年10月2日金曜日

「君がなにか外的な理由で苦しむとすれば、君を悩ますのはそのこと自体ではなくて、それに関する君の判断なのだ。

 未来のための哲学講座

アウレーリウスの第8回です



「君がなにか外的な理由で苦しむとすれば、君を悩ますのはそのこと自体ではなくて、それに関する君の判断なのだ。ところがその判断は君の考え一つでたちまち抹殺してしまうことができる。また君を苦しめるものがなにか君自身の心の持ちようの中にあるものならば、自分の考え方を正すのを誰が妨げよう。同様に、もし君が自分に健全だと思われる行動を取らないために苦しんでいるとすれば、そんなに苦しむ代りになぜいっそその行動を取らないのだ。


『しかし打ち勝ち難い障碍物が横たわっている。』それなら苦しむな、その行動を取らないのは君のせいではないのだから。」


(マルクス・アウレーリウス(121-180)『自省録』第八巻、四七、pp.158-159、[神谷美恵子・2007])https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%AC%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%8B%E3%83%8C%E3%82%B9







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