変化盲
【ある役者が、学生に方角を尋ねる。通りがかりの労働者によって会話が一時的に中断され、わずか2秒ほどの間に髪型も服装も異なる別の役者に入れ替わるが、会話再開のとき学生はその事実に気づかない。変化盲という現象である。(スタニスラス・ドゥアンヌ(1965-))】変化盲
(a)ある役者が、通りかかった学生に方角を尋ねる。
(b)しかし、通りがかりの労働者によって、その会話は一時的に中断される。
(c)2秒後に会話が再開したときには、もとの役者は別の役者と入れ替わっている。
(d)二人の役者は髪型も服装も異なるにもかかわらず、ほとんどの学生は交替した事実に気づかない。
「ダン・シモンズは役者を使って仕組んだ実験で、変化盲の何たるかを例証した。ハーバード大学のキャンパスで、ある役者が通りかかった学生に方角を尋ねる。しかし通りがかりの労働者によって、その会話は一時的に中断される。2秒後に会話が再開したときには、もとの役者は別の役者と入れ替わっている。二人の役者は髪型も服装も異なるにもかかわらず、ほとんどの学生は交替した事実に気づかない。」
(スタニスラス・ドゥアンヌ(1965-),『意識と脳』,第1章 意識の実験,紀伊國屋書店(2015),p.57,高橋洋(訳))
(索引:変化盲)
![]() |

(出典:wikipedia)

遺伝的な規則、過去の記憶、偶然のできごとが交錯することで形作られる神経コードは、人によって、さらにはそれぞれの瞬間ごとに独自の様相を呈する。その状態の無限とも言える多様性は、環境に結びついていながら、それに支配はされていない内的表象の豊かな世界を生む。痛み、美、欲望、後悔などの主観的な感情は、この動的な光景のもとで、神経活動を通して得られた、一連の安定した状態のパターン(アトラクター)なのである。それは本質的に主観的だ。というのも、脳の動力学は、現在の入力を過去の記憶、未来の目標から成る布地へと織り込み、それを通して生の感覚入力に個人の経験の層を付与するからである。
それによって出現するのは、「想起された現在」、すなわち残存する記憶と未来の予測によって厚みを増し、常時一人称的な観点を外界に投影する、今ここについてのその人独自の暗号体系(サイファー)だ。これこそが、意識的な心の世界なのである。
この絶妙な生物機械は、あなたの脳の内部でたった今も作動している。本書を閉じて自己の存在を改めて見つめ直そうとしているこの瞬間にも、点火したニューロンの集合の活動が、文字通りあなたの心を作り上げるのだ。」
(スタニスラス・ドゥアンヌ(1965-),『意識と脳』,第7章 意識の未来,紀伊國屋書店(2015),pp.367-368,高橋洋(訳))
(索引:)
スタニスラス・ドゥアンヌ(1965-)
スタニスラス・ドゥアンヌの関連書籍(amazon)

検索(スタニスラス・ドゥアンヌ)
検索(stanislas dehaene)