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2026年8月25日火曜日
2026年8月23日日曜日
008必ずわかる難問題4
1. 記事のテーマ
心理学者E・トーリー・ヒギンズが提唱した「自己不一致理論(Self-Discrepancy Theory)」を通して解き明かす、人間の「自分自身に対する感情(落胆・罪悪感・恥・恐れ)」のメカニズムとその心理的構造。
2. 何が問題なのか
「もっとこうなりたいのに…」と落ち込んだり、「もっとしっかりしなければ…」と自分を責めたり、「親や上司の期待に応えられていない…」と不安や恐怖を感じたりすることはありませんか?
なぜ私たちは、同じ「理想や目標に届かない」という状況であっても、ある時は『落ち込み(落胆)』を感じ、またある時は『自分への怒り(罪悪感)』や『周囲への恐怖』を感じるのでしょうか?
心のモヤモヤやネガティブな感情の正体は、一体どこから生まれてくるのでしょうか?
★3. 解答の概要
私たちが日常で味わうネガティブな感情は、単なる気分の波ではなく、「現実の自分」と「目指すべき自分」との間のギャップ(不一致)の種類によって正確にパターン化されている、という驚くべき事実があります。
本記事では、自己概念を「自分視点」と「他者視点」の掛け合わせによる6つの領域(現実自己、理想自己、あるべき自己など)に分類。
・「理想の自分」になれない時は【落胆・不満】
・「義務や規範(あるべき自分)」を果たせない時は【罪悪感・自己卑下】
・「他者の望む理想」に届かない時は【恥・当惑】
・「他者の求める義務」を果たせない時は【恐れ・危機感】
このように、私たちが感じる不快な感情の正体が「どの自己とどの自己のズレによって生じているか」を論理的に解説しています。ネガティブ感情の背後にある「自分の心の構造」がクリアに見えてくる視点は、心理学の知見ならではの驚きと納得感をもたらしてくれます。
4. 用語集(ここで勉強できること)
※重要度の高い順に掲載
・現実自己(Actual Self)
自分が「実際に持っている」と信じている属性や特徴のこと(例:「私はスポーツが得意だ」「自分は少し優柔不断だ」など)。感情の比較におけるすべての起点となる自分。
・理想自己(Ideal Self)
自分または重要他者が「こうありたい、こうなってほしい」と希望し願う属性のこと。達成できないと「落胆」や「恥」を生み出す。
・あるべき自己(Ought Self)
自分または重要他者が「持つべきだ、果たす義務がある」と感じている属性のこと。守れないと「罪悪感」や「恐れ・危機感」を生み出す。
・自己不一致理論(Self-Discrepancy Theory)
E・トーリー・ヒギンズが提唱した理論。現実自己と、理想自己・あるべき自己との間にあるズレ(不一致)が、特定の感情的苦痛を引き起こすとする心理学モデル。
・重要他者(Significant Others)
父親・母親・配偶者・上司など、自分の価値観や自己評価に強い影響を与える特定の他者のこと。「他者視点の理想/あるべき自己」を形成する要因となる。
・自己概念の視点(自身 vs 他者)
自己概念は「自分自身がどう思っているか(自身)」だけでなく、「価値ある他者が自分をどう見ていると思っているか(他者)」という2つの視点から多角的に構成されているという捉え方。
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007必ずわかる難問題3
★007_必ずわかる難問題3
(15)から追記
★(1)前回、宇宙の構造と、法則の概要を話しました。現代の物理学は、かなりの精度で真理を掴んでいて、高度な技術の基礎知識にもなっています。
★(2)この宇宙の法則から、生命が生まれて進化することが理解できるだろうか。
★(3)意識が生まれ、その意識が宇宙の法則を理解することを、説明できるだろうか。
★(4)宇宙の出来事の生成は、確率の法則に従っているが、個々の出来事の生成は、偶然に支配されている。
★(5)ところが生命は、良くなろうとする傾向がある。物理学の法則とは矛盾しないのか?
★(6)(仮説)はじめの一歩は、小さな一歩で、偶然だったのだろう。ある分子の配列が、「自己保存」に適したものを探り当てたとき、変化はランダムではなく、方向性を持つことになった。もしかしたら、最初の探り当ても、無数の分子配列の量子的な重ね合わせの中から、まさに「自己保存する」がゆえに出来事として発生するのではないのか? 量子コンピュータのような速さで、無数の組み合わせが一瞬のうちに試行され、自己保存する配列が生き残る。この仮説が正しいなら、生命の発生は、必然だったことになる。
★(7)有機体は、外部環境と内部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、外部環境と内部環境を変更する。
★(8)ホメオスタシスの入れ子構造:(1)各機構は、より単純な機構を構成要素としている。(2)そ の際、新しい問題に対応している。(3)全体として「幸福を伴う生存」が目指されている。 (アントニオ・ダマシオ(1944-))
★ホメオスタシスの各階層
(a)感情
(b)狭義の情動
(c)多数の動因と動機、あるいは欲求
(d)快(および報酬)または苦(および罰)と結びついている行動
(e)免疫系
(f)基本的な反射
(g)代謝のプロセス
★(9)代謝のプロセス
有機体は、内部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、代謝のプロセスで内部環境を調整する。
★(10)基本的な反射
有機体は、外部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、基本的な反射で対応する
★(11)免疫系
有機体は、内部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、免疫系で内部環境を調整する。《誘発原因》は、有機体の外部から侵入してくるウイルス、細菌、寄生虫、毒性化学分子など。有機体の内部であっても、例えば死滅しつつある細胞から放出される有害な化学分子。
★(12)快(および報酬)または苦(および罰)と結びついている行動――快楽行動、苦痛行動
有機体は、外部環境と内部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、代謝のプロセスや免疫系で内部環境を調整したり、基本的な反射で反応したりするが、やがて外部環境の特定の対象や状況への接近反応や退避反応をするようになる。
★(12.1)低いレベルの注意
「意識の理論は単に、脳はどのように対象のイメージに目を向けるか、というような理論であっては「ならない」。私が見るところ、生得的な低いレベルの注意は意識に先行して存在し、一方、集中的な注意は意識が生まれてから生じる。意識にとって、注意はイメージをもつのと同じぐらい必要なものである。しかし、注意は意識にとって十分なものではないし、意識と同じものでもない。(アントニオ・ダマシオ(1944-)『起こっていることの感覚』(日本語名『無意識の脳 自己意識の脳』)第1部 脳と意識の謎、第1章「脳の中の映画」とは何か、pp.35-38、講談社(2003)、田中三彦(訳))
★(13)多数の動因と動機、あるいは欲求
有機体は、外部環境と内部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、代謝のプロセスや免疫系で内部環境を調整したり、基本的な反射で反応したりするが、やがて外部環境の特定の対象や状況への接近反応や退避反応をするようになる。そして、外部環境と内部環境の変化検出と評価の一部を意識化することで、特定の動因による行動を組織化するようになる。
《定義》欲求:ある特定の動因によって活発化する有機体の行動的状態
《例》空腹感、喉の渇き、好奇心、探究心、気晴らし、性欲など。
★(14)意識化された外部環境、内部環境
・外部感覚(特殊感覚)
・自分の肢体のなかにあるように感じる痛み、熱さ、その他の変様(表在性感覚、深部感覚)
・身体ないしその一部に関係付ける知覚としての、飢え、渇き、その他の自然的欲求(内臓感覚)
参考:精神の受動のひとつ、身体ないしその一部に関係づける知覚として、飢え、渇き、その他の自然的欲求、自分の肢体のなかにあるように感じる痛み、熱さ、その他の変様がある。(ルネ・デカルト(1596-1650))
★(15)情動
感覚で与えられた対象や事象、あるいは想起された対象や事象を感知したとき、自動的に引き起こされる身体的パターンであり、喜び、悲しみ、恐れ、怒りなどの語彙で表現される。 それは、対象や事象の評価を含み、脳や身体の状態を一時的に変更することで、思考や行動に 影響を与える。情動誘発因のあるものは進化の過程で獲得され、他のものは個人の生活の中で学習される。あるときは無意識的に情動が誘発され、またあるときは意識的な評価段階を経て情動 が誘発される。誘発された情動の実体はまた意識の諸様相であり情動誘発因の場合もある。
★(15.1)「第三の、そしてたぶんもっとも意味深い事実は、意識と情動は分離「できない」ということ。(中略)通常、意識に障害が起こると情動にも障害が起こる。」(アントニオ・ダマシオ(1944-)『起こっていることの感覚』(日本語名『無意識の脳 自己意識の脳』)第1部 脳と意識の謎、第1章「脳の中の映画」とは何か、pp.35-38、講談社(2003)、田中三彦(訳))
★(16)中核意識と延長意識
「意識は単純なものと複雑なものに分けることが可能であり、神経学的証拠からその分離は明白だ。私が「中核意識」(core consciousness)と呼ぶもっとも単純な種類の意識は、有機体に一つの瞬間「いま」と一つの場所「ここ」についての自己感を授けている。」(中略)「他方、私が「延長意識」(extended consciousness)と呼んでいる多くのレベルと段階からなる複雑な種類の意識は、有機体に精巧な自己感――まさに「あなた」、「私」というアイデンティティと人格――を授け、また、生きてきた過去と予期される未来を十分に自覚し、また外界を強く意識しながら、その人格を個人史的な時間の一点に据えている。」(アントニオ・ダマシオ(1944-)『起こっていることの感覚』(日本語名『無意識の脳 自己意識の脳』)第1部 脳と意識の謎、第1章「脳の中の映画」とは何か、pp.35-38、講談社(2003)、田中三彦(訳))
★
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2026年8月21日金曜日
006必ずわかる難問題2
★
006a_必ずわかる難問題2
★難問題に入っていく前に、物理学が理解している最新の宇宙の姿を、知って欲しい。次の記述は、簡潔で丁寧にまとめて書かれているので、何回も読んで欲しい。復習します。毎回少しずつ詳しくしていきます。
以下を追記
★(6.1.1)「素粒子物理学の分野において、二〇一三年に得られた重要な実験結果
★(6.3)超ひも理論
★(1)「わたしたちが生きる世界には、屈曲した時空間が広がっている。
★(1.1)量子力学以前の理論、つまりアインシュタインの方程式によれば、この宇宙は無限に押しつぶされる。そうして最後は、原子核に飲みこまれる電子のように、一点となって消失する。これが、アインシュタインの方程式によって予見される、「点」としてのビッグバンである。(中略)★しかし、量子力学を考慮に入れれば、宇宙の収縮にも限界があることが判明する。それはあたかも、量子的な反発によって、宇宙が跳ね返っているかのような状況である。収縮過程にある宇宙が、広がりを持たない「点」まで縮むことはない。(カルロ・ロヴェッリ(1956)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第4部 空間と時間を超えて、第8章 ビッグバンの先にあるもの、pp.202-204、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))
★(2)どのようにしてかは分からないが、それは今から一四〇億年前に、巨大な爆発によって誕生した。以来、時空間はずっと膨張を続けている。
★(2.1)ビッグバンのさなかの決定的な移行過程においては、わたしたちはもはや、明確に記述された空間や時間を想定することはできない。わたしたちの考察の対象となるのは確率の雲だけであり、空間と時間はその雲のなかですっかり姿を消してしまう。ビッグバンの前後では、確率が泡立つ雲のなかに、世界はきれいに溶解する。★そして、量子重力理論の方程式なら、こうした確率の雲を記述することができる。今日の物理学者は、わたしたちの宇宙が生まれる前には、別の宇宙が存在していたと考えている。空間と時間が確率のなかで溶解する量子的な局面を経た末に、ひとつの宇宙が崩壊し、新しい宇宙が生まれたのである。」(カルロ・ロヴェッリ(1956)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第4部 空間と時間を超えて、第8章 ビッグバンの先にあるもの、pp.202-204、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))
★(3)この空間は実在する「事物」であり、物理的な「場」である。時空間の力学は、アインシュタインの方程式によって記述される。物質の重みのもとで、空間は折れたり曲がったりする。物質が極度に凝縮されたときには、空間がブラックホールへ呑みこまれていくこともある。
★(4)宇宙には無数の銀河が散らばっており、ひとつひとつの銀河に無数の星が散らばっている。銀河を形づくっている物質は、量子場によって形づくられている。量子場は、電子や光子のように、粒子の形態をとって現われる。または、量子場は電磁波のように、波の形で現われることもある。テレビの映像や、太陽の光や、星の輝きをわたしたちに伝えているのは、電磁波である。
★(5)原子や光をはじめ、宇宙に存在するあらゆる事物は、量子場によって記述される。量子場は奇妙な存在である。量子場を形成するひとつひとつの粒子は、別のなにかと相互作用を起こすときだけ、ある一点に居場所を定め、その姿をあらわにする。ひとたび相互作用を終えるなり、粒子は「確率の雲」のなかへ溶けこんでいく。世界とは、素粒子が起こす事象の湧出である。波のように振動する、大きく躍動的な空間の海に、素粒子は浸かっている。
★(6)世界のこのようなイメージと、このイメージを形づくるわずかな方程式によって、わたしたちの目に映るほとんどすべてのものを記述することができる。そう。あくまで、「ほとんど」である。肝心な何かが、まだ欠けている。今日のわたしたちが要求しているのは、その何かである。」(カルロ・ロヴェッリ(1956-)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第3部 量子的な空間と相関的な時間、pp.142-143、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))
★(6.1)「一般相対性理論は、宇宙論、天体物理学、重力波やブラックホール研究の基礎である。一方の量子力学は、原子物理学、核物理学、素粒子物理学、物性物理学をはじめ、多くの分野の研究基礎となっている。
★(6.1.1)「素粒子物理学の分野において、二〇一三年に得られた重要な実験結果には、以下の二つが挙げられる。一つ目は、ジュネーヴのCERNでヒッグス粒子が確認されたことであり、この報せは世界中のマスメディアを賑わせた。二つ目は人工衛星プランクの測定データであり、それは二〇一三年にまとまった形で公開された。(中略)★ヒッグス粒子の発見は、量子力学にもとづく素粒子の標準模型を支持する確固たる証拠である。今回の発見は、三〇年前に発表された予測の正しさを裏づけている。「プランク」の測定結果は、宇宙項を加えた一般相対性理論にもとづく、宇宙論的標準模型を支持する確固たる証拠である。(中略)★自然がわたしたちに告げた内容はシンプルだった。「一般相対性理論と量子力学は正しい。量子力学の分野において、標準模型は正しい」。これですべてだった。」(カルロ・ロヴェッリ(1956-)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第4部 空間と時間を超えて、第9章 実験による裏づけとは?、pp.210-212、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))
★(6.2)一般相対性理論の重力場は、量子力学を考慮に入れずに記述されている。つまり一般相対性理論は、「量子化された場(量子場)」を想定していない。量子力学はというと、「時空間は曲がる」という点を無視して定式化されている。量子力学の扱う空間に、アインシュタインの方程式は当てはまらない。」(カルロ・ロヴェッリ(1956-)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第3部 量子的な空間と相関的な時間、第5章 時空間は量子的である、p.144、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))
★(6.3)超ひも理論
「本書で紹介してきた理論のほかに、現在もっとも盛んに研究されているのは、いわゆる「超ひも理論」である。ジュネーヴに拠点を置くCERN(欧州原子核研究機構)は、LHC(大型ハドロン衝突型加速器)と呼ばれる新型の素粒子加速器を擁している。超ひも理論の分野(またはその関連分野)の研究に取り組んでいる物理学者の大部分は、LHCが実用化されるなり、超ひも理論が要請する未発見の粒子、つまり超対称性粒子が観測されるだろうと想定していた。超ひも理論が成り立つためには、この粒子の存在が確認されなければならず、そのため「ひも論者」たちは、超対称性粒子の発見を期待していたのである。LHCが稼働してから現在にいたるまで、超対称性粒子は観測されていない。(中略)★超対称性粒子は、多くのひも論者が想定していたエネルギーの範囲内には存在していなかった。もちろんこれは、決定的な証拠ではない。わたしたちはまだ、決定的な答えからは遠く離れた場所にいる。(カルロ・ロヴェッリ(1956-)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第4部 空間と時間を超えて、第9章 実験による裏づけとは?、pp.210-212、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))
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2026年8月19日水曜日
005必ずわかる難問題1
★005a_必ずわかる難問題1
(8)から、追記します。
★何百年も議論されても、明確に解けたと思えないような難しい問題が、いくつかあります。その中の一つ。
宇宙が誕生し、星々ができ、地球上で生命が生まれ進化して、人間が生まれ、心を持つようになった。
私たちは、たしかに、自分で考えて、自由に選択する、Aを選ぶか、Bを選ぶか? しかし人間も、物質には違いなく、宇宙を支配している物理学の法則に従っているはずだ。
★生命とは何か?
意識とは何か?
人間に自由意志はあるのか?
未来は選べるのか?
しばらくは、ポパーの考えたことを、紹介してみたい。
★(1)物質の世界を世界1、心の世界を、世界2と呼ぶことにする。ポパーは。もう一つの世界があるという。世界3だ。世界3とは、人間の心が作ったものの世界だ。
★(2)たぶん誰でも、ごく素朴な直感として、物質の世界1の存在を、確信している。(これが素朴な唯物論)
★(3)ところが良く考えると、物質があると思っているのは、私ではないのか。科学や技術は、物質の世界を、解明している? 私が勝手に思っているだけということはないのか。少なくとも、私の心の世界2は存在する。
(3.1)よく考えてみると、すべてのことは、私が感じ考えていることだ。
(3.2)もしかしたら、宇宙すべては、私の夢なのではないのか?(これが独我論)
★(4)私は決して他者の心の世界2を経験できないが、他者の心の世界2も存在する。
★(5)物質の世界を解明しているという科学や技術とは何か。誰か個人の心の中にあるというようなものではない。それは、膨大な書籍に書いてあったり、コンピュータシステムに記録されたデータやプログラムだったり、観測機器や製造装置だったりする。これらは、物質の世界1の存在だ。
★(6)ところが、これらの、人間の心が作り出したものが、人間と相互作用しあうと、宇宙の秘密を解き明かしたり、ロケットを飛ばしたりできるようになる。
★(6.1)仮に、人間が滅びて1人もいない世界を考えると、これらの物質の塊が、働き出すことはない。
★(7)次の概念は、すべて本質的には、同じだ。
★(7.1)心は、人間の心がつくったもの(ポパーの世界3)と相互作用して、元の自分とは違う心と相互作用する。
★(7.2)心は、他者と交流しているとき、元の自分とは違う心になっている。(ライプニッツのモナドがつくる実体的紐帯)
★(7.3)人間と人間の間の人(ブーバー)
★(7.4)人以外のものとも、関係が成立する(ブーバー、我と汝)
★(7.5)ある印の意味がわかるのは、その印を書いた人の意図がわかったとき
★(7.6)メモ書きしたとき、そのメモは、心の一部になる。
★(8)感じたり考えたりすることは、すべて身体と脳の働きによって作り出されたものだ。(唯物論)すべては物質の法則に従っていることになる。
★(9)メモの書かれた一枚の紙切れ。物質としての紙切れ。人間がいなければ、物質としては、大きな作用はしない。
★(10)ところが、この紙切れが、人間の心と相互作用すると、地球の運命を変えるほど、物質の世界に影響することもある。人間の心の世界と、心が作った世界(紙切れ)もたしかに存在する。
★(11)再掲(8)感じたり考えたりすることは、すべて身体と脳の働きによって作り出されたものだ。(唯物論)すべては物質の法則に従っていることになる。心の世界は、ただ身体の動きの影のようなものなのか? しかし、心が作った世界が働きはじめるとき、能動な動きをすることがわかった。
★「われわれは、世界2と世界3の相互作用の一つ(《把握作用》)は、世界3の対象を作り出す働きとして、そして批判的な選択によってそれら対象を照合する働きとして解釈できるということをみてきた。同じようなことは世界1の対象の視覚による知覚についても正しいように思われる。このことは世界2を能動的――生産的で批判的(製作的と調合的)――とみるべきであることを示唆している。だが、ある無意識的な神経生理学的過程がまさにそれを行っているのだ、と考えるべき理由をわれわれはもっている。このことはおそらく、意識過程も同じ仕方で行なわれていることを《理解する》のを少しは容易にしてくれる。」(カール・ポパー(1902-1994)『自我と脳』第1部、P2章 世界1・2・3、15――世界3と心身問題(上)p.80、思索社(1986)、西脇与作・沢田允茂(訳))
★
https://sententiarum2.blogspot.com/2018/08/31902-1994.html
https://sententiarum2.blogspot.com/2018/08/112331902-1994.html
2026年8月16日日曜日
013必ずわかる難問題9
★013必ずわかる難問題9
(7)を追加します。
★(1)主観的な意識は、時空におけるイベントであるとしてみる。
★(2)イベントが生成されるには、なんらかのマクロ系の「モナド」が存在していなければならない。
★(3)「総じて主観というものが存在しうるためには、なんらかの持久するものが現存していなくてはならない〔そして同様に多くの同等性と類似性が現存していなくてはならない〕。」(フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)『遺稿集・生成の無垢』Ⅰ認識論/自然哲学/人間学 六三、ニーチェ全集 別巻4 生成の無垢(下)、pp.49-50、[原佑・吉沢伝三郎・1994])
★(4)マクロ系の存在は、ある特定の状態を構成する無数のミクロ状態から生成される。
★(5)「精神的なものはあくまで《身体》の記号とみなされるべきなのだ!」
★「いくらかでも身体について―――いかに多くの組織がそこでは同時に働いているか、いかに多くのことがたがいに助けあったり背きあったりするかたちで行なわれているか、いかに多くの繊細さが調停等々のはたらきのうちに現存するかを―――思い浮かべた者は、一切の意識が、これに比較すれば、何か貧しくて狭いものであり、いかなる精神も、ここで成就されうるでもあろう精神的なことには、近似的にしか充分ではなく、そしておそらくはまた、最も賢明な道徳の教師や立法者も、もろもろの義務や権利の戦いのこの活発な営みのただなかでは、おのれが無骨で初心者めいていると感じざるをえないことだろうと、判断するであろう。」(フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)『遺稿集・生成の無垢』Ⅱ道徳哲学 七二九、ニーチェ全集 別巻4 生成の無垢(下)、pp.358-359、[原佑・吉沢伝三郎・1994]
★(6)「意識にのぼってくるすべてのものは、なんらかの連鎖の最終項であり、一つの終末である。」
★「或る思想が直接或る別の思想の原因であるなどということは、見かけ上のことにすぎない。本来的な連結された出来事は私たちの意識の《下方で》起こる。諸感情、諸思想等々の、現われ出てくる諸系列や諸継起は、この本来的な出来事の《徴候》なのだ! ―――あらゆる思想の下にはなんらかの情動がひそんでいる。あらゆる思想、あらゆる感情、あらゆる意志は、或る特定の情動から生まれたものでは《なく》て、或る《総体的状態》であり、意識全体の或る全表面であって、私たちを構成している諸衝動一切の、―――それゆえ、ちょうどそのとき支配している衝動、ならびにこの衝動に服従あるいは抵抗している諸衝動の、瞬時的な権力確定からその結果として生ずる。すぐ次の思想は、いかに総体的な権力状況がその間に転移したかを示す一つの記号である。「意志」―――一つの欺瞞的な具象化。」(フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)『遺稿集・生成の無垢』Ⅰ認識論/自然哲学/人間学 二五〇、ニーチェ全集 別巻4 生成の無垢(下)、pp.148-149、[原佑・吉沢伝三郎・1994]
★(7)《諸事物が私たちの琴線に触れるのだが、そこから旋律をつくり出すのは私たちなのだ》
★「私たちは、他の諸事物が私たちに影響をおよぼすさい、《受動的》であるのでは《なく》、むしろ即座に私たちは私たちの力をそれに対抗させる。《諸事物が私たちの琴線に触れるのだが、そこから旋律をつくり出すのは私たちなのだ》。」(フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)『遺稿集・生成の無垢』Ⅰ認識論/自然哲学/人間学 一九、ニーチェ全集 別巻4 生成の無垢(下)、p.21、[原佑・吉沢伝三郎・1994]
★
https://sententiarum2.blogspot.com/2018/09/1844-1900_9.html
★「これらの「実際の」自然情景、それは《原始的人類》の《詩作》であり《絵画》なのだ、―――当時は人々は、諸事物のうちへ何かを《置き入れて見る》ことによって以外には、詩作し絵を描くすべをまだ知らなかったのである。《そしてこの遺産を》私たちは相続したのだ。―――この崇高な線、悲嘆的偉大さのこの感情、激動する海のこの感情は、すべて私たちの祖先たちによって《仮構された》のである。この確固として明確に《見ること》一般は!」(フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)『遺稿集・生成の無垢』Ⅳ宗教/キリスト教 九三一、ニーチェ全集 別巻4 生成の無垢(下)、p.500、[原佑・吉沢伝三郎・1994])
★
https://sententiarum2.blogspot.com/2018/09/1844-1900_12.html
012必ずわかる難問題8
1. 記事のテーマ
「命令されたから従う」のか、「義務があるから従う」のか?
法哲学の巨星 H.L.A.ハート(『法の概念』)が解明する、強制力(せざるを得なかった)と社会的責務(責務を負っていた)の根本的相違。
2. 何が問題なのか(問いかけ)
「強盗に拳銃を突きつけられて財布を渡すこと」と「法律に従って税金を払うこと」、あるいは「国を守るために兵役につくこと」の違いは一体どこにあるのでしょうか?
もし「従わなければ不利益を被るからやる」という点だけを見るならば、国家の法律も強盗の脅迫も、本質的には同じ「暴力による強制」に過ぎないことになってしまいます。
私たちが日常的に口にする「〜せざるを得なかった」という切迫した心理状態と、法や道徳が私たちに求める「〜する責務を負っていた」という規範。
この二つの間には、どのような決定的な線引きが存在しているのでしょうか?
3. 解答の概要(何が驚くべきことなのか)
【解答の概要】
法哲学者ハートは、「〜せざるを得なかった(was obliged to)」と「〜する責務を負っていた(had an obligation)」を明確に区別します。
「〜せざるを得なかった」とは、強盗の威嚇のように「従わなければ害悪が及ぶ」という心理的恐怖や動機に基づく記述であり、通常「実際に金を渡した」という行動を伴います。
対して「〜する責務を負っていた」は、本人の心理(恐怖の有無や逃げ切れるという確信)や、実際にその行動をとったか否かとは【無関係】に成り立ちます。たとえ捕まらないと確信して兵役を拒否したとしても、「責務を負っていた」という真実性は失われません。
【なぜ、それが驚くべきことなのか】
それは、法や義務を「命令と制裁への恐怖」という単純なモデル(いわゆる「強盗モデル」)
で説明しようとしてきた従来の法思想を根底から覆したからです。
法律に従うということは、単に強者に脅されて平伏することではありません。
社会のメンバーが共通の「基準」として受け入れている「社会的ルール」が存在するからこそ、人は恐怖や個人的損得を超えて「責務」を負うことができる――。
法律の本質が「恐怖による威嚇」ではなく「ルールによる客観的な枠組み」にあることを解き明かした点に、この論理の目覚ましい洞察があります。
4. 用語集(ここで勉強できること)
※重要な用語から順に掲載しています。
1. 責務・義務(Obligation / Duty)
特定の「社会的ルール」が存在することを前提とし、本人の心理状態(恐怖や確信)や実際の行動の有無に関わらず、個人に対して客観的に行動を要求する規範的概念。
2. せざるをえない状態(Being Obliged)
害悪の回避や威嚇に対する恐怖など、特定の心理的動機・信念によって行動を強いられている状態。主に行為者の心理的・事実的な状況を説明する言葉。
3. 社会的ルール(Social Rule)
単なる人々の習慣(癖や傾向)とは異なり、集団内での規則的な行為と、それを正しい行動基準として認め、相互に要求し批判し合う規範的な態度が結合した仕組み。
4. 規範的言語(Normative Language)
「〜すべきである(should)」「〜しなければならない(must)」「〜するのが当然である (ought)」など、単なる事実の記述ではなく、客観的な行動基準を示し、要求・批判・
承認を行うために用いられる言葉の体系。
5. 強盗モデル(Gunman Situation)
「拳銃で脅して金を奪う強盗」の状況。法を単なる「威嚇による命令の集積」とみなす従来型の法理論(法命令説)の欠陥を浮き彫りにするための思考実験。
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2026年8月14日金曜日
011必ずわかる難問題7
1. 記事のテーマ
「人はなぜ正気のまま恐ろしい不寛容や暴力を振るってしまうのか」
——アイザイア・バーリンが語る、普遍的価値・普遍性の原則と文化相対主義、そして熱狂を解きほぐす対話の力
2. 何が問題なのか(問いかけ)
世界には多様な文化や価値観があり、「絶対的な正しさなど存在しない(文化相対主義)」とされる一方で、人間には共通の道徳や人権という「普遍的な価値(普遍性の原則)」があるとも言われます。この2つは一見すると真っ向から矛盾しているように思えませんか?
さらに、歴史上で起きたナチスによるホロコーストのような残虐行為を、私たちは単に「実行者が異常だった」「狂人の狂気によるものだ」と片付けてしまってよいのでしょうか? もし彼らが「異常者」ではなく、「正気の人間」だったとしたら……?
3. 解答の概要
思想史家アイザイア・バーリンは、普遍性の原則と文化相対主義は「矛盾しない」と断言します。なぜなら、文化や時代による大きな違いが存在する一方で、人類には普遍的に共有されている価値(勇気や善悪の概念など)が経験的事実として存在するからです。
さらに驚くべきことに、バーリンはナチスなどの恐ろしい迫害行為について、「狂気や精神病理によるものではなく、正気の人間が『巨大な嘘(虚偽の信念)』を本気で信じ込んだ結果として起きた」と指摘します。
人は、狂っていなくても恐ろしい犯罪や残虐行為に手を染めることができます。感情的な憎悪だけでなく、「知的な誤り(偽りの理論)」が人間を動かすからです。だからこそ、相手を単に「異常者」として排斥するのではなく、その信念の心理的・知的なルーツを想像力によって理解し、論理的な対話と説得を試み続けることこそが、熱狂と暴力を防ぐ唯一の道であると語ります。
4. 用語集(ここで勉強できること)
記事に登場する重要な概念を、重要度の高い順にまとめています。
1. 普遍性の原則(普遍的価値)
大多数の場所や時代において、人間がほとんど常に共有している価値観のこと(例:善悪・真偽の概念や、勇気への敬意)。バーリンはこれを理性で論証されるものではなく、人類の歴史における「経験的事実」であると説明します。
2. 文化相対主義
異なる文化、社会、国家にはそれぞれの価値観や規範があり、ひとつの絶対的な基準で他方を優劣判定することはできないという考え方。
3. 「すべてを理解する」と「すべてを許す」(tout comprendre / tout pardonner)
「tout comprendre, c'est tout pardonner(すべてを理解することは、すべてを許すことである)」というフランスの有名な諺に対する言及。相手の立場や背景を理解・想像すること(理解)と、相手の犯した罪や悪行を認めて容認すること(許し)は全く別物であるという重要な洞察です。
4. 事実による真実(vérités du fait) / 理性による真実(vérités de la raison)
哲学者ライプニッツによる区別。前者は経験的・歴史的な観察によって得られる真実(人間には共通の価値がある等)、後者は純粋な論理や数学のように理性だけで導き出される真実を指します。
5. 想像力的理解(洞察)
自分とは全く異なる環境や思想を持つ相手の立場に立ち、「自分がその状況にいたらどう世界を見るか」を想像する能力。不寛容や盲目的な熱狂を弱めるために不可欠な態度とされます。
6. 下級人間(Untermenschen)
ナチス・ドイツが自らの人種差別的思想(ゲルマン/ノルディック至上主義)を正当化するために用いた言葉。特定のグループを「害虫」や「有毒な生物」に見立てる虚偽の理論であり、大破局の惨劇を引き起こす知的なルーツとなりました。
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010必ずわかる難問題6
★010必ずわかる難問題6
前回の復習の後
どうすれば金儲けできるかという話し。(4.2)を詳細に説明する。
さらに追加。現在の富裕層が、どのように儲かる仕組み作りをしているのかを理解します。
★(1)効率的な市場
市場において個々人が自己利益を最大化させることで、全体の社会的利益を最大化させることができる。
★(2)市場の失敗
市場は、独力で効率的な結果を生み出せない。すなわち、以下の諸原因により、個々人が社会にもたらす利益と個人的報酬が等しくなくなり、全体の社会的利益を最大化させることができなくなる。
★ 市場の失敗の原因
【(a)不完全な競争、(b)情報の不完全性、非対称性、(c)外部性の働き、(d)リスク市場の非存在によって、市場の失敗が発生する。高い効率性と繁栄のためには、政府による適切な矯正作業が必要である。(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-))】
★(2.1)競争が不完全なとき。
(2.2)情報の不完全性や情報の非対称性が存在するとき。
市場取引に関する情報を、誰かが持っている一方で、他の誰かが持っていない状況。
★(2.3)外部性が働いているとき。
ひとつの集団の行動によって、正もしくは負の影響が他に及ぶ可能性があるものの、集団が正の影響から利益を得ることも、負の影響の代償を支払うこともない状況。
★(2.4)リスク市場が存在しないとき
たとえば、直面する重大なリスクの多くに対して、保険をかけることができない状況。
★(3)政府の役割
(3.1)政府は、税金と規制にかんする制度設計を通じて、個人のインセンティブと、社会的利益を同調させる必要がある。
(3.2)重大な市場の失敗に対して、納得できる矯正作業を政府が行なわないかぎり、経済の繁栄は望めないだろう。
★(4)2つの考え方
(4.1)みんなの幸せを考える。全体の社会的利益を最大化させようとするには、政府の適切な矯正作業が必要である。
★(4.2)私だけ、儲かれば良い。社会に対する貢献以上の個人的報酬を獲得しようとするには、政府の規制は少ないほうが都合がいい。
【社会に対する貢献以上の報酬を得る方法:(a)参入障壁の構築と独占の維持、(b)競争障壁の構築、(c)市場の透明性を低下させること、(d)これら反競争的行為が規制されないための政治的対策。(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-))】
★「事業家たちが重視するのは、社会の繁栄とは何かを広く知らしめることでもなければ、市場の競争性を高めることでもない。彼らの目的は、“自分に都合よく”市場を機能させ、より大きな利潤を手にすることだけだ。しかし、これらの行為はたいていの場合、経済の効率性を低下させ、不平等を拡大させる結果に終わる。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.80-82,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
★(4.2.1)儲けを大きくするために、市場の競争性を低下させ、独占力を確保すること。
(i)参入障壁や、競争の障壁を構築する。
(ii)反競争的行為が法律で禁止されないように対策する。
(iii)仮に法律が存在する場合は、実効的な取り締まりが行なわれないよう対策する。
★(4.2.2)市場の透明性を低下させる。
(i)例として、公開市場ではなく店頭市場を利用し、買い手には必要な情報を与えず、取引を有利に進める。
★「好んで使われるのは、市場の透明性を低下させる手法だ。透明性が高まれば高まるほど、市場における競争は激しくなりやすい。銀行家たちはこの事実を知っている。だからこそ銀行業界は、〈AIG〉の没落の中心的役割を果たした危険な金融商品、デリバティブの引き受け事業を展開するにあたって、不透明な“店頭市場”での取引を必死に守りつづけたのだ。店頭市場では、良い取引と悪い取引を消費者が見極めるのは難しい。透明性の高い現代の公開市場とは対照的に、店頭市場ではすべてが交渉で決まる。売り手が絶え間なく取引を行なう一方、買い手はたまにしか市場を訪れないため、売り手は買い手よりも多くの情報を持ち、その情報を使って取引を有利に進める。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.80-82,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
★(4.2.3)儲けている人の考え方
★「近代資本主義は複雑なゲームと化しており、少し頭が切れるくらいでは勝者になれないが、多くの場合、勝者は感心できない特性を持ち合せている。法律をかいくぐる能力や、法律を都合よくねじ曲げる能力や、貧困者をふくむ他人の弱味につけ込む意志や、必要とあれば”アンフェア”なプレーをする意志だ。このゲームで成功している達人のひとりは、「勝負は問題ではない。重要なのはどうプレーするかだ」という昔の金言をたわごとと切り捨てる。重要なのは勝つか負けるかだけなのだ。市場は勝ち負けの基準をはっきりと示してくれる。持っている金の量だ。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.82-85,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
★(4.2.4)レントシーキング
★(a)市場の競争性を低下させ、独占力を確保する。
(a.1)参入障壁や、競争の障壁を構築する。
★(b)市場の透明性を低下させ、情報の非対称性を利用する。
(b.1)公開市場ではなく店頭市場を利用し、買い手に必要な情報を与えず、取引を有利に進める。
(b.2)略奪的貸付や濫用的クレジットカード業務。
★「最も悪名高いレントシーキングの形態――近年になって最もみがきのかかった手法――は、金融界が略奪的貸付や濫用的クレジットカード業務を通じて、貧困者層と情報弱者層から大金を搾り取るというものだ。貧困者のひとりひとりはそれほど金を持っていなくても、大勢の貧困者から少しずつ巻き上げれば、莫大な儲けを手に入れることができる。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.82-85,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
★(c)自分にとって都合のいい制度を利用して、過剰なリスクを取る。
★(4.2.5)レントシーキングに都合の悪い法律が作られないようにする。政府の規制は少ない方がいい。
(a)ロビー活動と選挙支援に巨額の資金を投資することで、政策決定に影響力を行使する。
(b)反競争的行為が法律で禁止されないようにする。
(c)仮に法律が存在する場合は、実効的な取り締まりが行なわれないようする。
★(4.2.6)税制を、自分に都合のよいものに変える。
(a)ロビー活動と選挙支援に巨額の資金を投資することで、税制の設計に影響力を行使する。
(b)実態が隠蔽できるような複雑さを持った“逆累進課税制度”を実現させる。
★「レントシーキングのゲームに勝利して、アメリカ最上層の多くの人々は財を築いてきた。しかし、富を獲得する方法はレントシーキングだけではない。あとでくわしく説明するが、税制も重要な役割を担っている。最上層の人々は、税制の設計に影響力を行使し、払うべき税金を払わずにすませてきた。彼らの所得に占める税金の割合は、貧困層の人々より低いのである。わたしたちはこのような税制を“逆累進課税制度”と呼ぶ。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.82-85,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
★(4.2.7)労働法や会社法を、自分に都合のよいものに誘導する。
★(4.2.8)政府のマクロ経済政策を、自分に都合のよいものに誘導する。
★「中間層の空洞化と貧困層の増加――には、幅広い分野から強い影響力が加えられている。企業を律する法規は、企業内の規範と相互作用を起こし、経営者の行動を誘導するとともに、経営陣とほかの利害関係者(労働者と株主と社債保有者)の利益配分を決定する。また、政府のマクロ経済政策は、労働市場の需給――失業率の水準――を決定する。つまり、労働者の取り分を変化させる市場の仕組みに、政府の政策が影響を与えているわけだ。もしもインフレを恐れる金融当局の行動が、失業率の高止まりを招いた場合、労働者の賃金は抑制されるだろう。これまで、強い労働組合は不平等の縮小をうながしてきたが、組合が弱い企業のCEOは、やすやすと不平等を拡大してきた。CEOたちが市場の力の形成に手を貸し、その力を不平等の拡大に利用することもあった。ともあれ、組合の強弱にしても、企業統治の実効性にしても、金融政策の舵取りにしても、決定に中心的役割を果たすのは政治だ。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.82-85,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
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2026年8月10日月曜日
009必ずわかる難問題5
★009必ずわかる難問題5
社会学では、人類の歴史を考えます。私たちが、どのように形成されてきたのか?
前回は(3.1)を詳細にしました。今回は、(3.3)を詳細にします。
★(1)社会性と集団が無ければ生存できなかった
★「アフリカ・サヴァンナでの類人猿の生存にとっての大きな障害が、社会性と凝集的な集団構造の不足であったと仮定すれば、選択力は社会性と結合を増進するためにヒト科の脳の再組織化の方向に向ったにちがいない。」(ジョナサン・H・ターナー(1942-)『感情の起源』第2章 選択力と感情の進化、p.61、明石書店 (2007)、正岡寛司(訳))
★(2)感情能力が強化されることで社会性が獲得された
★(3)社会性を強化する感情能力に依存する6つの仕組み
先天的に社会性が低い動物を、より社会的で凝集的に組織される種に変えるために、必要となったものである。それらすべてが、ヒト科の感情能力の綿密な仕上げに依存している。
★(3.1)感情エネルギーの動員と経路づけ
(3.2)対面反応の調整
★(3.3)否定的裁可
(3.4)道徳的記号化
(3.5)資源評価と資源交換
(3.6)合理的意思決定
以下、詳細
★(3.1)感情エネルギーの動員と経路づけ
(1)動物の儀礼
他の動物も儀礼を使うが、しかし彼らのそれは神経学的に固定した形で配線され、そして求愛、配偶、性的争い、縄張り保全他の非常に基本的な活動に限られている。
(2)人間の儀礼
人間は、様々な場面で儀礼を使用し、そしてそれらを、焦点、感情状態、連帯を維持するために活用する。しかし、なぜ儀礼が必要となったのかが問題である。
(3)人類の祖先は元来、弱い結合、移動、自律を好んだ
(a)人類の祖先は元来、弱い結合、移動、自律を好んだ。そのため、必要な水準のエネルギーを確実に生成するために、儀礼を使用する必要に迫られた。
(b)固体主義と集合主義の二元性の由来
★「ゆえに人間は二つの心から成り立っている。一つは感情エネルギーを動員するために儀礼をわれわれに使わせようとする心であり、もう一つはわれわれ類人猿の祖先の傾向を主張する心である。この二元性が人間の社会的配置とイデオロギーに映しだされる。一方でわれわれは連帯性、親密性、共同体(community)他の結合関係を渇望し、もう一方でわれわれは他者の権威、束縛、統制に反抗する。われわれは集合主義的イデオロギーを構築するが、しかし結局のところ、われわれは類人猿の祖先に押しつけるその束縛にわれわれは憤慨する。われわれは自由、自律、個体主義、そして利己主義を享受しながら、しかしなにか――社会的連帯の結合――を欠いていると感じる。」(ジョナサン・H・ターナー(1942-)『感情の起源』第2章 選択力と感情の進化、pp.64-65、明石書店 (2007)、正岡寛司(訳
★(3.3)否定的裁可
★(1)怒りの表出
相手側が期待に適うことができなかったことに対する、当事者の怒りあるいはこの感情の変種を含んでいる。
★(2)恐怖の喚起
間違いをした側に、恐怖心あるいはこの感情の変種を喚起する。
★(3)否定的裁可の効果
否定的裁可は、ほとんどの哺乳類において原基的な感情である、怒りと恐れの感情を利用しているため、非常に効果的である。
(a)恐怖
恐怖心をもたない動物は、まもなく選択から除外される。
(b)怒り
防衛的攻撃を動員する能力をもたない動物は、逃げのびて退避できない場合に、捕食者の歯牙にかかって死ぬ運命にあるからである。
★(4)否定的裁可の問題点
否定的裁可は、恐れを喚起するだけでなく、しばしば対抗的な怒りを生む。そのため、否定的裁可は連帯を促進しない怒り-恐れ-怒りという複雑な循環を生みだす可能性がある。
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2026年8月9日日曜日
008必ずわかる難問題4
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■ 1. 記事のテーマ
「抑圧者」と「鋭敏者」という対照的な2つのパーソナリティ特性と、心身の健康・適応における真の関わりについて
■ 2. 何が問題なのか(あなたへの問いかけ)
「自分の欠点や不安に向き合い、ありのままの自分を深く理解することこそが、健全で強いメンタルを作る」——私たちはそう信じていませんか?
ネガティブな事実や脅威から目を背け、ポジティブなことばかり考えようとする人は、果たして「現実逃避をしている脆弱な人」なのでしょうか?
ストレスに満ちた現代社会で、真に心身の健康を保ち適応していけるのは、「自分の課題に鋭く向き合う人」と「嫌なことをうまく避ける人」、一体どちらなのでしょうか?
■ 3. 解答の概要
研究が示す答えは、私たちの直感に反するものでした。ネガティブな情報を避け、自分を肯定的・望ましく捉えようとする「抑圧者」の方が、自分の欠点や批判に敏感な「鋭敏者」よりも、その後の良好な精神的・身体的健康を維持できることが判明したのです。
この結論が極めて驚くべきものである理由は、フロイトをはじめとする伝統的な「精神力動論」の常識を根底から覆すからです。従来の心理学では、「正確な自己自覚や欠点への気づき(鋭敏さ)」こそが健全な心の構成要素であり、「否定的な情報の抑圧や回避」は脆弱で傷つきやすい心の表れだと考えられてきました。
しかし実際には、脅威を意図的に避けるような一見「洞察に欠けた態度」こそが、非常に高度で適応的なメンタルヘルスの戦略だったのです。
■ 4. 用語集(この記事で学べる心理学キーワード)
1. 抑圧者(Repressors)
否定的な自己関連情報や脅威を避け、自分自身を肯定的で社会的に望ましい言葉で表現する傾向を持つ人。一見現実逃避のようでありながら、高い適応力と心身の健康を示す。
2. 鋭敏者(Sensitizers)
否定的な情報や脅威に敏感に注意を向け、自分に対して批判的・否定的な自己像を描きやすい人。正確な自覚を持つ一方で、精神的なストレスを受けやすい。
3. 精神力動論(Psychodynamic Theory)
フロイトに始まる心理学の学説。無意識の葛藤や自己の正確な理解・自覚が心の健康に重要であると仮定し、抑圧を心の脆弱性の兆候と捉えていた伝統的アプローチ。
4. 自己高揚的な肯定バイアス(Self-Enhancing Positive Bias)
自分自身の能力や性格、状況について、現実以上に肯定的・好意的に評価しようとする認知的な傾き。メンタルヘルスを保つ上で重要な役割を果たす。
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007必ずわかる難問題3
★007_必ずわかる難問題3
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(1)前回、宇宙の構造と、法則の概要を話しました。現代の物理学は、かなりの精度で真理を掴んでいて、高度な技術の基礎知識にもなっています。
(2)この宇宙の法則から、生命が生まれて進化することが理解できるだろうか。
(3)意識が生まれ、その意識が宇宙の法則を理解することを、説明できるだろうか。
(4)宇宙の出来事の生成は、確率の法則に従っているが、個々の出来事の生成は、偶然に支配されている。
(5)ところが生命は、良くなろうとする傾向がある。物理学の法則とは矛盾しないのか?
★(6)(仮説)はじめの一歩は、小さな一歩で、偶然だったのだろう。ある分子の配列が、「自己保存」に適したものを探り当てたとき、変化はランダムではなく、方向性を持つことになった。もしかしたら、最初の探り当ても、無数の分子配列の量子的な重ね合わせの中から、まさに「自己保存する」がゆえに出来事として発生するのではないのか? 量子コンピュータのような速さで、無数の組み合わせが一瞬のうちに試行され、自己保存する配列が生き残る。この仮説が正しいなら、生命の発生は、必然だったことになる。
★(7)有機体は、外部環境と内部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、外部環境と内部環境を変更する。
★(8)ホメオスタシスの入れ子構造:(1)各機構は、より単純な機構を構成要素としている。(2)そ の際、新しい問題に対応している。(3)全体として「幸福を伴う生存」が目指されている。 (アントニオ・ダマシオ(1944-))
★ホメオスタシスの各階層
(a)感情
(b)狭義の情動
(c)多数の動因と動機、あるいは欲求
(d)快(および報酬)または苦(および罰)と結びついている行動
(e)免疫系
(f)基本的な反射
(g)代謝のプロセス
★(9)代謝のプロセス
有機体は、内部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、代謝のプロセスで内部環境を調整する。
★(10)基本的な反射
有機体は、外部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、基本的な反射で対応する。
★(11)免疫系
有機体は、内部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、免疫系で内部環境を調整する。《誘発原因》は、有機体の外部から侵入してくるウイルス、細菌、寄生虫、毒性化学分子など。有機体の内部であっても、例えば死滅しつつある細胞から放出される有害な化学分子。
★(12)快(および報酬)または苦(および罰)と結びついている行動――快楽行動、苦痛行動
有機体は、外部環境と内部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、代謝のプロセスや免疫系で内部環境を調整したり、基本的な反射で反応したりするが、やがて外部環境の特定の対象や状況への接近反応や退避反応をするようになる。
★(13)多数の動因と動機、あるいは欲求
有機体は、外部環境と内部環境の変化を検出し、その変化が有機体の自己保存と効率的機能にとって良いか悪いかを評価して反応し、代謝のプロセスや免疫系で内部環境を調整したり、基本的な反射で反応したりするが、やがて外部環境の特定の対象や状況への接近反応や退避反応をするようになる。そして、外部環境と内部環境の変化検出と評価の一部を意識化することで、特定の動因による行動を組織化するようになる。
《定義》欲求:ある特定の動因によって活発化する有機体の行動的状態
《例》空腹感、喉の渇き、好奇心、探究心、気晴らし、性欲など。
★(14)意識化された外部環境、内部環境
・外部感覚(特殊感覚)
・自分の肢体のなかにあるように感じる痛み、熱さ、その他の変様(表在性感覚、深部感覚)
・身体ないしその一部に関係付ける知覚としての、飢え、渇き、その他の自然的欲求(内臓感覚)
参考:精神の受動のひとつ、身体ないしその一部に関係づける知覚として、飢え、渇き、その他の自然的欲求、自分の肢体のなかにあるように感じる痛み、熱さ、その他の変様がある。(ルネ・デカルト(1596-1650))
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2026年8月8日土曜日
006必ずわかる難問題2
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006a_必ずわかる難問題2
物理学
難問題に入っていく前に、物理学が理解している宇宙の姿を、知って欲しい。次の記述は、簡潔で丁寧にまとめて書かれているので、何回も読んで欲しい。復習します。毎回少しずつ詳しくしていきます。
前回は、(6)を、説明しました。(6)の問題が(1.1)、解決するための仮説の一つがループ量子重力理論で、この理論によると(2.1)のような宇宙になります。
★(1)「わたしたちが生きる世界には、屈曲した時空間が広がっている。★(1.1)量子力学以前の理論、つまりアインシュタインの方程式によれば、この宇宙は無限に押しつぶされる。そうして最後は、原子核に飲みこまれる電子のように、一点となって消失する。これが、アインシュタインの方程式によって予見される、「点」としてのビッグバンである。(中略)しかし、量子力学を考慮に入れれば、宇宙の収縮にも限界があることが判明する。それはあたかも、量子的な反発によって、宇宙が跳ね返っているかのような状況である。収縮過程にある宇宙が、広がりを持たない「点」まで縮むことはない。(カルロ・ロヴェッリ(1956)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第4部 空間と時間を超えて、第8章 ビッグバンの先にあるもの、pp.202-204、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))
★(2)どのようにしてかは分からないが、それは今から一四〇億年前に、巨大な爆発によって誕生した。以来、時空間はずっと膨張を続けている。
★(2.1)ビッグバンのさなかの決定的な移行過程においては、わたしたちはもはや、明確に記述された空間や時間を想定することはできない。わたしたちの考察の対象となるのは確率の雲だけであり、空間と時間はその雲のなかですっかり姿を消してしまう。ビッグバンの前後では、確率が泡立つ雲のなかに、世界はきれいに溶解する。そして、量子重力理論の方程式なら、こうした確率の雲を記述することができる。今日の物理学者は、わたしたちの宇宙が生まれる前には、別の宇宙が存在していたと考えている。空間と時間が確率のなかで溶解する量子的な局面を経た末に、ひとつの宇宙が崩壊し、新しい宇宙が生まれたのである。」(カルロ・ロヴェッリ(1956)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第4部 空間と時間を超えて、第8章 ビッグバンの先にあるもの、pp.202-204、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))
★(3)この空間は実在する「事物」であり、物理的な「場」である。時空間の力学は、アインシュタインの方程式によって記述される。物質の重みのもとで、空間は折れたり曲がったりする。物質が極度に凝縮されたときには、空間がブラックホールへ呑みこまれていくこともある。
★(4)宇宙には無数の銀河が散らばっており、ひとつひとつの銀河に無数の星が散らばっている。銀河を形づくっている物質は、量子場によって形づくられている。量子場は、電子や光子のように、粒子の形態をとって現われる。または、量子場は電磁波のように、波の形で現われることもある。テレビの映像や、太陽の光や、星の輝きをわたしたちに伝えているのは、電磁波である。
★(5)原子や光をはじめ、宇宙に存在するあらゆる事物は、量子場によって記述される。量子場は奇妙な存在である。量子場を形成するひとつひとつの粒子は、別のなにかと相互作用を起こすときだけ、ある一点に居場所を定め、その姿をあらわにする。ひとたび相互作用を終えるなり、粒子は「確率の雲」のなかへ溶けこんでいく。世界とは、素粒子が起こす事象の湧出である。波のように振動する、大きく躍動的な空間の海に、素粒子は浸かっている。
★(6)世界のこのようなイメージと、このイメージを形づくるわずかな方程式によって、わたしたちの目に映るほとんどすべてのものを記述することができる。そう。あくまで、「ほとんど」である。肝心な何かが、まだ欠けている。今日のわたしたちが要求しているのは、その何かである。」(カルロ・ロヴェッリ(1956-)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第3部 量子的な空間と相関的な時間、pp.142-143、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))
★(6.1)「一般相対性理論は、宇宙論、天体物理学、重力波やブラックホール研究の基礎である。一方の量子力学は、原子物理学、核物理学、素粒子物理学、物性物理学をはじめ、多くの分野の研究基礎となっている。しかし、二つの理論を並置すると、周囲には不協和音が響きわたる。少なくとも、現今の形式においては、二つの理論のどちらもが正しいということはありえない。(中略)
★(6.2)一般相対性理論の重力場は、量子力学を考慮に入れずに記述されている。つまり一般相対性理論は、「量子化された場(量子場)」を想定していない。量子力学はというと、「時空間は曲がる」という点を無視して定式化されている。量子力学の扱う空間に、アインシュタインの方程式は当てはまらない。」(カルロ・ロヴェッリ(1956-)『現実は私たちに現われているようなものではない』(日本語名『すごい物理学講義』)第3部 量子的な空間と相関的な時間、第5章 時空間は量子的である、p.144、河出書房新社(2017)、竹内薫(監訳)、栗原俊秀(訳))★
https://sententiarum2.blogspot.com/2018/01/1956_13.html
2026年8月7日金曜日
005必ずわかる難問題1
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005a_必ずわかる難問題1
★何百年も議論されても、明確に解けたと思えないような難しい問題が、いくつかあります。その中の一つ。
宇宙が誕生し、星々ができ、地球上で生命が生まれ進化して、人間が生まれ、心を持つようになった。
私たちは、たしかに、自分で考えて、自由に選択する、Aを選ぶか、Bを選ぶか? しかし人間も、物質には違いなく、宇宙を支配している物理学の法則に従っているはずだ。
生命とは何か?
意識とは何か?
人間に自由意志はあるのか?
未来は選べるのか?
しばらくは、ポパーの考えたことを、
紹介してみたい。
★(1)物質の世界を世界1、心の世界を、世界2と呼ぶことにする。ポパーは。もう一つの世界があるという。世界3だ。世界3とは、人間の心が作ったものの世界だ。
★(2)たぶん誰でも、ごく素朴な直感として、物質の世界1の存在を、確信している。(これが素朴な唯物論)
★(3)ところが良く考えると、物質があると思っているのは、私ではないのか。科学や技術は、物質の世界を、解明している? 私が勝手に思っているだけということはないのか。少なくとも、私の心の世界2は存在する。
(3.1)よく考えてみると、すべてのことは、私が感じ考えていることだ。
(3.2)もしかしたら、宇宙すべては、私の私の夢なのではないのか?(これが独我論)
★(4)私は決して他者の心の世界2を経験できないが、他者の心の世界2も存在する。
★(5)物質の世界を解明しているという科学や技術とは何か。誰か個人の心の中にあるというようなものではない。それは、膨大な書籍に書いてあったり、コンピュータシステムに記録されたデータやプログラムだったり、観測機器や製造装置だったりする。これらは、物質の世界1の存在だ。
★(6)ところが、これらの、人間の心が作り出したものが、人間と相互作用しあうと、宇宙の秘密を解き明かしたり、ロケットを飛ばしたりできる。
★(6.1)仮に、人間が滅びて1人もいない世界を考えると、これらの物質の塊が、働き出すことはない。
★(7)次の概念は、すべて本質的には、同じだ。
(7.1)心は、人間の心がつくったもの(ポパーの世界3)と相互作用して、元の自分とは違う心と相互作用する。
(7.2)心は、他者と交流しているとき、元の自分とは違う心になっている。(ライプニッツのモナドがつくる実体的紐帯)
(7.3)人間と人間の間の人(ブーバー)
(7.4)人以外のものとも、関係が成立する(ブーバー、我と汝)
(7.5)ある印の意味がわかるのは、その印を書いた🏃➡️の意図がわかったとき
(7.6)メモ書きしたとき、そのメモは、心の一部になる。
https://sententiarum2.blogspot.com/2018/08/31902-1994.html
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2026年8月4日火曜日
013必ずわかる難問題9
★013必ずわかる難問題9
★(1)主観的な意識は、時空におけるイベントであるとしてみる。
★(2)イベントが生成されるには、なんらかのマクロ系の「モナド」が存在していなければならない。
★(3)「総じて主観というものが存在しうるためには、なんらかの持久するものが現存していなくてはならない〔そして同様に多くの同等性と類似性が現存していなくてはならない〕。」(フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)『遺稿集・生成の無垢』Ⅰ認識論/自然哲学/人間学 六三、ニーチェ全集 別巻4 生成の無垢(下)、pp.49-50、[原佑・吉沢伝三郎・1994])
★(4)マクロ系の存在は、ある特定の状態を構成する無数のミクロ状態から生成される。
★(5)「精神的なものはあくまで《身体》の記号とみなされるべきなのだ!」
★「いくらかでも身体について―――いかに多くの組織がそこでは同時に働いているか、いかに多くのことがたがいに助けあったり背きあったりするかたちで行なわれているか、いかに多くの繊細さが調停等々のはたらきのうちに現存するかを―――思い浮かべた者は、一切の意識が、これに比較すれば、何か貧しくて狭いものであり、いかなる精神も、ここで成就されうるでもあろう精神的なことには、近似的にしか充分ではなく、そしておそらくはまた、最も賢明な道徳の教師や立法者も、もろもろの義務や権利の戦いのこの活発な営みのただなかでは、おのれが無骨で初心者めいていると感じざるをえないことだろうと、判断するであろう。」(フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)『遺稿集・生成の無垢』Ⅱ道徳哲学 七二九、ニーチェ全集 別巻4 生成の無垢(下)、pp.358-359、[原佑・吉沢伝三郎・1994]
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★(6)「意識にのぼってくるすべてのものは、なんらかの連鎖の最終項であり、一つの終末である。」
★「或る思想が直接或る別の思想の原因であるなどということは、見かけ上のことにすぎない。本来的な連結された出来事は私たちの意識の《下方で》起こる。諸感情、諸思想等々の、現われ出てくる諸系列や諸継起は、この本来的な出来事の《徴候》なのだ! ―――あらゆる思想の下にはなんらかの情動がひそんでいる。あらゆる思想、あらゆる感情、あらゆる意志は、或る特定の情動から生まれたものでは《なく》て、或る《総体的状態》であり、意識全体の或る全表面であって、私たちを構成している諸衝動一切の、―――それゆえ、ちょうどそのとき支配している衝動、ならびにこの衝動に服従あるいは抵抗している諸衝動の、瞬時的な権力確定からその結果として生ずる。すぐ次の思想は、いかに総体的な権力状況がその間に転移したかを示す一つの記号である。「意志」―――一つの欺瞞的な具象化。」(フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)『遺稿集・生成の無垢』Ⅰ認識論/自然哲学/人間学 二五〇、ニーチェ全集 別巻4 生成の無垢(下)、pp.148-149、[原佑・吉沢伝三郎・1994]
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2026年8月3日月曜日
012必ずわかる難問題8
★012必ずわかる難問題8
【記事紹介文】ハーバート・ハート『法の概念』より:法とは何か?
★1. 記事のテーマ
法を構成する真の要素とは何か――従来の法理論(命令・服従・威嚇)の限界を乗り越え、「第1次的ルール」と「第2次的ルール」の結合として法を再定義する法哲学の革新的視点。
★2. 何が問題なのか
「法に従う」とは、単に銃を持った強盗に威嚇されて命じられるままに従うことと、どう違うのでしょうか?
私たちはなぜ法を単なる「命令」や「習慣」以上のものとして受け入れ、守らなければならないと感じるのでしょうか?
権力者の威嚇と手下に過ぎないモデルでは決して説明できない「法律の本当の姿」とは一体何なのでしょうか?
★3. 解答の概要
解答:
法は単なる「命令と服従の集積」ではなく、「義務を課すルール(第1次的ルール)」と「ルールそのものを変化・運用・管理する権能を与えるルール(第2次的ルール)」という2つの異なったタイプのルールの結合によって成立しています。
★なぜこれが驚くべきことなのか:
従来の法理論(例えばオースティンの主権者命令説など)は、法を「威嚇を伴う命令」と捉えていました。しかしハートは、それらをどれだけ寄せ集めても「ルール」という観念そのものは生まれないと指摘します。
何が正法かを決定したり、新しい法律を作ったり失効させたりする仕組み(第2次的ルール)こそが法の核心であり、この「ルールについてのルール」が存在して初めて、人間社会は単なる強者の支配から脱却し、高度で柔軟な「法体系」を構築できるという事実を明かした点に、計り知れない驚きと洞察があります。
★4. 用語集(ここで勉強できること)
※重要なものから順に列挙
・ルールの観念(Idea of Rules)
単なる「行動の習慣」や「外部からの強制」とは異なり、人々がその基準を正当なものとして受け入れ、行動の指針や批判の根拠とする規範意識。法を理解するための根幹となる概念。
・第1次的ルール(Primary Rules)
人々に特定の行為を行うこと、あるいは差し控えることを直接的に要求し、義務を課すルール。物理的な行動や変化に直接関係するもの(例:「人を殺してはならない」「税金を払わなければならない」)。
・第2次的ルール(Secondary Rules)
第1次的ルールに「寄生」または附属し、新たなルールの導入・修正・廃棄や、ルールの適用・統制を行うための権能(公的・私的)を付与するルール。「ルールについてのルール」(例:立法手続、裁判権、契約を交わす権利など)。
・権能の付与(Conferral of Powers)
義務を課すのではなく、個人や公的機関が法的な効力を持つ行為(契約、遺言、立法、判決など)を行うための資格や条件を与えること。
・命令・服従・習慣・威嚇(Orders, Obedience, Habits, and Threats)
従来の法理論が法を説明するために用いていた基本的概念。ハートはこれらだけでは「法体系の複雑性」や「ルールの観念」を説明しきれないとして批判した。
https://sententiarum2.blogspot.com/2018/10/1121907-1992.html
2026年8月2日日曜日
011必ずわかる難問題7
★【紹介文】異文化理解と共感の哲学 — アイザイア・バーリンが語る「人間」の可能性
★1. 記事のテーマ
「異なる文化や価値観を持つ人々を、私たちはどのように理解し合えるのか」
20世紀の偉大な思想史家アイザイア・バーリンが、歴史上の思想家(ヴィーコやヘルダー)の知恵を引きながら、多様な文化の狭間で揺れる現代人に問いかける「共感と異文化理解」の論理。
★2. 何が問題なのか
自分たちの常識とはまったく異なる価値観、あるいは、ひと目見ただけでは「不快だ」「とても許せない」と感じてしまうような異国の生き方や文化。私たちはそれらを、単なる「理解不能な異物」として拒絶するしかないのでしょうか?
時代も地域も離れ、価値観すら対立する相手と、人間は本当に心を通わせることができるのか?
言葉や文化の壁を超えてコミュニケーションを成立させる根底には、一体何が存在しているのでしょうか?
★3. 驚くべきこと
どれほど反発を覚えるような生き方であっても、私たちは「想像力」と「感情移入」によって、相手が「なぜそのように考え、行動するのか」を内側から理解することができます!
18世紀の思想家ヘルダーやヴィーコが発見したように、人間には時空を超えて他者の心に分け入る能力が備わっています。どんなに文化や価値観がかけ離れていても、彼らもまた「私たちに似たもの同士(人間仲間)」なのです。
相手の主張に必ずしも同意できなくても、「相手の立場に立ち、その世界観を追体験する」という共感の知性こそが、対立を乗り越えて人類が対話するための強力な鍵となります。
★4. ここで勉強できること(用語集)
記事をより深く読み解くための重要用語(重要度順):
■ 1. 感情移入(Einfühlen / アイフルング)
【意味】18世紀ドイツの思想家ヘルダーが生み出した概念。単に可哀想と思うことではなく、自分とは異なる文化や時代に生きる他者の内面・立場に深く入り込み、その思考や感情を追体験して理解する知的な能力のこと。
■ 2. アイザイア・バーリン(Isaiah Berlin, 1909-1997)
【意味】20世紀を代表する政治哲学者・思想史家。「価値多元主義(多様な価値観は互いに衝突しうるが、それぞれに独自の正当性があるという考え)」を提唱し、自由や異文化理解に関する深い考察を残した。
■ 3. ヘルダー(Johann Gottfried von Herder, 1744-1803)
【意味】ドイツの思想家・文学者。異なる地域や時代の文化にはそれぞれの独自の価値があるとする「文化多元主義」の先駆者。「感情移入」の概念を通じて異文化理解の思想を芽生えさせた。
■ 4. ヴィーコ(Giambattista Vico, 1668-1744)
【意味】イタリアの哲学者・歴史家。主著『新しい科学』において、人間が作り出した歴史や文化は人間の精神の働きによって理解可能であるとし、異文化理解の基礎を築いた。
■ 5. nos semblables(ノ・サンブラブル)
【意味】フランス語で「私たちに似た者たち」「同胞」「人間仲間」を意味する言葉。どれほど生き方や文化が異なって見えても、根底においては同じ人間性を共有している存在であることを表現している。
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https://sententiarum2.blogspot.com/2019/11/1909-1997_5.html
009必ずわかる難問題5
★009必ずわかる難問題5
社会学では、人類の歴史を考えます。私たちが、どのように形成されてきたのか?
★(1)社会性と集団が無ければ生存できなかった
「アフリカ・サヴァンナでの類人猿の生存にとっての大きな障害が、社会性と凝集的な集団構造の不足であったと仮定すれば、選択力は社会性と結合を増進するためにヒト科の脳の再組織化の方向に向ったにちがいない。」
(ジョナサン・H・ターナー(1942-)『感情の起源』第2章 選択力と感情の進化、p.61、明石書店 (2007)、正岡寛司(訳))
★(2)感情能力が強化されることで社会性が獲得された
★(3)社会性を強化する感情能力に依存する6つの仕組み
先天的に社会性が低い動物を、より社会的で凝集的に組織される種に変えるために、必要となったものである。それらすべてが、ヒト科の感情能力の綿密な仕上げに依存している。
(a)感情エネルギーの動員と経路づけ
(b)対面反応の調整
(c)裁可
(d)道徳的記号化
(e)資源評価と資源交換
(f)合理的意思決定
本の抜粋を読みたいときは、
https://sententiarum2.blogspot.com/2020/04/Jonathan-H.-Turner-1942-.html
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010必ずわかる難問題6
★010必ずわかる難問題6
前回の復習の後
どうすれば金儲けできるかという話し。(4.2)を詳細に説明する
★(1)効率的な市場
市場において個々人が自己利益を最大化させることで、全体の社会的利益を最大化させることができる。
★(2)市場の失敗
市場は、独力で効率的な結果を生み出せない。すなわち、以下の諸原因により、個々人が社会にもたらす利益と個人的報酬が等しくなくなり、全体の社会的利益を最大化させることができなくなる。
★ 市場の失敗の原因
【(a)不完全な競争、(b)情報の不完全性、非対称性、(c)外部性の働き、(d)リスク市場の非存在によって、市場の失敗が発生する。高い効率性と繁栄のためには、政府による適切な矯正作業が必要である。(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-))】
★(2.1)競争が不完全なとき。
(2.2)情報の不完全性や情報の非対称性が存在するとき。
市場取引に関する情報を、誰かが持っている一方で、他の誰かが持っていない状況。
★(2.3)外部性が働いているとき。
ひとつの集団の行動によって、正もしくは負の影響が他に及ぶ可能性があるものの、集団が正の影響から利益を得ることも、負の影響の代償を支払うこともない状況。
★(2.4)リスク市場が存在しないとき
たとえば、直面する重大なリスクの多くに対して、保険をかけることができない状況。
★(3)政府の役割
(3.1)政府は、税金と規制にかんする制度設計を通じて、個人のインセンティブと、社会的利益を同調させる必要がある。
(3.2)重大な市場の失敗に対して、納得できる矯正作業を政府が行なわないかぎり、経済の繁栄は望めないだろう。
★(4)2つの考え方
(4.1)みんなの幸せを考える。全体の社会的利益を最大化させようとするには、政府の適切な矯正作業が必要である。
★(4.2)私だけ、儲かれば良い。社会に対する貢献以上の個人的報酬を獲得しようとするには、政府の規制は少ないほうが都合がいい。
【社会に対する貢献以上の報酬を得る方法:(a)参入障壁の構築と独占の維持、(b)競争障壁の構築、(c)市場の透明性を低下させること、(d)これら反競争的行為が規制されないための政治的対策。(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-))】
★「事業家たちが重視するのは、社会の繁栄とは何かを広く知らしめることでもなければ、市場の競争性を高めることでもない。彼らの目的は、“自分に都合よく”市場を機能させ、より大きな利潤を手にすることだけだ。しかし、これらの行為はたいていの場合、経済の効率性を低下させ、不平等を拡大させる結果に終わる。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.80-82,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
★(4.2.1)儲けを大きくするために、市場の競争性を低下させ、独占力を確保すること。
(i)参入障壁や、競争の障壁を構築する。
(ii)反競争的行為が法律で禁止されないように対策する。
(iii)仮に法律が存在する場合は、実効的な取り締まりが行なわれないよう対策する。
★(4.2.2)市場の透明性を低下させる。
(i)例として、公開市場ではなく店頭市場を利用し、買い手には必要な情報を与えず、取引を有利に進める。
★「好んで使われるのは、市場の透明性を低下させる手法だ。透明性が高まれば高まるほど、市場における競争は激しくなりやすい。銀行家たちはこの事実を知っている。だからこそ銀行業界は、〈AIG〉の没落の中心的役割を果たした危険な金融商品、デリバティブの引き受け事業を展開するにあたって、不透明な“店頭市場”での取引を必死に守りつづけたのだ。店頭市場では、良い取引と悪い取引を消費者が見極めるのは難しい。透明性の高い現代の公開市場とは対照的に、店頭市場ではすべてが交渉で決まる。売り手が絶え間なく取引を行なう一方、買い手はたまにしか市場を訪れないため、売り手は買い手よりも多くの情報を持ち、その情報を使って取引を有利に進める。」(ジョセフ・E・スティグリッツ(1943-),『不平等の代価』(日本語書籍名『世界の99%を貧困にする経済』),第2章 レントシーキング経済と不平等な社会のつくり方,pp.80-82,徳間書店(2012),楡井浩一,峯村利哉(訳))
★(5)歴史
世界大恐慌以降の40年間、すぐれた金融規制によって、アメリカと世界は大きな危機を回避してきた。1980年代に規制が緩和されると、その後の30年間は、危機が立て続けに起きるようになった。
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2026年8月1日土曜日
008必ずわかる難問題4
★008難問題4
1 記事のテーマ
人間のあらゆる能動的・創造的行動の根幹にある「有能性への欲望(Competence Motivation)」とそのメカニズム
2 何が問題なのか
私たちはなぜ、お金や誰かからの賞賛が得られるわけでもないのに、ピアノの練習やスポーツ、チェス、手品といった難解な課題に夢中になるのでしょうか?
「人間は単に恐怖や飢えなどの生理的欲求に支配された無力な生物なのか、それとも自ら環境に働きかける能動的な存在なのか?」という、私たちの行動を突き動かす根源的な謎に迫ります。
3 驚くべきこと
心理学者ロバート・W・ホワイトが明かしたように、好奇心や遊び、冒険への欲求といった高次の動機は、すべて「有能性への欲望」という一つの基本的な動機に帰結します。
赤ちゃんのハイハイや子どもの探究活動から大人の高度なスキル習得に至るまで、人は生存のためでも外的報酬のためでもなく、「課題に習熟し、自らの力で効果的に機能しているという『効力感』を得るそのもの」のために行動しているのです。この内発的な力が、人間を恐怖に支配された存在ではなく「文明の創造者」たらしめているという驚くべき知見が示されます。
4 ここで勉強できること(用語集)
1. 有能性への欲望(Competence Motivation)
課題に習熟し、環境に対して効果的に機能したいという人間本来の根本的な欲求。
2. 効力感(Feeling of Efficacy)
自分自身が能動的主体として環境や人生に働きかけ、影響を与えているというリアルな感覚。
3. 内発的満足(Intrinsic Satisfaction)
賞賛や金銭などの外部からの見返りではなく、活動そのものを遂行することによって内側から得られる満足感。
4. 高次の動機(Higher-order Motivations)
生存のための生理的欲求(飢えや渇きなど)を超えた、好奇心、遊び、刺激、冒険などを求める欲求。
5. 外的報酬(External Rewards)
賞賛、注意、金銭など、行動の外部から与えられる報酬やインセンティブ。
6. 生物学的動因(Biological Drives)
飢えや性など、生命維持や本能に基づく基礎的な欲求。
7. 能動的主体(Active Agent)
周囲の環境や感情に受動的に支配されるのではなく、自らの意思で環境に働きかけていく存在。
8. パーソナリティ心理学(Personality Psychology)
人間の思考、感情、行動の独自のパターンや、動機づけの仕組みを統合的に研究する心理学の分野。
https://sententiarum2.blogspot.com/2018/05/w1904-2001.html
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