2018年5月20日日曜日

論争的な学問には注意せよ。それは、新規で珍しい用語で独断的な主張をし、論争を引き起こす。しかし実のところ、より総合的な諸学問の調和の中においては、この類いの反対論は、簡単に論破されるようなものなのである。(フランシス・ベーコン(1561-1626))

論争的な学問

【論争的な学問には注意せよ。それは、新規で珍しい用語で独断的な主張をし、論争を引き起こす。しかし実のところ、より総合的な諸学問の調和の中においては、この類いの反対論は、簡単に論破されるようなものなのである。(フランシス・ベーコン(1561-1626))】
 論争的な学問には注意せよ。それは、新規で珍しい用語で独断的な主張をし、論争を引き起こすだけの学問の病気である。本来なら、学問の各部門は、たがいに支持しあうように調和が取れているものなので、小さなたぐいの反対論は、実は簡単に論破されるようなものなのである。
 「つぎにみられる第二の病気は、第一のものよりも悪性である。」(中略)
 「聖パウロの非難は、当時当たっていただけでなく、後代に対しても予言的であり、ただ神学に関係があるだけでなく、もっと広くすべての知識にも当てはまるのである。―――「俗悪な新奇の語といつわりの知識による反対論とをさけなさい」〔『テモテへの第一の手紙』六の二〇〕。というのは、聖パウロは、疑わしいいつわりの知識の目印として二つのものを指摘しているが、その一つは、用語の新規とめずらしさであり、もう一つは、独断的な主張であって、それは必然的に反対論をひきおこし、したがって問題や論争をおこすからである。」(中略)
 「すなわち、どの命題あるいは主張にもそれぞれ反対論をつくり、そしてそれらの反対論に解答をつくるのであるが、しかしそれらの解答はたいてい論破ではなく区別だてとなる。ところが、じつは、すべての学問の強さは、例の老人のまき束の強さと同じように、その結束にある〔アィソポス『寓話』五二〕。というのは、その各部門がたがいに支持しあうように、学問の調和がとれていてこそ、すべての小さなたぐいの反対論をほんとうに簡単に論破し、おさえることができるのであり、またそうでなければならないからである。ところが、それと反対に、まき束の割木のように、一般的命題を一つ一つとり出すなら、それに異議を唱え、それを意のままに曲げたり、折ったりすることができるであろう。」
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『学問の進歩』第一巻、四・五、pp.52-54、[服部英次郎、多田英次・1974])
(索引:論争的な学問)

学問の進歩 (岩波文庫 青 617-1)


(出典:wikipedia
フランシス・ベーコン(1561-1626)の命題集(Collection of propositions of great philosophers)  「不死こそ、子をうみ、家名をあげる目的であり、それこそ、建築物と記念の施設と記念碑をたてる目的であり、それこそ、遺名と名声と令名を求める目的であり、つまり、その他すべての人間の欲望を強めるものであるからである。そうであるなら、知力と学問の記念碑のほうが、権力あるいは技術の記念碑よりもずっと永続的であることはあきらかである。というのは、ホメロスの詩句は、シラブル一つ、あるいは文字一つも失われることなく、二千五百年、あるいはそれ以上も存続したではないか。そのあいだに、無数の宮殿と神殿と城塞と都市がたちくされ、とりこわされたのに。」(中略)「ところが、人びとの知力と知識の似姿は、書物のなかにいつまでもあり、時の損傷を免れ、たえず更新されることができるのである。これを似姿と呼ぶのも適当ではない。というのは、それはつねに子をうみ、他人の精神のなかに種子をまき、のちのちの時代に、はてしなく行動をひきおこし意見をうむからである。それゆえ、富と物資をかなたからこなたへ運び、きわめて遠く隔たった地域をも、その産物をわかちあうことによって結びつける、船の発明がりっぱなものであると考えられたのなら、それにもまして、学問はどれほどほめたたえられねばならぬことだろう。学問は、さながら船のように、時という広大な海を渡って、遠く隔たった時代に、つぎつぎと、知恵と知識と発明のわけまえをとらせるのである。
(フランシス・ベーコン(1561-1626)『学問の進歩』第一巻、八・六、pp.109-110、[服部英次郎、多田英次・1974])(索引:学問の船)


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